残業を減らすアイデアを紹介!残業削減に向けた手順・留意すべきポイントは?

最終更新日:2023年03月24日
マネーライフワークス
監修者
岡崎 壮史
残業を減らすアイデアを紹介!残業削減に向けた手順・留意すべきポイントは?
この記事で解決できるお悩み
  • 残業を減らす効果的なアイデアを知りたい
  • 残業を減らすアイデアを実行に移す手順は?
  • 残業削減に取り組む際に留意しておくべきポイントは?

働き方改革関連法案が施行されたことによって、多くの企業が残業削減に向けた施策に取り組んでいます。しかし、先行して残業削減に取り組んできた大企業はともかく、猶予期間の設けられていた中小企業では、思うように残業を減らせない事態に苦慮していることも少なくありません。

中小企業の経営者の方、人事担当者の方であれば「なにか残業を減らすいいアイデアはないか?」を知りたいはず。そこで本記事では、残業を減らすために効果の大きいと思われるアイデアや、気になる他社の取り組み、残業削減の成功事例などを紹介!残業削減への取り組みに向けた手順・ステップ、留意しておくべきポイントについても解説していきます。

残業を減らす効果的なアイデア

まずは、残業を減らすために効果的だと思われる、具体的なアイデアから紹介していきましょう。残業削減に使命感を感じている経営者の方も少なくないはずですが、ただ単に「残業は禁止」「定時で帰れ」だけでは効果がありません。

それどころか、いわゆるステルス残業の温床ともなりかねず、疲弊した従業員のパフォーマンスが落ちてしまう危険性があります。ポイントとなるのは、従業員に残業削減への取り組みに関する「当事者意識」を持ってもらうこと、業務効率化への工夫です。

アイデア1. 残業の事前申請と管理

残業を減らすためのアイデアとして、ひとつ目に挙げられるのは、「残業を事前申請制にする」こと、残業申請と実施状況を「上司・チームリーダーが管理する」ことです。

具体的には、終礼時までに時間を区切り、残業をしたい場合はその理由・内容と共に申請させる。管理者は理由・内容を踏まえ、残業を許可するか翌日に持ち越すか判断する、月の残業時間を逐一管理するなどが考えられます。

仕事が終わらないからとダラダラ残業を許可するのではなく、申請という一定のハードルを与えることによって、従業員に「残業する必要があるのか」「残業しないためにどうすべきか」を考えさせる効果も期待できるでしょう。

アイデア2. 自己申告によるノー残業デーの設定

残業を減らすためのアイデアとして、二つ目に挙げられるのは「ノー残業デー・ウィーク制度を設けたうえで、自己申告制にする」ことです。ノー残業制度は、比較的多くの企業が採用しているポピュラーな残業削減への取り組みですが、意外に形骸化してしまっているケースも多いはず。会社が決めた特定の日・週に、従業員全員が定時で帰ることは現実的でない場合が少なくないからです。

一方、ノー残業の日・週を自己申告制にしてチームでスケジュールを共有すれば「ノー残業しやすい雰囲気を醸成できる」「メンバーのスケジュールを考慮しながら日程を決められる」効果が得られるでしょう。従業員の自主性に任せることにより、仕事のやり方を見直すことにもつながります。

アイデア3. 取引先を含む業務効率化推進

残業を減らすためのアイデアとして、三つ目に挙げられるのは「取引先の理解を得たうえで、お互いのメリットになる業務効率化に取り組む」ことです。取引先の都合で残業しなければならなくなった、という経験のある方は少なくないはずですが、相手先からの協力が得られれば、残業につながる外部要因をひとつ減らせます。

具体的には、取引時の書類のやり取りを簡略化させる、書式を共通の様式に変更するなどが挙げられるでしょう。1社のみでは効果が薄いかもしれませんが、協力の得られる企業が増えていけばそれだけ効果も高まります。

アイデア4. 能力開発による業務平準化

残業を減らすためのアイデアとして、四つ目に挙げられるのは「従業員の能力開発に注力することによって、業務の平準化を推進する」ことです。ただちに残業を減らすことにはつながりにくいアイデアではありますが、長い目で見れば残業を減らすだけではなく、会社全体のパフォーマンスを底上げできるおすすめの施策です。

