相続税の追徴課税はどのくらい厳しい?課税を避けるために知っておくべきこと

青木征爾税理士事務所
監修者
青木征爾税理士事務所 税理士 青木征爾
最終更新日:2023年09月12日
相続税の追徴課税はどのくらい厳しい?課税を避けるために知っておくべきこと
この記事で解決できるお悩み
  • 相続税の追徴課税の種類は?
  • 相続税の追徴課税を受けやすいケースは?
  • 相続税の追徴課税を受けないための方法は?

「追徴課税になるのはどのようなケース?」「追徴課税を防ぎたい」とお悩みの方、必見です。相続税の申告を行ったあと、申告漏れにより追徴課税を受けるケースがあります。

この記事では、追徴課税の種類に加え、ペナルティが発生しやすいケースについて詳しく解説します。正確な相続税の申告を行うポイントも紹介するため、申告を控えている方はぜひ参考にしてください。

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相続税の追徴課税4つ

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相続税に関係する追徴課税は、以下の4つです。

  1. 延滞税
  2. 無申告加算税
  3. 過少申告加算税
  4. 重加算税

1. 延滞税

延滞税は、相続税の納付期限までに税金を納めなかった場合に発生するペナルティです。相続税の納付期限は、相続の発生を知った翌日から10カ月以内です。納付が1日でも遅れると延滞税が発生します。

延滞税の税率は、納付期限の翌日から2カ月を経過するまでは原則として年率7.3%です。2022年以降は、原則7.3%と「延滞税特例基準割合+1%」のうち低い方と決められました。これにより、2023年12月31日までは年率2.4%が適用されます。

納期限の翌日から2カ月を経過した場合、原則14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」のうちより低い方が適用されます。2023年12月31日までは年率8.7%です。

2. 無申告加算税

無申告加算税は、その名のとおり申告期限までに相続税の申告をしなかった際に科せられるペナルティです。納税期限は延滞税と同じく、相続発生を知った日の翌日から10カ月以内です。延滞税と無申告加算税の両方が追徴課税として科せられます。

ケースごとの税率は以下のとおりです。

  • 期限までに申告を行わなかったが、期限が過ぎた後、自主的に申告した場合は5%
  • 期限までに申告を行わず税務署に指摘されて申告を行う場合(納税額50万円以下)は15%
  • 期限までに申告を行わず税務署に指摘されて申告を行う場合(納税額50万円を超える部分)は20%

3. 過少申告加算税

過少申告加算税は、本来支払うべき相続税額よりも少ない金額を申告・納付した場合に科せられるペナルティです。本来支払うべきだった相続税額と、納付済みの税額の差額に対して追徴課税が科せられます。

ケースごとの税率は以下のとおりです。

  • 申告に誤りがあったが、自主申告し修正した場合は追徴課税はなし
  • 税務調査の通知があってから税務署に指摘される前に自主的に修正申告書を提出した場合は税額の5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)
  • 税務調査があって納付する場合は10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)

4. 重加算税

重加算税は、課税対象の資産をごまかした、隠して少なく見せたなどの悪質なケースに科せられる追徴課税です。故意に脱税を行っているためペナルティが非常に重くなります。

ケースごとの税率は以下のとおりです。

  • 資産を隠ぺいして申告を行った場合は35%
  • 資産を隠ぺいして申告を行わなかった場合は40%

相続税の申告件数の約87%に申告漏れや不正申告

国税庁が実施した「令和3事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査件数の約87%に申告漏れや不正申告がありました。税務調査は任意調査ですが、拒否したり質問に回答しなかったりすると罰則が適用されます。税務調査が入る前に正確な申告を心がけるべきです。

相続税の追徴課税が発生しやすい5つのパターン

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相続税の追徴課税が発生しやすいのは以下の5つのパターンです。

  • 被相続人の口座から現金が引き出されている
  • 生前贈与がある
  • 家族名義の預貯金が調査される
  • 不動産の評価額に誤りがある
  • 相続人が知らない財産がある

