フルスクラッチ開発とは?開発のメリット・デメリットと2つの活用事例を解説

 株式会社ラテラルリンク
監修者
株式会社ラテラルリンク 代表取締役 岩井昌弘
最終更新日:2023年11月29日
フルスクラッチ開発とは?開発のメリット・デメリットと2つの活用事例を解説
この記事で解決できるお悩み
  • フルスクラッチ開発とはどのような開発方法?
  • フルスクラッチ開発のメリット・デメリットは?
  • フルスクラッチ開発の活用事例は?

フルスクラッチ開発とは、既存のパッケージやシステムを活用せずに、いちからシステムを開発する方法です。顧客の要望をくみ取り、システムの運用・保守まで、自社で最適化できます。

本記事では、フルスクラッチ開発の概要と開発のメリット・デメリット、活用事例を解説します。フルスクラッチ開発のよくある質問もまとめました。記事を読み終わる頃には、フルスクラッチ開発を理解し、必要に応じてシステム構築に活用できるでしょう。

「フルスクラッチ開発の概要を知ったうえで必要性を検討したい」エンジニアの方は、ぜひご覧ください。

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フルスクラッチ開発とは

フルスクラッチ開発の概要を、下記にまとめました。

  • フルスクラッチ開発はいちからシステム構築をする開発方法
  • フルスクラッチ開発とパッケージ開発の違いは既存システムがあるかないかの違い

フルスクラッチ開発はいちからシステム構築をする開発方法

フルスクラッチ開発とは、何もない状態からシステムを構築する開発方法です。顧客の要望をヒアリングし、運用・保守までワンストップでサービスをしたい場合に向いています。

大手のECサイトは、社内管理の内製化のために、ソースコードを管理できるフルスクラッチ開発で製作されていることが多いです。

システムのブラックボックス化を避けたいときは、フルスクラッチ開発を検討してみましょう。

フルスクラッチ開発とパッケージ開発の違いは既存システムがあるかないかの違い

フルスクラッチ開発とパッケージ開発の違いは、標準化された既存のシステムが開発環境に存在するかの有無です。

システム構築をする際に、顧客の要望内容の粒度から、フルスクラッチ開発かパッケージ開発かを検討します。

サイトのデザインや装飾にこだわりのある要件の場合、既存のシステムで対応できない場合が多いため、フルスクラッチ開発が必要になるでしょう。

パッケージ開発とは?

顧客の要望に応じて、既存のパッケージから機能を追加したり、修正したりする開発方法です。すでにパッケージがあるため、製作コストがおさえられる面でメリットです。

フルスクラッチ開発の流れ

フルスクラッチ開発の流れを各工程でまとめました。

  1. 要件定義
  2. 基本設計
  3. 詳細設計
  4. 製造
  5. 単体・結合・総合テスト
  6. リリース・保守・運用

フルスクラッチ開発は「ウォーターフォール型」の流れで開発しますが、ほかの開発よりも細かい工程があります。注意しておさえましょう。

1. 要件定義

フルスクラッチ開発の要件定義は、以下のポイントに着目しましょう。

  • 必要な機能か省いてもいい機能か判断するために顧客に対して詳細なヒアリングをする
  • 要望に応じた機能の作成優先度をまとめる
  • 機能構築にフルスクラッチ開発が本当に必要か検討する
  • 顧客が提示した予算でフルスクラッチ開発ができるか算出する
  • 顧客が提示した納期までにいちからシステムを開発してリリースができるか逆算する
  • 人材を確保し、各工程にバッファをもたせてスケジュールを試算できるか検討する

要望内容がフルスクラッチ開発のみでしか対応できない場合は、要件定義の実施がパッケージ開発の倍以上になります。

顧客の要望をすべて受け入れると、開発時間とコストが膨大になるため、注意深くヒアリングをして要件定義しましょう。

2. 基本設計

基本設計では、フルスクラッチ開発に必要なソフトウェアやハードウェアを考えて選定します。

また、システムのボタン配置やデータ受け渡す際に、どのように遷移させるかを概要レベルで設計案を考えます。設計案が定まったら、基本設計書(方式設計書)を作成し、顧客のレビューが必要です。

基本的な機能をすべて設計し、顧客にレビューしながらブラッシュアップする大切なフェーズのため、工数は多く見積もりましょう。

3. 詳細設計

詳細設計は基本設計書をもとに、以下の設計をおこないます。

  • ソフトウェアインターフェースの設計
  • データベースでデータを受け取るときと受け渡すときのデータ型の設計

各機能ごとに、ソフトウェアインターフェースとデータベースのデータ型の設計を、詳細設計書に作成し顧客にレビューしてもらいます。レビューの指摘によっては、基本設計の見直す必要があるため、工数は多めに見積もりましょう。