具体的には、従業員一人ひとりができることを増やし、お互いの業務領域を超えてカバーし合える状況、イコール業務の平準化を進めていくことになるでしょう。だれか一人に頼らなければならない属人的な業務をなくすだけでも、残業削減につながると期待できます。

アイデア5. 人事評価制度と連動したインセンティブ導入

残業を減らすためのアイデアとして、五つ目に挙げられるのは「人事評価制度と連動したインセンティブを導入し、従業員の頑張りに報いること」です。いいことではありませんが、賃金の伸びが停滞している日本では、残業代を貴重な収入源と捉える従業員も少なくないからです。

逆に、残業を減らすことによる生産性向上が従業員の評価につながり、収入というリターンが得られるとわかれば、業務効率化を推進する大きな原動力となります。従業員個々のパフォーマンスが高まれば、結果的に会社の成長につながる理想的な好循環が生まれます。

アイデア6. 業務効率化の目標設定・提案

残業を減らすためのアイデアとして、六つ目に挙げられるのは、個々の従業員に残業削減につながる「業務効率化の目標を設定させる、業務効率につながる提案をさせる」ことです。

たとえば、四半期に一度、半期に一度などに期間を区切り、振り返りと共に業務効率を高める方法・目標を設定させてリーダーとすり合わせる、業務効率化につながる提案は常に受け入れて検討するなどです。

業務効率化に向けた従業員の自主性を促せるだけでなく、俯瞰から見ているだけではわからない、現場ならではの視点を得られることがこのアイデアのポイント。ただし、従業員のモチベーションを高めるためにも、人事評価制度と連動したインセンティブと併用するなどの工夫が必要です。

アイデア7. ノンコア業務のアウトソーシング活用

残業を減らすためのアイデアとして、七つ目に挙げられるのは「ノンコア業務をアウトソーシングし、従業員のリソースをコア業務に割り振る」ことです。会社業務のなかには、自社で賄う必要のない業務も存在します。アウトソーシングをうまく活用することによってコア業務に集中できる環境が整えば、業務効率化による残業削減効果が得られるでしょう。

ただし、アウトソーシングには自社内にノウハウが蓄積されないというデメリット面も存在します。本当にアウトソーシングがベストな方法なのか?業務内容を精査して慎重に検討する必要があります。

残業削減に向けた他社の取り組み

ここまでで、残業を減らすために効果的だと考えられるアイデアをいくつか紹介してきましたが、残業削減に頭を悩ませている経営者の方であれば、それぞれのアイデアを実行することによってどのくらいの効果が得られるのか?他社は残業削減にどのように取り組んでいるのか?気になっていることでしょう。

そこで以下からは、厚生労働省が運送業・食料品製造業・飲食業などを中心に調査した、各社の残業削減への取り組みを事例とともに紹介していきます。

残業削減に効果のあったアイデア・取り組み

残業削減に取り組む各社の特徴として挙げられるのは、複数のアイデア・施策を組み合わせて実行していること。労働時間短縮、残業削減のアイデアとして「ノー残業デー・ウィークの設置」「労働時間適正化に向けた従業員教育」が、比較的大きな効果が得られたことがわかります。

時間外労働削減の好事例集

出典:厚生労働省「時間外労働削減の好事例集」

残業削減の成功事例:群馬県太田市の運送業B社

たとえば、群馬県太田市の運送業B社では、残業削減に向けて「自己申告制による毎週1日のノー残業デー設定」「半期ごとの業務効率向上に向けた目標設定」の2つの施策を実施しています。

自己申告制としたノー残業デーは、事業所内の従業員全員で確認できるようにスケジュールを共有。定時で帰宅できるよう周囲が配慮する雰囲気が醸成されたことによりノー残業デーの実施率が向上しました。一人当たり月20時間程度で推移するなど、残業を減らすことに大いに貢献しているようです。

また、業務改善の目標設定は仕事に向かう姿勢にも好ましい影響があったようです。残業の削減と同時に、業務におけるミス削減にも役立っており、今後は施策がマンネリ化するのを避けるため、新たなアイデアの実施も検討しているということです。

出典:厚生労働省「時間外労働削減の好事例集」

残業削減への取り組みに向けた手順・ステップ

もちろん、それぞれのアイデア・施策は残業を減らす可能性の高いものではありますが、ただやみくもに採用するだけでは最大限の効果を発揮できません。企業それぞれで状況も異なるため、他社で効果があっても自社で同じ効果が得られるとは限らないでしょう。

