新型コロナ特例措置の雇用調整助成金を徹底解説|申請書類・書式・支給の流れ

Reメンバー労務オフィス
監修者
Reメンバー労務オフィス 社会保険労務士 遠藤良介
最終更新日:2023年04月21日
新型コロナ特例措置の雇用調整助成金を徹底解説|申請書類・書式・支給の流れ
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当該記事は雇用調整助成金の内容をざっくりと把握していただくことを目的としているため、内容が不完全な場合があります。そのため、この記事により生じた損害等に関して、弊社は責任を負いかねますので、予めご了承ください。

雇用調整助成金とは?

従業員の失業防止を目的として、1981年に創設された「雇用調整助成金」。

労働基準法では何らかの理由で休業せざるをえない場合、その理由が「会社都合」であれば従業員に「休業手当」として賃金の最低6割以上を支払う必要があります。

しかし売上が減少しているにも関わらず、休業手当を支払うことは非常に大変で、経営者が従業員を解雇する可能性があります。「雇用調整助成金」は会社が従業員を解雇せずに雇用を維持できるよう、休業手当を国が一部負担する制度です。

今回のコロナの一件でも従業員に休業手当を支払う必要があるのか

労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由(=会社都合)による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならない」と明記されています。

会社都合の休業は休業手当の支払いが義務化されていますが、今回のような事態は「会社都合」と言えるのでしょうか?厚労省のホームページでは「不可抗力による休業の場合は、使用者の責に帰すべき事由に当たらず、使用者に休業手当の支払義務はありません」と記載されています。

  • 会社都合の休業…休業手当の支払い義務がある
  • 不可抗力の休業…休業手当の支払い義務はない

今回の緊急事態宣言や休業要請は「不可抗力」としてみなされるのか?この「不可抗力」の解釈は様々な所で議論になっています。

(朝日新聞)休業要請は「不可抗力」か 手当の支払い義務めぐり論争(4月20日の記事)

厚労省のホームページでは、4月24日時点で「不可抗力」の解釈に関して下記のように回答しています。

不可抗力による休業と言えるためには、,修慮彊が事業の外部より発生した事故であること ∋業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること、という要素をいずれも満たす必要があります。 ,乏催するものとしては、例えば、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や要請などのように、事業の外部において発生した、事業運営を困難にする要因が挙げられます。△乏催するには、使用者として休業を回避するための具体的努力を最大限尽くしていると言える必要があります。 具体的な努力を尽くしたと言えるか否かは、例えば、自宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分に検討しているか、労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか、といった事情から判断されます。 したがって、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言や、要請や指示を受けて事業を休止し、労働者を休業させる場合であっても、一律に労働基準法に基づく休業手当の支払義務がなくなるものではありません。

引用:厚生労働省

この記載内容を見る限り、緊急事態宣言を受けた、自粛要請を受けたからといって、不可抗力としてみなされるわけではなく、従業員を守るために最大限の努力を尽くしたか、という点が重要になりそうです。

雇用調整助成金のよくある勘違い

「雇用調整助成金」は「休業手当」の一部を国(厚労省)が助成する制度で、月給や日給などの「給与」の一部が助成されたり、従業員へ直接支給されるわけではありません。

月給30万円を支払う従業員がいる場合、1日換算10,000円となり「休業手当」を賃金の6割と設定すると、企業は従業員に1日6,000円の休業手当を支払うことになります。

「雇用調整助成金」はこの6,000円(休業手当)の一部を国が企業に対して補償するもので、助成率が4/5(8割)の場合は4,800円が助成(支給)されます。上限額は従業員1人あたり8,355円/日となります。

助成率が4/5(8割)の場合の計算式

休業手当6,000円 × 助成率80% = 4,800円

休業手当が6,000円の場合は、4,800円が助成されるので、休業手当との差額で見れば、企業側の負担は1人あたり1,200円/日となります。コロナの一件で、助成される率や支給条件に何度も見直しが入っていますが、2022年11月17日時点において、この上限金額は8,355円となっています。

ちなみに休業手当は「平均賃金の60%以上」がルールとなります。この「平均賃金」は「休業日以前3ヵ月間に支払われた賃金の総額 ÷ 期間の総日数(暦日数)」で計算します。