被相続人の口座から現金が引き出されている

相続税の追徴課税が発生しやすいケースとして、被相続人の死亡直前に銀行口座から現金が引き出されていることが挙げられます。被相続人が亡くなりそうな場合、葬儀費用をまかなうため家族が現金を引き出すことは珍しくありません。葬儀費用は相続財産から控除されますが、相続開始時点で引き出した現金が余っていれば相続税の課税対象になります。

引き出した現金の使い道を証明できる場合は大きなトラブルにはなりません。葬儀費用に使用した場合、領収書や支払先や支払額を明記したメモを残しましょう。使い道を証明できないと、被相続人からの贈与と見なされて多額の追徴課税が発生するおそれがあります。

生前贈与がある

相続税の追徴課税が発生しやすい別のケースは、生前贈与がある場合です。相続税には110万円の基礎控除があり、基礎控除を超える贈与の場合は相続税を納めなければなりません。生前贈与が行われていても、相続税が納められていれば問題ありません。

問題は、贈与額が基礎控除以下であったことの証明や贈与が成立していたことの証明ができないケースです。贈与契約書がない、現金を手渡ししたなどのケースでは、贈与が認められないことがあります。相続開始3年以内の贈与は相続財産と見なされることにも注意しましょう。

家族名義の預貯金が調査される

相続税の追徴課税を避けるため、被相続人の家族名義の預貯金に注意しなければなりません。親や祖父母が子や孫のために銀行口座を開設し毎月貯金するケースです。口座は子や孫の名義でも、親や祖父母が管理・預金している場合は、被相続人の財産と見なされます。

子や孫が口座の存在を認識していて預金が自分のものと把握していれば、預金は贈与といえるでしょう。預金を相続財産とみなされないため、贈与契約書を作成して生前贈与である証拠を残すことが必要です。

不動産の評価額に誤りがある

相続財産のなかに不動産がある場合、評価額を間違えていて追徴課税が科せられることがあります。不動産の相続税評価額の算出は複雑です。相続する土地が宅地と農地のどちらなのか、路線価が明記されているか、借地権や定期借地権はあるかなどの要素によって変化するでしょう。

不動産の評価額を低く見積もりすぎると、納付した相続税額が少ないと見なされ追徴課税が発生します。評価額に疑問がある場合は、税理士や弁護士に相談するといいでしょう。逆に評価額を高く見積もり相続税を余計に収めたケースでは相続税還付を受けられることもあります。

相続人が知らない財産がある

相続税の申告をきちんと行い、納付も済ませたあとに相続人が知らなかった財産が出てくるケースもあります。故意に申告しなかったわけではないとしても、税務署から指摘を受ければ延滞税や過少申告加算税などの追徴課税が科せられるでしょう。

被相続人が周囲に伝えない財産として、以下のものが挙げられます。

  • 海外にある動産・不動産
  • 生命保険
  • 仮想通貨・デジタル資産

生命保険は、契約者や被保険者、受取人によって相続税の取り扱いが変わるため注意が必要です。

相続税の追徴課税を防ぐための方法3つ

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相続税の追徴課税は正確な申告・納付を行えば不要な支出となるため、以下の3つの方法で防ぐことが重要です。

  • 相続財産の調査を慎重に行う
  • 申告漏れに気付いたらすぐに修正申告を行う
  • 税理士に相談する

相続財産の調査を慎重に行う

追徴課税を防ぐ最善の方法は、正確な申告と納付です。相続税を申告する前に相続財産の調査を正確に行い、漏れなく申告することで追徴課税を未然に防げます。

相続財産を把握するためには、相続人全員の協力が不可欠です。通帳や固定資産税通知書などからすぐにわかる財産だけではなく、被相続人が話していたことや結んだ契約、家族名義の口座、保険などを細かくチェックしましょう。

申告漏れに気付いたらすぐに修正申告を行う

相続財産の調査を慎重に行ったにもかかわらず別の財産が見つかった場合、すぐに修正申告を行いましょう。過失による申告漏れは、自主的に修正申告を行うことで追徴課税を回避することができます。

税務署が申告漏れに気づき調査通知が来たあと、もしくは税務調査後に修正を命じられると、5%から15%の追徴課税が科せられます。とくに海外にある動産や不動産がある場合、相続税評価額の算出が非常に難しくなり、財産を把握していても納付期限に間に合わないおそれがあるため注意が必要です。

