外国人雇用をしている企業が使える助成金制度とは?
企業が新たに人材を採用する場合に、助成金が交付される制度はいくつもあります。その中には、外国人雇用をしている企業に向けたものもあります。すでに外国人雇用をしているところでも、新たに雇用をするケースでも適用されることがありますので、上手に活用したいものです。具体的にどんな助成金があるのか、どのような適用条件となっているかを確認して、自社でも申請が可能かを調べてみましょう。
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外国人雇用で使える助成金の特徴
まず、助成金そのものについての知識を知っておくと理解がしやすいです。助成金は基本的に厚生労働省が行っている制度で、雇用を増加させたり人材育成をしたりする企業に対して支給されます。
全体的に支給を受けるのは公表されている条件を満たせば難しくなく、申請をすれば通ることがほとんどです。また、日本人だけでなく外国人雇用をしていても問題なく、特に国籍についての条件がないことも多いです。
こうしたことから、雇用を増やしたり研修制度を充実させたりして、人材を育成するための取り組みをしているのであれば、比較的申請がしやすくなっています。
雇用調整助成金
感染症の影響などで経済が悪化している状況にあり、従業員の数を減らすことを考えている企業も多くあります。そこで、この雇用調整助成金は解雇をできるだけ減らすために設けられています。特に経営が厳しくなっている企業にメリットのある助成金ですので、その内容をチェックしてみましょう。
目的と支給額
財務状況が悪化している、売り上げが落ちているなどの理由で事業を縮小しないといけない企業が、既に雇用している従業員を解雇しなくても済むようにという目的で出される助成金です。解雇する代わりに、一時的に休業させたり、出向や教育訓練を行ったりする場合に支給されます。
助成率 | 上限額 | |
---|---|---|
中小企業 | 2/3 | 8,355円 |
大企業 | 1/2 | 8,355円 |
支給額の限度は、休業や出向させる場合において1人当たり8,355円で、最大で1年間当たり100日、3年間で300日となります。大企業は実質給与の半額、中小企業は3分の2です。
事業所外における教育訓練を施す場合は、大企業は1人当たり2,000円で、中小企業は3,000円です。事業所内の教育訓練だと、大企業は1,000円、中小企業は1,500円となります。
令和4年11月までの特例措置
令和4年11月までの特例措置として下記の助成率でサポートしていますが、令和4年12月以降は特に業況が厳しい事業主を除き通常制度に戻ります。
助成率 | 上限額 | |
---|---|---|
中小企業 | 4/5 | 8,355円 |
大企業 | 2/3 | 8,355円 |
対象者
雇用保険に加入していることが条件となり、労使協定に基づいて休業や出向がなされている必要があります。そして、直近3か月の売上高や生産量の平均が、前年度の同じ時期に比べると10パーセント以上減っていることも条件です。
トライアル雇用助成金
新たに外国人雇用を行いたいと思っている場合、すぐに本格登用をするのではなく、試用期間を設けることがあります。その場合のトライアル期間について交付される助成金となります。ハローワークとの連携によって実施されている制度です。
目的と支給額
雇用契約を正式に結ぶ前に、トライアル期間を設けることによって、事業者側にしても従業員側にしてもミスマッチが生じないようにするという目的があります。こうすることで、離職をできるだけ防げますし、雇用機会そのものが増えることになります。早期就職を促進するのにも役立つ制度となっています。
最大で1月当たり4万円の助成金が支給されて、最大で3か月まで対象となります。複数人の外国人雇用を行った場合にも対象となり、支給額も他の制度と比べて大きいので上手に活用することでメリットが増します。
対象者
いくつかの条件があり、いずれかを満たせば支給を受けられます。たとえば、過去2年において2回以上離職していたり転職していたりする人を雇用した場合です。
また、紹介された日の段階で離職期間が1年を超えている人も対象となります。他にも、ニートやフリーターといった状態になっていて、45歳未満であればやはり支給対象者となります。さらに、生活保護を受けているとかホームレスの状態に陥っている人など、特別な環境にいる人を雇用するケースにも適用されます。
いろいろな条件がありますので、適用されるかどうかを確認して申請を行いましょう。申請は、試用を始めてから2週間以内にハローワークに宛てて、実施計画書という所定の書類を提出することが求められます。
