アジャイル開発とは|メリットやデメリット・進め方と3つの開発手法を解説

株式会社ファイナイトフィールド
監修者
最終更新日:2023年04月25日
アジャイル開発とは|メリットやデメリット・進め方と3つの開発手法を解説
この記事で解決できるお悩み
  • アジャイル開発とはどのような手法?
  • 具体的にどう進めたらいいの?
  • ウォーターフォールとどちらを選択するべき?

アジャイル開発とはシステムの開発方法の1つです。代表的な方法にはアジャイル以外にウォーターフォール開発がありますが、近年は柔軟かつスピーディーに対応できるアジャイル開発に注目が高まっています。

この記事では、アジャイルでのシステム開発を検討している事業担当者に向けて、アジャイル開発のメリット・デメリットや進め方、成功事例などを解説しています。記事を読み終わった頃には、自社でアジャイル開発を導入するべきかどうかがわかるでしょう。

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アジャイル開発とは機能単位でシステム開発を繰り返す手法

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アジャイル開発とは、開発するシステムを機能ごとの小さい単位にわけて、単位ごとに以下のサイクルを繰り返すことで開発を進める手法のことです。

  1. 計画
  2. 設計
  3. 実装
  4. テスト

上記の1サイクルのことを「イテレーション」と呼びます。アジャイルの意味には「素早い」「機敏な」などがあり、スピーディーなシステム開発ができることが特徴です。

イテレーションごとに優先順位を付けて、重要な機能を先にリリースしながらシステム開発をおこなうことで、サービスインまでの期間を短縮できます。

開発工程で変更・修正が発生することを前提にした開発手法

従来の開発モデルと異なるアジャイル開発の特徴は、開発工程で変更・修正が発生することを前提にしていることです。

開発単位を機能ごとに細かく分割する理由には、唐突な仕様変更やバグの修正などに柔軟に対応できるようにすることが挙げられます。計画からリリースまでの工数を削減しながら、小規模なPDCAサイクルを回せるのが特徴です。

アジャイル開発の特徴は、移り変わりの激しい近年のビジネス環境に適合するため、注目が高まっています。

アジャイル開発の歴史

アジャイル開発の概念が公にされたのは2001年です。アメリカ、ユタ州に17名のエンジニアが集まり「アジャイルソフトウェア開発宣言」としてまとめられ「ソフトウェア開発とそれに基づく12の原則」が定義されました。

アジャイル開発は、クライアントニーズを最優先させ、プロダクトをより効率的に、より素早く開発することを目的として考えられた手法です。アジャイルの名のとおり、従来の開発手法に比べて素早く開発が進められる方法として登場しました。

ウォーターフォール開発との違いは?

日本でもっとも採用されている開発モデルに、ウォーターフォール開発が挙げられます。ウォーターフォール開発でも「要件定義、設計、開発、テスト、リリース」の工程を踏むのは同じですが、アジャイル開発と異なる主な特徴は以下の2つです。

  1. 「要件定義の段階でプロジェクト全体の計画を決定する」
  2. 「1つの工程が完了・検証できてから次の工程に進む」

上記以外にも、以下の違いがあります。

ウォーターフォール開発 ・プロジェクトを全体で1つのものとして捉える
・要件定義や計画を厳密に決めてから開発を始める
・プロジェクト全体を1つの単位として計画を進める
・すべての開発工程が終了してからリリースする
・基本的に要件の変更ができない
アジャイル開発 ・プロジェクトを機能単位で区切る
・大枠を決めた段階で開発を始める
・イテレーションによるサイクルを繰り返す
・機能が完成するごとにリリースする
・必要に応じて計画の変更をおこなう

ウォーターフォール開発のメリット

ウォーターフォール開発のメリットは、システム完成までの道筋を決めてから開発に取りかかるため、予算・スケジュールの管理をしやすいことです。大規模なプロジェクトや、要件が明確にされているプロジェクトに向いています。

ウォーターフォール開発のデメリット

ウォーターフォール開発のデメリットは、順番に工程を進めていくため、リリースまでに長い期間を要することです。基本的に前の工程に戻ることは想定されていないため、途中で変更・修正があると手戻りが発生する分コストが膨らみ、納期も遅れる可能性があります。

