相続税の基礎控除とは?控除額の計算方法も解説

中央みらい会計事務所
監修者
中央みらい会計事務所 代表税理士 奥村 和仁
最終更新日:2023年02月09日
相続税の基礎控除とは?控除額の計算方法も解説
この記事で解決できるお悩み
  • 相続税の基礎控除とは何?
  • 相続税はどれくらい課税されるの?
  • 控除額の計算方法は?

「相続税の計算には基礎控除があるって聞いたけど、そもそも基礎控除が分からない…」という方必見!この記事では、相続税の計算に必要な基礎控除についてわかります。

最後まで読めば、計算に必要な基本的な知識の収集が可能です。全く知識がない方でも、計算過程も解説するので相続税がどれくらい課税されそうか、おおむね計算できるようになります。

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相続税の基礎控除とは

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基礎控除とは、相続税を計算する納税者に認められている非課税枠です。控除額は、遺産の規模や受益者である相続人の数によって決まります。

相続人が1人の場合の基礎控除額は600万円です。この600万円のほかに、相続人の人数に関係なく受けられるベースとなる3,000万円もあります。

相続人が2人以上いる財産の場合、控除額は1,200万円に増えます。受益者がひとり増えるごとに控除額は600万円ずつ増えてい行く仕組みです。

基礎控除は、数年に一度の税制改正で見直しが入ることがあります。控除額の変更はありますが、基本的な考え方は変わらないため参考にしてください。

相続税の基礎控除の計算方法

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基礎控除額は、遺産の価値から控除額を差し引いて計算します。

たとえば、遺産の価値が1億円、相続人が2人の場合、基礎控除は4,200万円です。

(3,000万円+600万円×2名=4,200万円)

この場合、遺産の課税対象額は1億円から4,200万円の基礎控除額を引いた残りの5,800万円になります。

【パターン別】相続税の基礎控除額例

●法定相続人が3名の場合の基礎控除・・・4,800万円(基礎控除額)=3,000万円+600万円×3名

●被相続人の実子2名と養子縁組している子が1名いる場合・・・4,800万円(基礎控除額)=3,000万円+600万円×2名+600万円

●被相続人に実子がなく、養子縁組をしている子が3名いる場合・・・4,200万円(基礎控除額)=3,000万円+600万円×2名

相続税法上、被相続人に実の子どもがいない場合は2名までという制限があります。

基礎控除の計算で必要になる「法定相続人」とは

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基礎控除を受けるために必要な法定相続人とは、法律で定められた相続の権利がある人のことです。

日本では、相続税法がありますが民法の考え方が基本になります。相続税法はあくまで「相続税」を計算するためのものであり、想定相続人は民法の規定で判定するのが原則です。そのため、配偶者、子、孫、兄弟姉妹などの近親者が法定相続人の範囲です。

法定相続人は、相続税の申告では相続人と言われます。対して遺産を譲る側の故人は被相続人です。

法定相続人の範囲

一般的には、近親者が法定相続人とされます。近親者とは、被相続人の親、兄弟姉妹、子供、孫を指します。

誰が法定相続人とみなされるかは、相続関係図の作成で把握できます。

特に配偶者は一般的に第一の相続人です。これに対して、遺言によって設定される相続人を遺言相続人といいます。

法定相続人の数え方

相続税の基礎控除額を計算する際には、法定相続人を決定し正確な人数を把握する必要があります。

法定相続人の数え方は、親族の順序に基づいて決定します。

優先順位1 配偶者
2
3
4
5 兄弟姉妹

配偶者が第一の相続人となります。配偶者がいない場合、子が第一の相続人です。子がいない場合は孫、親、兄弟の順に相続人が決まります。 最も近い親族が優先的に相続人になりますが、子がいる場合、親は相続人になりません。

相続順序は、相続関係図を基に被相続人を中心に下の代へ下がってきます。下の代がいない場合は上の代、つまり親や祖父母が対象です。下の代、上の代ともにいない場合は、被相続人の兄弟姉妹にうつります。

相続税の計算手順を解説

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計算の手順や控除がある程度理解できれば概算で税額が予測できます。相続財産の種類が限られている場合には、たとえ財産の額が多くても、計算は単純な場合が多くあります。

計算するためには、控除の種類も知っておくとより正確な納税額の計算が可能です。

相続税の計算で使える基礎控除以外の税額控除

相続税の計算には、基礎控除以外に、いくつかの控除が利用できます。未成年者控除、障害者控除などが代表的です。そこで、多くの人が利用する可能性が高い控除について解説します。

配偶者の税額軽減

相続税の申告をする人が結婚している場合、税額を軽減でき控除の中でも最も金額が高い控除です。軽減できる税額控除の額は次のとおりです。

  • 1億6千万円
  • 配偶者の法定相当額

ここからもわかるように、残された配偶者にはその後の生活もあるため、できるだけ相続税がかからないようにする措置が取られています。

計算の基礎になるものは、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産で計算されるため、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。

