キャリアアップ助成金とは?各コースの概要や申請手順・支給されない5つのケースを解説

最終更新日:2024年06月19日
キャリアアップ助成金とは?各コースの概要や申請手順・支給されない5つのケースを解説
この記事で解決できるお悩み
  • キャリアアップ助成金とは?
  • キャリアアップ助成金の申請手順は?
  • キャリアアップ助成金が支給されないケースは?

「キャリアアップ助成金の名前は聞いたことがあるけれど、どのような助成金かわからない...」とお悩みの会社経営者の方、必見です。

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者に対して正社員化・処遇改善の取り組みを実施した事業主を助成する制度です。非正規労働者が増加傾向の課題を改善する目的で設けられています。過去に労働関係の法律に違反したり不正受給したりすると、支給されなくなるため注意が必要です。

本記事では、キャリアアップ助成金の各コースの概要や申請手順・支給されない5つのケースを解説します。記事を読み終わった頃には、キャリアアップの概要や手順を理解して、働きやすい環境づくりに活かしましょう。

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キャリアアップ助成金とは

ミーティング_会議

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の雇用安定や処遇改善を実施する事業主を助成する制度です。非正規雇用の労働者増加に伴い、キャリアの制約や賃金の低さなどの課題を是正する目的で設けられました。

非正規雇用労働者はキャリア支援プログラムに参加でき、自己啓発やスキルアップを図れます。一方で企業側は、非正規雇用労働者のキャリアアップにより人材定着を図り、安定した経営が見込めるでしょう。

キャリアアップ助成金の対象事業者

キャリアアップ助成金は、コースごとに要件が異なるものの、すべてのコースに共通した要件があります。各コース共通の要件は以下のとおりです。

  • 雇用保険の適用事業所の事業主
  • 雇用保険の適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置く事業主
  • 雇用保険の適用事業所ごとに該当する労働者のキャリアアップ計画を作成し、労働局に認定された事業主
  • コースの該当する労働者の雇用状況を示す書類を用意し、賃金の算出方法が明確な事業主
  • キャリアアップ計画期間中にキャリアアップに取り組んだ事業主

該当しない場合は、キャリアアップ助成金の申請ができないため注意しましょう。

キャリアアップ助成金の事業規模

キャリアアップ助成金の支給額は、事業規模で異なります。「中小企業」に該当する場合は、大企業よりも支給額が大きいです。中小企業事業主の範囲は資本金・出資金の総額で判断しますが、資本金・出資金がない事業所は常時雇用する労働者の人数で判断されます。

中小企業に該当する企業規模は、以下のとおりです。

  資本金・出資金の総額 常時雇用する労働者の人数
小売業・飲食業 5,000万円以下 50人以下
サービス業 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
上記以外の業種 3億円以下 300人以下

参照:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省

正社員化支援に関するキャリアアップ助成金の種類

障碍者雇用

正社員化支援に関するキャリアアップ助成金の種類は、以下のとおりです。

  1. 正社員化コース
  2. 障害者正社員化コース

正社員化支援とは、有期雇用労働者が正社員と同じ待遇で雇用されることを目的とする制度です。一般従業員だけではなく、障害者正社員コースもあります。

1. 正社員化コース

正社員化コースとは、就業規則や労働協約などに規定した制度に基づき、有期雇用労働者を正社員化した場合に助成する制度です。賃金の3%引き上げ・昇給・賞与もしくは退職金制度の適用も条件に含まれています。正社員化コースの支給額は、以下のとおりです。

  有期雇用労働者 無期雇用労働者
中小企業 80万円(40万円×2期) 40万円(20万円×2期)
大企業 60万円(30万円×2期) 30万円(15万円×2期)

正社員化コースは、一定の条件で加算額があります。加算額の条件と支給額は、以下のとおりです。

  有期雇用労働者 無期雇用労働者
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合 28万5,000円
対象者が母子家庭の母もしくは父子家庭の父の場合 9万5,000円 4万7,500円
人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合 9万5,000円 4万7,500円
(自発的職業能力開発訓練もしくは定額制訓練終了後) 11万円 5万5,000円
正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換した場合 20万円(大企業15万円)
多様な正社員制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換した場合 40万円(大企業30万円)

