経営理念の意味・メリットとは？企業の具体例10選を紹介！

経営理念とは？4つの要素

経営理念とは経営上、すべての事業の行動指針となる基本的な考え方です。経営理念には主に4つの要素があります。

mission（使命）

missionは企業の存在意義や自社が果たすべき使命を表します。missionを決めることで、企業が社会でなすべき役割を明確化でき、目的意識を持った事業運営を実現できるでしょう。

社内全体で共有できるよう、簡潔な言葉で示すことが大切です。

vision（未来像）

visionは自社が目指すべき将来像を示します。visionを明確にすることで、企業として進むべき方向性が決まり、おのずと事業内容も定まるでしょう。

visionは達成して終わりではなく、達成されるたびに次のvisionに更新し、向かうべき将来の目標を言語化することが重要です。事業ビジョンや経営目標と呼ばれる場合もあります。

value（社会価値）

valueは社会における企業の価値を示します。missionとvisionを達成するための基準や従業員が業務を遂行するうえでの判断基準にもなります。

way（行動指針）

wayは上記の3つを達成するための具体的な行動を指します。経営の計画から従業員の行動が逸脱しないようにする重要な役割があります。経営陣が思い描く企業像と従業員の行動が食い違いを防ぐためには、具体的な行動指針が必要です。

経営理念と企業理念の違い

経営理念は経営者の思想、想い、哲学などを言語化したものです。時流にあわせて定期的に更新し、常に社会に対する企業価値を見出せる理念を掲げます。

企業理念は社会通念的に企業としてあるべき姿を示します。

経営理念を掲げる4つのメリット

経営理念を掲げるメリットは4つあります。

経営理念を作成する際は、4つが網羅できているかが作成のポイントです。

1. 経営の方向性が決まる

経営理念を定めることで、経営の方向性を決められます。業務上、判断に迷う場面でも経営理念に則って判断ができれば、企業が誤った方向に進むことはありません。社員が経営理念に反する行動をとらないよう、経営理念を浸透させましょう。

2. 従業員の意思を統一できる

経営理念は、従業員の意思統一にも役立ちます。従業員は、価値観、思想、哲学などが異なります。1つの組織として成長していくなかで、従業員の意思統一は必須です。

従業員1人ひとりが自分の仕事にどのような意味があるのか、経営理念を通じて従業員のやりがいと貢献度を再確認できます。従業員も経営理念に則って仕事を達成することで、大きな相乗効果がうまれ、企業全体の成長が見込まれるでしょう。

3. 企業アイデンティティを構築できる

経営理念を言語化することで、取引先や消費者など社外へ企業のアイデンティティを示すことができます。取引先には、契約をはじめ業務上のやり取りの際の判断材料として、消費者には、自社のイメージ付けとして役割を果たします。

経営理念がなければ、顧客に伝えるアイデンティティを従業員個人の裁量にすべて任せることになり非常に危険です。明文化された経営理念があれば、企業のアイデンティティの構築に大きな効果をもたらします。

4. 人材採用につながる

経営理念があることで、経営陣の思想や哲学に共感した人材が集まりやすくなります。入社後に企業の風土や文化に共感できず、退職する人材ロストを防ぐ面でも経営理念の作成は重要です。

経営理念を明文化し、従業員および社外に広めることは、企業間競争において優秀な人材を確保する面でのメリットも期待できるでしょう。

経営理念を作成する際の4つのポイント

経営理念を作成する際は発表する前に、以下の4つのポイントが抑えられているかを確認しましょう。

1. 将来のvisionを明確にする

経営理念を作成する1つ目のポイントは、将来的にどのような企業にしていきたいかを明確にすることです。経営理念は、経営をするうえで進む方向を示すものであるため、現状のみを考えて作成するべきではありません。

自社の業界内での現在地点をはっきりさせ、長期的な戦略として目指すべき企業像を具体的にイメージして作成する必要があります。以下の項目のvisionを意識してみてください。

