トライアル雇用助成金とは?受給条件や支給金額・申請手順を徹底解説!
- トライアル雇用助成金とはなに?
- トライアル雇用助成金の受給条件は?
- トライアル雇用助成金受給までの流れは?
労働者を試用雇用するトライアル雇用は、採用のミスマッチや早期離職を防ぐ制度として近年注目を集めています。助成金を受給するためには、制度の理解や雇用計画が必要不可欠です。
本記事では、トライアル雇用助成金制度の仕組みや支給額、申請のポイントなどを解説しています。記事を読めば「いつ、誰が、いくらもらえる助成金なのかわからない」という事業主の方も、制度の有効活用が可能となります。
トライアル雇用助成金とは
トライアル雇用助成金とは、ハローワークから紹介された求職者をトライアル雇用した場合、最長で3カ月間支給される助成金のことです。
トライアル雇用とは、職業経験不足や障害などにより就職が困難な労働者を、3カ月間試行雇用(トライアル雇用)できる制度のことを指します。企業は、求職者を無期雇用契約へ移行することを前提に雇用しなければなりません。
企業と求職者双方の合意のもと、トライアル雇用終了後は無期雇用として労働契約を結びます。
「トライアル雇用制度」は採用のミスマッチを防ぐことが目的
参照:厚生労働省「トライアル雇用助成金リーフレット(事業主向け)」
トライアル雇用制度の目的は、以下の2つです。
- 職業経験不足により就職が困難な労働者に早期就職できる機会を与える
- 正規雇い入れ以前に労働者の適性や能力を見極め、採用におけるミスマッチを防ぐ
企業側は労働者の適性を見極めつつ助成金が受け取れ、求職者側は新しい技能を身につけつつ給与が受け取れます。
トライアル雇用助成金を受ける2つのポイント
トライアル雇用助成金を受ける2つのポイントは以下のとおりです。
- 受給するには4つの条件を満たす必要がある
- メリット・デメリットをふまえて申請を検討する
助成金は、使途が明確に定められていない給付金と性質が異なります。事前に理解を深めたうえで申請を検討しましょう。
受給するには4つの条件を満たす必要がある
トライアル雇用助成金を受給するためには、以下4つの条件を満たしている必要があります。
- ハローワークや職業紹介事業者の紹介で雇い入れること
- 原則3カ月間トライアル雇用すること
- 求職者の1週間の所定労働時間が30時間を下回らないこと(一部例外あり)
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
助成金支給には審査があるため、必要書類は大切に保管しておくことも条件の1つです。
メリット・デメリットをふまえて申請を検討する
トライアル雇用を活用するメリット・デメリットは以下のとおりです。
企業側 | 求職者側 | |
---|---|---|
メリット | ・採用のミスマッチを防止できる ・企業と労働者の相性を確認できる ・助成金が受け取れる ・トライアル雇用終了後の本採用の義務がない |
・本採用前に社風が確認できる ・業種未経験でもチャレンジできる ・ブランクがあっても面接までこぎつけやすい ・業務スキルが習得できる |
デメリット | ・手続きが煩わしい ・人材育成に手間がかかる ・助成金は後払い |
・本採用される保証はない ・解雇されれば短い職歴をつくることになる ・助成金目当ての企業も一部存在する |
助成金は後払いであるため、トライアル雇用中にリアルタイムで活用できません。デメリットもよく考慮のうえ、申請を行う必要があります。
トライアル雇用制度のコースとは
トライアル雇用には、求職対象者に応じて「一般トライアルコース」と「障害者トライアルコース」があります。概要や支給金額が異なるため、それぞれ詳細を説明します。
トライアル雇用助成金:一般トライアルコース
一般トライアルコースは、以下のいずれかに合致する求職者を対象としたコースです。
- 紹介日前日から過去2年以内に2回以上転職や離職をしている
- 紹介日前日時点で離職期間が1年を超える
- 妊娠・出産・育児を理由に離職し、紹介日前日時点で安定した職業に就いていない期間が1年を超える
- 55歳未満でハローワークの担当者制による個別支援を受けている
- 就労に特別な配慮を要する(※)
※生活保護、母子家庭の母、父子家庭の父、日雇労働者、季節労働者、中国残留邦人等永住帰国者、ホームレス、住居喪失不安定就労者、生活困窮者、ウクライナ避難民
紹介日時点で、以下のいずれかに該当する場合はトライアル雇用の対象者にはなりません。
- 自営業または会社役員で週30時間以上働いている
- 学校に在籍している
- 他の事業所でトライアル雇用中である
紹介日とは、ハローワークが企業に対し、求職者を紹介する日のことを指します。
支給金額は1人あたり月額4万円×3カ月
一般トライアルコースの助成金は、1人あたり月額上限4万円、最長3カ月分が支給されます。求職対象者が母子家庭の母もしくは父子家庭の父の場合は、1人あたりの月額上限が5万円になります。
