BPM(ビジネスプロセスマネジメント)とは?その目的と特徴・メリットを解説!
企業が利益を安定的に出し続け、かつ利益率を上げていくためには、業務の効率化が欠かせません。しかも、一度業務の見直しをすればいいということではなく、定期的に自社内の業務フローを分析し改善していくことが肝心です。その点で、業務改善をより正確かつ効率的に行う手法として、ビジネスプロセスマネジメントというコンセプトがあります。業務改善の手法はいろいろなものがありますが、国際的に利用されていて実績を挙げているものですので、活用できるようにしたいものです。
そもそもビジネスプロセスマネジメントとは?
まず、そもそもビジネスプロセスマネジメントとはなにか?という点を知る必要があります。これは、各部門で実施されている業務のやり方、システムを分析し組織するという業務管理手法のことを指します。
部門ごと、もしくはプロジェクトごとの細かなプロセスの改善から、会社全体のシステムの改善を図ることを目的とします。短期的な改善というよりも、企業の長期目標に関わるもので、より大きな面での業務改善を図っていきます。
業務プロセスの問題点を見つける
ビジネスプロセスマネジメントを行っていく上で、一つのポイントとなるのが、業務プロセスの中に隠れている問題点を見つけ出すということです。一連の業務の流れの中で、その流れを滞らせている要因がないか、商品もしくはサービスの価値を下げるような問題がないかをチェックします。
この業務プロセスの流れを潤滑にすることによって、一度プロセスが回りだしたら効率よく社員が作業できるようになります。
PDCAサイクルを洗練させる
PDCAサイクルとは、「Plan・Do・Check・Act」つまり、計画から実行、評価、改善までの業務における手法を指します。ビジネスプロセスマネジメントを適用することによって、よりこのPDCAサイクルが機能するようになります。
特に問題点の洗い出しと、その要因を排除もしくは改善することによって、サイクルの流れがよりスムーズになるのです。どの会社でもPDCAサイクルを意識して、何らかの施策を採っていますが、どこかでつまずいてしまうことがよくあるものです。
そこで、ビジネスプロセスマネジメントを利用することによって、サイクルを常に無理なく回せるように助けます。
ビジネスプロセスマネジメントを行うメリット
ビジネスプロセスマネジメントを実施するにはたくさんのメリットがあります。そのメリットを理解し、積極的に企業内で取り入れていくことができます。
業務効率を意識するようになる
現場の社員や管理職は、毎日の業務に追われて業務効率というものを意識できないでいることが多いものです。そこで、会社全体としてビジネスプロセスマネジメントを適用することによって、社員が業務効率を意識できるようになります。
単に与えられた仕事をこなしていくだけでなく、どこに改善する余地があるのか、どうしたらもっと価値のある商品やサービスを提供できるかを考えるようになるのです。ビジネスプロセスマネジメントには、物理的な益もありますが、社員の意識改革という点でも大きな効果を生み出すのです。
部門間の連携がスムーズになる
一つの部門内での作業はスムーズなのに、他の部門が関わると途端に効率が悪くなるというのはよくあることです。これは、部門間の連絡や業務推進のシステム自体が良くないためです。
こればかりは、一つの部門だけが改善のための努力を払っても、なかなか良くなりません。そこで、全社において、ビジネスプロセスマネジメントを適用することによって、どこに問題があるのかを知り、公平な形での改善ができるようになります。
商品価値が上がる
ビジネスプロセスマネジメントは、単に社員がより働きやすくなるという目的で行うのではありません。最終的には提供する商品やサービスの質、もしくは価値を向上させるということにあります。
業務プロセスに何らかの問題があると、どうしても商品の質が下がる傾向があります。そこで、ビジネスプロセスマネジメントを実行することによって、より正確かつスピーディーに商品やサービスを提供できるようになります。
働きやすさや利益率が増すと同時に、商品価値自体もアップするのです。
社員の負担を減らせる
業務プロセスやシステムそのものに問題があると、苦労するのは実際に作業をする社員です。より長い時間働くことになりますし、精神的にもイライラすることもあります。
そこで、より無駄のないシステムや業務の流れを構築することによって、社員が働きやすくなります。作業効率が上がるだけでなく、メンタル面でのサポートにもなるのがビジネスプロセスマネジメントの良いところです。
客観的な分析と改善ができる
業務改善というのは、どの会社でも行っていることです。しかし、幹部や経営陣の独自の見方や先入観が入ってしまい、なかなか効果的な改善が図れないというケースは多いものです。
