65歳超雇用推進助成金とは?3つのコースや支給額・就業規則整備のポイントを解説

社会保険労務士法人 ルーティング
監修者
最終更新日:2024年06月21日
65歳超雇用推進助成金とは?3つのコースや支給額・就業規則整備のポイントを解説
この記事で解決できるお悩み
  • 65歳超雇用推進助成金とは?
  • 65歳超雇用推進助成金でどれくらいの金額が支給されるの?
  • 65歳超雇用推進助成金の申請時のポイントは?

「65歳超雇用推進助成金の概要や支給される金額がわからない...」とお悩みの会社経営者必見。

65歳超雇用推進助成金とは、高年齢者の雇用環境改善を行った事業者に対する助成金です。65歳以上の労働者の雇用継続や定年の廃止・契約無期限の雇用など、高年齢者が働きやすい環境づくりを進めている事業者に支払われます。

本記事では、65歳超雇用推進助成金の3つのコースや支給額・就業規則整備のポイントを解説します。最後まで読めば、65歳雇用推進助成金の概要を理解して、年齢に関係のない働きやすい職場づくりに役立てられるでしょう。

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65歳超雇用推進助成金とは

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65歳超雇用推進助成金とは、高齢者の雇用を推進する制度を整備する事業者に対して支援を行う制度です。高齢者の雇用環境改善を目的としており、65歳以上への定年の引き上げ・高齢者雇用の管理規定の整備などが支給要件として挙げられます。

65歳以上への定年引き上げ・管理規定の整備の具体例は、高年齢の有期契約労働者の無期雇用への転換です。65歳超雇用推進助成金の3つのコースは以下のとおりです。

  • 65歳超継続雇用促進コース
  • 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
  • 高年齢者無期雇用転換コース

参照:令和6年度65歳超雇用推進助成金のご案内|厚生労働省

65歳超継続雇用促進コース

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65歳超継続雇用促進コースとは、以下のいずれかを採用した際に事業主が助成金を受け取れる制度です。

  • 65歳以上への定年引き上げ
  • 定年の定めの廃止
  • 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入
  • 他社による継続雇用制度の導入

助成を受ける要件

助成金を受ける主な要件は以下のとおりです。

  • 制度を規定した際に費用を要した事業主であること
  • 制度を規定した労働協約・就業規則を整備している事業主であること
  • 処置施行の6カ月前の日から給付申請日の前日までの間に 高年齢者雇用安定法第8条・第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと※1
  • 給付申請日の前日において1年以上持続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること
  • 高年齢者雇用等推進者の選任および高年齢者雇用管理においての処置を1つ以上施行している事業主であること

※1 同法第10条の3第2項に基づく勧告を受けていないこと

助成を受ける手続き

助成金を受け取るためには、処置の施行日が属する月の翌月から起算して4カ月以内の各月はじめから5開庁日までに、必要書類を提出します。

提出期間は、行政機関の休日・土曜日・日曜日・国民の祝日に関する法律に規定する休日、および12月29日から翌年1月3日までは除きます。

助成の支給額:15万〜160万円

助成の支給額は15万〜160万円で、以下の取り組みによって金額が異なります。

  • 65歳以上への定年引き上げ
  • 定年の定めの廃止
  • 希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入
  • 他社による継続雇用制度の導入

各処置を施行する場合、施行前の定年・持続雇用年齢が70歳未満である場合に受給できます。他社による継続雇用制度の導入の場合、ほかの事業主の持続雇用年齢も同様です。

他社による継続雇用制度の導入は、給付額を上限に、他社の採用に要した経費の2分の1の額を受給できます。

65歳以上への定年引き上げ

65歳以上への定年引き上げを行った場合の支給額は、以下のとおりです。

対象被保険者数 65歳への定年引き上げ 66〜69歳への定年引き上げ(5歳未満) 66〜69歳への定年引き上げ(5歳以上) 70歳以上への定年引上げ
1〜3人 15万円 20万円 30万円 30万円
4〜6人 20万円 25万円 50万円 50万円
7〜9人 25万円 30万円 85万円 85万円
10人以上 30万円 35万円 105万円 105万円

