未成工事支出金を棚卸資産として扱うのはなぜ?計算方法や仕訳例を解説

最終更新日:2023年09月28日
竹中啓倫税理士事務所
監修者
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
未成工事支出金を棚卸資産として扱うのはなぜ?計算方法や仕訳例を解説
この記事で解決できるお悩み
  • 未成工事支出金とはどういうもの?
  • 未成工事支出金の計算方法や仕訳例って?
  • 未成工事支出金を棚卸資産として扱うのはなぜ?

「未成工事支出金と棚卸資産について知りたい」とお悩みの方、必見です。未成工事支出金は建設業界で用いられる勘定科目です。

この記事では、個人事業主や中小企業の経理担当者へ向けて、未成工事支出金の概要から棚卸資産として扱われる理由などを詳しく解説します。記事を読み終わった頃には、未成工事支出金の仕訳方法がわかり、棚卸資産との関係も理解できるでしょう。

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未成工事支出金とは?

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未成工事支出金とはまだ完成していない工事にかかった経費を一時的に計上するため勘定科目です。工事の完成までは資産計上して次期に繰り越し、完成したら経費として振り替えて処理します。他の業界での会計処理には存在せず、建設業会計に特有のものです。

建設業界では商品の製造に数年以上かかることも珍しくないため、一般的な1年の会計期間で処理すると、利益や税金を正確に計算できない場合があります。建設業会計には前述のような矛盾・ミスマッチを解消するために独自の勘定科目・会計処理が用意されており、未成工事支出金もそういった建設業に特有な仕組みの1つです。

未成工事支出金は一般的な企業会計での「仕掛品」にあたる

未成工事支出金は一般会計での「仕掛品」に相当する勘定科目です。建設業界以外での経理・会計業務を行ったことがある方はイメージしやすいでしょう。

まだ完成していない製品・商品にかかった経費を一時的に資産計上するための勘定科目という意味で、未成工事支出金と仕掛品は同じと言えます。

未成工事支出金は売上と経費を同時に計上するために存在する

未成工事支出金という勘定科目が存在するのは売上と経費を同時に会計上で処理するためです。工事の開始と終了で事業年度をまたいだ場合、経費や売上を都度計上すると利益や税金を正確に計算できません

例えば、3000万円で受注した工事を、3年間で900万円ずつの経費をかけて完成させたとしましょう。経費と売上の会計上の処理について、未成工事支出金という勘定科目がある場合とない場合で分けた例が下記です。

  未成工事支出金がある場合 未成工事支出金がない場合
1年目 経費0万円
売上0万円
経費900万円
売上0万円
2年目 経費0万円
売上0万円
経費900万円
売上0万円
3年目 経費2700万円
売上3000万円
経費900万円
売上3000万円

未成工事支出金がない場合では、売上の3000万円を計上する前年と前々年に経費が900万円ずつ計上されています。つまり売上と経費の対応関係が成り立っていません。このような状態を避けるために、経費を一時的に未成工事支出金として計上しています。

未成工事支出金の計算方法

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未成工事支出金は直接原価と間接原価の合計です。それぞれの種類を以下の表にまとめたのでご覧ください。

直接原価の種類 ・材料費
・労務費
・外注費
・経費
間接原価の種類(例) ・複数の工事に共通する労務費
・直接原価を特定できない材料費、減価償却費など

直接原価とは、当該工事のみにかかった直接的な経費を指します。

間接原価の計上に当たっては、一定の賦課基準を用いて妥当な会計処理を行ってください。賦課とは、一定の基準で部門や製品ごとに費用を配分処理することです。間接原価を明確にするのは難しいため設けられています。賦課基準の種類は以下の4つです。

  • 価額基準
  • 時間基準
  • 数量基準
  • 売上基準

例:未成工事支出金の算出方法

例えば工事Aにかかった直接原価が100万円、価額基準で工事A・Bに50%ずつ配賦される間接原価が20万円あったとしましょう。この場合、工事Aにかかる未成工事支出金は下記の計算から110万円です。

