MVP開発とは?ビジネスに取り入れる3つのメリットや種類、進め方を解説

最終更新日:2023年02月02日
株式会社GeNEE
監修者
代表取締役 日向野卓也
MVP開発とは?ビジネスに取り入れる3つのメリットや種類、進め方を解説
この記事で解決できるお悩み
  • MVP開発の概要や特徴とは?
  • MVP開発をビジネスに取り入れるメリットとは?
  • MVP開発の手順とは?

MVP開発(Minimum Viable Product)は今、最も成功しやすい新規事業のスタイルとなってきています。

これはアメリカシリコンバレーのノウハウですが、現在では世界中で共有され、概念としても浸透してきたと言えるでしょう。

この記事では、MVP開発の概要や特徴、ビジネスに取り入れるメリットを解説しています。MVP開発の進め方や失敗しないポイントも解説しているので、ぜひ新規プロジェクトでお悩みのビジネスパーソンは参考にしてください。

MVP開発とは

MVP開発の概要

MVP開発とは、顧客がその製品やサービスを必要としているかどうか検証するために、必要最低限の要素だけ開発をするという考え方です。「Minimum Viable Product」の頭文字を取ってMVPと呼ばれます

MVPの言葉が登場したのは、シリコンバレーで起業の方法論として紹介されたLean Startupの中です。 MVPは、開発の無駄を招かないマネジメント手法として紹介され、マネジメントの第2世紀と言われました。

MVP開発が活躍するシーン

たとえば、画期的なアイディアを発想し、新規事業としてプロジェクトを立ち上げたり、個人が起業したりするケースを考えてみましょう。 この場合、往々にして起こりがちなのは、情熱を傾けるあまり需要につながらない製品やサービスを思い込みだけで作り込んでしまうミスです。

それでも結果的に成功する事例がないとは言いませんが、フラッシュアイディアで本質が理解されないままプロジェクトを進めれば、大きな損失を招くリスクがあるのは事実です。

必要最低限の要素だけを開発して、仮説検証を何度も行いながらブラッシュアップしていくことで、結果的に無駄がない俊敏な軌道修正ができるでしょう。

MVP開発をビジネスに取り入れる3つのメリット

MVP開発をビジネスに取り入れるメリットは下記のとおりです。

MVP開発をビジネスに取り入れる3つのメリット

それぞれ詳しく解説していきます。

新規事業のコストや時間を抑えて仮説検証が行える

多々起こるケースとして、仮説に基づいて莫大な開発期間と開発コストをかけて作ったプロダクトが、まったく求められていないものになってしまうことが挙げられます。

MVP開発ではビジネスの方向性を探りながらプロジェクトを進めるので、都合の良い思い込みや理想を排除し、莫大な開発期間や開発コストをかける前に方向修正ができます。

具体的なフィードバックを早いタイミングで得ることができれば、プロダクト開発にも大いに役立つデータとなるでしょう。

新規プロダクトやサービスが確実に売れるものを作るための手段として、MVP開発をして仮説検証を繰り返すことが大切です。

ユーザーの反応を分析できる

短期間でアイディアをスピーディに形にし、顧客に提供することで反応を分析することが可能となります。

その貴重なリターンから、製品やサービスが本当にマーケットに受け入れられるかを判断し、もし狙ったような価値が生まれないなら撤退も視野に入れることが可能です。

足りない要素があれば足し、改善すべき部分があれば修正して再度顧客に提供するサイクルを繰り返すことにより、やみくもに製品化するより飛躍的に高い成功率を収めることができるようになります。

先行者利益を獲得できる

先行者利益とは、新たな市場に新製品をいち早く導入することにより得られるメリットのことです。

競合他社より新たな市場で早くサービスを提供することによって、顧客をいち早く獲得して「参入障壁」を築くことができます。価格競争をせずに自由な価格設定で販売できたり、認知度の高さから真っ先に検討してもらえたりと、有利な立場でビジネスを進めることができます。

後発者がユーザーニーズを分析して改良した商品を出すことで市場での支持を得る可能性があります。

MVP開発をする際は、製品やサービスによっては、戦略面で細心の注意をしましょう。

MVP開発の主な種類

MVP開発の主な種類は下記のとおりです。

  • スモークテスト|市場仮説
  • 手作業型MVP|価値仮説
  • プロトタイプMVP|価値仮説
  • 競合ツール応用|価値仮説

それぞれ詳しく解説していきます。

スモークテスト|市場仮説

スモークテストは、ユーザーにプロダクトやサービスのニーズがあるのか検証するテストです。プロダクトの開発をする必要がないものが多く、ユーザーが興味を持っているかすぐに検証できます。