しかし、ビジネスプロセスマネジメントでは、すでに決まったスキームがあり、それに基づいてモニタリングや分析、改善案の立案をしていきます。そのため、より客観的で恣意的な見方を排除した管理ができるようになるのです。
その結果、今まで手を着けられていなかったような分野での改善や、些末な点と思っていたところにも問題を見つけられるようになるのです。
本質的な問題点の洗い出し
ビジネスプロセスマネジメントは、個々のプロジェクトをチェックするだけでなく、部門全体さらには企業全体の業務システムのチェックもします。そのため、現場の一部分に起こっていたと思われていた問題が、実はシステム全体の構造によるものであるという結論に至ることがあります。
いわば対症療法をするだけでなく、本質的な問題の洗い出しと改善を図れるようになるというのは大きなメリットです。それにより、大きな構造変化を起こすことも可能だからです。
ビジネスプロセスマネジメントの流れ
具体的にビジネスプロセスマネジメントがどのような流れで実行されていくのかをチェックしてみましょう。時系列順にまとめると以下のようになります。
- 業務プロセスの可視化
- 分析
- 設計
- 実行
- モニタリング
- 改善
それぞれのプロセスがどのような形で行われるのかも同時に見ていきましょう。
業務プロセスの可視化
それぞれの部門もしくはプロジェクトでの業務、部門間の連携などがどのような形で行われているかを、チャートフローなどの形で表します。こうしてそれぞれの業務を可視化することで、業務の流れを把握しやすくします。
問題点を見つけるに当たっては、まず業務プロセスをきちんと理解することが重要です。そのために、分かりやすい形で可視化するというのは大きな意味を持ちます。
分析
業務の全体の流れやそれぞれのプロジェクトの業務手法を、細かくチェックしていきます。どこで業務の流れが滞ってしまうのか、部門間のコミュニケーションが取れているかなどをチェックします。
こうすることで、現状見られる問題点を洗い出すことができます。個々の部門での細かな問題点だけでなく、全体的なシステム構造に問題がないかと、様々な角度で見ていくことが肝心です。
設計
問題点を確認して、その部分を改善するためのプロセスの設計をします。流れが滞っているところを直すために、特定の業務のやり方を変えたり、サポートツールの導入をしたりするなどの改善策を図れます。
こうして設計し直したプロセスは、再びフローにするなどして可視化し、実行しやすいようにします。また、可視化途中で改善点をさらに見つけて練り直していくこともあります。
設計作業においては、それぞれの業務にかかる時間やコストを計算して、ある程度の効果を予測することも大事です。そのための、専門ツールがありますので、シミュレーションのために活用することもできます。
モニタリング
設計し直した業務プロセスを実際に適用して、存在していた問題が解消されているかをモニタリングします。この際、作業時間の短縮やコスト、製品のロス率など、具体的な数値で新旧のプロセスの比較ができるようにします。
データでの比較と同時に、実際に現場で働く社員へのヒアリングを行うのも有効な手段です。改善策によって、作業がしやすくなったと感じるか、他部門との連携が取りやすくなったかなどを聞きとり、その効果を確認することができるからです。
こうしたモニタリングを行うにあたっては、専用のデータ収集・解析ツールを使うこともできます。より効率よくモニタリングができて、結果を把握しやすいというメリットがあります。
改善
業務プロセスの再設計をして実行しても、一回ですべての問題点が解消されるわけではありません。実際に改善案を実行し、そこからさらに向上できる点を探しつつ改善を続けるという作業が必要なのです。
そのため、モニタリングをしながら、さらに改良を加える点があるかをチェックすること、再設計した部分が思った通りに機能しているかを確認します。一回でうまく行くことはそうないという意識を持って、改善を続ける姿勢を採ることがポイントです。
ビジネスプロセスマネジメントを成功させるポイント
ビジネスプロセスマネジメントは非常に有効な手法ですが、ポイントを押さえて実行しないとあまり効果が出ないこともあります。その成功のためのポイントをきっちりと把握して、実行していきましょう。
プロセスをしっかり守る
ビジネスプロセスマネジメントは、決められたプロセスがあり、それに従う時に効果を出します。そうすることで、客観的に問題点の把握や改善点の発見ができるからです。
それぞれのプロセスの中に、実行者の恣意的な見方や慣習に基づいた判断を入れないようにしましょう。そうなると、なかなか旧態依然とした業務のやり方から抜け出せなくなってしまいます。
こうした客観的な分析と判断をするために、自社でビジネスプロセスマネジメントをするのではなく、第三者に依頼するという企業もあります。その方が、より冷静な分析ができるからです。