あらかじめ全体スケジュールを決定するため、手戻りする時間がないと判断した場合は、一部機能の開発見送りや段階リリースなども発生しやすいです。

アジャイル開発を採用するメリット

アジャイル開発を採用するメリットは、以下の3つです。

  • リリースまでの開発期間を短縮できる
  • 仕様変更に柔軟に対応できる
  • 理想のシステムを開発・構築しやすい

自社のシステム開発をアジャイル開発で進めるか迷っている場合は、メリットとデメリットをよく理解しておくことが大切です。ウォーターフォール開発との違いを踏まえ、下記で詳しく解説します。

リリースまでの開発期間を短縮できる

アジャイル開発のメリット1つ目は、リリースまでの開発期間を短縮できることです。アジャイル開発では、最初におおまかな計画を策定して、すぐにイテレーション実行に取りかかるため、リリースまでの開発期間を大幅に短縮できます。

アジャイル開発でもドキュメントは作成しますが、ウォーターフォール開発のように大量の文書を作る必要もありません。開発工数の削減や納期を短縮できるのも、アジャイル開発のメリットです。

ウォーターフォール開発の場合

要件定義でシステム全体の計画を立てるウォーターフォール開発は、設計・開発に取りかかるまでにも長い期間を要すことが特徴です。システム全体が完成してからリリースするため、開発期間は非常に長くなる傾向があります。

仕様変更に柔軟に対応できる

アジャイル開発のメリット2つ目は、変更・修正を前提とした開発モデルであるため、開発途中での仕様変更に柔軟に対応できることです。

小規模な開発サイクルを繰り返していく手法であるため、変更・修正の工数を少なくできるのもポイントです。イテレーションを繰り返すなかで柔軟に対応できるメリットがあります。

ウォーターフォール開発の場合

最初にシステム全体の仕様を決定するウォーターフォール開発では、開発段階で仕様変更が発生することで、設計からやり直す必要があります。変更がシステム全体に関連する要因であれば、すべてを見直さなければならないケースも考えられるでしょう。

理想のシステムを開発・構築しやすい

アジャイル開発のメリット3つ目に、理想のシステムを開発・構築しやすいことが挙げられます。機能ごとに細かく開発・リリースを繰り返すアジャイル開発は、イテレーションサイクルのなかでユーザー(クライアント)の意見を反映しやすいのが特徴です。

都度、プロジェクトの方向性を修正しながら開発を進められるため、ユーザー(クライアント)が理想とするシステムを構築しやすいでしょう。

アジャイル開発を採用するデメリット

アジャイル開発のデメリットには次の2つがあります。

  • スケジュール・工程管理が困難になりがち
  • 開発の方向性がブレやすい

アジャイル開発には、ウォーターフォールと異なるデメリットがあるため、どちらの開発手法のデメリットであれば自社で解決できそうかをよく検討しましょう。

下記で詳しく解説します。

スケジュール・工程管理が困難になりがち

アジャイル開発のデメリット1つ目は、スケジュール・工程管理が困難になりがちであることです。柔軟性を確保しながら高速開発できるメリットの反面、試行錯誤しながら対応する「場当たり」的なプロジェクトになる可能性があります。

解決法として、プロジェクトをまとめていくPM(プロジェクトマネージャー)の存在が不可欠です。他にも、チームで情報共有するためのマネジメントツール活用も必要となります。

アジャイル開発の経験が豊富で、ノウハウ・リソースを備えたシステム開発会社をパートナーとして選定することが重要です。

開発の方向性がブレやすい

アジャイル開発のデメリット2つ目は、開発の方向性がブレやすいことです。意見・ニーズを開発に取り入れやすいメリットがある反面、変更・修正を加えすぎるあまり、プロジェクトの方向性が大きくぶれる危険性があります。

方向性が見えなくなると、終着点が見えないまま延々と開発を継続する可能性があることも懸念点です。納期・開発コストが大きく膨らんでしまうことも考えられるため、方向性の軸がブレないよう意識する必要があります。

アジャイル開発での工程・進め方

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アジャイル開発モデルにも考え方の異なるいくつかの手法があり、一概に工程・流れを定義付けるのは困難です。それぞれの手法には以下の共通点があります。

