事業復活支援金とは
事業復活支援金とは、新型コロナウイルス感染症の影響により売り上げが減少した事業者を支援することを目的とした給付金制度です。感染症の影響が落ち着いたことから、2022年6月17日をもって事業復活支援金の申請受付は終了しています。
事業復活支援金の給付対象となる2つの条件
事業復活支援金の対象となるのは、以下2つの条件をともに満たしている事業者です。
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた
- 対象月の売上が30%以上減少した
条件の詳細を以下で解説します。
1. 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者
事業復活支援金の給付対象となるためには、事業が「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた」ことの証明が必要です。感染症の影響を受けたことを示す具体例は以下をご覧ください。
- 国や自治体から休業・時短・中止要請を受けた
- コロナ禍を理由として取引先が休業した
- 消費者の行動自粛にともない需要が減少した
- 海外におけるロックダウンの影響を受けた
- コロナ禍を理由としてサービスの供給が制限された
- 国や自治体の要請により就業が制限された
事業者の意思に関係のない「外部要因による影響」が当てはまります。
2. 対象月の売上が30%以上減少した事業者
以下の公式にもとづいて計算した売上高減少率が30%以上の場合、事業復活支援金の給付要件を満たします。
- 同月比較の売上高減少率={(2018年11月〜2021年3月の任意の対象月の売上高)−(2021年11月〜2022年3月の同じ対象月の売上高)}÷ (2018年11月〜2021年3月の任意の対象月の売上高)
一例として「2021年12月の売上が30万円、2019年12月の売上が70万円」の事業者における売上高減少率を計算してみましょう。
上記のように、対象期間のうち任意の1カ月をピックアップして売上高減少率を計算します。算出した減少率が30%未満の場合は、事業復活支援金の給付要件を満たしません。
給付対象外となる事業者の具体例
たとえ対象月の売上が30%以上減少していても「新型コロナウイルス感染症の影響を受けた」ことを証明できない場合は、事業復活支援金の給付対象になりません。
給付対象外となる具体例は以下のとおりです。
- 海水浴場の繁忙期と閑散期を比較し「見かけ上の」売上が減少している
- 取引時期や売上計上基準を調整したことにより売上が減少している
- 要請の範囲外の自主的な休業・時短により売上が減少している
その他、事業復活支援金の目的にそぐわないと判断された場合は不給付となります。
事業復活支援金の給付額
事業復活支援金の給付額は、以下の計算式にもとづいて算出されます。
- 給付額=基準期間の売上高 - 対象月の売上高 × 5
給付上限額や具体的な計算例を以下で解説します。
事業規模に応じて給付上限額が定められている
事業復活支援金の給付額は、事業規模と売上高減少率に応じて以下の上限額が設けられています。
計算式で算出した金額が、全額支給されるわけではない点に留意が必要です。
事業復活支援金の給付金計算例
一例として、以下の条件で給付金額を計算してみましょう。
上記のケースにおいて、事業者が法人の場合は50万円が支給されますが、個人事業主の場合は上限額を超えているため、給付額が30万円に減少します。
事業復活支援金の給付実績
2022年6月17日をもって申請受付を終了した事業復活支援金の給付実績は以下のとおりです。
- 申請件数:約234万件
- 給付総額:約1兆7,030億円
以下では給付の推移や都道府県別、業種別の給付実績を紹介します。
申請件数・給付件数の推移
引用:経済産業省「事業復活支援金の申請と給付について」
事業復活支援金の申請件数・給付件数の推移は上記のとおりです。累計件数をみると、申請された件数のうち大部分に給付がなされたことがわかります。
都道府県別の給付実績
都道府県別の給付率のランキングトップ5は以下のとおりです。
参照:経済産業省「事業復活支援金の申請と給付について」
都市圏がランキング上位を占めており、給付率は都道府県の事業者数に比例した結果となりました。
業種別の給付実績
業種別の給付率のランキングトップ5は以下のとおりです。
参照:経済産業省「事業復活支援金の申請と給付について」
新型コロナウイルス感染症は、需要が右肩上がりだった建設業にも大きな悪影響を及ぼしていたことがわかります。2位〜5位には、国や自治体による営業・イベント自粛要請の影響を大きく受けた業種が続きました。
持続化給付金や一時支援金なども含めた新型コロナ関連の給付金総額は約8兆円にのぼり、苦境に立たされた企業に対する支援の注力体制がうかがえます。
事業復活支援金の申請方法【5ステップ】
事業復活補助金の申請受付は2022年6月17日をもって終了していますが、受給の流れを改めておさらいしましょう。
具体的な申請手順は以下のとおりです。
- 申請アカウントを作成する
- 登録確認機関を検索・事前予約する
- 事前確認を受ける
- 申請する
- 審査のうえ給付金が振り込まれる
過去に一時支援金や月次支援金を受給したことがある事業者は事前確認が必要ないため、上記の1〜3を省略のうえ4からスタートします。
1. 申請アカウントを作成する
事業復活支援金の公式サイトで「アカウントの申請・登録」を行うと、申請者に申請IDが発行されます。現在は公式サイトが閉鎖されており、新規アカウント発行はできません。
2. 登録確認機関を検索・事前予約する
ステップ3の「事実確認」を受けるための登録確認機関を検索し、事前予約を行います。登録確認機関として設定されている専門家の具体例は以下のとおりです。
- 税理士
- 行政書士
- 中小企業診断士
- 商工会議所
- 金融機関
税理士や会計士と顧問契約を結んでいる場合は、各自の顧問へ事実確認を依頼できます。
3. 事前確認を受ける
事実確認は「テレビ電話・対面」のいずれかで行います。ただし「登録確認機関と顧問関係にある」「申請者が1年以上商工会の会員である」などの場合は、電話による事実確認も認められています。
事実確認のチェック項目は以下のとおりです。
- 事業を実施しているか
- 新型コロナウイルス感染症の影響を受けているか
- 給付対象を正しく理解しているか
登録確認機関により、事実確認に1,000円〜数千円の費用が発生する場合があります。費用の発生有無は、登録確認機関の予約時に確認しましょう。
4. 申請する
事実確認が完了したら、オンライン上で申請を行います。申請の際に添付が必要となる書類は以下のとおりです。
- 履歴事項全部証明書(中小企業等)・本人確認書類(個人事業主)
- 確定申告書類の控え
- 申請対象月の売上台帳
- 預金通帳の振込先が確認できるページ
- 宣誓・同意書
- 基準月の売上台帳
- 基準月の売上1取引分の請求書や領収書
- 基準月の売上取引を確認できる通帳のページ
上記のうち6〜8の書類は、以下の条件をともに満たした場合において省略可能です。
- 一時支援金や月次支援金を受給している
- 継続支援機関にあたる登録確認機関がある
書類はすべてPDFやExcelなどのデータで提出します。
5. 審査のうえ給付金が振り込まれる
申請事項や添付書類が審査され、給付が適当であると認められた場合は給付通知書が送付されます。入金は、審査完了後2営業日以内に行われます。
まとめ
本記事では、事業復活支援金の申請方法や給付実績などを紹介しました。事業復活支援金の給付は終了したものの、事業の立て直しに役立つ補助金・助成金制度は随時更新されています。自社の経営状況に悩んでいる方は、経営相談や補助金・助成金申請サポートを専門家へ依頼することも1つの方法です。
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よくある質問とその回答
監修者のコメント
社会保険労務士代表 涌井好文
保有資格:社会保険労務士、行政書士。平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。