仮想通貨の節税方法とは?知っておきたい課税の仕組み・節税の注意点を解説!

最終更新日:2023年03月14日
小西裕也税理士事務所
監修者
税理士 小西裕也
仮想通貨の節税方法とは?知っておきたい課税の仕組み・節税の注意点を解説!
この記事で解決できるお悩み
  • 仮想通貨の税金を節税する効果的な方法を知りたい
  • そもそも仮想通貨の利益にかかる税金はいくらくらい?税金の仕組みは?
  • 仮想通貨の節税対策で注意しておくべきポイントは?

「仮想通貨の節税方法はどうやって行うのだろう」そのようなお悩みを抱えていませんか?実は、仮想通貨ではまったく節税対策していなければ、最大で55%もの税金が利益に課せられてしまいます。

価格の乱高下が激しい仮想通貨は、大きな利益を得やすいことで投資家からの人気が高まりつつありますが、まだまだ新たな商品であるため法整備が追い付いていないのも事実と言えるでしょう。

そこで本記事では、仮想通貨の課税区分や税率など、仮想通貨に関する知っておきたい課税の仕組みや正しい節税方法を徹底解説しています。さらに節税時に注意しておくべきポイントも紹介しているので、仮想通貨の節税対策で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

仮想通貨の節税方法

仮想通貨の税金を節税するにはどのような方法があるのでしょうか?プライオリティーの高い順に紹介しておきましょう。

  1. 利益を得るために使った必要経費を計上する
  2. 利益確定を年間20万円以下に抑える
  3. ふるさと納税や各取得控除を利用する
  4. 仮想通貨同士で損益通算する
  5. 仮想通貨の所得を青色申告で確定申告する
  6. 法人を設立して利益を事業所得化する

1〜6の順番で節税の難易度は高くなりますが、難易度が高い分だけ仮想通貨の節税効果も高くなる傾向にあります。これを理解するには、仮想通貨に適用される税金の仕組みを理解しておくことが先決です。

仮想通貨で得た所得は税金の課税対象

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個人・法人を問わず、日本の税制では「所得」に対して所得税が課せられます。当然、仮想通貨で得た所得も所得税の対象です。ここでいう「所得」とは、収入から必要経費を差し引いて残った金額=利益のことです。

仮想通貨で得られた所得とは、売却益(仮想通貨売却で得た利益)から手数料を差し引いて得られた利益のことを意味します。

仮想通貨所得の計算方法について詳しく知りたい方、簡単に仮想通貨所得を計算できるExcel計算書を入手したい方は、下記にある国税庁のホームページを参照してください。

参照元:「仮想通貨関係FAQ」の公表について|国税庁

仮想通貨所得は「雑所得」に分類

もちろん、どのような所得であっても「一律で同じ税制」が適用されるわけではありません。国税庁では得られた所得の性格に応じて所得を10種類に区分しており、仮想通貨所得はそのうちの「雑所得」に分類されています。

仮想通貨所得は、所得税法上の雑所得に従って課税されることになるのです。下記に早見表を用意したので、ご覧ください。

1. 利子所得 預貯金や運用信託などの利子・分配で得られた所得
2. 配当所得 株や投資信託の配当で得られた所得
3. 不動産所得 不動産に関連する売買・貸付で得られた所得
4. 事業所得 事業によって得られた所得
5. 給与所得 勤務先の給与・賞与で得られた所得
6. 退職所得 勤務先の退職に伴って得られた所得
7. 山林所得 山林の譲渡によって得られた所得
8. 譲渡所得 資産の譲渡によって得られた所得
9. 一時所得 1〜8に該当しない一時的な所得。懸賞の賞金、競馬の払戻金など
10. 雑所得 1〜9に該当しない所得。公的年金・副業など

参照元:所得の区分のあらまし|国税庁

仮想通貨所得が分類される雑所得の特徴

仮想通貨の所得分類である「雑所得」には、税制上、どのような特徴があるのでしょうか?雑所得には、おおまかに以下のような特徴があり、課税所得と見なされた個人の方は確定申告が必要です。早見表を用意したので、ご覧ください。

特徴 概要
1月1日〜12月31日の所得金額 20万円以上、被扶養者は33万円以上で課税
総合課税を適用 給与所得、不動産所得など、他の所得との合計金額に課税
損益通算を適用できない 雑所得の損失を他の所得と相殺できない

仮想通貨の課税区分について詳しく知りたい方は下記リンクをご覧ください。

仮想通貨所得にはどのくらい課税されるのか?