雇用期間が1カ月に満たない月がある場合、就労した日数から計算した金額が支給されます。具体的な計算式と金額は以下のとおりです。
- 対象者が1カ月に就労した日数÷対象者が当該1カ月間に就労を予定していた日数=A
一般トライアルコース | 一般トライアルコース(母子家庭の母・父子家庭の父) | |
---|---|---|
A:75%以上 | 4万円 | 5万円 |
A:50%以上75%未満 | 3万円 | 3万7,500円 |
A:25%以上50%未満 | 2万円 | 2万5,000円 |
A:0%超25%未満 | 1万円 | 1万2,500円 |
A:0% | 0円 | 0円 |
たとえば、20日間の就労を予定していた月に、対象者が8日間の休暇をとった場合を計算してみましょう。
- A:(20−8)÷ 20=0.6(60%)
Aは60%となるため、当該1カ月間の支給額は3万円です。
トライアル雇用助成金:障害者トライアルコース
障害者トライアルコースは、以下のいずれかに合致する障がいを持つ求職者を対象としたコースです。
- 紹介日前日から過去2年以内に2回以上転職や離職をしている
- 紹介日前日時点で離職期間が6カ月を超える
- 就労経験のない職業に就くことを希望している
重度身体障がい者、重度知的障がい者、精神障がい者の場合は上記の要件を満たさなくても対象となります。雇用する障がい者の、障がいの原因や内容は問われません。
支給金額は障がいの種類や勤務形態で異なる
障害者トライアルコースの助成金は、1人あたり月額上限4万円、最長3カ月間分が支給されます。テレワークによる勤務を行う場合は、トライアル雇用期間を6カ月まで延長可能です。支給額は3カ月分となり、期間延長分の支給はありません。
始めの3カ月間は月額8万円、その後の3カ月間は月額4万円が支給され、支給期間は合計6カ月になります。トライアル期間は12カ月間まで延長可能ですが、追加支給はありません。
短時間就労者の雇用も対象になる
長時間労働が難しい精神障がい者や発達障がい者を雇用する場合「障がい者短時間トライアル雇用」を活用できます。週10〜20時間労働から開始し、トライアル期間中に週20時間以上の就労を目指す制度です。助成金は、1人あたり月額上限4万円、最長12カ月分が支給されます。
いずれの場合も、雇用期間が1カ月に満たない月がある場合、就労した日数から計算した金額が支給されます。具体的な計算式と金額は以下のとおりです。
- 対象者が1カ月に就労した日数÷対象者が当該1カ月間に就労を予定していた日数=A
障害者トライアルコース(短時間コース含む) | 障害者トライアルコース(精神障がい者の雇い入れから3カ月間の場合) | |
---|---|---|
A:75%以上 | 4万円 | 8万円 |
A:50%以上75%未満 | 3万円 | 6万円 |
A:25%以上50%未満 | 2万円 | 4万円 |
A:0%超25%未満 | 1万円 | 2万円 |
A:0% | 0円 | 0円 |
たとえば雇い入れた精神障がい者が、20日就労予定の1カ月目に10日、15日就労予定の4カ月目に3日休暇をとった場合を計算してみましょう。
- 1カ月目のA:(20−10)÷ 20=0.5(50%)
- 4カ月目のA:(15−3)÷ 15=0.8(80%)
1カ月目は50%となるため支給額は6万円、4カ月目は80%となるため支給額は4万円です。
トライアル雇用助成金受給までの流れ
トライアル雇用助成金を受給するまでの流れは以下のとおりです。
- 求人を提出する
- 面接を実施しトライアル雇用を開始する
- トライアル雇用実施計画書を提出する
- トライアル雇用終了後に助成金支給申請をする
- 審査後2〜3カ月で助成金が支給される
それぞれのフェーズの注意事項もあわせて説明します。
1. 求人を提出する
最初のステップは、ハローワークへ求人を提出することです。オンラインで求人を提出する場合は「求人者マイページ」>「求人区分」>「トライアル雇用併用の希望」>「希望する」にチェックを入れて完了です。
トライアル雇用求人は、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 「無期雇用」または「トライアル雇用」のいずれも応募が可能な求人であること
- 派遣求人以外の求人であること
2. 面接を実施しトライアル雇用を開始する
ハローワークから紹介を受けた求職者と面接し、選考を経てトライアル雇用を開始します。トライアル雇用の選考は、できる限り書類ではなく面接でおこなう努力義務がある点に注意が必要です。
3. トライアル雇用実施計画書を提出する
トライアル雇用開始から2週間以内に、以下の書類3点をハローワークに提出します。
- トライアル雇用等実施計画書
- トライアル雇用対象となる求職者の確認票
- 助成金支給対象の事業主要件票