主なスモークテストは下記のとおりです。

  • ランディングページMVP
  • デモ動画MVP
  • プレオーダーMVP

ランディングページMVP

ランディングページは、ユーザーの反応を検証するテスト方法です。プロダクトやサービスが正式に完成していない状態で、プロダクトやサービスの説明したサイトを制作します。

ユーザーがメルマガ登録や試作品を購入することで、ニーズの大小を測ることができます。さらに問い合わせサイトや質問ボックスなどを設けることで、価値に共感するユーザーからフィードバックを受けられます。

ユーザーからのフィードバックを検討することで、プロダクトやサービスの方向性の改善にもつながるでしょう。

デモ動画MVP

デモ動画を用いたMVPは、プロダクトやサービスの説明した動画を制作し、サービスに事前登録などをしてもらう方法です。

プロダクトやサービスが正式に完成していない状態でも問題はないのですが、デモ動画はユーザーに見えるフロントエンドをある程度制作する必要があります。

サービスを紹介する動画を用いたスモークテストを行なっていた有名な事例として、オンラインストレージサービスのDropboxが挙げられます。

ランディングページと比べて、デモ動画は必要な見た目を制作する必要があるために、制作費用がかかることがデメリットと言えるでしょう。

プレオーダーMVP

プレオーダーMVPとは、ローンチ前に登録や購入を募ることです。代表的なプレオーダーMVPはクラウドファンディングが一般的でしょう。

近年では、クラウドファンディングとデモ動画MVPを用いた手法が主流になりつつあります。

顧客が実際にプロダクトやサービスを購入しているために、リアルなサービスの需要を検証することができます。

手作業型MVP|価値仮説

オズの魔法使い型MVP

オズの魔法使いMVPは、通常はシステムで担保する部分を人力・手動で代替えする方法です。WEBサイトやアプリは、ユーザーの見える部分のみ制作し、ユーザーに見えない機能・処理などは全て人間が対応して検証をします。

たとえば、商品の購入の決済処理をCSVで手動管理していたり、旅行サイトで宿泊の予約が入ればホテル・旅館に予約の電話を入れたりと処理は人間が行います。

人間がシステムの一部を行うことで、開発コストを抑え、提供予定の製品サービスに提供価値があるのかどうかを確認することができます。

コンシェルジュ型MVP

コンシェルジュ型MVPでは、提供予定のサービス・製品と同じ成果を手作業で提供する方法です。製品の制作は不要なために、コストを抑えられるメリットがあります。

機械翻訳のサービスでは、コンピューターの代わりに人間が翻訳します。レビューサイトでは、自らレビューを集めてきて、ニュースレターで情報を提供することで、提供予定の製品サービスと同じ・それ以上の価値を顧客に提供できます。

コンシェルジュ型MVPは、ユーザーとのコミュニケーションで意見が吸い上げやすく、明日からでもローンチして価値仮説を検証できる即効性があるMVPです。

プロトタイプMVP|価値仮説

プロトタイプMVPでは、サービスに比重をのせ実際に動くものを開発し、ユーザーに利用してもらうことでフィードバックをもらう手法です。

プロトタイプによってサービスを具体化できるため、プロジェクト全体の認識のズレを軽減したり、目的次第でさまざまな仮説検証が可能です。

プロトタイプモデルは仕様変更ができますが、何度も変更を繰り返すと開発コストが大きくなり、プロジェクトの進行の妨げになりかねません。

他のMVPに比べコストが大きいため、予算が限られたプロジェクトではしっかりと仮説検証できるのか検討する必要があります。

競合ツール応用MVP|価値仮説

競合ツール応用MVPとは、検証したいことによって既存のツールや、既存のツールのカスタマイズをして代用する手法です。

動画サービスであればYou Tubeの一部機能と別のツールを組み合わせて使ったり、ECサイトであればShopifyでアドインを駆使すればマーケットプライス型も可能です。

