法人の相続と株式の関係は?相続税の節税方法についても詳しく解説

竹中啓倫税理士事務所
監修者
竹中啓倫税理士事務所 税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
最終更新日:2023年08月28日
法人の相続と株式の関係は?相続税の節税方法についても詳しく解説
この記事で解決できるお悩み
  • 法人を相続するってどういうこと?
  • 安定して法人の経営権を相続するためにはどうしたらいい?
  • 法人化すると相続税を節税できるの?

「亡くなった方の法人はどのように相続するの?」とお悩みの方、必見です。亡くなった方が法人を持っている場合、財産として相続されるのは「法人」ではなく、亡くなった方が所有していた「法人の株式」です。

この記事では、株式を相続する際の節税方法や、安定して法人を相続する方法を解説します。最後まで読めば、法人の相続にかかる相続税を少なくできるでしょう。法人を相続する可能性がある方は、ぜひ参考にしてください。

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法人の相続とは株式を相続すること

「法人の相続」とは会社の財産すべてを相続することではありません。亡くなった方が持っていた「会社の株式」を相続することを指します。法人は人間と同じ「個人」として扱われるため、会社の財産は会社の所有物です。

株式を相続する際の節税対策

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株式を相続する場合、価値によって相続税がかかります。相続税の節税対策は以下の2つです。

  • 株式の評価額を下げる
  • 法人版事業承継税制を利用する

株式の評価額を下げる

株式の評価額が高い場合、相続する遺産総額も高くなります。遺産総額が基礎控除額を超え、差が大きくなるほど、相続税の金額も高くなるでしょう。相続税を節税する方法の1つとして、株式の評価額を下げる方法があります。

以下の3つを行うと、会社の総資産を減らし、株式の評価額を下げることが可能です。相続する株の評価額が下がると遺産総額も下がるため、支払う相続税が少なくなります。

  • 先代経営者の退職金として支給する
  • 遊休資産や含み損のある資産を売却する
  • 投資不動産を購入する

法人版事業承継税制を利用する

法人版事業承継税制とは「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除の特例等」とも呼ばれる、株式の相続に関係する制度です。

経営承継円滑化法を受けている非上場会社の株式を相続した場合、相続税の納税猶予を受けられます。法人を続けているか、株を売却しない限り納税猶予を受けることが可能です。株式を次の世代へ相続すると、納税猶予されていた相続税は免除されます。

法人の廃業や、株式を売却した場合は納税猶予を取り消され、相続税を支払わなければいけません。法人版事業承継税制は、法人を続けているか、株式を保有し続けていることを証明するために、報告書を提出する必要があります。

安定して法人の経営権を相続する方法

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後継者が株式の3分の2を取得できれば、会社の経営権を安定して相続することが可能です。相続人が複数人いる場合、遺産分割協議が行われると、予定どおりに相続できない可能性があります。

確実に後継者へ法人の経営権を相続させたい場合は、経営者が生前に対策をすることが大切です。対策方法は、以下の3つがあります。

  • 遺言書の作成
  • 生前贈与
  • 経営承継円滑化法の活用

遺言書の作成

遺言書を残すと、亡くなった人の意思を明確に伝えることが可能です。相続人が複数人いる場合は遺留分に対する配慮を行う必要があります。遺留分を侵害されている相続人がいる場合は、遺留分侵害額請求を行われる可能性もあるため注意しましょう。

遺留分とは

遺留分とは、法定相続人に最低限保障されている相続額のことです。亡くなった方が遺言書を作成していた場合、特定の相手に指定した財産を相続させられます。

他の法定相続人の相続分が極端に減ってしまうと、最低限の保障が侵害されたとして、遺留分に足りていない金額を取り戻すことが可能です。

生前贈与

生前に株式を後継者に贈与すると、亡くなった後の相続に関係なく、確実に法人を引き継ぐことが可能です。株式の贈与は口頭でもできますが、贈与契約書を作成して証拠を残しておくと、誰の目から見ても後継者が明らかとなるでしょう。

経営承継円滑化法の活用

経営承継円滑化法とは「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」のことです。

他の法定相続人によって、遺留分侵害額請求の手続きが行われた場合、後継者が相続する予定だった株式が分散する可能性があります。株式が分散すると、後継者が経営権を相続できないおそれもあるでしょう。

経営承継円滑化法を活用すると「遺留分に関する民法の特例」において、相続による株式の分散を防止できます。安定して法人の経営権を相続できるよう、援助してもらうことが可能です。

法人の相続を放棄したい場合は?