会社員を含む一般の方で20万円以上、被扶養者の方でも33万円以上、仮想通貨の所得があれば課税されます。気になる税率ですが、雑所得である仮想通貨所得は総合課税となるため、ほかの所得も含めた総額に、金額に応じた累進税率が適用されます。

そのため、所得税は総額の最大45%となり、住民税約10%を合計した課税率は最大55%にもなる場合があります。所得に応じた控除額が設けられているとはいえ、膨大な税金を支払わねばならないことがおわかりでしょう。早見表を用意したので、ご覧ください。

課税所得 税率 控除額
1,000円〜1,949,000円 5% 0円
1,950,000円〜3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円〜6,949,000円 20% 427,500円
6,950,000円〜8,999,000円 23% 636,000円
9,000,000円〜17,999,000円 33% 1,536,000円
18,000,000円〜39,999,000円 40% 2,796,000円
40,000,000円以上 45% 4,796,000円

たとえば、給与所得500万円の会社員が、仮想通貨で4,000万円の所得を得ると、

  • (500万円 + 4,000万円)× 45% - 479万6,000円 =1,545万4,000円

所得税が1,500万円以上、住民税はおおよそ350万円以上支払う必要があります。参考元は下記リンクをご覧ください。

参照元:所得税の税率|国税庁

仮想通貨所得に課税されるパターン

仮想通貨で得られる利益=所得は、売買取引だけによるものではありません。以下のパターンで仮想通貨に20万円以上(被扶養者は33万円以上)の利益が生じている場合は課税所得となります。早見表を用意したので、ご覧ください。

仮想通貨の売却益 1年間の取引での合算
仮想通貨での買い物 買い物をした時点での評価額と差額
仮想通貨をマイニングで取得 マイニングで得た仮想通貨の評価額
利益を確定しないと課税所得にならない

現時点では、売買や買い物での仮想通貨利用やマイニングでの仮想通貨取得がなく、保有しているだけなら課税されません。仮想通貨所得が適用される雑所得では、利益確定しないと課税所得にならないことは覚えておくといいでしょう。

仮想通貨の6つの節税方法

仮想通貨の6つの節税方法

租税特別措置法によって税率が約20%に抑えられている株やFXと異なり、仮想通貨の課税率は高いことが特徴です。上記の6点から、具体的な節税方法をそれぞれ紹介していきましょう。

必要経費の計上

必ずやっておきたい、もっとも基本的な節税方法として挙げられるのが、仮想通貨の運用・取引にかかった費用を「必要経費」として計上することです。

冒頭でも解説したように、課税対象になる所得は「収入から必要経費を差し引いて残った利益」だからです。具体的には、以下のようなものが必要経費に該当します。

項目 特記事項
仮想通貨の取引手数料 取引履歴の記録が必要
仮想通貨に関連するセミナー・書籍代など セミナー参加の交通費も含む
ウォレット代金  

取引に使用するPCやインターネット料金なども必要経費として計上可能ですが、どこまで認められるかに関してはケースバイケースといわざるを得ません。仮想通貨所得が大きければ、税理士に相談してみるのも方法です。

利益確定を年間20万円以下に抑える

仮想通貨の所得が年間20万円以下(被扶養者は33万円以下)であれば、課税所得とは見なされないため税金がかかりません。売買取引で確定させる年間の利益を20万円以下に抑える工夫をするということです。これは仮想通貨で買い物するケースも含みます。

取引額の大きくない方ならともかく、本格的に仮想通貨の運用に取り組んでいる方には現実的な方法とはいえません。価格の乱高下の激しい仮想通貨では、タイミングを逃すことで利益を得るどころか、損失が膨らんでしまう場合もあるからです。

ふるさと納税・各種税控除の利用

給与所得者であっても、生命保険をはじめとした税控除を利用する方は少なくありませんが、こうした一般的な税控除は仮想通貨の所得にも有効です。

雑所得である仮想通貨所得は、所得税に有効な節税対策が適用可能だからです。たとえば、ふるさと納税やiDeCo(確定拠出年金)、住宅ローン控除などが仮想通貨の節税方法として挙げられるでしょう。

仮想通貨同士の損益通算を利用

雑所得に分類される仮想通貨は、損失のあるほかの所得と相殺はできませんが、仮想通貨同士であれば損益通算(仮想通貨同士の相殺)が可能です。

具体的には、ビットコインの損失90万円を、アルトコインの利益100万円で相殺するといった形です。損益通算で最終的な利益を年間20万円以下に抑えられれば、課税されることもありません。