競合ツールを応用する場合、有料プランを使用することで、コストが大きくなってしまう可能性があります。

プロトタイプを開発するのが難しい場合は、競合ツールを応用して価値検証を行なってみましょう。

MVP開発の進め方

MVP開発の進め方は下記のとおりです。

  1. 仮説を立案する
  2. MVPを制作する
  3. 検証をする
  4. 修正・改善をする

1. 仮説を立案する

まずは、検証すべき仮説を徹底的に絞り込み、ゴールを設定します。

「どうやれば最小限の努力で仮説を検証できるのか」を考えないといけません。

自身の感覚にとらわれず、仮説を可能なかぎり細分化にしてから思考をスタートさせることがコツです。

2. MVPを制作する

最小限の機能を最小限のコストで製品やサービスを開発します。

予約機能をGoogleカレンダー共有で代用したり、問い合わせはメールとSNSのDMで連絡したり、一旦メインでやりたい機能を優先させましょう。

UI/UXにこだわってしまうと、時間やコストがかかってしまうので気にしないようにしましょう。

3. 検証をする

制作したMVPを実際にユーザーに使用してもらい、製品・サービスに対して検証を行います。

SNSでテスターを募集したり、友人でプロダクトに興味を持ってくれている人に使ってもらうなど検証方法はさまざまです。

検証のフェーズでは、必ずユーザーからフィードバックをもらうようにしましょう。

どういった改善点があると嬉しいのか、お金を払う価値があるサービスなのか、有益なフィードバックをもらえるように質問項目は工夫はしましょう。

4. 修正・改善をする

検証で得たユーザーからのフィードバックをもとに追加機能の開発・実装や改善を繰り返します。

フィードバックの内容によっては、コンセプトの練り直しや全く新しいプロダクトを考える必要が出てくるでしょう。

プロダクトとサービスの方向性が誤っていなければ、1〜4をひたすら繰り返します。

MVP開発が不要なケース2選

完成形がほぼ100%見えているケース

成功確率が非常に高い、着手前から市場に受け入れられる算段があるという場合、MVPの段取りを踏むのは無駄になる可能性が高いです。 遠回りするよりダイレクトに進めたほうが早いですし、コストカットにもなります。

プロダクトやサービスの仮説を立案する際に、MVP開発にこだわらず、最適な手段を検討する必要はあるでしょう。

リターンを得て分析する環境がないケース

たとえば、インタビューでなんとなく「良いのでは?」という曖昧な肯定的意見だけで終わりにしてしまうのであれば、MVPのプロセス自体が無意味になるリスクがあります。

リターンの信頼性が高くなければ意味がありませんし、そこで十分な改善が行われないなら、確かにMVPは無駄な遠回りになると言えるでしょう。

MVP開発で失敗しない3つのポイント

MVP開発で失敗しない3つのポイントは下記のとおりです。

MVP開発で失敗しない3つのポイント

完璧を目指さない

MVP開発は、仮説→検証→改善を繰り返してユーザーに価値を提供を目指す手法です。完璧を目指すことで時間やコストがかかってしまい、逆に生産性が下がってしまう可能性があります。

サービスの生産性が下がってしまわないように、あらかじめ期限を決めることが有効的です。

プロダクトを作り込んだ挙げ句、誰も見向きもしないものを世に出してしまうことは稀にあります。

現時点で完璧なプロダクトにこだわらず、必要最低限な形でユーザーに提供し、検証するのが一番効率的な手法でしょう。

正確なフィードバックがもらえるように質問項目を工夫する

検証する際に、正確なフィードバックがもらえるように質問項目を工夫する必要があります。

ユーザーに漠然とした質問をしても、良いフィードバックが得られるとは限りません。どこを改良すればさらに使いやすくなるのか、ユーザーがどんな時にサービスを利用したくなったのかなど具体的な質問を用意するようにしましょう。

ただし、よりよいフィードバックをもらうためには、ユーザーとの信頼関係を築く事も大事です。ユーザーの不快な質問にならないように配慮するようにしましょう。

ユーザーニーズを正しく理解する

ユーザーニーズを正しく理解していなければ、効果的なMVPを開発することができません。

意味や価値がないMVP開発にならないように、ユーザーの課題解決やニーズを満たす目的から外れてしまわないようにすることが重要です。

MVP開発をして仮説検証を繰り返しているうちに、目的や方向性からズレてしまうこともあります。

ユーザーニーズを正しく理解することで、方向性を見失うことなく本当に受け入れられる製品へと昇華させることができるでしょう。

MVP開発でよくある質問

MVP開発とプロダクト開発は何が違うの?