法人の相続放棄は、手続きを期限内に行えば可能です。

相続放棄申述書を提出する

相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に、相続放棄申述書を提出しましょう。相続放棄申述書は家庭裁判所や、家庭裁判所HPから入手可能です。必要書類をそろえ、亡くなった方の最後の住所地がある家庭裁判所に、提出することで手続きができます。

法人化で相続税を節税する方法

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法人は制度であり、法律によって権利義務の取得を認められた組織です。法人は人間と同じ「個人」として扱われます。法人を作るために出資した個人が亡くなったとしても、法人の財産は法人のものであり、亡くなった人の相続財産ではありません。

個人で法人を設立し、個人の所有財産を法人の所有物にした場合、法人を設立した方が亡くなっても相続財産から除外されます。相続財産から除外されるため、相続税の対象にもなりません。

相続人に役員報酬として支払う

法人化した場合、相続人となる人を役員にして役員報酬を支払う形にすると、あらかじめ財産を移転しても贈与にはなりません。相続財産の先渡しが可能になります。

受け取った側に所得税が課せられますが、贈与税や相続税が課されないことは大きな恩恵であり、有効な節税対策です。株式会社には役員に関する制限も特にないため、相続人を役員に選任することは合理的な方法でしょう。

役員ではなく社員にすると勤務実態が必要になるため、まったく事業に関わっていない場合は問題になります。役員であれば勤務実態を問われることがなく、リスクも少ないためおすすめです。

相続税対策で法人化するコツ

法人には、株式会社や合同会社、NPOや一般社団・財団法人など、さまざまな形式があります。現行制度から考えると、手続きやコストが少なく、資本金の制限もない株式会社が法人化しやすい形式でしょう。

資本金は、社会的信用を得やすく、消費税の申告も必要ない1,000万円を切るあたりに設定するのが妥当です。

株主は誰がなるべきか

相続税対策で法人化する場合、相続人が株主になることが理想です。経営の仕方や株式の所有割合などを生前に十分話し合い、納得のいく形にしましょう。

個人事業主が法人化する場合

個人事業主であった人が法人化する場合、赤字であっても、地方税の法人住民税を納付しなければなりません。

個人事業主の場合は、赤字であれば税金を納める必要がありませんでしたが、法人化することによって変わるため注意しましょう。利益を出さない場合、法人所得税や法人事業税の納付は必要ありません。

相続税対策として法人化するデメリット

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法人を設立できたら、国や自治体の定める法律や規則に則り、事業を運営しなければいけません。法人化の目的が相続税対策の場合でも、法人として事業を行っていく覚悟や知識が必要です。 会計原則や会社法に則した経理処理なども行う必要があります。

事業を行っていくことがデメリットであると一概にはいえませんが、経営者として事業を行う意欲がない場合は、安易に選択すべきではないでしょう。

まとめ

法人を相続する場合は、会社の財産ではなく亡くなった方の持つ株式を相続します。経営権を安定して相続させたい場合は、生前の対策が大切であるため、事前に話し合いをしましょう。株式の評価額を下げたり法人化したりすることで、相続税の節税が可能です。

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監修者のコメント
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

法人化による節税策は、相続税の基礎控除が減額され、相続税課税の裾野が広がってといえますし、また、相続開始前3年以内が相続財産に取り込まれますが、先の公表された令和5年度税制改正大綱では、相続開始前7年以内に拡大(改悪)され、相続税が実質増税され、より強力な節税策が要望されます。

法人化により、相続税は軽減されるという考えがありますが、現実的に、相続税は減らすことができると思います。事実だと思います。ただ、考えていただきたいのは、法人化されたお金を個人に取り戻して、個人で使い場合の税金も考えなければなりません。

以下は、私の個人的な考えにすぎませんが、個人で使用する場合、法人から個人に動かして個人で使用する場合、一工程余分にかかります。手続きが余分にかかる可能性もありますし、法人から個人に動かした場合の課税(余計な税金)の有無を検討する必要もあります。

有り余ったお金を次世代に右から左に動かすだけなら、法人化で問題ありませんが、そのお金を生きているうちに使用する可能性がある場合には考える必要があると考えます。

その部分も検討した上に、税理士等に相談することをお勧めいたします。それぞれ個人には、その人に合った節税案がありますので、じっくり相談の上、決めてください。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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