会社設立はだれに相談する?起業時に頼りになる専門家別の特徴も解説!

最終更新日:2023年05月15日
会社設立はだれに相談する?起業時に頼りになる専門家別の特徴も解説!
この記事で解決できるお悩み
  • 会社を設立するにあたってなにを準備すればいいか知りたい
  • どんな手続きが必要なのか知りたい
  • どの相談窓口を利用すればいいか知りたい

会社を設立するにあたってなにを準備すればいいのか?どんな手続きが必要なのか?だれかに相談したいと考えている起業家の方は少なくないはずです。

資本金が1円からでもOKなど、費用面でのハードルが下がったとはいえ、依然、会社設立には登記申請をはじめとした複雑な手続きや判断が求められるので、スムーズに会社を設立するには、専門家のアドバイスが必要不可欠です。

ではどんな専門家に相談すればいいでしょうか?そのような疑問を持つ方に向け、本記事では、会社設立の流れを簡単に解説するとともに、会社設立の専門家別の特徴も解説したうえ、手続代行を依頼できる専門家を含んだおすすめの相談窓口を紹介いたします。

会社設立の流れ

会社は、法律に定められた要件を満たし、法務局へ登記することによって成立します。どこの相談窓口を利用するにしても、まずは会社設立の準備から登記申請までの流れを大まかに理解しておくことが有益です。以下解説します。

1.会社の基本事項決定

会社設立の最初のステップは、どんな事業を展開する会社をだれが運営・経営していくのか?会社概要や基本事項を決定することです。この基本事項は、専門家へ相談することも可能ですが、最終的には起業する方が決定しなければなりません。

会社の基本事項となるのは下記の10項目です。設立する会社の形態に応じて、必要な項目は変わります。

  • 会社名
  • 所在地
  • 役員名(取締役・代表社員)
  • 役員の任期
  • 設立日
  • 事業の目的
  • 資本金の額
  • 決算日
  • 発行株式総数(株式会社の場合)
  • 株主構成(株式会社の場合)

2.定款の作成・認証

会社の設立時に必要となるのが、会社の基本事項や会社内の規定が記載された「定款」です。会社設立の次のステップは、決定した基本事項を元に定款を作成することです。

会社法によって定款に記載すべき事項は決められていますが、大きくは以下の3種類に分類できます。

項目 概要
絶対的記載事項 会社名・事業目的・所在地など、必ず記載が必要な5項目
相対的記載事項 現物出資・代表者の報酬など、定めることは任意だが、定めたならば必ず定款に記載しなければいけない項目
任意的記載事項 株主総会の議長など、定めることは任意で、かつ定めたとしても定款に記載しないでよい項目

作成した定款は法的に有効かどうか、公証役場の公証人から認証を受ける必要があります。場合によっては定款の修正が必要になることもあります。

なお、会社の中でも、合同会社、合資会社、合名会社等の持分会社を設立する場合は、例外的に公証人の認証を受ける必要がありません。

3.資本金の払込み

会社設立の次のステップは、定款に記載した資本金の払込みです。手続き的に大変というわけではありませんが、決めた出資額を通帳に記帳されるように払い込みをする必要があります。

資本金は、代表者自身の名義で代表者の個人名義口座に一度払込みしなければなりません。登記手続きの際には、資本金の払込みを証明するため、通帳のコピーも用意します。

なお、この資本金の払込みは、登記実務上、定款作成日よりも前に行うことも可能です。(令和4年6月13日付法務省民商第286号)

4.登記書類の作成

会社設立の次のステップは、登記申請するための「登記申請書」を作成し、申請に必要な書類を用意することです。

申請書、登記事項の記載された書面を作成するのはもちろん、認証された定款、資本金の払込みが分かる通帳のコピー、発起人の決定書、役員の印鑑証明書など、申請に必要な書類は多岐に渡ります。

5.登記申請

申請に必要なすべての書類を揃えたら、いよいよ登記申請です。登記申請は、本店所在地を管轄する法務局に対して行います。法務局に行って手続きもできますし、郵送や、オンラインでの手続きも可能です。

ただし、オンラインの場合には所定のソフトをダウンロードしたり、電子署名を用意したりする必要があるので、ご自身で手続きされる場合は難易度が高くなります。 申請から登記が完了するまでの期間は、1週間から2週間程度を見込んでおくとよいでしょう。

株式会社設立にかかる費用は?