計画書は、対象求職者の同意を得たうえで提出することが求められます。提出の際は、ハローワークから交付される書類の添付が必要です。提出期限が短いため、あらかじめ各書類に目をとおしておくことをおすすめします。
申請様式は、厚生労働省が公開しています。
4. トライアル雇用終了後に助成金支給申請をする
求職者の継続雇用の有無にかかわらず、トライアル雇用終了日から2カ月以内に助成金支給申請をします。 ハローワークに提出する書類は以下の2点です。
- 支給要件確認申立書
- 結果報告書兼助成金支給申請書
こちらの申請様式も、厚生労働省のページでダウンロード可能です。
5. 審査後2〜3カ月で助成金が支給される
提出した助成金支給申請書は、労働局で審査されます。審査の結果、助成金の支給が認められた場合は期間中の助成金が一括で振り込まれます。支給申請を提出してから振込完了まで、2〜3カ月かかることを見越しておきましょう。
トライアル雇用助成金申請の注意ポイント
トライアル雇用助成金を申請する際は、以下の2点に注意しましょう。
- 他の助成金を一緒に活用できる場合がある
- 助成金を申請できない企業もある
それぞれ自社に当てはまる項目があるか、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
他の助成金を併用できる場合がある
トライアル雇用した対象者を期間終了後も継続雇用する場合、条件を満たせば特定求職者雇用開発助成金やキャリアアップ助成金もあわせて受給できます。
以下の条件に該当する場合はトライアル雇用助成金が上乗せされます。
- 建設事業を営んでいる場合
- 若年者(35歳未満)または女性を建設労働者として雇用し、トライアル雇用助成金の支給を受けた場合
1人あたり月額上限4万円、最長3カ月間分が上乗せ支給されます。
助成金を申請できない企業もある
トライアル雇用助成金を申請できるのは「支給対象事業主要件」に合致している事業主です。たとえば、以下に当てはまる事業主はトライアル雇用助成金を申請できません。
- 過去6カ月の間に事業主都合の解雇を実施している
- 過去6カ月の間に正当な理由で自己都合離職をした従業員が4人以上いる
参照:厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)支給対象事業主要件票」
参照:厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者(短時間)トライアルコース)支給対象事業主要件票」
過去6カ月以内に離職者がいる場合、支給対象事業主要件をくまなくチェックしておきましょう。不安がある場合は、ハローワークや社会保険労務士に相談することをおすすめします。
まとめ
本記事では、トライアル雇用助成金の仕組みや申請ポイントなどを解説しました。申請を検討する場合は、対象求職者や受給条件をよく確認のうえ準備を進めましょう。
トライアル雇用助成金以外の助成金も、自社に合致するものがあれば積極的に検討することをおすすめします。助成金は制度の改正や廃止が頻繁に行われるため、調査に不安がある場合は専門家に相談するのも1つの手です。
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1980年3月23日生まれ。社会保険労務士・1級FP技能士・CFP認定者。令和3年度 中小企業・小規模事業者等に対する働き方改革推進支援事業(専門家派遣事業) 派遣専門家。大学卒業後、外資系生命保険会社の営業、資格の専門学校の簿記・FPの講師、不動産会社の経営企画を経て現在に至る。

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トライアル雇用制度は、職業経験や技能、知識の不足等から安定的な就職が困難な求職者をハローワークや民間の職業紹介事業者等の紹介で、一定期間について試験的に雇用する制度です。
事業主が求人広告等を出して雇用する場合と異なり、ハローワーク等を経由して雇用活動を行うため、求人にかかるコストを抑えることができ、また、労働者側から見ても、ミスマッチを未然に防ぐことにもつながるというメリットがあります。
トライアル雇用制度は「ハローワークや民間の職業紹介事業者を経由して雇用をすることが要件」とされており、また、「原則として3か月間はトライアル雇用を続けなければならない」といったような要件を満たす必要があるため、雇用計画をしっかりと立てたうえでトライアル雇用を行うことが重要です。
この「トライアル雇用を行った事業主に対して支給されるのが「トライアル雇用助成金」です。トライアル雇用助成金は、トライアル雇用をした労働者の年齢や労働時間などによって、支給される助成金額が決まっています。
また、新型コロナウイルス感染症に対応したものや障害者を対象としたものなど、トライアル雇用助成金は6つのコースから構成されています。トライアル雇用助成金は、人材採用を検討しているが、あまりコストをかけられない個人事業や小規模の事業を行っている法人などにおすすめの助成金の一つです。