自社に最適なアイデアを採用・実行するためにも、残業削減取り組みに向けて手順・ステップを踏むことが重要。以下から簡単に解説していきます。

業務の分析と現状の把握

まずは、それぞれの業務がどのようなプロセスで実行されているのか、棚卸しをして現状を把握することが最優先事項です。

ひとつの業務を遂行するためにどのような作業を要しているのか?工数を明確にすることはもちろん、個人差があるようなら、その原因を探っていくことも重要。残業が少ない人、多い人それぞれの働き方を把握することで、現状を分析しやすくなります。

残業の原因となるボトルネックを特定

現状の業務プロセスを分析した結果をもとに、残業の原因となっているボトルネックを特定します。ただし、残業が減らない原因が「業務プロセス」だけにあるとは限らないことに注意が必要でしょう。

上司が帰らないから帰りづらい、残業が当たり前といった「企業文化」が大きな原因である場合も少なくなく、残業代がないと生活が成り立たないなどの従業員側の思惑が原因になっていることも考えられます。業務プロセスに問題がないのであれば、従業員への聞き取り調査をしてみることも一つの方法です。

業務手順の見直し・業務設計

残業削減に向けてボトルネックとなっている課題をどう解決するのかを念頭に、業務手順を見直し、理想の形となるべき業務設計を進めていきます。

たとえば、二度手間になっている手順を簡素化する、必要ではない作業は省くなどを徹底するだけでも、残業削減につながる業務効率化を実現できるでしょう。

企業文化や従業員の思惑といったボトルネックを解消するには、社内の意識を変える教育を実施する、人事評価制度と連動したインセンティブを導入するなどの施策が必要になるかもしれません。

ツールの導入・環境の整備

業務手順を簡素化して業務効率を高めることは可能ですが、さらなる効率化を推進するためには「ツールの導入」を含めた働きやすい環境を整備することが重要です。

たとえば、残業を減らして働きすぎを防止するには、残業を含めた従業員の勤怠状況をリアルタイムに確認できる仕組みを構築することが大前提。ワークフロー機能も搭載された勤怠管理システムを導入すれば、従業員の勤怠状況を把握できることはもちろん、残業の事前申告制度も採用しやすくなります。

そのほか、自己申告制によるノー残業デー・ウィークや業務効率化の目標設定・提案を採用するのなら、スケジュールの共有や社内SNSを利用できるグループウェアなどの導入が、手間のかかる経費申請・清算を合理化したいなら経費清算システムの導入がおすすめです。

アイデア・施策の実行

残業削減に向けた取り組みの最後のステップとなるのが、残業を減らすアイデア・施策の実行です。残業がなかなか削減できない原因を特定し、業務効率化を推進しやすい環境が整っていなければ、どのようなアイデア・施策を実行するにしても効果を最大化できないからです。

逆に、なぜ残業が減らないのか、理由がはっきりしていて改善しやすい環境が整っていれば、アイデア・施策を実行しても形骸化してしまうようなことは少ないはずです。アイデア・施策を実行するまでのステップで、根本的な業務効率化を推進できれば、自然と残業が減っていく効果も期待できるでしょう。

事例でも紹介したように複数のアイデア・施策を実行する、マンネリ化を防ぐために新たな取り組みを採用するなどもおすすめです。

残業削減への取り組みで留意しておくべきポイント

ここまでで、残業を減らす効果的なアイデアや、残業削減に向けた取り組みの手順・ステップを紹介してきましたが、それでも定着してしまった残業を減らすことはそれほど簡単ではありません。経営者の方、人事担当者の方であれば、実行に移した施策が形骸化してしまうことに悩んでいる場合もあるでしょう。

それでは、残業削減への取り組みが形骸化しないよう、強力に施策を推し進めていくにはどうすべきなのか?以下から、留意しておくべきヒントとなるポイントをいくつか紹介していきます。

トップダウンによる強いリーダーシップが必要

残業が当たり前となってしまった企業にとって、残業削減はいわば変革です。こうした、これまでとは異なる変革を推し進めていくためには、強いリーダーシップが必要であり、経営者自ら指揮をとるトップダウン方式が望ましいといえるでしょう。

