「支払調書があれば支払金額を正確に確認できて便利であろう」という配慮により、報酬の支払先に送付することが慣習化しているためです。取引が発生するごとに毎回帳簿をつけている場合には、支払調書がなくても確定申告は問題なく行えるでしょう。
確定申告に支払調書の添付は必須?活用方法について解説!
- 確定申告に支払調書の添付は必須?
- 支払調書はどのように使うの?
- 支払調書を発行する側の注意点は?
「確定申告で支払調書の添付は必須?」「クライアントからもらった支払調書はどうすればいい?」と、お悩みの方、必見です。支払調書とは企業が個人事業主へ支払った年間の報酬を明記する書類です。
この記事では、個人事業主へ向けて、支払調書の種類や支払調書が発行される条件を解説します。最後まで読むと、報酬を支払う側の支払調書の扱い方がわかるでしょう。
報酬を支払う側が支払調書を税務署へ提出する方法も紹介するため、全体の流れを把握したい方もぜひ参考にしてください。
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確定申告に支払調書は不要
取引先から発行された支払調書は、確定申告書に支払調書を添付する必要はありません。帳簿や管理サイトで給与や取引を日常的に記録していれば、支払調書の保管も不要です。
支払調書で収入金額を確認できるため、確定申告の際に役立つことがあります。フリーランスで複数の会社から報酬を受け取っている場合は、支払調書があると便利でしょう。
支払調書は報酬を支払った側が発行する
納税者が確定申告の際に支払調書を提出する必要はありませんが、報酬を支払う立場である「源泉徴収義務者」は税務署への提出義務があります。自分だけで事業を営んでいる個人事業主やフリーランスの方に提出義務はありませんが、従業員を1人でも雇用している法人または個人は、支払調書を提出しなければなりません。
仕事に対する報酬を支払う先が、個人事業主ではなく法人であるケースも、支払調書を作成し提出する必要があるため注意しましょう。
支払調書と源泉徴収票の違い
支払調書と源泉徴収票は同じ「法定調書」であるものの、異なる点があります。支払調書と源泉徴収票の違いは、主に次の3点です。
所得税の調整 | 税務署への提出義務 | 支払先への提出義務 | |
---|---|---|---|
支払調書 | 調整されていない | あり | なし |
源泉徴収票 | 調整されている | 一部あり | あり |
確定申告と関連がある3つの支払調書
確定申告と関連がある支払調書は、主に以下の3つです。
- 報酬・料金・契約金および賞金の支払調書
- 株式の配当金・譲渡の対価などの支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
どのようなケースで支払調書が発行されるのか理解しておくことが重要です。1つずつ解説します。
報酬・料金・契約金および賞金の支払調書
確定申告が必須の個人事業主・フリーランスの方に関連するのが「報酬・料金・契約金および賞金の支払調書」です。支払調書の対象は、以下の基準を満たす支払いがある発注者です。
年間支払額の合計金額 | |
---|---|
1. 外交員・集金人・検針人・プロボクサー、バー・キャバレーなどの広告宣伝の賞金 | 50万円超 |
2. 馬主に支払う競馬の賞金 | 1回の賞金が75万円を超えた者の年間の支払い金額 |
3. プロスポーツ選手 | 5万円超 |
4. 弁護士・税理士などに対する報酬や作家・画家への原稿料・画料・講演料 | 5万円超 |
5. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬 | 50万円超 |
参照:No.7431「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等
デザイナー・エンジニア・カメラマン・通訳・翻訳家などに対しても、同様に支払調書が発行されます。源泉徴収を受けている個人事業主・フリーランスの場合、税務署が把握している報酬額と確定申告の内容に相違がないかチェックされるでしょう。
株式の配当金・譲渡の対価などの支払調書
「株式の配当金や譲渡の対価などの支払調書」とは、国内における株式譲渡の対価を支払う法人・証券会社・銀行に提出が義務付けられている支払調書です。株取引をしている方の場合、証券会社から支払調書が発行されます。
源泉徴収ありの特定口座を利用している方は、金融機関が20.315%(復興特別所得税含む)の所得税や住民税を代行して納付しているため、確定申告は原則不要です。源泉徴収なしの特定口座を利用している方は確定申告が必要になりますが、支払調書を添付する必要はありません。
不動産の使用料等の支払調書
不動産投資や家賃収入を得ている方に関連する書類が「不動産の使用料等の支払調書」です。不動産関連の賃料を家主や地主に支払っている法人や不動産業者である個人に対して提出が義務付けられています。仲介業者は支払調書の提出義務はありません。
不動産の使用料等の支払調書によって、税務署は不動産関連の収入を把握します。不動産を貸して収入を得ている方は、確定申告しなかった場合に税務署から指摘を受けるおそれがあるため、十分な注意が必要です。
正確な確定申告を行うために支払調書は役立つ
支払調書は確定申告に不要とはいえ、正確な申告を行うために大いに役立ちます。支払調書には、報酬額と源泉徴収額が記載されているため、自分が作成している帳簿と照らしあわせて間違いがないか把握できるでしょう。