キャリアアップ助成金
非正規雇用ではなく正規雇用をした場合に利用できる助成金です。外国人雇用においては、パートやアルバイトでの雇用も多いものですが、正規雇用に移行する際に利用できる制度です。
目的と支給額
非正規雇用者はどうしても不安定な状態に置かれるため、正規雇用を促進するために設けられています。正社員化することで企業としても安定的な人材確保ができます。また、処遇改善という意味合いもあり、賃金向上などの取り組みを促進するためのものとなっています。
有期雇用から正規雇用に移行することで、1人当たり57万円の助成金が支給されます。他にも有期雇用から無期雇用とすることで、1人当たり28万5,000円が支給されるなどもあります。
今までの雇用形態と、新たに契約を結ぶ雇用形態によって支給額が異なります。上限は最大で1年間で20人まで活用できますので、使い方によってはかなり大きな額の支給を得られることになります。
対象者
対象となるのは、入社もしくは該当する企業で働き始めてから6か月以上経つ有期契約労働者、無期労働契約者です。また、同じ期間以上働いている派遣社員も含まれます。さらに、特別育成訓練コースを受けた後に入ってきた有期契約労働者についても対象となります。
ここでの注意点としては、技能実習生や留学生は対象者に含まれないという点です。あくまでも定住者を目的とした助成金制度ですので、外国人雇用において利用する場合には、ビザの種類に注意しましょう。
申請する場合には、すでに非正規社員が正規雇用となっていて、その状態で半年間給与を支給していることが条件となります。その期間が満了してから、2か月以内に申請をする必要があります。定型の書類が用意されていますので、事前にダウンロードして記入してから申請をします。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
目的と支給額
外国人の就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主を支援する制度となっています。原則、至急経費の1/2(2/3)で上限額は57万円(72万)となっています。(※括弧内の数字は生産性要件をクリアした事業所に対する助成率・上限額となります。)
- 雇用労務責任者の選任
- 就業規則等の社内規程の多言語化
- 苦情・相談体制の整備
- 一時帰国のための休暇制度の整備
- 社内マニュアル・標識類等の多言語化
外国人労働者を雇用する事業主が、1雇用労務責任者の選任、2就業規則等の社内規程の多言語化(1,2は必須)と3〜5のいずれかを選択し、導入した際にその経費(通訳費、翻訳機器導入費、翻訳料、弁護士・社労士への委託料、社内標識類の設備改修費)の一部を支給する制度です。
まとめ
外国人雇用をしている企業でも、様々な助成金制度を利用することができ、上手に活用すれば大きな助けを得られます。試用期間を設ける場合や今まで非正規雇用をしていた人を正規雇用にする場合など、いろいろなシーンに合ったものがあります。さらには、経済状況が厳しくなった場合に申請できるものもあって、人材を確保し続けるための資金を得られます。
全体として、支給条件を満たしていればそれほど制度利用のハードルは高くないので、まずは自社が対象となるかどうかを確認してみましょう。その上で、必要な書類を作成して官公庁に提出して助成金を受け取ることができます。
東京都出身。ビール会社の営業、地方公務員、飲食チェーン店店長等を経て、社会保険労務士事務所に入所。在籍中に社会保険労務士資格を取得し、様々な業種の顧問先の労務担当として従事。現在は、ハローワークのアドバイザーとしてシニア世代の職業相談等に携わりながら、愛知県一宮市にReメンバー労務オフィスを開業。「会社と従業員を、笑顔に」をモットーに日々奮闘中。
1.雇用契約を明確にしないことによる、労働条件をめぐるトラブルが度々起こる
2.外国人労働者を受け入れるための環境整備が不十分
3.日本語学習機会のサポートが難しく、戦力化に時間がかかる
4.文化、風習、宗教等の違いからくる職場内トラブル
などが挙げられます。
また、外国人労働者は技能習得以上に「賃金」面にはシビアに考える傾向もあります。賃金を含む労働条件の不備は、外国人人材(に限らずですが)の損失に直結します。
前述の助成金を活用して、優秀な外国人人材の定着を図り、業績向上につなげましょう。
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