登記を申請する際は、登録免許税等の税金や手数料が必要です。では会社設立するにあたってどのくらいの費用を見ておけばいいのか?株式会社を例にして紹介します。

項目 費用
定款認証手数料(公証役場)

50,000円(資本金が300万円以上の場合)

定款印紙代 40,000円(電子定款でない場合)
定款謄本代(2部程度) 約2,000円程度
登録免許税(法務局) 150,000円
合計 約200,000円〜

自力で会社設立する場合の相談窓口は?

定款の認証と登記の申請では手続きする場所が異なるうえ、必要な書類を揃えるために役所や金融機関に出向かなければならないなど、会社設立の手続きは煩雑であるのは事実ですが、会社設立の手続きを代表者自ら行うことは可能です。

会社設立の費用を少しでも抑えたい、あるいは自分の会社は自分で設立したいと考える方なら、自力での会社設立を検討しているかもしれません。そんな方が頼りにしたい、会社設立の相談窓口をいくつか紹介しておきましょう。

法務局の相談窓口

まずひとつめは、法務局が設置する会社設立の相談窓口です。完全予約制のため事前の申込が必要、相談できる時間が限られるなどの制限はありますが、登記申請書の記載方法を無料で詳しく解説してくれるのが最大のメリット。登記申請を受付ける法務局が対応するため、法律に準拠した確実なアドバイスが得られます。

ただし、事前審査の代わりになる、法的に有効か判断してくれる相談というわけではありません。もちろん、登記申請書の作成も自ら行わなければなりません。会社設立に関してある程度の知識を身に付けたうえで、わからない部分を質問するというスタンスが必要でしょう。

東京法務局の相談窓口はこちら>>
http://houmukyoku.moj.go.jp/tokyo/category_00020.html

大阪法務局の相談窓口はこちら>>
http://houmukyoku.moj.go.jp/osaka/300129toukisoudanshougyouhoujin.pdf

商工会議所・商工会

商工会議所や商工会などが、独自に会社設立の相談窓口を設置している場合もあります。たとえば、東京商工会議所では事前予約制の「創業・企業窓口相談」「専門家による窓口相談」を設置しているほか、格安で参加できる創業支援セミナーも開催しています。

会社設立の手順だけでなく、資金計画や経営計画などを相談することも可能。窓口なら相談料も無料です。法務局よりも手厚いサポートが期待できますが、申請書の作成や手続き自体は自身で進めなければなりません。

東京商工会議所の相談窓口はこちら>>
https://www.tokyo-cci.or.jp/entre/

東京開業ワンストップセンター

中小企業診断士に会社設立から資金計画まで、無料で相談できる施設が「東京開業ワンストップセンター」です。世界でもっともビジネスのしやすい街を目指し、国と東京都で設置しています。

運営する施設であるのが特徴。各省庁の担当者が常駐するため、定款認証、登記申請、税務署への届出など、会社設立に必要な手続きを1か所で済ませることができるのが最大のメリットです。

ただし、利用できるのは東京で起業する方に限られてしまいます。手続きを1か所で済ませられるメリットはあるものの、書類は自身で作成する必要があるのも法務局、商工会議所などと同様です。

東京開業ワンストップセンターはこちら>>
https://www.startup-support.metro.tokyo.lg.jp/onestop/jp/

自力で会社設立するには2か月程度が必要

相談できる窓口が存在するとはいえ、自力で会社設立するには準備・手続きはすべて自身で行わなければなりません。

東京都以外の起業家であれば、公証役場、法務局、役所、金融機関に出向く必要があるため、自力で会社設立するため少なくとも2か月程度が必要だともいわれています。

創業時の大事な時期を手続きで費やしたくない、それなら事業の準備や軌道に乗せるためのコネクション作りに集中したい、そう考える起業家の方なら専門家に会社設立の手続代行依頼を考えているかもしれません。

反面、資金が不足しがちな時期だけに、会社設立費用はなるべく抑えたいと考える方も多いでしょう。

専門家に依頼すると報酬が必要だが?