• どのような事業で企業を成長させたいのか
• 従業員に対しどのようなスキルや考えをもってほしいのか
• 社会に対してどのような形で貢献していきたいのか

経営陣のvisionをわかりやすく言語化することは、従業員のモチベーションアップにもつながります。企業の目的や将来像をわかりやすく発信できるものにしましょう。

2. 誰にでもわかるものにする

経営理念は従業員をとおして、企業内外の多くの人に発信・共有される価値観です。誰でもわかりやすく、伝えやすい理念を作成する必要があります。

経営理念はそのまま企業イメージに直結するものです。企業全体のイメージアップを図る意味でも、誰でもわかりやすい経営理念を作成しましょう。

3. 現場の状況を見極める

経営理念を作成するうえでは現場の状況を見極めましょう。「世界的にはばたく企業へ」という経営理念を掲げても、商品やアイデアもない、国内のシェアもない状況では現実的ではありません。

現実味の無い経営理念では従業員のモチベーションに影響し、社外へマイナスイメージを与えてしまう可能性があります。現場の状況にあわせて、達成可能で現場が取り組める指針を経営理念に含めることを意識しましょう。

4. 定期的に見直す

経営理念は定期的に見直しましょう。経営理念は、時流や市場上場によってフィットしなくなっている場合が多くあります。長く親しんできた経営理念を変えることで従業員や関係者は混乱する可能性はあります。十分に説明したうえで変更しましょう。

自社の規模が大きくなり、扱う事業が多岐にわたり始めた際も経営理念の再検討が必要でしょう。経営理念は定期的に見直し、自社にマッチした経営理念へとモデルチェンジを図ることで、さらなる飛躍につながります。

経営理念を浸透させる方法

経営理念は作成するだけではなく、従業員や関係者に知られていなければ指針として役目を果たしません。経営理念を効果的に浸透させる方法は以下の2つです。

経営陣や役員が直接話す場を作る

従業員が多く集まる会議やイベントなどで経営者が直接、経営理念を説明することが大切になります。経営理念の作成者から想いを伝えることで、従業員の当事者意識を形成し、より浸透しやすくなります。

社内の目の止まる位置に掲示することや社報などに掲載することも効果的でしょう。従業員が聞き飽きた、見飽きたとなるまで繰り返し伝えていくことが重要です。

人事評価制度に組み込む

人事評価制度に組み込むことで、従業員はおのずと意識するようになります。優秀で評価を気にする従業員ほど効果的な方法です。自身の評価に直結することであれば、主体的に理解しようとする社員の増加にもつながります。

企業の風土や文化によって適切な方法を選択しましょう。

経営理念がないとどうなる？3つのリスク

経営理念がないことで起こりうるリスクは以下の3つがあります。

目標に辿り着かない

経営理念は、企業の成長計画を含めた長期的な指針です。経営理念がないことで、最終的な目標が曖昧になりやすく、最悪の場合は目標に辿り着けない可能性が高くなります。

数字目標のみでは、知らぬ間に起業当初の理念から離れてしまうでしょう。従業員にとっても、数字だけを追いかける日々になり、モチベーションの低下にもつながります。経営理念があることで、常に目的地がわかっている状態になるため経営理念の制定が必須です。

企業の方向性が定まらない

経営理念がなければ従業員がばらばらの行動を取り、企業の方向性が定まらないリスクがあります。経営理念は、別々の人間である従業員が同じ方向を向くための指針です。

企業として目標する方向を言語化し、経営者の理念を従業員へ伝えることが重要です。しっかりとした経営理念があることで、たとえ日本全国どこで業務を行っていても、一貫した経営を行うことができます。

企業のイメージが崩れる

経営理念がないことで「よくわからない企業」「怪しい企業」のように、企業のイメージに悪影響が及ぼされる可能性があります。

企業のイメージを企業外へ定着させ、社外からの信用を得る意味でも経営理念がないことは大きなリスクとなります。

【経営理念を紹介】日本の有名企業5社

企業経営において重要な経営理念ですが、日本を代表する社会的な企業はどのような経営理念を掲げているのでしょうか。経営理念を作成する際の参考にしましょう。

1. トヨタ自動車株式会社

1. 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2. 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3. クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4. 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5. 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6. グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7. 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する

引用：TOYOTA基本理念

2. 株式会社ファーストリテーリング

ステートメント ─ Statement
服を変え、常識を変え、世界を変えていく

ファーストリテイリンググループのミッション ─ Mission
ファーストリテイリンググループは─
本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します
独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します

引用：FIRST RETAILING会社情報

3. パナソニックグループ

社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与

引用：パナソニック ホールディングス株式会社「パナソニックグループの経営基本方針」

4. ANAグループ

安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します

引用：ANAグループ経営理念

5. ソフトバンクグループ 

情報革命で人々を幸せに

引用：SoftBank Grooup経営理念

【経営理念を紹介】海外発の有名企業5社

海外発の有名企業も多くの企業で経営理念を掲げています。

1. スターバックスコーヒージャパン株式会社

OUR MISSION
人々の心を豊かで活力あるものにするために― ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから

OUR VALUES
私たちは、パートナー、コーヒー、お客様を中心とし、Valuesを日々体現します。お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化を作ります。
勇気をもって行動し、現状に満足せず、新しい方法を追い求めます。スターバックスと私たちの成長のために。
誠実に向き合い、威厳と尊敬をもって心を通わせる、その瞬間を大切にします。
一人ひとりが全力を尽くし、最後まで結果に責任を持ちます。
私たちは、人間らしさを大切にしながら、成長し続けます。

引用：STAR BUCKS JAPAN「Our Mission and Values」

2. amazon

Amazonは4つの理念を指針としています。お客様を起点にすること、創造への情熱、優れた運営へのこだわり、そして長期的な発想です。Amazonは、地球上で最もお客様を大切にする企業、そして地球上で最高の雇用主となり、地球上で最も安全な職場を提供することを目指しています。カスタマーレビュー、1-Click注文、パーソナライズされたおすすめ商品機能、Amazonプライム、フルフィルメント by Amazon（FBA）、アマゾン ウェブ サービス（AWS）、Kindle ダイレクト・パブリッシング、Kindle、Career Choice、Fire タブレット、Fire TV、Amazon Echo、Alexa、Just Walk Out technology、Amazon Studios、気候変動対策に関する誓約（The Climate Pledge）などは、Amazonが先駆けて提供している商品やサービス、取り組みです。

引用：amazon「Amazonについて」

3. Spotify

Spotifyのミッションは、大勢の才能あるアーティストやクリエイターが作品への対価を得るとともに、たくさんのファンがその作品を楽しみ、インスピレーションを受けることによって、人間のクリエイティビティを解き放つこと

引用：Spotify「企業情報」

4. Coca-Cola

Paint it Red！未来を塗りかえろ。

引用：コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社「企業理念」

5. Google

より多くの人々の、より良い毎日のために。

引用：Google

まとめ

経営理念は、企業の根幹ともいえるもので重要な役割を果たします。従業員のモチベーション維持や企業のイメージ付けでも非常に重要です。

経営理念を作成する際はポイントを抑えつつ、誰でもわかるような形で発信しなければなりません。従業員へ十分に浸透することで、経営理念を有効に活用することができます。

経営理念でお困りのことがあれば、専門家へ相談するのがおすすめです。比較ビズでは、複数の経営コンサルタント企業から無料で見積もりをとることができます。条件や価格はもちろん、自社の理想や思想に最もフィットする企業を選択することができます。まずはお気軽にご相談ください。

監修者のコメント

株式会社経営支援センター

代表取締役 高濱有志

東京都生まれ。大学卒業後、金融機関勤務を経て、税理士業界へ転職。長崎の税理士業界で16年の実務経験。その中で、のべ1,000社以上の決算業務に従事し、相続税申告も経験。顧客から事業承継やM&Aに関する相談及び業務が増加してきたことに合わせて、2015年に税理士法人から独立し、株式会社経営支援センターを設立、代表取締役に就任。事業承継支援・M&A支援を中心に経営コンサルタント業務を行っている。

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経営理念とは企業経営における目的・価値観であり、指針・指導原理です。会社や組織が何のために存在しているのか、どういう目的で事業を行っているのか、どのような考え方で行動するのかを明文化したものです。

・「道徳なき経済は犯罪であり、経済泣き道徳は寝言である」(二宮尊徳)
・「論語とそろばん」(渋沢栄一)
・「フィロソフィーとアメーバ経営」(稲盛和夫)

これらは共通して、経営やビジネスにおいては、正しい考え方と、強い経営手法の双方が重要であると述べています。「経済と道徳」「そろばんと論語」「アメーバ経営とフィロソフィー」ではないことに注意が必要です。

正しい考え方があり、その後にそれを実現する経営手法が論じられている点が共通していることであり、重要なことです。

また、経営理念を会社、組織文化にどこまで浸透させているかが課題です。会社、組織全体が価値観を共有すること。すなわち、経営幹部、管理職、社員全員が経営理念を理解している状態にする必要があります。さらに、全社員が経営理念を日々、実践している状態が望ましいです。

執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。