定年の定めの廃止

定年の定めの廃止を行った場合の支給額は、以下のとおりです。

対象被保険者数 定年の定めの廃止
1〜3人 40万円
4〜6人 80万円
7〜9人 120万円
10人以上 160万円

定年廃止前の年齢が、70歳未満の場合に限ります。

希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入

希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入を行った場合の支給額は、以下のとおりです。

対象被保険者数 66〜69歳への継続雇用の引き上げ 70歳以上への継続雇用の引き上げ
1〜3人 15万円 30万円
4〜6人 25万円 50万円
7〜9人 40万円 80万円
10人以上 60万円 100万円

定年廃止前の年齢や継続雇用年齢が、70歳未満の場合に限ります。

他社による継続雇用制度の導入

他社による継続雇用制度の導入を行った場合の支給額は、以下のとおりです。

措置内容 66〜69歳への継続雇用の引き上げ 70歳以上への継続雇用の引き上げ
支給額(上限額) 10万円 15万円

定年廃止前の年齢や継続雇用年齢・ほかの事業主による継続雇用年齢が、70歳未満の場合に限ります。

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

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高年齢者評価制度等雇用管理改善コースとは、高年齢者向けの持続雇用管理規定の整備にかかる処置を施行した事業主が受給できる制度です。高齢者雇用管理の整備計画を作成して、あらかじめ認定を受ける必要があります。

助成を受ける要件

助成金を受け取る要件は、以下のとおりです。

  • 「雇用管理整備計画書」を提出しており計画内容において認定を受けていること
  • 計画に基づき高年齢者雇用管理整備の処置を施行していること
  • 処置の施行状況・雇用管理整備計画の終了日の翌日から6カ月間の運用状況を明示する書類を整備している事業主であること
  • 雇用管理整備の処置の施行に要した給付該当費用を給付申請日までに支払ったこと
  • 提出日から起算して6カ月前から給付申請日の前日までの間に高年齢者雇用安定法第8条・第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと※1
  • 給付申請日の前日において1年以上持続して雇用されている60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いる事業主であること※2

※1 同法第10条の3第2項に基づく勧告を受けていないこと
※2 講じられた高年齢者雇用管理整備の処置により雇用管理整備計画の終了日の翌日から6カ月以上持続して雇用されている者

助成を受ける手続き

助成金を受け取るためには、2回の手続きが必須です。計画開始の3カ月前の日までに、雇用管理整備計画の認定申請を行います。計画期間内に給付該当処置を行ったあと、計画期間終了日の翌日から6カ月後にあたる日の翌日から2カ月以内に給付申請を行いましょう。

助成の対象となる経費と助成の支給額:該当経費の45〜60%

助成の対象となる経費は、以下のとおりです。

  • 雇用管理規定の採用に必須な専門家に対する委託費・コンサルタントとの相談に要した費用
  • 処置の施行にともない必須となる機器・システム・ソフトウェアなどの採用に要した費用

上記の給付該当経費の金額に、以下の助成率を乗じた額を受給できます。

中小企業の事業主 中小企業以外の事業主
60% 45%

助成対象となる処置

施行期間は1年以内で、助成対象となる処置は以下のとおりです。

  • 高年齢者の職業能力を評する仕組みと賃金・人事処遇規定の導入もしくは改善
  • 高年齢者の希望に応じた短時間勤務規定・隔日勤務規定などの導入もしくは改善
  • 高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務規定の導入もしくは改善
  • 高年齢者が意欲・能力を発揮して働けるために必須な知識を付与するための研修規定の導入もしくは改善
  • 高年齢者に適切な役割を付与する規定の導入もしくは改善
  • 法定外の健康管理規定(胃がん検診・生活習慣病予防検診など)の導入

高年齢者無期雇用転換コース

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高年齢者無期雇用転換コースとは、50歳以上・定年年齢未満の有期契約就業者を無期雇用に移行させた事業主が助成金を受け取れる制度です。無期雇用転換計画の作成・認定・実施で申請できます。1支給申請年度1適用事業所あたり10人までが上限です。