例:未成工事支出金の算出方法

100万円(直接原価) + 20万円(間接原価) × 50% (配賦)= 110万円

注意点として、未成工事支出金はあくまで工事にかかった原価を一時的に資産計上するための勘定科目です。したがって現場の事務員に支払われる給与といった原価に該当しない費用は未成工事支出金に含まれません。

未成工事支出金の仕訳例

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ここからは未成工事支出金の具体的な仕訳例について、次の2ケースに分けて簡単に見ていきます。

  • 現金で支払ったケース
  • 請求書を受け取った(掛けで仕入れた)ケース

現金で支払ったケースの仕訳

現在進行中の工事にかかる建設資材の引き渡しを受け材料費として10万円を現金で支払ったケースでは、次のような仕訳が発生します。

処理1:未成工事にかかる経費を現金で支払い、未成工事支出金として処理。

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 100,000円 現金 100,000円

処理2:工事が完成したため、未成工事支出金を経費として振り替え。

借方 金額 貸方 金額
材料費 100,000円 未成工事支出金 100,000円

請求書を受け取った(掛けで仕入れた)ケースの仕訳

現在進行中の工事にかかる建設資材の引き渡しを受け材料費として10万円分の請求書を受け取ったケースでは、次のような仕訳が発生します。

処理1:未成工事にかかる経費の請求書を受け取り、未成工事支出金として処理。

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 100,000円 工事未払金 100,000円

処理2:工事が完成したため、未成工事支出金を経費として振り替え。

借方 金額 貸方 金額
材料費 100,000円 未成工事支出金 100,000円

また補足として、未払金の現金決済を行った場合は一般会計での買掛金と同様に下記のような仕訳が発生します。

借方 金額 貸方 金額
工事未払金 100,000円 現金 100,000円

未成工事支出金の仕訳に関する注意点

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未成工事支出金の仕訳を行う際は、次の2点に注意しましょう。

  • 工事が完了したタイミングで経費計上する
  • 掛で仕入れた場合の貸方は「買掛金」ではなく「工事未払金」を計上する

下記でそれぞれ解説するので参考にしてください。

工事が完成したタイミングで経費計上する

未成工事支出金は工事が完成し引渡しが完了したタイミングで「完成工事原価」として振り替えましょう。会計処理で経費と売上を対応させることが未成工事支出金の目的です。したがって工事が完成して売上を計上できるようになるまでは経費も計上できません

ここでは、以下の2つの方法を覚えていてください。

  • 工事完成基準

    上記のように、工事が完成したタイミングで、それまで積み立てていた未成工事支出金をまとめて経費計上する方法。

  • 工事進行基準

    工事の進捗度合いに応じて、期末ごとに未成工事支出金を経費計上する方法。現在では採用可能になっている。

工事完成基準と工事進行基準にはそれぞれメリット・デメリットがあり、一概にどちらが良いとは言えません。しかし会計処理としてはどちらか一方への統一が必要です。経営陣や税理士と相談し、どちらを採用するか決定してください。

工事完成基準と工事進行基準それぞれのメリット・デメリットを簡易的に示した表が下記です。

工事完成基準 工事進行基準
メリット 一度の振り替えで済むため会計処理が簡便 期末ごとに損益計算が行われるため、会計上でも細かく行政を追える
デメリット 会計上では期末ごとの損益計算がなされず、赤字受注が起こりやすい ・会計処理の手間が増えて負担が大きい
・日本では比較的新しい方式のため整備が粗い部分もある

掛けで仕入れた場合の貸方は「買掛金」ではなく「工事未払金」を計上する

掛けで仕入れを行った場合、貸方には「買掛金」ではなく「工事未払金」を計上しましょう。工事未払金も建設業会計にのみ存在している勘定科目です。ただし仕入れにかかる未払金を処理するという意味では一般会計で利用される買掛金と共通しています。

建設業会計と一般会計で、工事未払金と買掛金、未成工事支出金と仕掛品がそれぞれ対応していると考えるとわかりやすいかもしれません。

未成工事支出金についてのよくある疑問

question

未成工事支出金の解説の最後に、下記の3つのようなよくある疑問・質問にお答えします。

  • なぜ未成工事支出金を棚卸資産として扱うのか
  • 未成工事支出金は粉飾決算の原因になりやすいのか
  • 未成工事支出金にかかる消費税はどう処理するのか

それぞれの答えとその理由を簡単に解説します。疑問に思う項目があれば参照してください。

なぜ未成工事支出金を棚卸資産として扱うの?