仮想通貨の損益通算は当該年のみ有効

租税特別措置法の適用される株やFXと異なり、仮想通貨の損益通算は当該年のみ有効であることは知っておく必要があります。最終的な損失が生じても翌年には繰り越せません。

青色申告で納税

仮想通貨の所得を青色申告で納税することで、最大65万円の税控除が得られます。青色申告で納税するには個人事業主としての開業届、青色申告承認申請書を提出し、仮想通貨の所得が「事業所得」であることを認めてもらう必要があります。

そのためには、仮想通貨への投資を継続した事業として営んでいる、仮想通貨の利益が主軸となっていることを証明しなければなりません。このことから、主たる職業として会社員の収入を得ている方には難しい方法だといえるでしょう。

仮想通貨取引を事業として認めてもらえれば、損失の繰越が可能、ほかの所得との損益通算が可能などの優遇措置が得られます。仮想通貨の所得が大きい方は、個人事業主としての独立を視野に入れてもいいかもしれません。

法人設立で事業所得化

仮想通貨所得への課税率は最大で55%です。法人を設立して仮想通貨の利益を事業所得化できれば、法人税は最大でも23.20%です。法人住民税を含めたとしても33〜34%に税率を抑えられるため、仮想通貨の節税としてはもっとも効果の高い方法だといえます。

会社設立には少なからず費用と手間がかかるのは事実ですが、個人事業主よりも法人の方が税制面で圧倒的に有利です。仮想通貨取引で独立を目指している方なら、検討するに値する節税方法です。下記に早見表を用意したので、ご覧ください。

法人の区分 法人税率
資本金1億円以下の普通法人 年800万円以下にかかる税率:15〜19%
年800万円超にかかる税率:23.20%
それ以外の普通法人 23.20%

参照元は下記リンクをご覧ください。

参照元:法人税の税率|国税庁

節税効果の大きい法人設立のメリット

節税効果の大きい法人設立のメリット

法人設立による仮想通貨の事業所得化は、課税率だけではないさまざまなメリットの得られる効果の大きい節税方法です。上記の通り主にメリットは4つあります。個人の確定申告では得られない、法人設立ならではの節税メリットをそれぞれ紹介しておきましょう。

他の事業所得と損益通算できる

法人を設立すれば、一部の例外を除き、仮想通貨であってもそれ以外の事業であっても、会社運営によって得られた所得は「事業所得」に分類されます。法人設立によって仮想通貨の所得とそれ以外の所得で損益通算できるようになります。

たとえば、赤字の見込まれる事業の損失と仮想通貨の利益を相殺する、あるいは仮想通貨の損失を黒字事業と損益通算して課税所得を減らすなどが可能です。

雑所得としての確定申告では、仮想通貨同士での損益通算しか認められていないことと比べれば、節税対策の幅が大きく広がることがわかります。

繰越控除ができる

法人設立によって仮想通貨を事業所得化できれば、損益通算しても生じてしまった赤字を最大10年間繰り越せます。たとえば、初年度に1,000万円の赤字が生じた場合、最大10年に渡って翌年以降の黒字額と相殺可能です。その間、法人税を支払う必要はありません。

個人の確定申告では、仮想通貨でどんなに損失が生じても、それを翌年以降に持ち越すことができないのと対照的です。

繰戻還付を受けられる

仮想通貨の損失に対して、繰戻還付を受けられるのも法人設立のメリット。たとえば、利益のあった翌年度に仮想通貨取引で損失が出た場合、欠損金の繰戻還付を適用することにより、前期に支払った法人税の還付を得られます。

経費計上しやすい

法人を設立すれば、経費の幅が広がるため節税対策をしやすくなります。個人の確定申告では仮想通貨取引・運用にかかった費用を経費にしようと考えても限度がありますが、法人であれば経営に関連する高額な備品なども必要経費として認められやすいでしょう。

基本的に事業年度の期間は定款で決められているものではありますが、株主総会で定款を変更することで簡単に変更が可能です。仮想通貨が多くの利益が予想される場合は、決算期を変更して利益を次年度に持ち越すことも可能です。

知っておきたい法人設立のデメリット

知っておきたい法人設立のデメリット

メリットばかりのように思える法人設立ですが、デメリット面がないわけではありません。上記の通り主に2つのデメリットがあります。それぞれ解説しましょう。

仮想通貨が赤字でも決算が必要

法人化すれば、仮想通貨取引で赤字が出た場合でも決算申告が必要です。課税所得がなければ法人税を支払う必要はありませんが、法人住民税の均等割に関しては支払いが必要です。