  1. リリース計画の策定
  2. リリース計画の分割
  3. イテレーションの実行・反復

下記で詳しく解説します。

1. リリース計画の策定

アジャイル開発では、まずリリース計画の策定をおこないます。アジャイル開発の特徴は、開発工程で発生するであろう変更・修正を前提にしていることです。

最初から細かい内容を検討するのではなく、開発するシステム・ソフトウェアの概要となる「おおまかな仕様・要求」を決めることから始まります。

リリース計画は、ウォーターフォール開発をはじめとした従来開発モデルの最初の工程である「要件定義」に代わるものです。「要件定義」と「リリース計画の策定」の違いをみていきましょう。

要件定義とは

ユーザーのニーズを仕様として細かく定義書に落とし込むこと

リリース計画の策定とは

ユーザーの意図・ニーズを理解したうえで、簡潔に仕様・要求を決めること

要件定義は細かく仕様を決めるのに対し、リリース計画は変更・修正に柔軟に対応するため仕様を細かく決め込まないのが特徴です。

2. リリース計画の分割

リリース計画策定の次の段階は、リリース計画を分割する工程です。リリース計画で策定されたシステムの仕様・要求は、機能ごとに分割され、重要度・優先順位の高さに応じて開発に着手する順番を決めます。

リリース計画を分割する一般的な基準は「リリースまでにどのくらいの開発期間を要するのか」です。通常は、計画・設計・開発・テスト・リリースまで、1週間〜4週間で実行できる機能・要素に分割されるケースが多いでしょう。

大規模なプロジェクトでは、ユーザーニーズの大きさに従って、どのように計画を分割するかの検討も大切です。リリース計画の策定と同時に、仕様・要求に応じて計画を分割・割り振りしていく場合もあります。

3. イテレーションの実行・反復

機能ごとに開発の優先度が決定したら、次はイテレーションの実行・反復です。前述のとおり、計画、設計、実装、テストの工程を分割単位ごとに繰り返して開発を進めます。

アジャイル開発では、イテレーションの実行・反復により、システム全体が完成するまでPDCAサイクルを回していくことが特徴です。

ユーザー(クライアント)の意見を反映した変更・修正を、次のイテレーションに簡単に反映させられることもポイントです。企業担当者とシステム開発会社が連携し、方向性を修正しながら理想型に近づけていくことが可能です。

アジャイル開発3つの手法

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アジャイル開発のなかには、複数の開発手法が存在します。前述した「工程・進め方」のベースは変わりませんが、手法ごとに「どのように開発を実現させるか」の考え方が異なるのが特徴です。ここでは代表的な3つの手法を紹介します。

  • スクラム
  • エクストリームプログラミング(XP)
  • ユーザー機能駆動開発(FDD)

下記で詳しく解説します。

スクラム

スクラムとは、プロジェクトを遂行するうえで「開発チームの連携」に重点を置いたアジャイル開発モデルです。チームで動くところがラグビーの「スクラム」を連想させることから名付けられ、アジャイル開発ではもっともポピュラーな開発モデルだといわれています。

スクラムの特徴は大きく以下の2つです。

リリースごとにフィードバックを得るスタイルである 「スクラムオーナー」「スクラムマスター」を中心とした開発チームを結成。クライアントが提示する順番にスクラム(イテレーション)を繰り返し、リリースごとにフィードバックを得るスタイル。
開発チームはスプリント中に外部の指示を受付けない イテレーションのことをスクラムでは「スプリント」と呼び、開発チームはスプリント中に外部の指示を受付けないのが特徴。アジャイル開発に適した自律型開発チームを早期に形成できる。

エクストリームプログラミング(XP)

アジャイル開発のなかでも、仕様変更・要件追加への柔軟な対応に重点を置いた開発モデルが、エクストリームプログラミング(XP)です。主な特徴には以下の2つがあります。

クライアントである企業担当者もチームの一員として参加する 計画段階で開発機能を決定する工程に参加するのはもちろん、リリース後のレビュー・改善案、イテレーション中にも企業担当者が協働して開発に参加する。
スクラムのように固定した役割を設けない 全員参加・共有が開発チームの基本。クライアントである企業担当者もチームの一員として参加する。

ユーザー機能駆動開発(FDD)

スクラムやXPと比較して、もっともアジャイル(俊敏)の順位が低い開発モデルが、ユーザー機能駆動開発(FDD)です。アジャイルとウォーターフォールの中間的なモデルに属するのが、FDDの特徴だといえるでしょう。

FDDでは、イテレーションを開始する前にシステム全体のモデルを作成し、機能一覧にしたうえで分割計画を立案、イテレーションに移ります。スケジュール・工程のコントロールが難しいアジャイル開発の弱点を打ち消していくことを重視した開発モデルだといえるでしょう。

アジャイル開発のメリットを活かせるプロジェクトは?