4. 製造

基本設計書と詳細設計書をもとにして、コーディングしていきます。フルスクラッチ開発は、いちからコーディングをするため、設計した機能面が理想通りにできない場合が多々あります。

その場合は、顧客を交えて要件定義から詳細設計まで一部見直しと顧客のレビューが入るでしょう。製造は問題がなければ、各工程の工数と比較して時間はかかりませんが、問題の粒度によっては時間を要するため注意しましょう。

5. 単体・結合・総合テスト

フルスクラッチ開発の場合は、以下の3種類のテストをします。

  • 単体テスト
  • 結合テスト
  • 総合テスト

単体テストでは「各ボタンの動作確認」結合テストでは「各項目機能の動作確認」をします。総合テストではシステム全体の動作を確認し、動作が正常であればシステム構築は完了です。

問題があれば、製造から設計にさかのぼって見直す必要がでてくるでしょう。

6. リリース・保守・運用

システム構築が完了したら、リリースします。フルスクラッチ開発の場合は、リリースに問題がないかを確認するために、テストリリースをおこないましょう。

テストリリースに問題がなければ、本番リリースをしましょう。システム稼働後は、セキュリティのアップデートやバージョンアップデートにともなって、保守・運用をしていきます。

リリース後に不具合が発生した場合、不具合が発生した日から1年は「契約不適合責任」が発生するため、バグを修正する必要があります。

契約不適合責任とは?

納品後に不具合があった場合に発生する民法。発注者が不具合を発見してから1年以内に受注者に報告すれば、無償でバグの修正や代金の減額、不契約の解除を求められます。

フルスクラッチ開発のメリット

フルスクラッチ開発のメリットは、下記の3つです。

  • 顧客のニッチな要望に対応しやすい
  • カスタマイズ性が高い
  • サービスが終了する心配がない

顧客のニッチな要望に対応しやすい

顧客のニッチな要望に対応しやすいのは、フルスクラッチ開発のメリットです。要件定義から、顧客の要望に相性のいい開発環境をいちから作るため、細かい要望に応えやすいです。

また、エンドユーザーの使用感に関してのニッチな要望にも融通がききやすいでしょう。

フルスクラッチ開発は開発元がベンダーになるため、顧客満足度が高いシステムが開発できる可能性があります。

カスタマイズ性が高い

フルスクラッチ開発は、カスタマイズ性が高いのもポイントです。サイトのデザインやサイト表示の演出などの、オリジナリティ性のあるカスタマイズ要望に対応しやすいです。

既存のシステム開発環境だと、拡張性に限界があるため、カスタマイズできないことがあるでしょう。「システムをカスタマイズして、エンタメ性の高さでユーザーの顧客満足度を向上させたい」場合は、フルスクラッチ開発が便利です。

サービスが終了する心配がない

フルスクラッチ開発は、システムのサービスが終了する心配がありません。開発元のITベンダーがシステムの管理まですべてしているため、サービスが急に終了することがなくユーザーが安心して利用できます。

他社の既存システムを活用してシステム構築した場合、会社が倒産したり、サービスが終了したりするとシステムが使えなくなるリスクがあります。

長い年月にわたってシステムを利用する場合は、フルスクラッチ開発が有効です。

フルスクラッチ開発のデメリット

フルスクラッチ開発は、3つのデメリットがあります。

  • 時間とコストがかかる
  • 高い技術力が求められる
  • 業務の属人化が起きやすい

時間とコストがかかる

フルスクラッチ開発のデメリットは、時間とコストがかかることです。顧客の独特な要望に応じて、開発環境の選定を検討する必要があるため、時間とお金がかかります。

システムの構築後にも、バージョンのアップデートやセキュリティのアップデートが入るため、ランニングコストと構築時間が膨大になりがちです。

初期費用が1,000万円以上、月額費用が10万円〜50万円以上かかる場合があるため、顧客と要相談しましょう。

高い技術力が求められる

既存のシステムがない状態で、開発する必要があるため、高い技術力が求められます。デザイナーやフロントエンドとバッグエンドのエンジニア、セキュリティの担当者などの高い技術力を持った人材が必要でしょう。