それぞれのプロセスをモデル化する
業務の流れの把握にしても、改善点の共有にしても、誰もが分かりやすいようにモデル化することは大事です。単なるポイントの箇条書きや説明書きでは、イメージをつかみづらいことが多いものです。
しかし、チャートやフロー、イラストなどにして、それぞれのプロセスを視覚化することによって、より分かりやすい説明ができます。それによって、問題点の洗い出しがしやすくなりますし、改善点を見つけるのも楽になります。
さらに、経営陣に説明したり、実際に適用する現場の社員に理解を求めたりする時も、より理解を得やすくなります。
PDCAサイクルを回し続ける
ビジネスプロセスマネジメントは、一度限りの作業で終わっては効果が限定的になってしまいます。継続的にチェックと分析、改善を繰り返していく必要があるのです。
そのためにも、PDCAサイクルを常に回し続けるというのは、ずっとビジネスプロセスマネジメントの効果を出すために重要です。日々の業務の中でも、これを意識することで、より無駄のない業務が可能となります。
専用ツールを利用する
業務フローの可視化、モニタリングの際のデータ解析などをサポートするいくつもの専用ツールがあります。こうしたツールを利用することで、よりスムーズにそれぞれの作業ができます。
また、担当者がデータを動かしたりできなくなりますので、徹底した客観視ができるというのもメリットです。たくさんのツールがありますので、自社のやり方にマッチしたものを選びましょう。
ビジネスプロセスマネジメントをする上での問題点
実際にビジネスプロセスマネジメントを導入、施行するに当たって壁となるものがあります。それを事前に押さえておき、確実に効果を出せるビジネスプロセスマネジメントを適用しましょう。
導入そのものへの反対
日本において意外と多いのが、ビジネスプロセスマネジメント導入そのものへの反対です。今までこれでやってきたのだからと、業務のやり方の変革を好まない人が経営陣にいると起こりがちです。
この意識改革をすることから、ビジネスプロセスマネジメントの成功が始まります。
先入観
問題点の洗い出しや再設計の立案において先入観が入ると、かなりの確率でビジネスプロセスマネジメントは失敗します。もともとビジネスプロセスマネジメントは、客観的かつ冷静に問題を浮き彫りにし改善していくためのものです。
すでに存在するモニタリングや分析などの手法を、感情を入れずに実行して、結果を素直に受け入れましょう。
まとめ
ビジネスプロセスマネジメントは、現状の業務プロセスの分析と再設計、改善の継続という形で行っていきます。それにより、客観的に問題点を浮き彫りにして、本質的な問題を含めて業務システムそのものを改善することができます。
ビジネスプロセスマネジメントを成功させるためには、そのプロセスをしっかりと守り、恣意的な見方を入れないことが大事です。企業の経営そのものを向上させるためにも、積極的に導入したいものです。
2009年:(株)リクルートに新卒で入社。営業部署・企画部署にて責任者を務める。(在籍中は、MVPやマネジメント賞など、多数受賞。)2013年:(株)データX(旧:フロムスクラッチ)の創業期に転職。営業や新卒・中途採用の責任者を務める。2014年:アソビュー(株)に転職。その後、営業責任者、新規事業責任者、事業企画を歴任。2015年:(株)Pro-D-useを創業。取締役副社長(現任)に就任。新規事業の立上げ〜収益化、成果を上げる営業の仕組み作り、採用〜組織の構築、Webマーケティングを主軸とした売れる仕組み作り、業務システムの導入・運用、融資を中心とした資金調達〜財務のコンサルティングを得意としている。また、個人でも中小企業の融資を支援するサービス「中小企業の融資代行プロ.com」を運営するなど、一貫して中小企業を支援することを生業にしている。

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ビジネスプロセスマネジメントの実施には、非常に大きな時間や手間が必要です。しかし、それだけ大掛かりな見直しをした結果、得られる果実はとても大きいのも事実です。
そのため、せっかく取り組むのであれば「限られた分野・部門」だけでなく、可能な限り大ききな枠である「会社全体」「事業全体」に対して実施することをおすすめします。その時によく陥りがちなのは、
・「分析して終わり」
・「単発で業務改善して終わり」
・「システムを導入して終わり」
という事象です。ビジネスプロセスマネジメントの実施後は、しっかりその後も追いかけて(モニタリング)、改善をし続けましょう。なぜならば、だいたいの場合、新しい運用を始めた後で、さらに新しい課題が表出し、それを改善して初めて大きな果実を受け取れることが多いものです。
そのため、諦めず、面倒くさがらずに、運用開始後も「運用のKPI設定」と「モニタリング」、また「改善」を継続しておこないましょう。