アジャイル開発のメリットを活かせる主なプロジェクトは以下の3つです。

  • 新規事業を立ち上げる場合
  • Webアプリケーション・サービス・アプリを開発する場合
  • DX推進を促進する場合

システム開発手法に迷っている場合は、自社で検討しているプロジェクトが上記に当てはまるか確認する必要があります。以下で詳しく解説します。

新規事業を立ち上げる場合

アジャイル開発のメリットを活かせるプロジェクトの1つに、新規事業の立ち上げがあります。新規事業の立ち上げは、素早くスモールスタートさせ、顧客(ユーザー)の反応を見ながら成長させていく必要があるため、アジャイル開発がピッタリです。

新規事業の場合、立ち上げまでに時間がかかっていては、せっかくのアイデアも陳腐化してしまいかねません。アジャイル開発なら、柔軟性の高さを確保しながら素早く新規事業を立ち上げて改善していけるでしょう。

ウォーターフォール開発の場合

要件・仕様が確定しているプロジェクト、業務システムのリプレイスなどには、ウォーターフォール開発の方が向いています。たとえば、スケジュール・工程管理が難しくなりがちな大規模なプロジェクトには、アジャイル開発は向いていないでしょう。

Webアプリケーション・サービス・アプリを開発する場合

継続的な改善が求められるWebアプリケーション、サービス、アプリ開発では、アジャイル開発のメリットを存分に活かせます。

BtoC向けのWebサービスでは、クライアントの思惑とユーザーニーズが食い違うことは当たり前です。変更・修正に柔軟に対応するには、アジャイル開発が最適です。

DX推進を促進する場合

DX推進も、アジャイル開発のメリットを活かせるプロジェクトです。近年、日本政府がDXの推進を推奨していることから、各企業でもDX推進に関する取り組みを始めているケースが増えています。

DX推進では通常の業務システムの開発とは異なり、ニーズの不確実性や常に移り変わるIT技術に対応しなければなりません。柔軟で迅速なシステム開発が可能なアジャイル開発は、DX推進に向いています。

アジャイル開発を成功に導くポイント

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アジャイル開発を成功に導くポイントを2つ紹介します。

  • システム開発プロジェクトの目的を明確化する
  • 発注側の担当者も開発チームの一員であることを忘れない

下記で詳しく解説します。

システム開発プロジェクトの目的を明確化する

アジャイル開発を成功に導くポイントの1つ目は、システム開発プロジェクトの目的を明確化することです。アジャイル開発では、柔軟性・高速開発を両立させるため、仕様・要求をおおまかにしか決定しません。

システム開発プロジェクトの目的が曖昧にならないよう注意する必要があります。方向性をブレさせないためにも、チーム内で目的やゴールを逐一共有し合うことが大切です。

発注側の担当者も開発チームの一員であることを忘れない

アジャイル開発を成功に導くポイントの2つ目は、発注側(クライアント)の担当者もチームの一員であることを忘れないことです。スクラム・XP・FDDなど、採用する開発モデルによって多少は異なりますが、企業担当者も開発チームの一員であることを忘れてはなりません。

たとえば、スプリント中の開発チームには関与しないのがスクラム開発の特徴ではありますが、スプリントごとのレビュー・計画は企業担当者の仕事です。

小規模なPDCAサイクルを回して理想のシステムに近づけるためには、企業担当者が積極的に開発チームに関与する必要があります。システムを常にブラッシュアップしていく意識を持つことが重要です。

アジャイル開発の見積もりでおさえておくべきポイント3選

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アジャイル開発の見積もりでおさえておくべきポイントを3つ紹介します。

  • 理想と現実は分けて見積もる
  • 過去実績を参考にする
  • アジャイルと他のシステム開発手法の違いを意識する

下記で詳しく解説します。

理想と現実は分けて見積もる

アジャイル開発の見積もりでおさえておくべきポイントの1つ目は、理想と現実は分けて見積もることです。アジャイル開発以外でもいえることですが、プロジェクトを遂行するにあたり、当初の計画や予定を変更せざるを得ない事態が起きることはよくあります。