もちろん、トップダウン方式だからといって、経営者自ら業務分析して対策を練るということではありません。部署・チームを束ねる管理者と残業削減の目的・意義を共有し、経営者の考えが末端までいきわたるよう陣頭指揮することが重要です。

たとえば、食料品製造業E社では、経営者自らが工場内を視察し、改善指示を出す、従業員の意見を取り入れて設備投資するなどを実行しています。

マインドセットの変革が必要

残業削減に取り組んではいるが、施策が形骸化してしまうという企業には「残業が当たり前」「長時間労働が評価される」という文化が根付いてしまっている可能性があります。残業削減を現実のものとするには、旧来からある「長時間働く=一生懸命」というマインドセットを変革する必要があります。

特に、ある程度の歴史がある中小企業の場合、こうした企業文化を変革することは容易ではありません。業務効率化による労働時間短縮がいかに会社にとって有意義なものなのか、従業員に理解してもらえるよう丁寧に教育することはもちろん、業務効率化が人事評価に反映される制度を作り、周知する必要があるでしょう。ここでも、トップダウンによる強いリーダーシップが必要です。

会議・ミーティングは徹底的に見直す

業務手順の見直し・業務設計の項目でも触れたように、業務効率化を推進するためには作業の簡略化や必要のない作業の削減が重要。しかし、意外に見落としがちなのが「会議・ミーティング」です。

報告・連絡はチャットツールやグループウェアに任せ、会議・ミーティングは「それでしか解決できないこと」に限定するべきです。報告のための会議・ミーティングが多い会社は、残業削減を実現できないばかりか、会社自体の成長が期待できません。

人件費削減を前提に残業を減らさない

働き方改革関連法案の施行は、多くの企業に残業削減のきっかけを与えたかもしれませんが、本来の目的・狙いは労働者の働きすぎを防止することであり、生産性を高めて経済を成長させることです。単に人件費を削減するための方法として残業を抑制するのは、ビジネスの成長を阻むマイナス要因となり得ます。

人件費削減ではなく最適化を目指し、業務効率化・生産性向上によるビジネスの成長を目指すことが残業削減の本質。そのためには、従業員のモチベーションを高める制度作りも必要です。

まとめ

さまざまな施策に取り組んでいるがなかなか残業が減らない、という悩みを抱える方に向け、本記事では、残業を減らすために効果の大きいと思われるアイデアや、気になる他社の取り組み、残業削減の成功事例などを紹介するとともに、残業削減への取り組みに向けた手順・ステップ、留意しておくべきポイントについて解説してきました。

残業を減らすと一言にいっても、それほど簡単ではないのは、経営者・人事担当者の方であれば身にしみているはず。企業文化、業務手順など、その要因として考えられることはさまざまですが、なによりも従業員を含め「残業削減=生産性向上」という認識を全社的に一致させることが重要です。ときには、専門家の協力を得て制度作りに取り組む必要もあるでしょう。

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監修者の一言

働き方改革の最大の目的の一つとして「長時間労働の削減」つまり、「残業時間の削減」が挙げられます。

具体的な残業削減に向けた取り組みとしては「定時退社の徹底」や「業務内容の見直し」といったことなどが挙げられますが、残業時間の削減効果は限定的であることが多く、まだまだ、取り組みに向けた課題が多いといえます。

労働基準法の改正などによって、具体的な残業時間の上限が設定されてきましたが、労働者と使用者との間の残業時間に対する認識にずれがあるため、改めて、残業時間の削減に向けた取り組みを労使間で協力して取り組むことが大切だといえます。

令和5年4月からは、運送業などの一部残業時間の上限規定が猶予されていた業種についても、残業時間の上限が設けられるようになることなどを鑑みると、残業時間の削減に向けた取り組みは、働き方改革において、より一層重要な取り組みになるといえます。

マネーライフワークス
岡崎 壮史
監修者

1980年3月23日生まれ。社会保険労務士・1級FP技能士・CFP認定者。令和3年度 中小企業・小規模事業者等に対する働き方改革推進支援事業(専門家派遣事業) 派遣専門家。大学卒業後、外資系生命保険会社の営業、資格の専門学校の簿記・FPの講師、不動産会社の経営企画を経て現在に至る。

比較ビズ編集部
執筆者
比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。