ストレスチェック制度とは?実施する目的や流れ・2つの注意点などを解説
- ストレスチェック制度とは?
- ストレスチェック制度の目的や対象事業者は?
- ストレスチェック制度の手順は?
ストレスチェックの制度とは、ストレス状態の結果を分析することで企業で働く人の中にメンタルの不調の有無を調べる検査のことです。本記事では、ストレスチェック制度における法的な問題や制度の有効性を知りたい事業者に向けて、制度の特徴や目的を解説します。
最後まで読めば、ストレスチェック制度の概要を理解でき、実施の流れや罰則が起きる条件などがわかります。ストレスチェック制度を実施する際の注意点や実施の流れを解説するため、ぜひ参考にしてください。
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ストレスチェック制度とは|従業員のストレスを把握する検査
ストレスチェックの制度とは、企業で働く人の中にメンタルの不調の有無を調べる検査です。労働安全衛生法により、2015年12月から労働者が50人以上いる事業所では毎年1回すべての労働者に対して実施することが義務づけられました。
ストレスチェックを実施することで、労働者の心理的な負担がどれほどあるのかを把握できます。フィジカルの健康診断と合わせ、メンタルの健康診断も実施しましょう。
ストレスチェック制度の目的
ストレスチェックの目的はストレスが高い労働者を早期発見し、適切な措置や職場環境の改善をすることです。
2017年の自殺者数は2万1,321人で8年連続減少傾向です。自殺者数の30.2%が30代〜50代の働き盛り世代であり、そのうちの12.5%が勤務問題を自殺の原因・動機としています。うつ病の生涯有病率は3%〜7%、推計患者数は104.1万人に上がっています。
自殺対策支援センターによると、自殺とうつ病の経済損失は年2兆7,000億円ともみられ、健康面や経済面からも見過ごせない水準でしょう。企業には、ストレスを最小限に抑える取り組みや社員が抱える問題に焦点を当てた解決支援の取り組みが必要です。
ストレスチェック制度の対象者
ストレスチェックは、年1回、従業員50人以上の事業所が対象です。50人未満の事業場の場合、報告義務はありません。
労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアルによると以下の条件にあてはまっている人が対象です。
- 期間が定められていない労働契約によって使用される者(期間の定めがあっても1年以上の使用が予定されている者)
- その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
ストレスチェックの実施は企業の義務です。厚生労働省は、制度を効果的なものとするため、すべての労働者がストレスチェックを受けることが望ましいとしています。
ストレスチェック制度に罰則はあるのか?
ストレスチェックを怠ると労働契約法違反にあたり、罰金を科せられる可能性があります。
50人以上の事業場において、ストレスチェック実施後に労働基準監督署へ報告しなかった場合、50万円以下の罰金が労働安全衛生法により定められています。ストレスチェック実施後に労働基準監督署への報告を怠ると同じく罰金を科せられる可能性あるため、注意が必要です。
ストレスチェック制度を実施する際の2つの注意点
ストレスチェック制度を実施する際の注意点を理解しなければ、ストレスチェックを実施した従業員に迷惑がかかる可能性があります。以下の2つを注意しましょう。
- プライバシーを守る
- 調査結果によって労働者が不利益を被らないようにする
それぞれ解説します。
1. プライバシーを守る
ストレスチェック制度を実施する際、従業員のプライバシー保護を考えたうえで行いましょう。従業員の精神状態を把握するための検査であるため、個人の敏感な情報に触れる可能性があります。
結果の管理とアクセスも厳重に制限し、必要な場合のみ限定的に閲覧できるようにしなければなりません。従業員の信頼を得るためにも、ストレスチェック制度の実施は、個人のプライバシーを最前線に置き、適切に管理と共有を行う必要があります。
2. 調査結果によって労働者が不利益を被らないようにする
ストレスチェック制度の実施では、結果を利用して労働者が不利益を受ける事態は避けましょう。ストレスチェックは労働者の健康維持と職場環境の改善を目指すもので、検査成果によって不当な扱いを受けることは許されません。
たとえば、高ストレスと判定された労働者を異動させる、その人物の昇進を阻む行為は行ってはいけません。ストレスチェック制度の結果を活用して、健康改善と職場改善のために、労働環境を振り返りましょう。
ストレスチェック制度の実施の流れ
ストレスチェック制度の流れは以下の9つです。
- 導入前の準備
- 調査票の配布・回収
- ストレス状況の評価・医師による面接指導の要否の判定
- 本人に結果を通知
- 本人からの面接指導の申し出
- 医師による面接指導の実施
- 就業上の措置の実施
- 集団ごとの集計・分析
- 労働基準監督署への報告
それぞれ解説します。
1. 導入前の準備
会社はメンタルヘルス不調の未然防止のために、ストレスチェックを実施する方針を示しましょう。ストレスチェック前に考慮すべき主な項目は以下のとおりです。
- 実施者の選定
- ストレスチェックの対象者や日時を明確にする
- ストレスチェックの質問内容を考える
- ストレスの基準を明確にする
- 面接指導の手順を考える
- ストレスチェックの保存方法
- 実施体制・役割分担を決める
話し合って決まったことを社内規定として明文化し、すべての労働者に内容を通知します。労働者には、ストレスチェックを受ける義務はないが、メンタルヘルス不調の未然防止のため、全労働者が受けることが望ましいことを伝えましょう。
2. 調査票の配布・回収
