仮想通貨の節税スキームは?サラリーマンにもできる6つのやり方を解説

小西裕也税理士事務所
監修者
小西裕也税理士事務所 税理士 小西裕也
最終更新日:2023年06月09日
仮想通貨の節税スキームは?サラリーマンにもできる6つのやり方を解説
この記事で解決できるお悩み
  • 仮想通貨取引で得た利益は課税される?
  • 仮想通貨の節税方法に法人成りが利用できる?
  • 仮想通貨の節税方法はサラリーマンでもできる?

仮想通貨投資をしている人やこれから始める人で、節税方法が知りたい方は必見。

仮想通貨の節税には、法人成りや各種税控除を利用することで得られるメリットがあります。この記事では、サラリーマンでも実践できる、仮想通貨投資における節税スキームを6つ紹介します。

最後まで読めば、仮想通貨投資における節税方法を理解でき、法人成りを含めた具体的な節税スキームがわかります。

自分にあった節税方法を選択することで、より多くの利益が確保できるでしょう。

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仮想通貨の税金に関して知っておきたい情報

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仮想通貨の取引で一定額以上の利益が出た場合は、確定申告が必要です。節税方法をより深く理解するために、まずは仮想通貨の税金で知っておきたい下記3つのポイントを紹介します。

  • 仮想通貨で得た所得は所得税の課税対象
  • 仮想通貨所得は「雑所得」に分類
  • 仮想通貨所得の課税率

仮想通貨で得た所得は所得税の課税対象

仮想通貨で得た利益は、個人・法人問わず所得税の課税対象です。仮想通貨の所得を求める場合、仮想通貨の売却で得た利益である売却益から手数料を差し引きます。残った金額が利益であり、所得税の課税対象となる所得です。

仮想通貨の所得計算方法の詳細は、国税庁のホームページで紹介されています。簡単に仮想通貨所得を計算できるExcelの提供もあるため、参考にしてください。

参照:国税庁「仮想通貨関係FAQ」の公表について」

仮想通貨所得は「雑所得」に分類

仮想通貨の所得は、下記の表の雑所得に分類できます。該当する所得により、計算方法が異なるため正しい分類が必要です。

1.利子所得 預貯金や運用信託などの利子・分配で得られた所得
2.配当所得 株や投資信託の配当で得られた所得
3.不動産所得 不動産に関連する売買・貸付で得られた所得
4.事業所得 事業によって得られた所得
5.給与所得 勤務先の給与・賞与で得られた所得
6.退職所得 勤務先の退職にともなって得られた所得
7.山林所得 山林の譲渡によって得られた所得
8.譲渡所得 資産の譲渡によって得られた所得
9.一時所得 1〜8に該当しない一時的な所得。懸賞の賞金、生命保険の一時金
10.雑所得 1〜9に該当しない所得。公的年金・副業など

雑所得で申告する場合、下記の特徴があります。課税所得とみなされた場合には、確定申告が必要です。

特徴 概要
1月1日〜12月31日の所得金額 20万円以上で課税
総合課税を適用 給与所得、不動産所得など、他の所得との合計金額に課税
損益通算を適用できない 雑所得の損失を他の所得と相殺できない

仮想通貨の課税区分を知りたい方は下記リンクで詳しく解説しています。

仮想通貨所得の課税率

所得税は総額の最大45%の税率が課税されます。住民税が約10%かかるため、合計すると約55%の税金が課税される計算です。下記の課税率速算表を参考にしてください。

課税所得 税率 控除額
1,000円〜1,949,000円 5% 0円
1,950,000円〜3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円〜6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円〜8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円〜17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円
給与所得500万円の会社員が、仮想通貨で4,000万円の所得を得た場合

(500万円 + 4,000万円)× 45% - 479万6,000円 = 1,545万4,000円

所得税が1,500万円以上、住民税は350万円以上の納税が必要です。

仮想通貨の節税スキーム6つ

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租税特別措置法によって税率が約20%に抑えられている株やFXと異なり、仮想通貨の課税率は高いことが特徴です。少しでも手元に残る金額を多くするために、下記の6つの具体的な節税方法を紹介します。

  • 取引にかかる経費を計上し利益を減少させる
  • 利益確定は年間20万円以下に抑える
  • ふるさと納税や各種税控除を利用する
  • 仮想通貨同士の損益通算を利用する
  • 青色申告の適用を検討する
  • 法人成りによる節税

1. 取引にかかる経費を計上し利益を減少させる

仮想通貨の運用や取引にかかった費用は、必要経費として計上できます。主に下記の3つが対象です。

項目 特記事項
仮想通貨の取引手数料 取引履歴の記録が必要
仮想通貨に関連するセミナー・書籍代など セミナー参加の交通費も含む
ウォレット代金

収入から必要経費を控除した残りの額が課税所得です。取引履歴に記載があるものは手数料をはじめ計上できるため、必ず記録を残しておきましょう。

2. 利益確定は年間20万円以下に抑える

仮想通貨の所得が年間20万円以下の場合、課税所得が発生しないため、納税の必要がありません。売買取引で確定させる年間の利益を20万円以下に抑えることが、節税対策につながります。仮想通貨で買い物するケースも同様です。仮想通貨は、価格変動が激しいため利益が出やすい反面、損失が膨らむことも珍しくありません。