未成工事支出金を(棚卸)資産として扱うのは、工事中の建物の所有権が建築会社にあるからです。民法第六百三十三条において「報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に支払わなければならない」と定められています。逆に言えば、報酬が支払われる(=売上が立つ)まで、仕事の目的物(=工事中の建物)は、仕事の請負人(=建築会社)のものである、ということです。

建築会社は資産計上された未成工事支出金に対応する売上金を請求する権利を持っているとも言えるでしょう。企業会計において、資産は将来的な収益をもたらすものです。したがって将来的に売上をもたらす項目である未成工事支出金は資産として扱います。

参照元:民法第六百三十三条

未成工事支出金は粉飾決算の原因になりやすい?

未成工事支出金は故意・過失を問わず粉飾決算の原因になりやすいと言えます。

未成工事支出金はそもそもが当期に発生した売上を一時的に資産計上して次期に繰り越すために存在する勘定科目です。よって未成工事支出金を利用することで、一見怪しくないような形で経費を不正に繰り越せます。

具体的には「当期の利益を多く見せ投資家の印象を良くするために、当期中に完成した工事にかかる原価を未成工事支出金として次期に繰り越す」といった手法が該当するでしょう。

未成工事支出金は粉飾決算の原因になりやすく、厳しくチェックされます。過失であっても罰則を逃れられないため、税理士にも確認しながら正確な会計処理を心がけましょう。

未成工事支出金に係る消費税はどう処理する?

未成工事支出金に係る消費税は通常通り引渡しのタイミングで処理します。

未成工事支出金としての資産計上・次期繰越は法人税法での処理であり、消費税法での処理とは直接的には関係がありません。未成工事支出金として一時的に資産計上している経費にかかった消費税も、当期中の控除額に含みます。

【まとめ】未成工事支出金を理解して正しく会計処理を行おう

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本記事では未成工事支出金の概要や処理方法について解説しました。改めてまとめたものが下記です。

  • 未成工事支出金は売上と経費を会計上で対応させるために存在する
  • 直接原価と間接原価の合計で計算できる
  • 工事の完成までは資産計上して次期に繰り越す
  • 工事が完成したら経費として振り替える

未成工事支出金は建設業会計でのみ扱われ、故意・過失を問わず会計処理上でのミスが起きやすい勘定科目です。

大きな問題を未然に防ぐためにも、未成工事支出金について理解を深めたうえで会計処理を行いましょう。不安な方は専用の会計ソフト導入も検討してみてください。

監修者の一言

建設業になれていない方には、見慣れない勘定科目が出てきて非常にわかりづらいかと思います。建設業の場合、受注から完成まで時間がかかり、時には決算を跨いだりします。それまでの期間、工事にかかる費用を発生しますので、建設会社等は先に経費を払う必要があります。

また、お金も引き渡し時に一括支払いではなく、中間金として複数回にわたることもあります。お金の流れはそうなのですが、損益計算書への反映方法はお金の流れと一致はしません。

反映方法としては2通りあり、工事完成のタイミングで、工事売上・工事原価共に一括で計上する工事完成基準と、工事の進行度合いに応じて、工事売上・工事原価を計上する方法があります。

工事進行度合いに応じて、売上・原価共に計上するの工事進行基準が自然な感じもありますが、会計処理の手間が増えることから、工事完成時に、売上・原価共に一括で計上する原則的工事完成基準も残っています。

竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
監修者

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

比較ビズ編集部
執筆者
比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。
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