雇用調整助成金の特例措置による支給額と条件の変更

雇用調整助成金の意図や概要を説明しましたが、本題の支給額や対象者に関して、解説していきます。まずは通常時と今回の特例措置で分けて見ていきましょう。

新型コロナ特例措置(2022年12月1日以降) 新型コロナ特例措置(2022年11月30日まで)
対象事業者 経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた企業・個人事業主(雇用保険適用) 経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた企業・個人事業主(雇用保険適用)
生産指標要件 直近3ヵ月の売上高等が前年同期比10%以上減 直近1ヵ月の売上高等が前年同期比5%以上減
対象従業員 雇用保険に6ヵ月以上加入 雇用保険に6ヵ月以上加入
助成率 中小企業2/3・大企業1/2 中小企業4/5・大企業2/3
(解雇をしない場合は中小企業9/10・大企業3/4
残業相殺について 残業相殺 残業相殺
助成額の限度(日額)  8,355円/人
(特に業況の厳しい事業主 9,000円(2023年1月31日まで)
8,355円/人
(業況特例に該当する事業主 12,000円)
支給限度日数 1年:100日 1年:100日 + 緊急対応期間内の対象期間
(手続き) 休業等計画届の提出不要 休業等計画届の提出不要
(その他) 休業等を実施する事業所における雇用保険被保険者や、受け入れている派遣労働者数の直近3ヶ月の平均値が、前年同期に比べ5%を超えかつ6名以上(中小企業事業主の場合は10%を超えかつ4名以上)増加していないことが要 雇用指標(最近3ヵ月の平均値)を撤廃、事業所設置後1年未満の事業主も対象、過去1年以内に雇用調整助成金を受給したことがある事業主も助成対象

2022年12月以降の雇用調整助成金の主な変更点をまとめると、下記のようになります。

  • パートやアルバイトも引き続き助成対象
  • 助成率は中小企業は2/3、大企業は1/2
  • 経過措置の対象事業所は、手続きの簡略化は継続

パートやバイトは引き続き対象に

本来支給要件に該当しない、パート・アルバイト、新入社員を休ませた場合「緊急雇用安定助成金」という形で支給がされます。

通常の雇用調整助成金では、雇用保険の6ヵ月以上の義務が必須要件でしたが、現在の特例措置で、雇用保険加入6ヵ月未満/未加入な人も対象になったので、新入社員や派遣社員、契約社員、パート、アルバイトを休ませた場合も、助成金給付の対象になります。

2022年12月以降も、パート・アルバイト対象の緊急雇用安定助成金を利用することは可能ですが、上限額8,355円/人 助成率 中小企業2/3 大企業1/2 となります。

2022年11月までは、助成率が最大で中小企業9/10、大企業は3/4

2022年11月までは、助成率は中小企業は4/5、大企業は2/3ですが、2022年12月以降の助成率は中小企業が2/3、大企業が1/2と通常時の助成率となります。

1日の上限が8,355円に設定されており、これを超える額は助成されません。

とある従業員の「平均賃金」が20,000円で休業手当が60%の場合、従業員へは12,000円を支払うことになります。助成率が9/10の場合、12,000円 × 90% = 10,800円となりますが、MAXが8,355円なので、12,000円 − 8,355円 = 3,645円は会社側の負担となります。

上記の平均賃金を例に、100人社員がいるとし、20日間休業させると、助成金額は1,666万円、会社側の負担は734万円となります。休業手当は賃金として扱われるので、通常の給与と同様に社保などを控除する必要があります。

特例措置の対象事業所は、手続きの簡略化は継続

雇用調整助成金の申請は通常フローだと先に計画届を出し、休業をする流れになりますが、今回の特例措置では、計画届の提出を不要としています。

また申請をカンタンにできるよう、2020年度以降、記載事項の大幅な簡略化と、添付書類の削減を行ってきました。

その他

新型コロナウイルスの影響を受けた会社であれば、開業して1年未満の事業主も助成対象となり、業種を問わなくなったので、風俗関連事業者も対象になります。

また、通常の雇用調整助成金制度において、従業員を休業させつつ、残業や休日出勤をさせたりと、突発的・一時的であっても休業させずに働かせる場合、助成の対象となる休業の延べ日数から、その残業や休日出勤をさせた分を控除する「残業相殺」という制度がありますが、特例期間は残業相殺を停止しています。

2022年12月以降の特例措置

厚労省は11月2日に、12月以降の雇用調整助成金の特例措置の経過措置について公表するとともに、12月から新たにコロナを理由とした雇用調整助成金を申請する事業主向けの制度についても公表されました。また、2023年4月以降については、感染状況や雇用情勢を踏まえながら検討し、公表されるとのことです。

令和4年12月以降の雇用調整助成金の特例措置(コロナ特例)の経過措置について

令和4年12月から新たにコロナを理由として雇用調整助成金を申請する事業主のみなさまへ

  • 助成率は中小企業で2/3 大企業で1/2
  • 12月から新たにコロナを理由として雇用調整助成金を申請する事業主については、生産量要件や雇用量要件などが通常制

助成金の上限額は1日8,355円と変わりません。

雇用調整助成金の申請に必要な書類

申請は通常1ヶ月ごとに行う必要がありますが、緊急対応期間中は複数月をまとめて申請することができます。同期間中は、「支給申請」時に添付書類を含めた全ての書類を提出します。

詳しくは厚労省が2022年9月30日に更新した「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)」をご参照ください。

厚労省「雇用調整助成金ガイドブック(簡易版)」

特例措置の緊急対応期間は、2022年11月30日までとなります。12月1日以降は特例措置の経過措置期間となり、新たに雇用調整助成金を利用する事業所については、生産量要件や雇用量要件など一部通常制度の要件に該当する必要があります。