助成の支給額:1人あたり23万〜30万円

高年齢者無期雇用転換コースの支給額は、該当就業者1人あたり23万〜30万円です。企業規模によって金額が異なります。

中小企業の事業主 中小企業以外の事業主
30万円 23万円

該当労働者が複数人在籍している場合は、1支給申請年度1適用事業所あたり、10人までが上限となります。

助成金を受ける要件

助成金を受け取る要件は、以下のとおりです。

  • 「無期雇用転換計画書」の計画内容において認定を受けていること
  • 有期契約就業者を無期雇用就業者に移行する制度を労働協約・就業規則などに準ずるものに規定していること
  • 雇用する50歳以上・定年年齢未満の有期契約就業者を無期雇用就業者に移行すること
  • 移行された就業者を移行後6カ月以上の期間持続して雇用すること※1
  • 高年齢者雇用安定法の規定に違反していないこと
  • 高年齢者雇用安定法第8条・第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと
  • 同法第10条の3第2項に基づく勧告を受けていない事業主であること
  • 高年齢者雇用安定法第8条・第9条第1項の規定と異なる定めをしていないこと
  • 同法第10条の3第2項に基づく勧告を受けていない事業主であること

※1 助成金を受け取るためには、無期雇用に転換後6カ月以上雇用する必要があります。期間は、提出日から起算して6カ月前の日から給付申請日の前日までの間です。

助成を受ける手続き

助成金を受け取るためには、計画開始から起算して6カ月前の日から3カ月前までに申請する必要があります。無期雇用転換計画書に必要書類を添えて、転換の実施にかかわる事業所の所在する都道府県の支部「高齢・障害者業務課」に提出しましょう。

65歳超雇用推進助成金申請における就業規則整備の3つの注意点

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65歳超雇用推進助成金申請における就業規則整備の注意点は、以下の3つです。

  • 取り組み実施前に就業規則を整備する
  • 就業規則の整備は社労士に相談する
  • 高齢者雇用継続安定法を遵守する

65歳超雇用推進助成金は、65歳以上の労働者の雇用環境改善するために必要な費用を助成してくれる制度です。就業規則の整備を行い、65歳以上の労働者の雇用環境を改善するところから始める必要があります。

雇用環境の改善に「何が必要なのか」わからない場合は、社労士に相談するといいでしょう。

取り組み実施前に就業規則を整備する

各助成金の申請に必須な取り組みは、就業規則の整備を行ってから始めましょう。高齢従業員の雇用環境改善計画を立て、実施したうえで申請する必要があるためです。現状の労働環境を見直し、高齢従業員が働きやすい環境を用意します。

高齢従業員の雇用契約の延長・定年の定めの廃止などを行う前に、社労士や専門のコンサルタントへの相談・依頼がおすすめです。助成金の申請は、企業が相談に要した報酬の全額を、経費として負担している必要があります。

社労士・専門のコンサルタントに相談・依頼することでスムーズな申請が可能です。

就業規則の整備は社労士に相談する

就業規則の整備を行う際は、社労士に相談・依頼をしましょう。就業規則の作成・整備を有償で対応できる士業は、社労士のみです。

助成金を申請するためには、就業規則の整備・実施にコストをかける必要があります。助成金は、弁護士・一部の行政書士などへの相談費用も給付対象となりますが、知識・最新情報などの面でも社労士が適任といえるでしょう。

65歳超雇用推進助成金は、社労士・弁護士・一部の行政書士への依頼料でなければ助成金の対象となりません。無資格者による助成金の不正受給が多発しています。確実に申請するためには、社労士への依頼がおすすめです。

高齢者雇用継続安定法を遵守する

助成金受給のために就業規則を見直す場合は、最新の高齢者雇用継続安定法を遵守しなければなりません。65歳超雇用推進助成金は、取り組みを始めてから6カ月後に申請できます。

最新の法律に従い適切に取り組みを行わなければ、再度見直しが必要となり、申請が遅れてしまうでしょう。

65歳超雇用推進助成金は、高年齢者雇用継続安定法第8条・第9条第1項を満たす必要があります。第8条では「定年の年齢を60歳以上」としており、第9条第1項は「65歳までの雇用を確保するために定年の引上げの措置を講じる」としています。