アイディアをアウトプットして製品やサービスを開発するという行為そのものは、MVP開発でも通常のプロダクト開発でも変わりありません。

両者が異なる点は、仕様、コスト、時間です。

MVPは仮説検証に最低限必要な機能を搭載し、でき得る限り低コストで、短期間に仕上げられなければなりません。 削げる部分は極力削ぎ、最もアピールすべき骨子だけに特化することにより、仮説検証に十分な機能を実装することがポイントと言えます。

プロダクトはすべてにおいて十分なクオリティを有する必要がありますが、MVPに完成度は求めません。 MVPではコンセプトが受け入れられるのか、画期的と思えるそのアイディアはユーザーにどう映るのかなど、見るべき点が明確に見える開発を実行することが求められます。

MVP開発では不具合修正も必須なの?

検証内容や程度にもよりますが、MVPで提供したものに不具合があっても、必ずしも即修正しなければならないものではありません。 ユーザーに骨子が伝わればMVP開発の第一ハードルはクリアであるため、ユーザーに体験してもらいたい最低限必要な機能が問題なく提供できていれば良しとします。

重要なのはそのコンセプトが「アリ」なのか「ナシ」なのかです。

たとえば、なんらかのプログラムの場合、検証にクリティカルなバグでなければ必ずしも修正は実施しません。 これに対してプロダクト開発ではそのような対応は致命的になるため、徹底的にクオリティを上げる作業を行います。

MVP開発とプロダクト開発とではそもそも目的がまったく異なるため、MVPでは必要のない機能は削り、検証に関わらない品質上げは実施しないことが重要です。

MVP開発 まとめ

今回はMVP開発について紹介しました。

  • MVP開発とは、顧客が製品やサービスを必要としているのか検証するために必要最低限の要素だけ開発をするという考え方
  • MVP開発は、コストや時間を抑えてユーザーの反応が分析できるメリットがある
  • MVP開発の種類は主に市場仮説と価値仮説がある
  • MVP開発は仮説→検証→改善を繰り返すことでサービスをブラッシュアップしていく
  • ユーザーニーズを正しく把握し、完璧を目指さないことが失敗しないポイント

MVP開発は、新しいアイディアをもとに起業や新規事業スタートをする際、成功率を高めるために有効なアプローチ手段です。 何を検証したいのか事前に定義しきれていない場合は、いくらMVPを実施しても不発に終わるケースもあります。

また、必要最小限でなければならないところを、作り込みすぎて無駄なコストを費やすのも間違ったパターンです。 提供価値の定義をしっかり行い、必要最小限な機能を実装したMVP開発であれば、成功率を飛躍的に上げてくれる強い手段になるでしょう。

スピーディに作り、スピーディにユーザーに提供して検証することにより、プロダクト方針に活かせるデータを得ることができます。 仮説検証の精度を上げることが、事業を成功させるカギと言えます。

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監修者の一言

リーンスタートアップでの新事業開発において、ビジネスモデルの仮説検証にはリーンキャンバスやビジネスモデルキャンバスといったフレームワークがよく用いられますが、このようなツールを使い、ビジネスモデルをいくら組み立てても机上の空論になってしまいます。

ビジネスはお金を支払ってでも「このサービス/プロダクトを使用したい!」というペイン(痛み)を持つユーザーがファン化(継続利用)することで成立するものです。

そのため、ユーザーが忖度なしに使用したいと思うかどうか、仮説を構築し、検証する必要があります。今回は触りだけになりますが、新事業のアイデアがまとまった後、以下の観点で方向性を整理していくと良いでしょう。

・具体的な仮説
・新事業の目的
・仮説の検証方法
・必要なデータ、KPI(撤退基準の設定など)
・MVPに持たせる機能(キラーコンテンツ)
・MVP開発に必要なコスト(お金)
・仮説検証に必要な期間(MVPの開発期間含む)
・潜在リスク/顕在リスク
・仮説検証結果
・得たもの/課題

仮説検証後はこれらの情報やデータを基に新事業開発メンバーと議論し、MVPをプロダクト化すべきなのか、それとも撤退すべきなのか、判断します。

株式会社GeNEE
代表取締役 日向野卓也
監修者

東京工業大学環境・社会理工学院卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。MBA(経営学修士)取得。国内最大手SIerの株式会社NTTデータで大手法人領域(大手流通企業、大手小売企業)の事業開発、事業企画等の業務に従事。米国スタンフォード大学への研修留学を経て、システム/モバイルアプリ開発会社の株式会社GeNEEを創業。