土地の相続税評価額を徹底解説!調べ方や計算方法・減額の条件とは
- 土地の相続税評価額の計算方法は?
- 路線価の倍率はどのように調べる?
- 評価額が減額される土地の特徴は?
相続財産に土地が含まれていた場合、土地の評価額を調べて相続税の計算をする必要があります。節税につながるさまざまな補正・特例があるため、正しく把握したうえで手続きを進めましょう。
本記事では、土地の相続税評価額の計算方法をわかりやすく解説しています。最後まで読めば、正しい評価方法がわかるため「相続税の負担をできる限り抑えたい」と考えている方はぜひ参考にしてください。
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相続税における土地の評価額
不動産の価格には、以下の3種類が存在します。
時価 | 利害関係のない第三者との間で成立する売買金額 |
---|---|
相続税評価額 | 相続税の計算時に採用される価格 |
固定資産税評価額 | 固定資産税の計算時に採用される価格 |
土地にかかる相続税を計算する際は、上記のうち「相続税評価額」を用います。
相続税評価額は時価よりも安い
相続財産の価値を評価する際、土地の価格は時価よりも安く評価されます。時価に対する「相続税評価額」と「固定資産税評価額」の割合は以下のとおりです。
時価 | 100% |
---|---|
相続税評価額 | 80% |
固定資産税評価額 | 70% |
たとえば1億円の土地を購入すると、相続税を計算するうえでの評価額は1億円×80%=8,000万円となります。
土地の相続税評価額を計算する方法
土地の相続税評価額を計算する方法は、以下の2種類があります。
- 路線価方式
- 倍率方式
それぞれの計算方法の詳細を解説します。
路線価方式の計算方法
路線価方式とは、毎年7月に国税庁が公表する路線価(1平方メートルあたりの土地の価格)で相続税評価額を計算する方法のことです。路線価方式を用いた計算の手順を解説します。
手順1. 固定資産税の納税通知書を用意する
固定資産税の納税通知書は、毎年4月下旬〜5月にかけて送付される書類です。まずは、固定資産税の納税通知書に記載されている土地の面積(地積)を確認します。
手順2. 登記簿謄本を取得する
法務局で登記簿謄本を取得し、土地の持分割合を確認します。持分割合とは、不動産の権利の割合を表すものです。
たとえば、夫が3,000万円、妻が3,000万円をだして6,000万円の不動産を購入した場合、持分は「夫2分の1、妻2分の1」となります。持分割合がすでに判明している場合は、登記簿謄本を取得する必要はありません。
手順3. 路線価を把握する
国税庁のホームページから全国の路線価図を参照し、都道府県を選択して調べたい土地を探します。
上記の地図を参照し、道路に記載してある数字とアルファベットを確認します。たとえば「320D」は「この道路に面している土地は、1平方メートルあたり320,000円で評価する」という意味です。
記載されている数字にゼロを3つ付けることで、1平方メートルあたりの値段が算出されます。
手順4. 土地の相続税評価額を計算する
手順1〜3で導いた数字を用いて、土地の相続税評価額を計算します。たとえば土地の面積が200平方メートル、持分割合2分の1、路線価32万円の場合の計算式は以下のとおりです。
- 200平方メートル×1/2×32万円=3,200万円
したがって、路線価方式により導き出された土地の相続税評価額は、3,200万円と判断できます。
倍率方式の計算方法
倍率方式とは、固定資産税評価額に国が定めた倍率をかけることで土地の相続税評価額を計算する方法のことです。調べたい土地に路線価がない場合に用いられます。
ほとんどの場合、路線価評価と比較して安い価格が算出されます。
手順1. 固定資産税の納税通知書を用意する
路線価方式の場合と同様、まずは固定資産税の納税通知書を用意します。「価格」の欄に記載されている「固定資産税評価額」をチェックしてください。固定資産税評価額は、3年に1回見直されます。
手順2. 登記簿謄本を取得する
路線価方式の場合と同様、法務局で登記簿謄本を取得し、土地の持分割合を確認します。持分割合がすでに判明している場合は、登記簿謄本を取得する必要はありません。
手順3. 倍率表を確認する
国税庁のホームページから全国の路線価図を参照し、都道府県を選択のうえ日本全国から調べたい土地を探します。
倍率表は、調べたい土地の上記の場所から確認してください。倍率表にある「固定資産性評価額に乗ずる倍率等」欄の数字をチェックします。
手順4. 土地の相続税評価額を計算する
手順1〜3で導いた数字を用いて、土地の相続税評価額を計算します。たとえば固定資産税評価額が2,000万円、持分割合1分の1、倍率1.2(宅地)の場合の計算式は以下のとおりです。
- 2,000万円×1/1×1.2=2,400万円
したがって、倍率方式により導き出された土地の相続税評価額は、2,400万円と判断できます。
土地の相続税評価額が減額される条件6選
土地の評価額は、土地の使い勝手や利用方法などによってさまざまな減額が認められています。相続税評価額が減額される土地の代表例は以下のとおりです。
- 賃貸物件を建てている土地(貸家建付地)
- 借地
- 私道としている土地
- 大きすぎる土地
- 「小規模住宅地等の特例」が適用される土地
- 使い勝手のよくない土地
計算が複雑になるため、減額の手続きは税理士に依頼することが一般的です。減額の程度は依頼先の手腕によって変動するため、相続に精通した税理士を選びましょう。
1. 賃貸物件を建てている土地(貸家建付地)
貸家建付地とは、アパートや貸家の敷地に使用されている土地のことです。自分の土地として自由に利用できないことを考慮し、一般的に相続税評価額が20%程度減額されます。
空室がある場合は評価を減額できない場合があるため注意が必要です。計算方法の詳細は国税庁のホームページを参考にしてください。