たとえば、以下の2つの場合です。

  • コロナで多くの企業がテレワークを導入することになり、プロジェクトがテレワークに変わったことで開発工数を見直す必要がある場合
  • ユーザーから要件の変更が発生した際、追加予算を確保するのか、要件を見直すのかなどの対応が必要な場合

上記をはじめとしたさまざまな事態に備えて、タスクの属人化を防いだり、スケジュールにバッファを持たせたりするなどの工夫が必要です。

過去実績を参考にする

アジャイル開発の見積もりでおさえておくべきポイントの2つ目は、過去実績を参考にすることです。アジャイル開発の見積もりをするうえで、過去の実績が1番信頼できます。

過去に似たような開発をしたのであれば、実際にかかった工数や、当初予定していた工数と実際の工数との乖離などを調査しましょう。

正確な見積もりを作成するポイントは、過去に起こった問題において、なぜその問題が発生し、どのように対策すればいいのかを考えることです。過去の資料を参考に、PDCAサイクルを回すことが得策となります。

アジャイルと他のシステム開発手法の違いを意識する

アジャイル開発の見積もりでおさえておくべきポイントの3つ目は、他のシステム開発手法との違いを意識することです。システム開発の手法が違えば、当然見積もりに対する考え方も違ってきます。

企業によっては、どのシステム開発においても同じ開発手法を採用している場合もあれば、プロジェクトごとに開発手法を変えている場合もあります。

後者の場合、ウォーターフォールをはじめとする他のシステム開発手法と同じような考え方で見積もるのは避けるべきです。見積もりに対する違いをそれぞれ解説していきましょう。

アジャイル開発

アジャイルでの見積もりは「ひとつの開発期間でどれだけの開発ができるのか」という視点で決めることが大半です。納期までにユーザーニーズを最大限引き出し、どのように高品質でリリースできるかに重きを置きます。

他にも、アジャイルの見積もりはリリースした後のユーザーの反応で変わることもあります。ユーザーの求めているものと違うとなると、再度開発〜リリースを繰り返すことに留意しましょう。

ウォーターフォール

ウォーターフォールはアジャイルとは違い、見積もりと実際にかかったコストに乖離があることは基本的に許されません。手戻りが発生しない前提で、すべての機能をいつまでに実装できるか、細かく工数を見積もります。

それぞれのタスクを細分化し、各タスクに納期を定めてスケジュールを管理し、計画していた工数を超えないように配慮することが特徴です。フレキシブルに対応できるかどうかが、ウォーターフォールとアジャイルの見積もりに対する大きな考え方の違いといえるでしょう。

アジャイル開発の見積もり手法「プランニングポーカー」とは

アジャイル開発の見積もりでは「プランニングポーカー」と呼ばれる手法が有名です。プランニングポーカーは、フィボナッチ数列が明記されたカードを利用します。

ユーザーの要求に答えられる規模感をチームメンバーそれぞれがカードを出した結果から「相対見積もり」を出していく方法です。

詳細な見積もり手順は、以下の3つの工程があります。

  1. 要件を確認する
  2. メンバー全員が各自の見積もりを数値で表す
  3. 全体で議論をし最終的な見積もりを決める

下記で詳しく解説します。

1. 要件を確認する

まずはじめに、ユーザーからどのような依頼が来ているのかをチームメンバー同士で共有しましょう。共有後は、メンバー全員が要件の理解ができたことを確認し、次の工程に進みます。

2. メンバー全員が各自の見積もりを数値で表す

要件を理解したら、どのくらいの見積もりが適切か、メンバー各自で自分なりの考えを踏まえて見積もりましょう。

プランニングポーカーでは、アジャイルチームの全員が、数値の書かれたカードの山を持っています。カードにはフィボナッチ数列(1・2・3・5・8・13・21・34・55……)が明記されています。

カードの点数は、ユーザーの要求に答える規模感を表しているイメージです。各自での見積もり検討ができたら、メンバー全員が割り出した数値をカードを見せながら発表し、なぜその数値を選んだのか意見を述べます。

3. 全体で議論をし最終的な見積もりを決める

全員の発表が終わったら、チーム内で協議がおこなわれます。カードの数値や各自の意見から見積もりに発生するギャップを埋めて、全員の意見が合致する見積もりを算出しましょう。