未成年者控除

未成年者は、相続税の控除が受けられます。要件は次のとおりです。(国税庁HPより抜粋)

(1)

1. 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人

2. 相続や遺贈により財産を取得したときに日本国内に住所がない人でも次のいずれかに当てはまる人

・日本国籍を有しており、かつ、その人が相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがある人

・日本国籍を有しており、かつ、相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人

・日本国籍を有していない人

(2) 相続や遺贈で財産を取得したときに18歳(注)未満である人
(3) 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であること。

(注) 「18歳」とあるのは、令和4年3月31日以前の相続または遺贈については「20歳」となります。

未成年者が満18歳(注1)になるまでの年数1年につき10万円で計算した額で、年数の計算は1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。

障害者控除

障害者である個人は、相続税の免除を受けることができます。この免除は、一般的に医師によって永久に障害があると判断された個人に適用されます。障害者控除が認められるためには、障害者であることを証明する書類を国税庁に提出する必要があります。

障害者控除は、次の要件すべてにあてはまると適用できます。

  • 相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人
  • 相続や遺贈で財産を取得したときに障害者である人
  • 相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人

障害者控除の額は、満85歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額です。この場合、特別障害者の場合は1年につき20万円となります。

障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないことがあります。その引き切れない部分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。

暦年贈与分の贈与税額控除

贈与は最も相続税の節税対策に有効な方法です。そのため、毎年非課税枠の範囲で暦年贈与している人も珍しくありません。

しかし、相続税の計算では、贈与財産は計算過程でいったん加算して計算し、贈与税を納付している分については、税額を控除するため結果的に相続税は少なくなります。

加算する贈与財産と加算しない贈与財産の範囲は次のとおりです。

(加算する財産)

(1) 相続開始前3年以内に贈与されたもの(贈与税の課税の有無は関係ない)
(2) 贈与税の基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額

(加算しない財産)

加算しない財産は次の3つがあてはまります。

(1) 贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
(2) 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
(3) 直系尊属からを受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額一括贈与

相続税の計算方法・具体例をあげた税額計算

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相続人は配偶者・長女・次女の3名、相続財産は2億6,800万円と仮定して計算してみましょう。内訳は次のとおりです。

配偶者 不動産や現預金をはじめとする1億5,000万円、債務と葬儀費用あわせて500万円
長女 有価証券・預貯金5,300万円・保険金1,500万円
次女 預貯金5,000万円

長女が受け取った死亡保険金は法定相続人1名あたり500万円の非課税枠が利用でき、1,500万円までが非課税です。

計算しやすいように、贈与はなかったと仮定します。

基礎控除 4,800万円=3,000万円+600万円×3名
非課税 2,000万円=保険金の受取1,500万円+債務および葬儀費用500万円

相続財産は2億6,800万円ありますが、

  • 2億6,800万円−基礎控除4,800万円−非課税2,000万円=2億円(課税対象)

配偶者は2億円のうち2分の1にあたる1億円を相続します。長女と次女は、残った2分の1である1億円を2分の1ずつ、つまり5,000万円ずつ相続します。

配偶者は1億6,000万円まで相続税はかからないため「税額0円」長女と次女は税額控除の該当がないためともに、約800万円の税金がかかります。(税率20%で計算)

まとめ

相続税の計算における基礎控除は、理解しておくべき重要な概念です。控除の対象となる法定相続人はもちろん、控除額も意識しておくことが大切です。

このような知識があれば、比較的簡単に相続税の計算ができるようになります。

監修者のコメント
中央みらい会計事務所
代表税理士 奥村 和仁

昭和50年生まれ大分県生まれ。埼玉県さいたま市西区在住個人の税理士事務所での勤務5年、税理士法人での勤務7年を経て、平成25年2月に独立。埼玉県さいたま市で中小企業・個人事業主の新規設立から経営コンサルまで、クライアントのニーズに合わせたトータルサポートを実践している。最近では、事務所のIT化にも積極的に取り組み、ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを始動し、クライアントは全国に。

今回のテーマは、「相続税の基礎控除」についてです。言い換えれば、法定相続人の数をきちんと数えることになります。相続人の方々は、被相続人の家族構成をきちんと把握しているのが一般的で、相続発生時に法定相続人は何人になる、ということも判断がつくと思われます。

ただ、稀に、実は、被相続人に相続人達も知らない家族がいた、ということがあります。こうしたケースでは、法定相続人の数が変わりますので、相続税の基礎控除額も変わり、ひいては、相続税額自体にも影響してくることになります。

この相続人も知らない被相続人の家族の有無については、被相続人の戸籍を辿っていく必要があり、若干ハードルが高い作業となるかもしれません。こういったケースがある可能性も踏まえ、相続税のような金額の大きな税がかかる可能性がある場合は、専門家の手を借りることを考えた方がよろしいのではないかと思います。
比較ビズ編集部
執筆者

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