フルスクラッチ開発を一貫してできる企業は多くないため、各部門で新規雇用やBPが必要になることを検討しなくてはなりません。

人材コストがかけられない場合は、フルスクラッチ開発は厳しいでしょう。

業務の属人化が起きやすい

フルスクラッチ開発は、業務の属人化が起きやすい傾向があります。システムの詳細設計や製造の担当者が退職や他部署に移動した場合に、よく起こります。

詳細設計とソースコードが、担当した人にしかわかりづらい構造になっていた場合、引継ぎが非常に難しくなるでしょう。属人化を避ける施策を講じなければ、システムのリプレースの際に困ります。

フルスクラッチ開発の2つの活用事例

フルスクラッチ開発の活用事例を2つ紹介します。

  • バンダイナムコテクニカ「バナサポ」
  • アイネス「FAX紹介システム」

バンダイナムコテクニカ「バナサポ」

バンダイナムコテクニカのバナサポは、株式会社オークが開発ベンダーとして開発した、業務用アミューズメント機器のサポートサイトです。

個別管理機能や商品管理機能やECカート機能、外部データ連携まで、フルスクラッチ開発を活用して開発されています。

ユーザーインタフェースのカスタマイズ性も高いため、利用しやすいです。

アイネス「FAX照会システム」

アイネスのFAX照会システムは製造業のお客様向けに、FAX情報の自動ファイリングが可能なシステムです。

FAX情報の自動ファイリング機能から外部システムとの連携まで、フルスクラッチ開発されています。

タブレットで外出先でもFAX情報を閲覧できるため、業務効率向上が見込めます。

まとめ

フルスクラッチ開発の概要と開発のメリット・デメリット、活用事例を紹介しました。独自性のあるシステムを開発したいとき場合は、フルスクラッチ開発が役立つでしょう。

フルスクラッチ開発は開発元がベンダーになるため、サポートが急に終了することがなく安心して利用できます。ただし、時間とコストが膨大にかかるため、顧客と要相談しましょう。

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フルスクラッチ開発でよくある質問

  • フルスクラッチ開発はどのようなときに必要?

    フルスクラッチ開発は必要になるときは「既存システムで、顧客の要望を対応できないとき」「独自性のあるシステムを開発したいとき」「システム構築のブラックボックス化を避けたいとき」です。必要に応じて、フルスクラッチ開発を利用すると、顧客満足度の向上につながるでしょう。

  • フルスクラッチ開発は時代遅れか?

    フルスクラッチ開発は時代遅れではありません。安定したシステムを作る場合は、フルスクラッチ開発の需要があるためです。昨今ノーコードの開発やクラウド開発が流行になりつつありますが、運用・保守まで一貫したシステムを構築するのには向いてません。

  • フルスクラッチ開発の注意点は?

    「納期までにいちからシステムを構築できるか」「業務の属人化が避けられるか」「高い技術力を持った人材を集められるか」「顧客がコストを支払えるか」「システム構築後に運用保守まで一貫して対応できるか」に注意しましょう。フルスクラッチ開発は繊細な開発のため、構築までに時間を要します。注意点を考慮したうえで顧客に提案しましょう。

  • フルスクラッチ開発とスクラッチ開発は同じ表現?

    フルスクラッチ開発とスクラッチ開発は、同じ表現です。企業によって表現が違うため「フルスクラッチ開発」のことを「スクラッチ開発」と表現する場合があります。

監修者のコメント
 株式会社ラテラルリンク
代表取締役 岩井昌弘

徳島県出身 名古屋大学情報文化学部卒業。同大学院人間情報学研究科修士課程修了。2006年有限会社ラテラルリンクを設立。名古屋市で、Webシステム開発を中心に、Web構築全般、Web活用支援に従事。クライアントは、中小・零細企業から東証一部上場企業、国立大学まで幅広いニーズに対応。経済産業省認定「スマートSMEサポーター」。

「フルスクラッチ開発」とは、全てをゼロから設計・実装するアプローチを指します。次いで、「スクラッチ開発」は、「フルスクラッチ開発」と同義に使われることもありますが、アプリケーションフレームワークやライブラリを使用した開発も含まれることがあります。

これは文脈に依存し、どの程度の範囲で既存のツールやフレームワークを利用するかが明確ではない場合があります。大規模で特殊な要素を持つプロジェクトにはフルスクラッチ開発が適しているかもしれませんが、一般的なタスクや機能を迅速に構築したい場合はフレームワークの利用が効果的です。

フレームワークをベースにしながら、固有の要件に対応するための開発を行うことで、標準の機能や効率性を活かしつつ、プロジェクトの独自性を確保できます。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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