確定申告において帳簿の作成は義務付けられており、正確な帳簿を作成することは必須です。取引が発生するたびに帳簿を作成するのが最善ですが、記載漏れがないか確認するために支払調書を活用できます。
支払調書が発行される条件
支払調書が発行される条件は、以下の2つです。
- 支払う側が源泉徴収義務者である
- 特定の職業・金額に該当する支払いである
両方の条件を満たしている場合、報酬を支払う側が税務署に支払調書を提出する義務を負います。
条件1. 支払う側が源泉徴収義務者である
支払調書が発行される条件の1つは「支払う側が源泉徴収義務者である」ことです。源泉徴収義務者とは、支払う報酬から源泉徴収して納税する義務を負う事業主を指します。
従業員を雇用して給与を支払う個人事業主・法人は基本的に源泉徴収義務者です。加えてデザインの報酬、税理士に支払う報酬は、源泉徴収を行わなければなりません。
条件2. 特定の職業・金額に該当する支払いである
支払調書が発行されるもう1つの条件は「特定の職業・金額に該当する支払いである」ことです。主に以下の4パターンがあります。
原稿・講演に対する報酬 | 同一人物に対して年間5万円以上支払った場合 |
---|---|
スポーツ選手・芸能関係者に対する報酬 | 同一人物に対して年間5万円以上の報酬や料金を支払った場合 ※プロボクサーのみ年間50万円以上支払った場合 |
弁護士・税理士・外交員などに対する報酬 | ・同一人物に年間5万円以上の報酬や料金を支払った場合 ・外交員/検針人/集金人の業務は同一人物に年間50万円以上の報酬/料金を支払った場合 |
診察報酬・事業広告費など | ・診察報酬は同一人物に対して年間50万円以上の支払いが発生した場合 ・事業広告費は同一人物に対して年間で50万円以上の支払いが発生した場合 |
報酬を支払っている職業によって支払調書の提出条件が異なるため、関連がある依頼先の条件を確認しましょう。
【支払う側】支払調書を税務署に提出する3つの方法
報酬を支払う側が支払調書を税務署に提出する方法は、以下の3つです。
税務署に書類として提出 | 国税庁のフォーマットをダウンロード・印刷後、書面で作成し提出 |
---|---|
光ディスクに電子データとして記録し提出 | CDやDVDに記録を保存して税務署に持っていき提出 ※提出の2カ月前以上に申請する必要がある |
e-Tax(国税電子申告・納税システム)を活用して提出 | さまざまな法定調書の作成・提出までの手続きをインターネットでおこなう |
各方法の特徴を把握して、自社にもっともあった方法を選びましょう。前々年の支払調書の提出が100枚以上だった場合は、書面での提出ができないため注意が必要です。
【支払う側】支払調書における3つの注意点
支払調書を発行する際の注意点は、以下の3点です。
- 支払調書は税務署への提出期限がある
- 支払先が法人でも支払調書が必要
- 支払先に対して交付義務はない
支払調書を発行する際の注意点を事前に把握することで、ミスやトラブルを未然に防げるでしょう。
1. 支払調書は税務署への提出期限がある
支払調書は期限を守って税務署に提出しなければなりません。提出期限は原則として、支払いが確定した年の翌年の1月31日です。令和6年に発生した支払いであれば、令和7年1月31日が提出期限です。
支払調書を提出する際は「給与所得の源泉徴収などの法定調書合計表」を添付しましょう。提出義務を怠った場合、報酬を支払う側に罰金・懲役などのペナルティが科せられるおそれがあります。
2. 支払先が法人でも支払調書が必要
報酬の支払先が法人の場合、源泉徴収は行わないものの支払調書の提出は義務です。海外法人への報酬は、国内に事業所があるかどうかによって判断がわかれるため、詳しくは税務署や税理士に相談しましょう。
3. 支払先に対して交付義務はない
支払調書は税務署への提出義務はありますが、報酬の支払先への交付義務はありません。企業が支払先へ支払調書を交付するのは、確定申告の際に報酬額を確認できて便利であろうという配慮によるものです。
報酬の支払先に支払調書を提出する際は、個人番号を記載しません。税務署に提出する支払調書のコピーを交付するのではなく、個人番号を抜いた支払調書を交付しましょう。
まとめ
支払調書は報酬を把握するために便利ですが、確定申告に必須であるわけではありません。毎回の取引ごとに帳簿を記録していれば、支払調書が必要になるケースはほとんどないでしょう。支払調書を発行する場合は、税務署への提出義務があることを忘れずに、期日までに提出することが非常に重要です。
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よくある質問とその回答
岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。
支払調書が提出しなければならない方は、ルールに従って税務署に提出しています。だから、確定申告から除外するようなことは考えないで下さい。慣習として支払者に支払調書を発行していたため、現在も支払調書が郵送されてくるケースがあります。
支払調書の交付は強制ではないため、発行しない方もいます。だから、支払調書の郵送の有無をもって、確定申告をするかしないかを判断するのは、誤りだと言えます。
支払調書が送られてこようが送られてこなくても、正しい申告をするようにして下さい。
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