株式を相続する9つの手順を分かりやすく解説|名義変更・売却方法も紹介

青木征爾税理士事務所
監修者
青木征爾税理士事務所 税理士 青木征爾
最終更新日:2023年08月22日
株式を相続する9つの手順を分かりやすく解説|名義変更・売却方法も紹介
この記事で解決できるお悩み
  • 株式を相続する際の流れは?
  • 相続した株式の名義変更・評価方法は?
  • 相続した株式を売却する方法は?

相続財産に株式が含まれている場合、相続手続きの難易度は一気に高まります。相続税には納付期限が定められているため、株式相続の流れを正しく把握したうえで早めに着手することが大切です。

本記事では、株式を相続する際の流れをわかりやすく解説します。最後まで読めば、相続した株式を適切に活用できるようになるでしょう。売却方法や注意点も紹介するため「税負担を最小限に抑えてスムーズに手続きを完了したい」という方はぜひ参考にしてください。

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株式を相続する手順9つ

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株式を相続する際の大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 相続人の調査をする
  3. 相続財産における株式の有無を調査する
  4. 相続の承認・放棄を決める
  5. 準確定申告をする
  6. 遺産分割協議を行う
  7. 株式の名義変更を行う
  8. 相続した株式を評価する
  9. 相続税を申告する

手続きが多いため、相続が判明したら早めに着手することをおすすめします。

1. 遺言書の有無を確認する

第一に、遺言書の有無を確認する必要があります。遺産を引き継ぐのは原則として法定相続人(法的に相続の権利を認められている人)ですが、遺言書がある場合はその内容が優先されるためです。

遺言書は自宅以外に、法務局や金融機関、弁護士などの専門家に預けられている場合もあるため、くまなく調査します。

法的効力のある遺言書は3種類

法的効力のある遺言書の種類は以下のとおりです。

自筆証書遺言 遺言者自身が作成する自筆の遺言書
公正証書遺言書 証人2人以上が立会いのもと公正証書の形式で公証人が記述する遺言書
秘密証書遺言書 公正証書遺言書のうち、遺言者自身しか見ることができない形式の遺言書

自筆証書遺言は、家庭裁判所で「検認」を経なければ法的な効力を持ちません。検認とは、遺言書の内容を確認し、相続人へ通知のうえ内容の偽造を防止する手続きのことです。

封印のある遺言書は家庭裁判所での開封が必要

封印のある遺言書は、家庭裁判所で開封しなければなりません。勝手に封を開けると法律違反となり、5万円以下の過料が科されます。

2. 相続人の調査をする

「誰が法定相続人なのか」を確定させるために、被相続人と相続人全員の戸籍謄本を取得します。新たな相続人が見つかった場合や、相続人のなかに行方不明者がいる場合は、戸籍謄本とともに「戸籍の附表」を取得して相手に連絡を試みます。

戸籍の附表とは、戸籍が作られてから現在に至るまでの住所が記録されている書類のことです。

相続人の範囲や相続順位は以下の記事を参考にしてください。

3. 相続財産における株式の有無を調査する

すべての相続財産を調査するなかで、被相続人名義の株式の有無を確認します。株式の調査方法は上場株式と非上場株式で異なるため、以下で詳細を説明します。

上場株式は取引残高報告書を確認する

上場株式とは、証券取引所において取引される株式のことです。相続財産のなかに上場株式があるかどうかは、以下の書類をもとに調査できます。

  • 取引口座開設の控え
  • 目論見書
  • 取引報告書
  • 取引残高報告書(評価報告書)
  • 特定口座年間取引報告書

書類が見つからない場合は、インターネット取引をしていた可能性も加味し、メールや閲覧履歴などを確認しましょう。

取引していた証券会社がわかれば、取引残高報告書(評価報告書)を確認することで保有株式の種類や数が判明します。

非上場株式は株券発行会社に問い合わせる

上場株式は誰でも取得できますが、非上場株式は「発行会社」や「株主」とコネクションがないと取得できません。被相続人が会社の要職に就いていた場合は自社株を保有している可能性が高いため、会社へ問い合わせをしましょう。

被相続人が従業員持株会に加入していた場合

被相続人が従業員持株会に加入していた場合、その持分も相続対象になります。従業員持株会とは、給与・賞与から天引きされた従業員の投資金額をまとめ、窓口となって自社株を購入する組合のことです。従業員の資産形成を支援する制度として、ほとんどの上場企業で導入されています。

従業員持株会は「従業員が死亡した場合は持分を買い取る」旨を規定していることが多いです。そのため、従業員持株会に加入していた場合の相続分は「株式そのもの」ではなく「持株会による買取金額」となります。

4. 相続の承認・放棄を決める

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相続財産の調査によって、プラスの財産よりもマイナスの財産が多いことが判明した場合は、相続放棄をする選択肢もあります。相続放棄をすることで、プラスの財産を含めたすべての遺産の相続権を失います。

相続放棄をすると、法定相続人の順位が繰り上がるため注意が必要です。たとえば、被相続人の子である直系卑属が相続放棄をすると、第二順位である親や祖父母(直系尊属)へ相続権が移ります。