2. 障害者正社員化コース

障害者正社員化コースとは、障害のある有期雇用労働者を正社員化する場合に助成する制度です。障害者正社員化コースの対象労働者は、以下のとおりです。

  • 該当事業主に非正規雇用労働者として6カ月以上雇用されている
  • 転換実施日の時点で身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者・難病患者・脳の機能的損傷にもとづく精神障害である高次脳機能障害であると診断された者のいずれかに該当する
  • 就労継続支援A型事業(障害者・難病患者が、雇用契約を結び一定の支援を得ながら職場で働く福祉サービス)利用者ではない

障害者正社員化コースの支給額

障害者正社員化コースの支給額は、以下のとおりです。

支給対象者 措置内容 支給総額 支給対象期間 各支給対象期における支給額
・重度身体障害者
・重度知的障害者
・精神障害者
有期雇用から正規雇用 120万円(90万円) 1年(1年) 60万円×2期(45万円×2期)
有期雇用から無期雇用 60万円(45万円) 30万円×2期(22.5万円×2期)
無期雇用から正規雇用 60万円(45万円) 30万円×2期(22.5万円×2期)
・重度以外の身体障害者
・重度以外の知的障害者
・発達障害者
・難病患者
・高次脳機能障害と診断された者
有期雇用から正規雇用 90万円(67.5万円) 45万円×2期(33.5万円※×2期)
※第2期の支給額は34万円
有期雇用から無期雇用 45万円(33万円) 22.5万円×2期(16.5万円×2期)
無期雇用から正規雇用 45万円(33万円) 22.5万円×2期(16.5万円×2期)

障害者正社員化コースの支給対象期間は1年で、最初の6カ月(第1期)と後半の6カ月(第2期)にわけて支給されます。

処遇改善支援に関するキャリアアップ助成金の種類

処遇改善支援に関するキャリアアップ助成金の種類は、以下のとおりです。

  1. 賃金規定等改定コース
  2. 賃金規定等共通化コース
  3. 賞与・退職金制度導入コース
  4. 社会保険適用時処遇改善コース

処遇改善支援とは、非正規雇用労働者の労働条件の見直しを行った場合に助成する制度です。正社員化に限らず、賃金規定の見直しや賞与・退職金制度の導入も、助成の対象となります。

1. 賃金規定等改定コース

賃金規定等改定コースとは、有期雇用労働者の基本給の賃金規定を3%以上増額改定し、適用させた場合に助成する制度です。支給額は、以下のとおりです。

  支給額
(賃金引き上げ率:3%以上5%未満)
支給額
(賃金引き上げ率:5%以上)
加算額
(職務評価の手法を活用し賃金規定を増額改定した場合)
中小企業 5万円 6万5,000円 20万円
大企業 3万3,000円 4万3,000円 15万円

支給額は、対象労働者1人あたりの助成額です。1年度1事業所あたり100人まで複数回支給申請ができます。加算額は1事業所あたりの助成額で、1事業所あたり1回のみです。

2. 賃金規定等共通化コース

賃金規定等共通化コースとは、有期雇用労働者が正規雇用労働者と共通の職務に応じた賃金規定を新たに作成・適用した際に助成する制度です。就業規則もしくは労働協約をしっかりと定め、従う必要があります。支給額は、以下のとおりです。

企業規模 支給額
中小企業 60万円
大企業 45万円

表に記載の支給額は、1事業所あたりの助成額です。支給申請は、1事業所1回のみとなります。

3. 賞与・退職金制度導入コース

賞与・退職金制度導入コースとは、すべての有期雇用労働者に関して、賞与・退職金制度を新設し、支給もしくは積立てを実施した場合に助成する制度です。就業規則もしくは労働協約をしっかりと定め、従う必要があります。支給額は、以下のとおりです。