特に、見積もりの担当者が出す数値と実装担当者(SE)が出す数値では、ギャップが生まれやすいです。見積もりの期間が前後するとブレが発生しやすくなるため注意が必要です。

プランニングポーカーを用いることで、1人の意見だけではなくチーム全体で認識のすり合わせができます。相見積もりによって見積もりミスを減らし、正確な数値で見積もりできるのもメリットです。

アジャイル開発の成功事例

アジャイル開発の成功事例を3つ紹介します。

  • PayPalの事例
  • デンソーの事例
  • クラシルの事例

下記で詳しく解説します。

PayPalの事例

PayPalはアジャイル開発を導入したことで、うまくまわらなかった開発が円滑に進み、生産性が約29%向上、開発チームの規模が8%縮小することに成功しました。

アジャイル開発の特徴ともいえる顧客志向にシフトされたことで、製品開発のプロセスにおける責任分担と説明力を強化できた事例といえます。

参照:アジャイル開発で何が変わる?–PayPalなど導入理由や成功例

デンソーの事例

デンソーは安全運転を促進するために、リアルタイムで管理者にライブレコーダーの動画を連携する「フリートオペレーションサービス mobi-Crews」をアジャイルで開発しました。

デンソーでは通常バックエンドとフロントエンドで分けて開発するところを、あえて分類せずに開発を進めたことが特徴です。他にも、スクラムを採用することで常に取り組むべきことを明確化し、仕様が決まらないまま待ち時間が発生するケースをなくしました。

結果的に開発期間の削減へとつながり、アジャイル開発の採用が成功へと導いています。

参照:チームビルディングにおける工夫と実装の裏側

クラシルの事例

クラシルを運営するdely株式会社は、過去の失敗をもとに従来の開発体制を見直し、2018年の7月頃より要件定義をアジャイル化する「リーンなプロダクト開発」へと移行しました。

デザインと呼ばれる要件定義のフェーズにおいて「アイデア(解決策)→プロトタイプ→検証→ラーニング」というサイクルを回すことに。機能をリリースする前に「ユーザーに価値のある機能かどうか」を検証し、正しいアイデアの確度を高められるようになりました。

結果的にクラシルは2018年12月に累計1,500万ダウンロードを突破する成功をおさめています。

参照:要件定義もアジャイル化!「正しいアイデア」の確度を高める、リーンなプロダクト開発

まとめ

素早く柔軟に対応できるシステム開発方法に、アジャイル開発があります。本記事では、アジャイル開発の特徴や進め方、メリット・デメリットなどを解説しました。

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監修者のコメント
株式会社ファイナイトフィールド
代表 一好 俊也

2006年よりシステム開発を行う。ユーザビリティ重視のアジャイル開発を得意とする。大手監査法人に採用された翻訳支援アプリや教育用アプリ、EC サイト、顧客管理システム等の設計、開発を手掛ける。機械学習/AI を用いた開発も行っている。

ウォーターフォール開発とアジャイル開発では契約形態が異なることに留意してください。ウォーターフォール開発では一括請負契約、アジャイル開発では準委任契約が多く採用されています。

準委任契約はシステムの完成が契約上約束されていないため、発注者は二の足を踏むかもしれません。しかしながら、アジャイル開発には大きなメリットがあります。信頼の置ける開発会社を探すことが重要です。

アジャイル開発の9割以上がスクラムを採用していると言われています。1980年代に野中郁次郎と竹内弘高がスクラムという手法を最初に論文として発表しました。その後、1990年代にKen SchwaberとJeff Sutherlandがスクラムを定式化します。

この二人は2001年のアジャイルソフトウェア開発宣言の共同執筆者です。[スクラムガイド](https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf)をご覧ください。
[アジャイルソフトウェア開発宣言](http://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html)は日本語にも翻訳されています。
[アジャイル宣言の背後にある原則](http://agilemanifesto.org/iso/ja/principles.html)も必読です。

アジャイルソフトウェア開発宣言から20年以上経ち、アジャイル開発は大きな成功を収めてきました。VUCA world と言われる現代にアジャイル開発は不可欠な手法となっています。アジャイル開発を採用するプロジェクトがさらに増えることを願っています。"
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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