たしかに専門家に手続代行を依頼すれば、専門家への報酬が発生します。しかし、専門家に代行依頼すれば、会社設立ステップの「1」「3」以外、手続きに必要なステップの大部分を任せられます。

煩雑な手続きの大部分を任せられれば、その分だけ事業の準備に集中でき、会社設立までの期間を短縮できれば、早く事業をスタートさせられるでしょう。

また、ほとんどの専門家が電子認証の仕組みを保有しているため、定款印紙代の40,000円を節約できることもポイント。100,000円の報酬が必要な場合でも、実質60,000円で依頼できるのです。コア業務への集中、早期の事業スタートというメリットを考えれば、会社設立の専門家への相談がおすすめです。

会社設立を相談できる専門家は?

それでは、会社設立を相談するには、どの専門家に依頼すればよいでしょうか。真っ先に思い浮かぶのは、登記をはじめとした法律事務のスペシャリスト「司法書士」でしょう。

しかし、会社設立に携わることができる専門家としては司法書士以外にも「行政書士」「税理士」「社会保険労務士」が挙げられます。

なぜなら、会社設立に関連する手続きや業務は、登記以外にも多岐に渡るからです。専門家と一言にいっても、得意分野も異なれば、手続きや業務によってできることとできないことがあります。

  • 会社設立にあたってなにを重視したいのか?
  • どんなことを相談したいのか?

上記を踏まえ、適切な専門家を選定するのがポイントです。

会社設立に関連する各専門家の得意分野

そのためには、各専門家の得意分野、できること・できないことを知っておくことが重要です。それぞれの専門家が一般的に得意とする業務を挙げてみました。

得意な分野・業務
司法書士

登記申請、定款の作成など

行政書士 定款の作成、飲食店・建設業の許認可取得代行業務など
税理士 税務に関わる書類作成・届出、会計処理・融資を含む資金調達に関するアドバイスなど
社会保険労務士 労働・社会保険手続き、労務管理、助成金申請など

登記申請を代行できるのは司法書士だけ

それぞれの専門家は、国家資格を有しているという点では同じですが、資格に応じた「独占業務」が異なります。会社設立でいえば、定款の作成は司法書士・行政書士どちらにも依頼できますが、登記申請を代行できるのは司法書士だけです。

これは「登記の代行」が司法書士の独占業務だからです。どの専門家にも会社設立に関する相談をすることはできますが、登記申請の代行業務は司法書士に任せるほかないのです。

士業同士の提携で相談窓口を一本化できる場合も

許認可業務を行政書士事務所に依頼する一方で、会社設立を別の司法書士事務所に相談しなければならないかというと、そうとも限りません。ほとんどの事務所・法人は、士業同士が連携しているため、相談窓口を一本化できるケースが多いです。依頼内容に応じて新たな専門家を探さなければならない、といったことはあまり考える必要はないでしょう。

専門家の会社設立相談窓口:1. 司法書士

司法書士は、登記・供託・訴訟などの法律事務の専門家です。上述したように、会社の登記申請を独占業務として代行できるほか、定款の作成・認証、登記申請書の作成までをワンストップで依頼できます。

ただし、飲食業・建設業などの許認可業務は代行できません。ほとんどの業種での会社設立に対応できますが、許認可の必要な業種では別途、行政書士の力が必要です。

司法書士への相談がおすすめの方

許認可の必要ない業種で、会社設立を専門家に依頼したいと考える起業家の方なら司法書士への相談がおすすめです。

ただし、司法書士の中には、行政書士の資格も保有しているかたも多いです。そういった司法書士は会社設立に関する手続きを一貫してアドバイスができるでしょう。

専門家の会社設立相談窓口:2. 行政書士

行政書士は、官公庁などの行政に提出する書類の作成、手続き代行、相談業務などを独占業務とする専門家です。定款の作成、許認可の代行業務は行政書士の得意分野です。登記申請の代行業務はできませんが、逆に許認可業務は行政書士にしかできません。

行政書士への相談がおすすめの方

飲食店・古物商・建設業・運送業・介護業など、許認可の必要な業種の会社設立を準備する方なら行政書士への相談がおすすめです。会社として登記は済んでいるのに、許認可が下りずに事業開始が遅れてしまった、といったケースは珍しくないからです。