「支給申請」に必要な書類

書類名 備考
支給要件確認申立書・役員等一覧 計画届に役員名簿を添付した場合は不要、記載例はこちら
支給申請書 手書きPDF版はこちら
助成額算定書 記載例はこちら
休業・教育訓練実績一覧表 記載例はこちら
労働・休日の実績に関する書類 ・出勤簿/タイムカードの写しなど(手書きのシフト表などでも可)
・就業規則または労働条件通知書の写しなど
休業手当・賃金の実績に関する書類 ・賃金台帳の写しなど(給与明細の写しなどでも可)
・給与規定または労働条件通知書の写しなど
雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書 記載例はこちら
休業協定書 記載例はこちら
事業所の規模を確認する書類  

なお、従業員が概ね20名以下の事業所や個人事業主(小規模事業所)向けの支給申請マニュアル、支給申請書式はこちらから確認できます。

支給申請マニュアル

支給申請様式(手書きPDF)

雇用調整助成金の受給の流れ

通常の雇用調整助成金の受給フローは、

  • 休業の計画を作成して労使協定を締結
  • 計画届(支給申請に必要な書類一式)の提出
  • 休業の実施
  • 支給申請
  • (約2ヶ月後)労働局の審査・支給決定

となりますが、現状の特例期間では

  • 休業にかかる労使協定を締結
  • 休業の実施
  • 添付書類一式を含めて、支給申請
  • (約1ヶ月後)労働局の審査・支給決定

といったフローになっています。

休業を実施する

従来は労使協定を締結し、計画届を提出してから「休業」でしたが、休業後の支給申請時に添付書類も含めて、すべて提出することになっています。

労使協定の締結をする

休業の期間、対象者、休業手当の支給率(60%以上)を従業員と話し合ったうえで、事業主代表と従業員代表とで記名・押印をして締結する必要があり、これを「休業協定書」と言います。

休業協定書のフォーマット(愛知労働局で公開されている雛形)

通常は、従業員代表を選出する際に「委任状」の添付が必要ですが、「委任状」は従業員の過半数以上の記名・押印が必要で手間がかかる、ということもあり、この特例措置中は不要となりました。次に「休業実施計画届」を作成します。

支給申請をする

原則は支給申請は休業を実施した判定基礎期間の翌日から2ヵ月以内が期限です。

判定基礎期間とは

計画届を提出する際「判定基礎期間」を選択する必要があります。これは会社でいう「賃金締切期間」のことで、1ヵ月単位で、最大3ヵ月を判定基礎期間として、会社側で任意で選択することになります。

支給申請に際して、「支給要件確認申立書・役員等一覧」「支給申請書」「助成額算定書」「休業・教育訓練実績一覧表」「労働・休日の実績に関する書類」「雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書」「休業協定書」「事業所の規模を確認する書類」を提出する必要があります。

申込書の様式は厚労省:雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウィルス感染症対策特例措置用)にまとめてあり、記載例も載っています。

支給申請してから労働局の審査があり、通常は支給決定までに約2ヶ月かかりますが、厚労省は1ヵ月後の支給を目指しているようです。

雇用調整助成金、支給までの時間を半減(4/10の記事)

まとめ

2022年11月時点の雇用調整助成金の特例措置では、パートやアルバイトといった、従来では休業手当が発生しないような従業員にも「緊急雇用安定助成金」が支給され、解雇をしない中小企業は9/10の助成率、1日の上限額が8,355円となっています。ただし、12月以降は中小企業2/3、大企業1/2と通常の助成率に戻ります。

また、助成金全般に言えることですが、何らかの費用を支払ってから(今回であれば従業員に休業手当を支払ってから)そのお金の一部が数ヶ月後に支給されるので、直近の資金繰りに困っている企業にとっては死活問題と言えるでしょう。

新型コロナ感染症対策の緊急的な助成金、補助金等は減少しつつありますが、コロナの影響を受けた個人事業主や中小企業にたいして、所得税・法人税等の納税猶予、社会保険料等の支払猶予制度や日本政策金融公庫による特別貸付等も実施されています。。

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監修者のコメント
Reメンバー労務オフィス
社会保険労務士 遠藤良介

東京都出身。ビール会社の営業、地方公務員、飲食チェーン店店長等を経て、社会保険労務士事務所に入所。在籍中に社会保険労務士資格を取得し、様々な業種の顧問先の労務担当として従事。現在は、ハローワークのアドバイザーとしてシニア世代の職業相談等に携わりながら、愛知県一宮市にReメンバー労務オフィスを開業。「会社と従業員を、笑顔に」をモットーに日々奮闘中。

コロナの影響にかかる、雇用調整助成金の支給実績は2022年6月現在、約5.8兆円といわれており、リーマンショック時の2009年〜2010年の支給実績の約1兆円をはるかにしのぎます。

2年以上にわたる特例措置の実施によって、失業率を2〜3%に抑えるなど雇用の下支えがされたといわれる一方、本当に人手が必要だった業種への労働移動が停滞した側面も指摘されています。

ウイズコロナ、ビヨンドコロナといわれる現在、雇用調整助成金といった「守り」の助成金から、経営を反転攻勢させるための助成金・補助金等も多く存在します。

是非、社会保険労務士や税理士、中小企業診断士等の専門家にご相談いただき、経営の一助にしてください。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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