税理士に相談する

相続税の知識に不安がある方は、税理士への相談がおすすめです。税理士は相続財産の調査や税務署に提出する遺産分割協議書の作成、相続税の申告などの手続きを一貫して行えます。

税理士に相続税の相談をすることで、正確な申告が行えるのはもちろん、効率的な節税のアドバイスを得られます。

相続税の追徴課税が払えない際の対処法3つ

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追徴課税の納付義務は自己破産でも免除されません。追徴課税が支払えない状態を放置していると、財産を差し押さえられ換価処分されるおそれがあります。

相続税の追徴課税が科せられたが、現金が不足し納税できない場合、以下の方法で対処しましょう。

  • 資産を売却する
  • 金融機関に融資を申し込む
  • 納税猶予を活用できる場合がある

資産を売却する

追徴課税をすぐに納付できない場合、現在保有している財産を売却する方法があります。更地や有価証券、投資信託商品などは換金性が高く、早期に現金を手に入れられるでしょう。

金融機関に融資を申し込む

追徴課税の現金を用意するために金融機関に融資を申し込むことも可能です。受け継いだ家や土地を売却したくない、親が建てた家に住み続けたいなどの理由がある方は、融資を受けるといいでしょう。

金融機関によって金利は異なり、返済が困難になるおそれもあります。金融機関が返済の見込みがないと考えれば、融資が受けられない可能性があります。家や土地を担保に融資を受けた場合、返済できずに土地や家を失うケースもあります。

納税猶予を活用できる場合がある

追徴課税の支払いができない場合、納税猶予を活用できることもあります。納税猶予の制度を活用できるのは以下の条件を満たした場合です。

  • 納付期限から1年以上経過して税額が確定した
  • 相続税の修正申告書ならびに納税猶予の申請書を追徴課税の納付期限までに提出している

納税猶予が認められると通常は1年間、場合によっては2年間の分納が認められます。

納税猶予以外にも、以下の条件を満たすと財産の公売を猶予する「換価の猶予」を活用できます。

  • 追徴課税の納付により事業の継続や生活維持が困難になる
  • 追徴課税の納付期限から6カ月以内に換価の猶予申請書を提出している
  • 納税猶予の適用を受けていない
  • 他の国税の滞納がない
  • 追徴課税の額に相当する担保を提供している

まとめ

相続税の追徴課税は、延滞税や過少申告加算税など、申告の不足により決められています。追徴課税を避けるためには、相続財産の正確な把握と漏れのない申告が不可欠です。相続人同士の協力や税理士の助けを最大限に利用し、正確な申告を心がけましょう。

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監修者のコメント
青木征爾税理士事務所
税理士 青木征爾

札幌市を中心に活動する税理士。アパレル業界から未経験で税理士業界に飛び込む。その後、個人事務所、資産税系コンサルティングファームで経験を積み独立。税理士の仕事で重要なことはお客様とのコミュニケーションであるという考えから対話を重視している。中小企業の経営支援、スタートアップ支援、相続業務を得意としている。

相続税の追徴課税が発生する原因は様々ですが、よくあるケースとしては申告後に財産が新たに発見されるというケースではないでしょうか。

例えば遺産総額が基礎控除以下だと認識をしていて申告をしていなかったにも関わらず、その後になって被相続人の財産が見つかったことにより基礎控除を超え申告が必要になるような場合などが該当します。

この場合は、申告が必要であったにも関わらず申告をしていないため無申告加算税が課されます。さらに納期限までに納付を済ませていないために延滞税も発生します。

過少申告加算税については自発的に申告を行った場合は生じません。税務調査が行われることを知ってから税務署に指摘される前に申告をした場合の過少申告加算税は5%または10%です。税務調査で指摘が行われたことにより申告する場合は10%または15%となります。

重加算税は意図的な隠ぺいや仮装など悪意がある場合に課されます。そのため税率も高いものになっています。

追徴課税を発生させないためには期限内に正しい申告を行わなければなりません。そのためには被相続人の財産をしっかり把握することが重要です。生前からどの財産をどのくらい持っているかをしっかり整理しておくことで相続財産をもれなく申告することができます。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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