65歳超雇用推進助成金を申請する際の3つのポイント

65歳超雇用推進助成金を申請する際のポイントは、以下の3つです。

  • 独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」に申請する
  • 助成金の申請は早めにする
  • 書類の誤り・不備に注意する

65歳超雇用推進助成金は、申請時の審査で不支給が確定した場合は申立書による救済措置はありません。自社の認識と審査結果が異なる場合でも決定に従わなければならないため、就業規則の整備・実施は慎重に行いましょう。

独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」に申請する

65歳超雇用推進助成金の申請は、各都道府県にある独立行政法人「高齢・障害・求職者支援機構」に申請します。雇用関連の助成金は、ほとんどが管轄の労働局・ハローワークが申請窓口ですが、65歳超雇用推進助成金の窓口は異なるため注意が必要です。

支部は、各地の職業能力開発促進センターに設置されており、高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)が対応してくれます。

助成金の申請は早めにする

65歳超雇用推進助成金の申請は、早めに行いましょう。助成金の申請は、各月・四半期ごとの予算上限を超える見込みの時点で、申請を締め切る場合があるためです。助成金は予算を決めて行われているため、年度によって締切のタイミングが異なります。

65歳超雇用推進助成金は、ほかの雇用関連の助成金に比べて審査が厳しいとされています。審査で不支給が確定した場合の申立書による救済措置もありません。就業規則の整備・実施・申請は慎重に行う必要があるため、早めの取り組みが重要です。

書類の誤り・不備に注意する

65歳超雇用推進助成金は、書類提出後に書類を修正・差し替えはできません。審査で不支給が確定した場合の申立書による救済措置がないためです。

契約書をはじめとする書類を作成し忘れて、提出後に作成する行為は不正受給とみなされる危険性があります。申請は、書類内容を十分に確認してから行いましょう。

まとめ

65歳超雇用推進助成金とは高齢従業員の雇用推進に積極的な企業を支援する制度で、以下3つのコースがあります。

  • 65歳超継続雇用促進コース
  • 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
  • 高年齢者無期雇用転換コース

各コースで支給される助成金額は異なるものの、100万円程度もらえるケースもあります。高齢者雇用継続安定法を遵守し、就業規則の整備・実施を行うことで申請可能です。

不支給が確定した場合の申立書による救済措置がないため、書類提出後の修正・差し替えはできません。就業規則の整備や助成金の申請を確実に行うために、社労士への相談・依頼がおすすめです。

比較ビズでは、多数の社労士事務所のなかから気になる社労士を無料で比較できます。65歳超雇用推進助成金を申請したい方は、ぜひ比較ビズを利用してください。

監修者のコメント
社会保険労務士法人 ルーティング
代表社員 阪井 亮太

社会保険労務士法人ルーティング代表社員阪井亮太。1988年三重県伊勢市出身。趣味は将棋。慶應義塾大学経済学部卒業。ベアリング製造工場の工場長、社労士法人、上場企業の労務担当などを経て2021年1月社会保険労務士として独立。新宿(新宿御苑駅徒歩3分)でスタートアップ企業を中心にを支援を行う。顧問契約40社、助成金申請実績90件、セミナー、研修会講師年間30回。

65歳超雇用推進助成金は高齢者の雇用を検討している企業や定年年齢に近い社員を抱える企業にとっては非常に有用な助成金です。キャリアアップ助成金の正社員化コースが2名対象者がいて114万円(57万円×2名)なのに対し、60歳以上の雇用保険加入者が1人以上いる状態で定年の定めを廃止するだけで120万円得られます。

また、特定求職者雇用開発助成金と併給することも可能で、60歳以上65歳未満の労働者を雇用することでさらに60万円を受給できます。能力はあるが年齢的なところで雇用を躊躇している会社にとっては、非常に嬉しい助成金だと思います。

但し、本文にもある通り審査は厳しく、自ら申請することは非常は難しいでしょう。申請時には社会保険労務士の手を借りることをお勧めします。
※令和3年度の申請は9/27ですでに締め切っています。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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