対象人数やスケジュールにあわせて、ストレスチェックを実施します。労働者のストレスチェック実施の確認は、労働者の同意がなくてもストレスチェック実施者から入手できます。
ストレスチェックは、厚生労働省がプログラムを無料提供しているITシステムを利用してオンラインでの実施も可能です。
調査票の回収は必ず実施者が行います。その際に第三者や人事権を持つ社員に内容を見られないように注意しましょう。
3. ストレス状況の評価・医師による面接指導の要否の判定
医師や看護師などの実施者がストレスの程度を評価し、高ストレスで医師の面接指導が必要な労働者を選びます。仕事のストレス要因やサポートの状況が著しく悪い労働者、ストレス反応の評価点数が高い労働者が基準になります。
詳しいストレス状況の評価は、厚生労働省の「ストレスチェック制度実施のマニュアル」を参考にしましょう。
4. 本人に結果を通知
ストレスの程度の評価結果や医師の面接指導の可否などは、実施者から直接本人に通知されます。ストレスチェックの結果は直接企業には返ってきません。
ストレスチェックの結果を入手するには、結果の通知を受けた本人の同意が必要です。本人の同意がなく、第三者に結果を漏らすことも法律で禁止されています。
5. 本人からの面接指導の申し出
実施者が個人のストレスチェック結果を本人に通知する際に、面接指導の対象であることを伝え、申し出るように伝えましょう。その後、労働者本人からの申し出があった場合のみ面接指導を受けられます。
面接指導を受けるかどうかは、勧奨を受けた本人の判断になります。会社では面接指導が必要と判断された労働者ができるだけ、面接指導を申し出せるような環境づくりが必要です。
申し出は、結果が通知されてから1カ月以内に行う必要があります。
6. 医師による面接指導の実施
ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされた労働者から申し出があった場合は、医師に依頼して面接指導を実施しましょう。
医師は、当該事業場の産業医、または、事業場において産業保健事業に従事している医師が推奨されています。面談指導を外注する場合は、産業医資格を有する医師が望ましいです。
面接指導は申し出があってから1カ月以内に行う必要があります。労働者が面接指導を受けやすい曜日や時間帯など環境を整える配慮をするようにしましょう。
7. 就業上の措置の実施
面接指導を実施した医師より、就業上の措置の必要性や内容の意見を聞き、労働時間の短縮や在宅勤務など必要な措置を行いましょう。
就業上の措置を決定する際に、労働者が勤務する職場の管理者の理解を得ることが必要不可欠です。事業者はプライベートに配慮しつつ、管理者に対して、就業上の措置の目的や内容などの理解が得られるように説明しなければなりません。
医師からの意見聴取は、面接指導後1カ月以内に行うようにしましょう。
8. 集団ごとの集計・分析
実施者は本人に同意をもらってから、企業に検査結果を提供します。企業は実施者に検査結果を一定規模の集団(部・課など)に集計・分析したうえで、結果を提供してもらいます。
集団分析は制度的に努力義務とされていますが、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐ、1次予防の観点から重要視されつつあるでしょう。検査結果から、組織特有のストレス傾向を読み取り、組織独自のストレス対策を講じることが重要です。
- 職場環境の分析と評価
- ストレス要因の抽出と対策の立案
- 対策の実行
- 対策の評価と改善
上記のPDCAサイクルがうまく回るまで、制度的なブラッシュアップが必要です。快適な職場作りや活力ある人材育成は経営課題です。集計・分析結果を踏まえて、職場環境の改善を行いましょう。
9. 労働基準監督署への報告
面接指導の実施後に、事業者はストレスチェックと面接指導の実施状況を労働基準監督署への報告しなければなりません。ストレスチェックを複数回にわたって実施した場合は、最終月を記載します。
報告様式は、決められた様式を使用しなければなりません。厚生労働省のホームページに掲載されています。ストレスチェック実施後は忘れずに労働基準監督署へ報告するようにしましょう。
まとめ
ストレスチェック制度の特徴や目的、対象者などを解説しました。ストレスチェックを実施することで、労働環境や従業員の状態を把握できるため、会社にとってもメリットがあります。
ストレスチェックを実施するにもリソースが必要となり、人事担当者の負担も大きくなるでしょう。リソースがない場合は、経営コンサルタントに相談するのも方法の1つです。
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大学卒業後、国内金融機関にて人事総務部門配属。以後、大手グローバルコングロマリット企業や老舗外資系企業の人事部門において、通算30年以上にわたり多様な経験を積む。企業の買収合併による統合インテグレーションも3度経験。小規模同士の合弁など、早期統合効果を狙う際の計画策定、実行の支援にも強みがある。
2015年に労働安全衛生法が一部改正となった背景には、社会的に大きな問題となった自殺者の増加、とりわけ、労働者としてもっとも働き盛りの世代に、負荷がかかることにより、大きな社会的損失を防ぐことを狙いとしていたことがあげられます。
特に、日本においては、先進7か国の中でも最も自殺率が高いといわれており、ここ数年、減少傾向が続いているとはいえ、女性や若い世代の自殺が高止まりしていることも新たな問題として掲げられています。
近年、新型コロナウィルスの蔓延により、オフィスを離れてオンラインやテレワークによる労働に従事する方が増えましたが、こういった労働者に対するメンタルケア対策も急務と言えるでしょう。
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