繰り上がりで法定相続人になる人も相続の承認・放棄を決めなければならないため、相続放棄をする際は事前に親族へ報告しましょう。

5. 準確定申告をする

準確定申告とは、亡くなった人の代わりに確定申告をすることです。被相続人が亡くなった年に所得(配当金や譲渡益を含む)がある場合、準確定申告が必要となります。

準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4カ月以内です。詳細は以下で詳しく解説しています。

6. 遺産分割協議を行う

相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を行います。遺産分割協議により「誰が」「どの株式を」「どれくらいの量」相続するかを決定しなければ、株式の名義変更ができません。そのため遺産分割協議は、相続開始後早めに着手することが望ましいです。

遺産分割協議の内容によって相続税の納付額が異なるため、相続税の納付期限までに遺産分割協議を完了させましょう。相続税の納付期限は、被相続人が死亡した日の翌日から10カ月以内です。

7. 株式の名義変更を行う

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遺産分割協議により株式の分け前が確定したら、株式の名義変更を行います。名義変更の届け出先は以下のとおりです。

上場株式 証券会社・信託銀行
非上場株式 株券発行会社

名義変更に期限はありませんが、変更を行わないと売却や配当の受け取りができません。名義変更に要する期間は3週間前後のため、売り時を逃さないためにも早めに着手することをおすすめします。

名義変更に必要な書類は、状況によって以下の4パターンに分けられます。

遺言書がある場合 ・戸籍謄本or除籍謄本or死亡証明書
・株式を取得する人の印鑑登録証明書
・遺言書の写し
・検認証書の写し(公正証書遺言の場合は不要)
・証券会社の所定の書類(株式名義書換請求書や株主票など)
相続人が1人のみの場合 ・被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
・相続人の戸籍謄本
・相続人の印鑑登録証明書
・証券会社の所定の書類(株式名義書換請求書や株主票など)
遺産分割協議により分割した場合 ・被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・遺産分割協議書の写し
・相続人全員の印鑑登録証明書・証券会社の所定の書類(株式名義書換請求書や株主票など)
調停または審判により分割した場合 ・調停調書謄本or審判書謄本、その確定証明書の写し
・株式を取得する人の印鑑登録証明書
・証券会社の所定の書類(株式名義書換請求書や株主票など)

必要書類は証券会社によって異なるため、詳細は問い合わせをして確認しましょう。

8. 相続した株式を評価する

相続した株式の評価額により納める相続税が変わるため、正しい評価方法をおさえておきましょう。評価方法は、上場株式と非上場株式で異なります。

上場株式の評価は終値で行う

上場株式の評価は、原則終値で行います。終値とは、その日の最後の取引でついた株価のことです。

評価額は、以下のうち最も低い株価で決まります。

  • 被相続人の死亡日の終値
    ※相続開始日が取引所の休業日だった場合は、前後で最も近い日の終値
  • 被相続人が死亡した月の全営業日の終値の平均
  • 被相続人が死亡した前月の全営業日の終値の平均
  • 被相続人が死亡した前々月の全営業日の終値の平均

終値は、被相続人が取引をしていた証券会社が発行する「残高証明書」で確認可能です。

非上場株式の評価方法は複雑

非上場株式の評価方法は、株式を相続して「大株主となり経営権を支配する」場合と「少数株主となり経営権を支配しない」場合で異なります。

  評価方式 計算方法
経営権を支配する場合 大会社:類似業種比準方式 事業内容が類似する複数の上場会社の株価を基準に計算
子会社:純資産価額方式 相続開始日に会社を清算したと仮定した株主1人あたりの分配額で計算
中会社:併用方式 類似業種比準方式と純資産価額方式で計算した株価を一定割合で折衷して計算
経営権を支配しない場合 配当還元方式 (年間配当額÷10%)×(1株当たりの資本金等の額÷50円)

非上場株式の評価は判断が難しく、計算も煩わしくなるため税理士に依頼することをおすすめします。

9. 相続税を申告する

相続財産の価額が、以下の式で計算した基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要です。

  • 基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の計算方法は国税庁のホームページを確認してください。

相続した株式を売却・現金化する3つのポイント

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相続した株式はそのまま保有できますが、売却して現金化もできます。売却方法は、上場株式と非上場株式で異なります。

上場株式は売却が容易

各相続人に名義変更した株式は、それぞれ好きなタイミングで売却可能です。相続人の全員が、株式ではなく現金での相続を希望する場合は、株式を現金化してから各相続人に按分する方法もあります。

上記の場合は、いったん代表相続人にすべての株式の名義変更を行い、代表相続人が売却して得た現金を法定相続分で分割します。

非上場株式は譲渡制限に注意

非上場株式の売却先は以下の2パターンです。

  • 知り合いや取引先などから欲しい人を探す
  • 株券発行会社に買い取ってもらう

譲渡制限が設けられている株式を売却する際は、株券発行会社による「譲渡の承認」が必要です。もし株券発行会社から「株式を自社に売ってほしい」と売渡請求をされた場合、相続人は拒否する権利がありません。