会社員の副業として仮想通貨取引しているのであれば、年間取引の結果が赤字だった、あるいは所得が20万円以下だった場合は、確定申告する必要すらありません。赤字でも義務を果たさなければならないのは、ある意味で法人化のデメリットだといえます。

含み益の計上が必要になる可能性がある

雑所得に分類される仮想通貨は、売買や買い物、マイニングなどで利益確定させない限り「所得」の対象とならないのが現状です。まだまだ税制上での扱いが新しい仮想通貨は、今後課税の取り扱いが変更される可能性が充分にあるといえます。

たとえば法人の場合は、株やFXのように仮想通貨も決算時点での評価額をもとにした「含み益」に課税されるようになると見られています。その場合「仮想通貨の利益が確定していなければ課税されない」雑所得の方が有利になるケースも考えられるでしょう。

仮想通貨の節税に関するFAQ

ここでは、仮想通貨の節税に関するよくある質問をQ&Aでまとめました。下記の3つをそれぞれ解説しましょう。

  • 会社員でも個人事業の開業・法人設立は可能?
  • 海外の取引所を利用すれば仮想通貨の税金はかからない?
  • 仮想通貨に関する税制は変更される可能性がある?

会社員でも個人事業の開業・法人設立は可能?

企業・組織と雇用契約を結ぶ方に、個人事業の立ち上げ・法人設立を禁じる法律はありません。手続きさえ踏めば会社員の方でも個人事業の開業・法人設立は可能です。

雇用契約に「従業員の副業、サイドビジネスとしての事業展開を禁止する」項目がある場合は、契約に違反することになってしまいます。まずは契約内容を精査したうえで、開業・法人設立に障害があるようなら会社と相談する必要があるでしょう。

海外の取引所を利用すれば仮想通貨の税金はかからない?

海外取引所を利用して仮想通貨取引していても、日本に居住している限り所得税が課税されます。

海外取引所を利用することで、取引内容を税務署に把握されにくくなるということはあるかもしれませんが、もし所得隠しが判明すれば、本来の税金にプラスして無申告加算税・延滞税などのペナルティが課されます。ペナルティや対処法について詳しく知りたい方は下記リンクをご覧ください。

仮想通貨に関する税制は変更される可能性がある?

仮想通貨の特徴は、FXや株式などと異なり「累進課税」「総合課税」が適用されることです。利益があるほど大きな税金を課されるのはこのためであり、FXや株式同様、仮想通貨にも「申告分離課税」を適用すべきという声が高まっています。

現時点では具体的な動きがあるとはいえませんが、近い将来、仮想通貨の税制が変更され「申告分離課税」に移行することは充分にあり得るでしょう。その場合、税率は一律で20%となるため、最適な節税方法も異なってくると予想されます。

まとめ:仮想通貨の税金・節税対策は専門家への相談がおすすめ

効果的な仮想通貨の節税方法を知りたい方に向け、本記事では、課税区分や税率など、仮想通貨に関する課税の仕組みや正しい節税方法を解説してきました。

節税効果の大きい法人化に興味を持った方も多いかもしれませんが、そもそも事業所得800万円まででも法人税率は15%です。仮想通貨の利益によっては個人で確定申告した方がいいかもしれません。

しっかりと見極めるためには、税金のスペシャリストである税理士に相談するのがベスト。仮想通貨の経費としてなにが計上できるのか?専門家の意見を聞くことも重要です。

「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、優良な税理士をスピーディーに探せます。複数の税理士に無料で相談できるのもポイント。是非、利用してみてください。

監修者の一言

国税庁は、仮想通貨取引で得た利益は総合課税であると公表しています。個人の場合、住民税含め最大55%の課税になるケースが出てきますが、これが法人になると実効税率で24%〜34%程度に抑えることが可能となります。

税率だけで考えると、法人を設立して、仮想通貨の取引を行う方がいいように見えますが、法人を設立する場合には、法人の運営・管理面での手間と合わせて考える必要があります。

個人投資家が安易に法人化することには懸念材料がいくつかありますが、仮想通貨取引で莫大な利益を上げているなら、節税の利点を活用できる可能性があることは事実です。

現状の法律を把握した上で、今後どのように仮想通貨を運用するのかについて、この記事をきっかけに考えてみてはいかがでしょうか。

小西裕也税理士事務所
税理士 小西裕也
監修者

1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

比較ビズ編集部
執筆者
比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。