予想以上の利益には損失を発生させる方法も有効

予想以上に利益が出る場合、あまり利益が期待できない仮想通貨の種類や損失がすでに出ている仮想通貨の種類を売却する方法があります。利益に対して意図的に損失をあてることで、利益と損失を相殺させ、利益を減少させます。

3. ふるさと納税や各種税控除を利用する

雑所得である仮想通貨所得には、所得税に有効な節税対策が適用可能です。ふるさと納税や住宅ローン控除など、一般的な税控除を利用して、節税対策をおこないましょう。

下記に挙げるものがある場合、有効な節税方法として役立ちます。

  • ふるさと納税
  • iDeCo(確定拠出年金)
  • 住宅ローン控除

4. 仮想通貨同士の損益通算を利用する

雑所得に分類される仮想通貨は、損失のあるほかの所得と相殺はできませんが、仮想通貨同士であれば損益通算(仮想通貨同士の相殺)が可能です。

具体的には、ビットコインの損失90万円を、アルトコインの利益100万円で相殺する方法です。損益通算で最終的な利益を年間20万円以下に抑えられれば、課税されることもありません。仮想通貨の損益通算は、当該年度(同じ1年間のみで、繰越がない)のみの適用です。

5. 青色申告の適用を検討する

仮想通貨の所得は青色申告を適用し、最大65万円の税控除が受けられます。取引金額が大きい場合には、損失の繰越、ほかの所得との損益通算が可能などの優遇措置が適用できるため有利です。

6. 法人成りによる節税をおこなう

所得税より法人税の方が税率が低いため、利益が同額でも納税額が異なります。法人のため、会計帳簿の作成をはじめ手間がかかる部分はありますが、法人成りをした方が節税効果は高いといえます。

法人の区分 法人税率
資本金1億円以下の普通法人 年800万円以下にかかる税率:15〜19%
年800万円超にかかる税率:23.20%
それ以外の普通法人 23.20%

参照元:法人税の税率|国税庁

法人地方税を考慮しても、プラス10%〜11%の増加になるため、税率45%の所得税と比較しても法人成りは有効な方法です。

サラリーマンでも法人設立は可能

サラリーマンでも、法人を設立し仮想通貨を事業としておこなうことが可能です。設立した法人から役員報酬として毎月報酬を受け取れます。法人として運営するために必要なものはすべて経費として計上できるため、雑所得として確定申告するよりも、控除できる経費が増加します。

仮想通貨の節税効果が最も高い法人成りの6つのメリット

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仮想通貨の節税方法で、最も効果が高いのは法人成りです。法人成りを選択した場合の主なメリットは下記の6つです。

  • 法人税率が低い
  • 法人所得全体で損益通算できる
  • 法人では10年間の赤字の繰り越しができる
  • 法人所得の分散ができる
  • 給与所得控除が適用できる
  • 経費が手数料だけではない

1. 法人税率が低い

個人の所得税率と法人の法人税率を比較した場合、法人税率がはるかに低いといえます。住民税も考慮することで効果が大きいため、多額の取引で利益も多額に出る場合は、法人成りが有利です。

2. 法人所得全体で損益通算できる

法人の所得は、定款に定めた事業内容であれば仮想通貨取引だけではなく、ほかの事業の売上とも損益通算できます。個人の場合、仮想通貨取引で得た雑所得をほかの事業と通算することができません。

法人税の場合、同じ会社の中で仮想通貨の収益と小売業をしている場合は小売業の売上を合算し、経費も合算できます。

3. 法人では10年間の赤字の繰り越しができる

法人税は、繰越欠損金の対象が10年間です。所得税のように、仮想通貨の損益が繰越せないことはありません。たとえば1年目は100万円の赤字、2年目が100万円の黒字だった場合、2年目の課税所得は前年の赤字と本年の黒字を相殺できます。結果的に課税所得は0円になります。

4. 法人所得の分散ができる

仮想通貨の所得が大きくなれば、法人1社だけで取り扱うのではなく、2社に分けて申告できます。もちろん、分けるにあたり何か明確な根拠が必要です。仮想通貨の取引事業所ごとで分散できるため、多額の納税額が発生する場合はより低い税率に下げられます。

5. 給与所得控除が適用できる

仮想通貨の収入を役員報酬や給与として受け取れるため、給与所得控除の適用ができます。法人税率を考慮しながら、給与として一定額を経費計上できるため、給与所得控除以外にもメリットが得られます。

6. 経費が手数料だけではない

法人で仮想通貨取引をすることで、仮想通貨の取引手数料以外に取引に使用したパソコン購入費用や通信料、使用場所の電気代も経費にできます。取引に使用したパソコンの購入代金は、青色申告でも経費計上できますが、税務署が承認しないケースもあります。