  賞与もしくは退職金制度のいずれかを導入 賞与・退職金を同時に導入
中小企業 40万円 56万8,000円
大企業 30万円 42万6,000円

表に記載の支給額は、1事業所あたりの助成額です。支給申請は、1事業所1回のみとなります。過去に、キャリアアップ助成金の「諸手当制度共通化コース」「諸手当制度等共通化コース」の支給を受けている場合は支給対象外です。

4. 社会保険適用時処遇改善コース

社会保険適用時処遇改善コースとは、以下のいずれかの取り組みを行った場合に助成する制度です。

  1. 新たに社会保険の被保険者要件を満たし、被保険者となる際に賃金総額を増加させる取り組みを行った場合
  2. 週の所定労働時間を4時間以上延長の処置を実施し、当該労働者が社会保険の被保険者要件を満たして被保険者となる場合

有期雇用労働者に対して、社会保険適用後に収入を増加させるか、収入増加につながる処置の実施後に社会保険を適用した場合に助成金が支給されます。

手当支給もしくは賃上げを行った場合の支給額

新たに社会保険の被保険者要件を満たし、被保険者となる際に賃金総額を増加させる取り組みを行った場合の支給額は、以下のとおりです。

企業規模 1年目の取り組み 2年目の取り組み 3年目の取り組み
中小企業 40万円(10万円×4期) 10万円
大企業 30万円(7.5万円×4期) 7.5万円

1年目・2年目の取り組みは、労働者負担分の社会保険料相当額(標準報酬月額の15%以上)の手当支給もしくは賃上げが必要です。3年目の取り組みは、基本給の18%以上の増額(賃上げ・労働時間延長による増額)が必要となります。

労働時間の延長を行った場合の支給額

労働時間の延長を行った場合、延長時間に伴い賃金引上げ率が異なります。

週の所定労働時間を4時間以上延長の処置を実施し、当該労働者が社会保険の被保険者要件を満たして被保険者となる場合の支給額は、以下のとおりです。

  1時間以上2時間未満 2時間以上3時間未満 3時間以上4時間未満 4時間以上
賃金引上げ率 15%以上 10%以上 5%以上
中小企業 30万円
大企業 22.5万円

週の所定の労働時間を4時間以上延長した場合は無条件で適用できますが、4時間未満の場合は所定の賃金引上げ率を満たす必要があります。短時間労働者が、1年目に手当支給もしくは賃上げを行い、2年目に労働時間の延長を行った場合も助成可能で、最大50万円の支給になります。

キャリアアップ助成金の申請手順

キャリアアップ助成金の申請手順は、正社員化支援と処遇改善支援で異なります。キャリアアップ計画の作成・提出は、労働局・ハローワークです。支給申請は、取り組み後6カ月の賃金を支払った日の翌日から起算して2カ月以内に行う必要があります。

正社員化支援の申請手順

正社員化支援の申請手順は、以下のとおりです。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
  2. 就業規則の改定(正社員への転換規定がない場合)
  3. 就業規則に基づく正社員化
  4. 正社員化後6カ月分の賃金の支払い(正社員化前6カ月と比較して3%以上賃金の増額が必要)
  5. 支給申請

正社員化支援は、正社員への転換規定を作成し、実施する必要があります。転換規定の作成のみでは、助成金の申請はできません。助成金を受けるためには、正社員化支援の要件を満たす必要があります。

処遇改善支援の申請手順

処遇改善支援の申請手順は、以下のとおりです。

  1. キャリアアップ計画の作成・提出
  2. 取り組みの実施:就業規則の改定
  3. 取り組み後6カ月分の賃金の支払い
  4. 支給申請

処遇改善支援は、処遇改善に関する規定の作成・実施を行い、取り組み後6カ月分の賃金の支払いが完了したのちに申請できます。取り組みを開始して6カ月は受給できないため、制度の活用・助成金支給のスケジュールを確認しておきましょう。

キャリアアップ助成金が支給されない5つのケース

キャリアアップ助成金が支給されないケースは、以下の5つが挙げられます。

  1. 過去1年間に労働関連の法律に違反した
  2. 実地調査の協力要請を拒否した
  3. 提出書類の不備に対し適切な対応を取らなかった
  4. 不正受給から5年以内に申請した
  5. 受給後の会計検査院検査に協力しなかった

