棚卸資産の評価方法についての届出とは?書き方や提出方法を徹底解説!
- 棚卸資産の評価方法の届出はどうやって書くの?
- 棚卸資産の評価方法にはどんなものがある?
- 棚卸資産の評価方法の届出を提出しないとどうなる?
棚卸資産の評価方法は主に「原価法」と「低価法」の2つに分けられます。
棚卸資産の評価方法によって、実務が簡便になったり実態を正しく反映できたりします。そのためには、自社に適した評価方法や正しい届け出の書き方を知ることが大切です。
この記事では、棚卸資産の評価方法の届出の書き方や評価方法、届出の提出期限についても説明します。棚卸資産を所有している企業や個人事業主の方は、ぜひ参考にしてください。
棚卸資産の評価方法の届出はどのように書く?
個人事業主の方は別のフォーマット書類となっています。ですが記載する事項は基本的に同じですので参考にして見てください。
棚卸資産の評価方法の届出は、所有している棚卸資産をどのような方法で評価するのか申告するものです。届出にはいくつか項目があるため、漏れなく記入しなければいけません。書類は国税庁のホームページからダウンロード可能です。
以下の手順で届け出を提出します。
- 日付・税務署名を記入
- 提出法人にチェックを入れる
- 納税地・法人名義・法人番号を記入
- 代表者氏名・代表者住所・事業種目を記入
- 事業種類を記入
- 評価方法を記入
- 参考事項を記入
- 税理士の署名押印
1. 日付・税務署名を記入
棚卸資産の評価方法の届出の最初に、提出年月日と納税地の所轄税務署を書きます。納税地の所轄税務署を忘れてしまった場合には、国税庁のホームページ内の「国税局・税務署を調べる」から検索しましょう。
2. 提出法人にチェックを入れる
次に、提出法人にチェックを入れます。提出法人は「単体法人」と「連結親法人」の選択肢があるので、該当する方にチェックを入れましょう。
グループ企業の親企業でない限り、「単体法人」を選択します。
3. 納税地・法人名義・法人番号を記入
納税地・法人名義・法人番号を記入します。法人名義は前株・後株を含め正確に記載することが重要です。(前株は株式会社〇〇」、後株は「△△株式会社」といった記載の事)法人には13桁の番号が付与されているので、その番号を記入しましょう。忘れてしまった場合には、国税庁のホームページ内の「法人番号公表サイト」から検索しましょう。
4. 代表者氏名・代表者住所・事業種目を記入
会社の代表者氏名・代表者住所・事業種目を記入します。事業種目は定款に記載されているものを記載しましょう。
5. 事業種類を記入
事業の種類の欄は、今行っている事業の内容を種類別に書きます。 複数の事業所がある場合には、事業所ごとに記入しても問題ありません。
6. 評価方法を記入
棚卸資産の評価方法を記入します。選択できる評価方法は原価法と低価法の2種類です。原価法で用いる取得価額の求め方は以下の6つに分かれています。
- 個別法
- 先入先出法
- 総平均法
- 移動平均法
- 最終仕入原価法
- 売価還元法
7. 参考事項を記入
必要に応じて参考事項を記入します。たとえば、新しく会社を設立して届出を提出するのであれば、設立年月日が必要です。
新しく事業を始めた、事業を変更したケースでも開始・変更の日付を記入しましょう。
8. 税理士の署名押印
棚卸資産の評価方法の届出を税理士が作成した場合には、税理士の署名押印が必要です。
基本的に空欄のままでいい項目
棚卸資産の評価方法の届出には、基本的に空欄のまま提出していい項目があります。たとえば、「連結子法人」「整理番号・連結グループ整理番号」「税務署処理欄」などがそうです。
連結子法人とは、100%国内子会社で、連結親法人が発行済株式の全部を直接的もしくは間接的に保有している内国法人のこと。連結親法人で、連結子法人の届出を行うケースは稀なので、該当しない場合には空欄のまま提出しましょう。整理番号や税務署処理欄は、必要に応じて税務署が使用する欄なので提出者が記入する必要はありません。
棚卸資産の評価方法の届出は提出期限がある
棚卸資産の評価方法の届出の提出期限は確定申告書と同じです。新しく会社を設立した場合には、設立第1期の確定申告書の提出期限までに届出を提出しなければなりません。
新たに事業を始めた、もしくは事業を変更した場合も同様に、開始・変更の日が属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届出を出すべきです。
棚卸資産の評価方法は原価法か低価法
棚卸資産の評価方法は、原価法か低価法の2種類と定められています。それぞれの評価方法によってメリットとデメリットがあるので、評価方法の概要について知っておくことが重要です。
原価法
原価法には以下の6つの種類があります。それぞれのメリットとデメリットをご紹介します。
1. 個別法
個別法は、在庫を仕入れたときの単価を使って棚卸資産を評価する方法です。実際の商品の流れと資産の価格を一致させられるのがメリットとなります。
ただし、棚卸資産の数や種類が多い場合には事務作業が多くなるデメリットがあるため、宝石や不動産などの個別性の高い棚卸資産の評価方法に適しています。
2. 先入先出法