法人の場合、仮想通貨取引に限った経費の範囲だけではなく、法人を運営するために発生した経費は必要経費として認められやすいでしょう。

仮想通貨の節税対策で法人成りするデメリット4つ

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仮想通貨の節税対策で法人成りを利用することは、メリットだけではありません。主に下記の4つのデメリットがあります。

  • 法人設立の費用がかかる
  • 法人として赤字でも均等割は課税される
  • 決算時の含み益にも課税される
  • 経営者でも会社のお金は自由に使えない

1. 法人設立の費用がかかる

定款の作成や法人登記費用など、法人設立には自分ですべておこなっても最低20万円はかかります。間違いが発生した場合は、再提出も求められるため投下する時間も必要です。

税理士に依頼すると、費用は発生しますが確実に手続きができます。時間と労力、かかる費用を考慮して自分ですべておこなう方がいいか、依頼する方がいいのか検討しましょう。

2. 法人として赤字でも均等割は課税される

法人税は、均等割といわれる法人があるだけで納税しなければならない税金があります。7万円前後が必要になるため、誰でも法人を設立することで節税できるものではありません。

利益がなくても納税が発生するため、7万円前後が納税できるだけの納税資金となる資本金が必要になります。

3. 決算時の含み益にも課税される

雑所得に分類される仮想通貨は、売買や買い物、マイニングなどで利益確定させない限り「所得」の対象とならないのが現状です。

法人の場合は、株やFXのように仮想通貨も決算時点での評価額をもとにした「含み益」に課税される可能性があります。その場合「仮想通貨の利益が確定していなければ課税されない」雑所得の方が有利になるケースも考えられるでしょう。

税制上での扱いが新しい仮想通貨は、今後課税の取り扱いが変更される可能性が充分にあるといえます。

4. 経営者でも会社のお金は自由に使えない

儲けは会社のお金という位置づけになるため、1人社長で経営していても自由にお金を使用することはできません。使用することで、給与とみなされ所得税が課税されます。

法人のお金が使用できるのは、法人を運営するために必要な場合のみです。もちろん、会社から一時的にお金を借りることもできます。借りた場合は、金融機関からの借入と同様に法人に対して利息を支払わなければなりません。

仮想通貨の節税に関するよくある質問

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仮想通貨の取り扱いに関しては、まだ税制が整備されている途中です。そのなかで、よくある質問の代表的なものを4つ紹介します。

  • 海外の取引所を利用すれば仮想通貨の利益は課税されない?
  • 仮想通貨に関する税制は変更される可能性がある?
  • 決算時の含み益にも課税される?
  • 海外に出国しても税金はかかる?

1. 海外の取引所を利用すれば仮想通貨の利益は課税されない?

海外取引所を利用して仮想通貨取引をしている場合も、日本に居住している限り所得税が課税されます。海外の取引所を利用しているため、申告しなくてもいいと勝手に判断することで本来の税金にプラスして無申告加算税・延滞税などのペナルティが課される場合があるため、注意しましょう。

2. 仮想通貨に関する税制は変更される可能性がある?

可能性だけで判断する場合、近い将来、仮想通貨の税制が変更され「申告分離課税」に移行することは充分にあり得ます。最近の傾向では、株やFXと同様に申告分離課税の適用を求める声が高まっています。将来的に、この声を反映し税制が変更される可能性は頭に入れておきましょう。

3. 決算時の含み益にも課税される?

個人の確定申告で雑所得として申告する場合、手持ちの含み益や含み損は申告対象外です。法人の場合は、価格のついている仮想通貨に、期末の市場価格で評価し、含み益と含み損の認識が必要なため法人税の課税対象となります。

4. 海外に出国しても税金はかかる?

現状では、国外転出課税制度の対象ではないため、出国時の仮想通貨の含み益は課税対象ではありません。海外転出時課税制度に関しては国税庁のサイトの参照をおすすめします。

まとめ

仮想通貨は税制の改正が今後もおこなわれると予測できる取引です。誤った申告はペナルティの対象となるため、納税者にとってデメリットです。自分ですべてを解決しようとせず、わからない部分は税理士へ相談することも検討してみましょう。

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監修者のコメント
小西裕也税理士事務所
税理士 小西裕也

1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

国税庁は、仮想通貨取引で得た利益は総合課税であると公表しています。個人の場合、住民税含め最大55%の課税になるケースが出てきますが、これが法人になると実効税率で24%〜34%程度に抑えることが可能となります。

税率だけで考えると、法人を設立して、仮想通貨の取引を行う方がいいように見えますが、法人を設立する場合には、法人の運営・管理面での手間と合わせて考える必要があります。

個人投資家が安易に法人化することには懸念材料がいくつかありますが、仮想通貨取引で莫大な利益を上げているなら、節税の利点を活用できる可能性があることは事実です。

現状の法律を把握した上で、今後どのように仮想通貨を運用するのかについて、この記事をきっかけに考えてみてはいかがでしょうか。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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