助成金は条件を満たしている場合は基本的に支給されますが、場合によって支給されないケースがあります。どのような場合に支給されないかを把握することで、事前の準備がしやすくなるでしょう。

1. 過去1年間に労働関連の法律に違反した

支給申請日の前日から、過去1年以内に労働関連の法律に違反していないか確認しましょう。違反した過去がある場合は、キャリアアップ助成金の対象となりません。

残業代の算出方法・労働時間・有給休暇の付与や取得など、最新の労働基準法を遵守した経営が行えているか、再度確認する必要があります。

そもそもキャリアアップ助成金の意図にそぐわない経営を行う事業主は、支給されません。申請を検討する際は、労働環境や社内規定を改めて見直す必要があります。

2. 実地調査の協力要請を拒否した

キャリアアップ助成金の申請後に、実地調査の協力要請を拒否すると助成金は支給されません。実地調査への協力は必須のためです。審査のため、事業所の実地調査が行われる可能性があります。

実地調査は予告なく行われるため、断ると「不正をしている」と判断されます。実地調査の結果、不正が発覚した場合は不支給の対象です。

3. 提出書類の不備に対し適切な対応を取らなかった

提出書類の不備に対して、適切な対応を取らない場合は不支給の対象となります。申請書や添付書類などに不明点があった場合は、都道府県労働局長から書類の補正や追加書類の提出が求められます。期日までに必要な対応を取らない場合は、不支給の対象となるため注意が必要です。

4. 不正受給から5年以内に申請した

過去に不正受給をしてから5年以内に申請した場合は、キャリアアップ助成金の受給ができません。不正受給とは、虚偽の申告によって本来受け取れない助成金を受け取ることです。不正受給をした場合、以後5年間は不支給対象となります。

不正受給した場合の罰則

キャリアアップ助成金を不正受給した場合の罰則は、助成金の全額返還です。助成金支給日の翌日から返還日までの期間に対して、年3%の延滞金と返還額の20%の違約金を支払う必要があります。

申請に代理人を立て、代理人が不正を黙認していた場合は、申請代理人も連帯債務を負うことが一般的です。不正受給を行うと、5年間の資格停止処分を受けるため将来的に大きなデメリットとなるでしょう。

5. 受給後の会計検査院検査に協力しなかった

キャリアアップ助成金の受給後に、会計検査院検査に協力しなかった場合は助成金を受け取れません。協力に応じない場合は、返還要求を受けることになるでしょう。

会計検査の協力に同意していないと、助成金は受け取れません。あらかじめ会計検査への協力に同意してください。検査対象となる可能性を踏まえ、支給申請書や添付書類の写しなどは、支給決定から5年間は保存しましょう。

キャリアアップ助成金の申請は申請代行業者の利用がおすすめ

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キャリアアップ助成金の申請は、申請代行業者の利用がおすすめです。キャリアアップ助成金の申請は提出書類が多く、不備なく申請書類を作成するには専門知識が必要になります。

助成金の申請には期限の締め切りがあり、1日でも遅れてしまうと受給できないため確実に申請できる方法を選択すべきです。助成金の申請代行は、社労士事務所への依頼が適しています。社労士事務所は、以下の基準で選ぶことがおすすめです。

  • 助成金申請代行に積極的に取り組んでいる
  • 自社の業界・業種に精通している
  • 社労士の人柄や事務所の立地がいい

以上の点を踏まえて、自分にあった社労士事務所を選び、キャリアアップ助成金の申請をスムーズに進めましょう。

まとめ

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を実施する事業主を支援する制度です。正社員化支援は2種類、処遇改善支援は4種類にわかれています。取り組みや支給額などが異なるため、事前に確認して適切なコースを申請しましょう。

助成金は、要件を満たす場合に受給できます。過去に不正受給や労働関連の法律違反を起こしたり実地調査の拒否をしたりすると、支給されません。受給資格がないと申請作業が無駄になるため、事前に確認しましょう。

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比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

キャリアアップ助成金の申請にお困りではありませんか?

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