先入先出法は、先に仕入れた商品から売られていると考えて棚卸資産を評価する方法です。通常、先に仕入れたものから売られていくので、実際の商品の流れと資産の価格が一致するのがメリットといえます。
ただし、期末時点の在庫数が最後に仕入れた際の商品の数を上回ると、どの時点で現在の在庫数になったのか調査しなければなりません。やや計算が複雑になるデメリットがあります。
3. 総平均法
総平均法は、該当する年度の仕入代金の合計を仕入れた商品の数で割って単価を計算する方法です。計算が簡単に行えるため、事務作業が楽になるのがメリットといえます。
一方、最後の仕入れまで平均単価が算出できないので、年度の途中における単価計算ができないのがデメリット。なお、1ヶ月単位で区切って平均単価を算出することも認められており、月次単位で計算をすることで、年度の途中における単価計算ができないデメリットが解消できます。
4. 移動平均法
移動平均法は、仕入ごとに平均単価を計算する方法です。仕入ごとに商品の単価が分かるため、随時売上原価を把握できるのがメリット。さらに在庫数についても把握しやすいので、在庫管理に適した評価方法です。
ただし、仕入ごとに平均単価を出さなければならないので、事務作業が多くなるデメリットがあります。
5. 最終仕入原価法
最終仕入原価法は、最後に仕入れた商品の単価を使って棚卸資産を評価する方法です。最後に仕入れた単価を使えるので実務が簡単になるのが大きなメリットとなります。
ただし、在庫数と最後の仕入れ数が異なる場合、棚卸資産の価格が正確に反映されないデメリットがあります。
6. 売価還元法
売価還元法は、類似した商品をグループごとに分け、グループごとに原価率をかけて棚卸資産を評価する方法です。商品ごとに評価しなくていいので、実務が楽になるメリットがあります。
一方、適切にグループ分けすることが難しく、グルーピングにミスがあった場合には棚卸資産の評価額の正確性が著しく損なわれるデメリットがあります。
低価法
低価法には以下の6つの種類があります。
- 個別法による原価法に基づく低価法
- 先入先出法による原価法に基づく低価法
- 総平均法による原価法に基づく低価法
- 移動平均法による原価法に基づく低価法
- 最終仕入原価法による原価法に基づく低価法
- 売価還元法による原価法に基づく低価法
低価法は、時価と原価法による評価額を比較し、低い方の価格を使用できる方法です。時価が原価法の評価額より低い場合、差額を評価損として経費に計上可能。一方、原価法の評価額が時価より低ければ、原価法を使って確定申告できます。
時価が原価法の評価額より低ければ将来発生する損失を予測できるため、棚卸資産の実態を把握しやすいのが大きなメリット。評価損を経費にできるので、所得を減らし節税にもなります。ただし、時価を把握するのが難しい場合がある点や、一度原価法で棚卸資産を評価した後に時価との比較が必要となるため手間がかかる点がデメリットです。
届出を提出しないと評価方法は選べない
棚卸資産の評価方法の届出を提出しないと、評価方法は選べません。棚卸資産の評価方法の届出は絶対に提出しなければならないわけではありませんが、都合のいい評価方法がある場合には提出すべきです。
未提出の場合「最終仕入原価法」が自動適用される
棚卸資産の評価方法の届出を提出しない場合、最終仕入原価法が自動的に適用されます。最終仕入原価法が、税務上の法定評価方法に当たるためです。
会社を設立して間もない方の場合、届出を提出せずに最終仕入原価法が適用されていることがあります。別の評価方法の方が都合がいいとわかったなら、棚卸資産の評価方法の届出を提出しましょう。
まとめ
棚卸資産の評価方法の届出は、それぞれの項目に漏れなく正確に記入しなければなりません。税理士に依頼して、届け出の作成を代行してもらうことも可能です。棚卸資産の評価方法には、それぞれメリットとデメリットがあるので、自分にとって都合のいい評価方法を採用するようにしましょう。
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東京都世田谷区にて会計事務所を運営している。大手監査法人での経験を生かして、税務顧問、決算支援、内部統制導入支援及び研修講師等の業務を行っている。顧客目線でのサービス提供を特長として、個人から上場会社までの幅広い規模・業種の対応を行っている。

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当該記事は、棚卸資産の評価方法を取りまとめたものとなっています。税法では届出を行わない限りは「最終仕入原価法による原価法」を採用することとなり、当該方法が最も計算が簡便となるケースが多いと思います。
記事にもある通り、本来あるべき棚卸資産の価格が正確に反映されないデメリットがあるため、企業の財政状態及び経営成績を把握することを主眼とした場合、適切な評価方法ではない可能性があります。計算上での手間等を踏まえて、棚卸資産の評価方法を選択することが望まれます。
また、在庫管理に関するシステム等を利用している場合には、システム上でどのように評価されているのかを理解し、システムに合わせた棚卸資産の評価方法を選択することが考えられます。
一度届出をおこなった評価方法は、3年間は変更ができないため、その点にも留意が必要です。