2. 借地
借地権が発生する土地を相続した場合は、相続税がかかります。借地権とは、以下の条件を共に満たした場合に発生する権利のことです。
- 借地人が借りた土地に家を建築する
- 借りた土地の地代を地主に支払う
「土地を借りているだけで、所有しているわけではないから相続税の対象にならないだろう」と誤解するケースが多々あるため注意が必要です。相続税評価額は、土地の評価額に以下の借地権割合をかけて計算します。
A | 90% |
---|---|
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
借地権割合は、路線価図の道路に記載してあるアルファベットを確認します。
たとえば「320D」の記載がある土地の場合、相続税評価額は路線価方式で求めた評価額の60%になります。
3. 私道としている土地
所有者しか使用しない私道の評価額は、通常の土地の評価額に0.3をかけて算出します。たとえば200平方メートルの土地のうち、所有者しか使用しない私道が30平方メートル含まれている場合の計算例は以下のとおりです。
170平方メートルの土地 | 通常どおり「路線価方式」「倍率方式」で計算する |
---|---|
30平方メートルの私道 | 「路線価方式」「倍率方式」で計算した評価額に0.3をかけて計算する |
上記で求めた数値を足すと、200平方メートルの土地の評価額が算出されます。
4. 大きすぎる土地
500平方メートル以上の大きな宅地のうち、次の要件を満たす土地は大幅な減額が認められています。
規模要件 | 地積が500平方メートル(三大都市圏以外は1,000平方メートル)以上であること |
---|---|
地区要件 | 「普通住宅地区」および「普通商業・併用住宅地区」に所在すること |
容積率要件 | 指定容積率が400(東京23区は300)%未満の地域であること |
非常に複雑な計算式を用いるため、評価額の算出は専門家へ依頼することをおすすめします。
5. 「小規模住宅地等の特例」が適用される土地
「小規模住宅地等の特例」は、以下のいずれかの条件に当てはまるケースで相続税評価額の大幅な減額が受けられる制度です。
- 被相続人と同居していた
- 被相続人の事業を相続人が引き継ぐ
減額できる土地の概要と割合は以下のとおりです。
概要 | 減額割合 | |
---|---|---|
特定居住用宅地 | 住宅として使用していた土地 | 80%(330平方メートルまでの部分) |
特定事業用宅地 | 事業で使用していた土地 | 80%(400平方メートルまでの部分) |
貸付事業用宅地 | 賃貸していた土地 | 50%(200平方メートルまでの部分) |
たとえば、被相続人と同居していた人が実家の土地を相続するケースを例に挙げます。土地の評価額が3,000万円、面積が400平方メートルだった場合、以下の計算式で相続税評価額を算出します。
- 3,000万円−(3,000万円×330平方メートル÷400平方メートル×80%)=1,020万円
「貸付事業用宅地」の要件は細かく設定されているため、詳細は国税庁のホームページで確認してください。
6. 使い勝手のよくない土地
形状により使い勝手がよくない土地は、評価額を下げる補正が適用されます。主な補正の種類は以下のとおりです。
概要 | 具体例 | |
---|---|---|
不整形地補正 | 形がいびつな土地 | ・三角形の土地 ・台形の土地 ・カーブしている道路に面している土地 |
間口狭小補正 | 間口が狭い土地 | ・間口が8m未満の土地 ・間口への通路が狭い土地 |
奥行長大補正 | 間口に対して奥行が長い土地 | 道路に対して垂直方向に長い土地 |
補正率の詳細は国税庁のホームページを確認しましょう。
補正を考慮した評価額の計算例
補正を考慮する場合、当てはまるすべての補正率を路線価にかけあわせて計算します。一例として、以下の条件を設定します。
土地の広さ | 300平方メートル |
---|---|
路線価 | 15万円 |
補正 | ・不整形補正(0.98) ・間口狭小補正(0.90) ・奥行長大補正(0.98) |
補正率を考慮した評価額の計算式は以下のとおりです。
- 15万円(路線価)×0.98(不整形補正)×0.90(間口狭小補正)×0.98(奥行長大補正)×300平方メートル=3,889万6,200円
補正率を考慮しない土地の評価額は300平方メートル×15万円=4,500万円となるため、補正により610万3,800円の減額になります。
まとめ
相続財産のなかでも土地は高額になるケースが多く、相続税の負担も大きくなりがちです。土地の評価額に適用できる減額条件を確認のうえ、節税につなげましょう。減額率を最大限に高めたい方は、相続税に精通した専門家へ相談することをおすすめします。
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1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。
・不動産の評価(遺産分割を決める上で評価額が重要となり、相続税がかかる場合にも評価は重要な工程)
・遺産分割(その不動産を誰が相続するのかを決めること)
・相続登記(不動産を相続人へ名義変更すること)
その中で、今回の記事は「不動産の評価」についてです。土地は一物四価とも言われます。すなわち、一つの土地について4つもの価格が存在するということです。
【4つの価格】
・公示地価
・実勢価格
・相続税路線価
・固定資産税評価額
いずれの評価額で遺産分割を検討するにしても、トラブルやリスクを回避するためにも、専門家の意見を踏まえるに越したことはありません。まず税理士や弁護士などの専門家に相談してみましょう。
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