頻繁に改正される許認可関連の法律にも、行政書士なら最新の情報を元にした確実なアドバイスをしてくれます。

専門家の会社設立相談窓口:3. 税理士

税理士は、確定申告や決算などの「税務代理」、それに付随する税務書類の作成・相談などを請け負う税務の専門家です。

税務書類の作成・提出代行、毎月の会計処理、節税・融資の相談など、どちらかといえば設立後の手続き関連に力を発揮する税理士ですが、会社設立を相談することも可能です。

なかには、設立後の顧問契約を前提に、格安で会社設立をサポートする税理士事務所もあります。

税理士への相談がおすすめの方

会社設立後も、会計・税金などの財務面からの経営アドバイスが欲しいと考えている方なら税理士への相談がおすすめ。創業支援・会社設立に力を入れている税理士事務所なら、会社設立の費用も抑えられるでしょう。

ただし、その分顧問料、決算費用などを高額に設定している場合もあるため注意が必要です。税理士へ会社設立を相談する際は、トータルの費用で判断することがおすすめです。

専門家の会社設立相談窓口:4. 社会保険労務士

社会保険労務士は、労働・社会保険の手続き代行、助成金申請、労務管理などの業務を依頼できる専門家です。企業の経営資源のうち、ヒトに関する業務が中心となる社会保険労務士ですが、創業支援や会社設立をメインに据える事務所はそれほど多くはありません。

社会保険労務士に会社設立を相談できないわけではありませんが、税理士同様、どちらかといえば設立後の手続き関連に力を発揮します。

社会保険労務士への相談がおすすめの方

会社設立と同時に従業員を雇用したい、創業時に利用できる助成金を申請したいと考えている方なら社会保険労務士への相談がおすすめです。

雇用保険を含む労働・社会保険のスペシャリストである社会保険労務士は、助成金の申請を得意としている場合も多いからです。会社設立は自力でやりたいが、設立後の煩雑な手続きを任せたいケースにもおすすめできます。

まとめ

自力で手続きする場合、専門家に相談する場合を含め、会社設立時に頼りになる相談窓口を紹介してきました。しかし、会社は設立することがゴールではありません。目先の手続きだけにとらわれるのではなく、会社・事業の成長を見据えたうえで適切な専門家に相談することが重要です。起業・開業を専門にするコンサルタントも含め、幅広い視点で依頼先を見つけていくのがおすすめです。

とはいえ、多数の選択肢があるなか、依頼する相談窓口を迷ってしまうことがあるかもしれません。「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、士業も含む優良な起業・開業コンサルタントをスピーディーに探せます。複数の会社・事務所に無料で相談できるのもポイント。会社設立の相談窓口に迷うようなことがあれば、是非利用してみてください。

監修者の一言

会社設立の手続きは、手続き的な煩雑さもさることながら、会社法に関する知識も必要となります。昨今では、インターネット上に手続きの方法や書類のひな形が上がっており、自力でも手続きがしやすくなっております。

しかし、今後の展望やその企業形態によっては、しっかりと定款や役員・株主構成を検討する必要があり、ひな形や一般的な情報によって安易に設立手続きをしてしまうと、のちに問題となってしまう可能性もありますので、専門家のアドバイスを受けることをお薦めします。

窓口となる専門家は、誰に依頼しても、基本的には専門家同士の提携関係がありますので、手続き的に一貫して受付けてくれるところが多いと思います。

依頼する際は、一度面談等を受けてみて、法務、税務、労務について総合的にアドバイスができる専門家を選ぶとよいでしょう。専門家の専門分野のみしかアドバイスができない、あるいは手続きをただ代行するだけの専門家は、費用が安かったとしても長期的にみると損をしてしまうこともあるので、ご注意ください。

司法書士・行政書士事務所ビスポークオフィス
司法書士 富岡 淳
監修者

埼玉県出身。早稲田大学法学部卒業後、都内の司法書士事務所、弁護士法人及び司法書士法人にて研鑽を積み、独立。その他保有資格は、宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士、測量士補 等。これまでに家族信託、事業承継、遺言、会社法、信託契約書作成等に関するセミナー登壇実績あり。主に相続手続きや家族信託を中心とする生前対策コンサルティングを得意とする。

比較ビズ編集部
執筆者
比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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