売買価格は、原則として相続人と譲渡先の協議によって決定します。

譲渡益が生じた場合は確定申告が必要

株式を売却した際、以下に該当する場合は確定申告が必要です。

  • 上場株式を「一般口座」で売却し、譲渡所得が生じた
  • 上場株式を「源泉徴収なしの特定口座」で売却し、譲渡所得が生じた
  • 非上場株式を売却し、譲渡所得が生じた

譲渡所得は次の式で計算します。

  • 株式を売却した金額−(取得費+売却に要した手数料をはじめとする経費)

「取得費」は、相続したときの価額ではなく、被相続人が取得した際の金額で計算します。

株式相続時に相続税を納付している場合の特例

相続で取得した株式を相続開始の翌日から3年10カ月以内に売却した場合、相続税額のうち一定の金額を取得費に加算できます。

株式の相続において注意が必要な3つのケース

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株式の相続において注意が必要な事例を3つ紹介します。

ケース1. 相続した株式に関する書類が見つからない

被相続人名義の上場株式を調査するにあたって、書類が見つからないケースも珍しくありません。被相続人が「どこの会社の株を保有していたか」がわかっている場合は、以下の手順にもとづいて問い合わせをすることで解決します。

  1. 株券発行会社に「株主名簿管理人」である信託銀行を確認する
  2. 判明した信託銀行に、被相続人の特別口座の有無を確認する

被相続人が、どこの会社の株を保有していたかもわからない場合は、以下の流れにもとづいて確認しましょう。

  1. 証券保管振替機構に「登録済加入者情報」の開示を請求する
  2. 「登録済加入者情報」に、被相続人が登録されているかどうかを確認する
  3. 「登録済加入者情報」に記載されている証券会社・信託銀行を確認する

「登録済加入者情報」に被相続人が登録されていなければ、上場株式を保有していない証明になります。

ケース2. 相続税を納めた後に株式が見つかった

相続手続きを行ったあとに被相続人名義の株券が見つかった場合、相続税の時効を迎えているか否かで対応が異なります。

相続税の申告期限から5年以上経過後に株式が見つかった場合、すでに時効を迎えているため修正申告は不要です。

相続税の申告期限から5年経過する以前に株式が見つかった場合は、修正申告が必要です。税務調査で指摘を受けるとペナルティの対象となるため、株式が見つかった時点で速やかに対応しましょう。

ケース3. 「配当金領収証」が見つかった

株式と一緒に「配当金領収証」が見つかることがあります。配当金領収証とは、配当金を受け取るために必要な書面のことです。

配当金領収証の裏面に記載されている取扱金融機関に、必要書類とともに持参すると配当金を受領できる可能性があります。必要書類は金融機関によって異なるため、詳細は受領書に記載の金融機関に確認しましょう。

配当金の受領には、会社の定款により3年〜5年の時効が定められていることが多いです。受領期限を過ぎていると配当金を請求できないため、見つけ次第早めに着手することをおすすめします。

まとめ

本記事では、株式を相続する際の流れや売却方法などを解説しました。株式の相続手続きは、他の財産と比較して圧倒的に手間がかかります。特に非上場株式が含まれている場合、評価や売却には専門知識が必要になるため、税理士の力を借りて対処することが一般的です。

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監修者のコメント
青木征爾税理士事務所
税理士 青木征爾

札幌市を中心に活動する税理士。アパレル業界から未経験で税理士業界に飛び込む。その後、個人事務所、資産税系コンサルティングファームで経験を積み独立。税理士の仕事で重要なことはお客様とのコミュニケーションであるという考えから対話を重視している。中小企業の経営支援、スタートアップ支援、相続業務を得意としている。

株式には非上場株式と上場株式があります。非上場株式は活発な市場が無く相続税の評価が非常に複雑なものになります。

これに対し上場株式は活発な市場があり比較的容易に価値を算定することができます。また、1株ごとに分割することができるうえ、売買市場があるため容易に換金することもできます。

換金が容易にできるということは、同じ1株であれば誰にとっても同じ価値があるとも言えます。これに対し不動産は人によって見いだせる価値が変わります。

例えば、被相続人の持ち家に同居していた親族からするとその家には価値を見出すことはできますが、遠方に住んでいる親族にとっては価値が見出しにくいというケースや、1筆の大きな土地を複数の相続人で分筆する場合において、同じ面積でも分け方によっては利用効率が変わり価値が変わってしまうというケースがあります。

上場株式は1株ごとの価値が均質であり、誰にとっても同じ価値で容易に換金できるため、分割対策と納税資金対策に適した財産といえます。

上場株式を配当目的で保有されているケースも多いかと思いますが、この場合に注意をしていただきたいのが配当期待権や未収配当金です。

配当基準日である決算日から配当確定日である株主総会の間までに相続が発生した場合は配当期待権という財産が相続税の対象となります。

また、配当確定日から配当受取日までに相続が発生した場合は未収配当金という財産が相続税の対象となります。

いずれも忘れやすい財産のため注意しましょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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