特定支出控除で認められる支出は?必要書類や手続き方法を解説!
- 特定支出控除とは?
- 特定支出控除で認められる支出は?
- 特定支出控除の申請方法は?
特定支出控除とは、国税庁によって認められた特定支出を所得から差し引ける制度です。給与所得者の業務に関する支出が多かった場合、活用することで金銭的負担を軽減できます。節税にも役立つため、どのような場合に特定支出控除の適用を受けられるか判断することが重要です。
この記事では、特定支出控除で認められる支出を解説します。手続きの手順や注意点もあわせて解説するため、業務上の経費を多く支払った給与所得者の方はぜひ参考にしてください。
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特定支出控除とは特定支出を所得から差し引ける制度
特定支出控除とは、国税庁によって認められた特定支出を所得から差し引ける制度です。給与所得者にのみ認められている制度であり、業務に関係する支出が多かった場合に活用できます。
給与所得者は個人事業主や法人と異なり、業務関連費を個別に経費として計上し、所得から控除することが認められていません。収入に応じた給与所得控除が自動的に適用されています。
しかし、実際の業務関連支出が控除額を超える場合、特別支出控除の利用が可能です。給与所得者も確定申告をすることで、会社から支給されていない特定支出を経費として計上できます。
2014年の税制改正により対象は拡大
特定支出控除は、2014年の税制改正により対象が拡大し、より利用しやすくなりました。特定支出控除は要件が厳しく、利用できるケースが限られていましたが、現在では対象となる費用が拡大されています。
たとえば税理士や公認会計士になるための資格取得費や、業務に関係する図書費・衣服費・交通費などが特定支出控除の対象です。改正前は特定支出の合計が給与所得控除を超えなければ制度が適用されませんでしたが、改正後は給与所得控除の半分を超える場合に適用されます。
特定支出控除で認められる特定支出7つ
特定支出控除で認められる特定支出は、以下の7つです。
- 通勤費
- 旅費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 勤務必要費
1. 通勤費
特定支出として認められるのは、会社に通勤するために支払った費用のうち、会社から支給されない通勤費です。主に次の費用が挙げられます。
- 電車や新幹線を利用して通勤するための交通費
- 車通勤のためのガソリン代
- 高速料金
- 車の修理代
会社から補填されない通勤費は特定支出ですが、航空機での通勤による支出は一般的に認められません。グリーン車や座席のグレードアップなどは特定支出から除外されるため注意しましょう。
特定支出と認められるためには、会社から最も経済的かつ合理的な通勤ルートと認められる必要があります。
2. 旅費
会社から命じられた出張で支払った旅費は、特定支出として認められます。主に特定支出として認められるのは、移動にかかる費用です。たとえば以下の費用が該当します。
- 運賃
- ガソリン代
- 高速料金
- 自動車の修理代
通勤費と同様、どのような交通手段でも特定支出が認められるわけではありません。会社から最も経済的かつ合理的な移動ルートであると認められていることが条件です。
3. 転居費
転任の日から1年以内の、通常必要と思われる費用は特定支出が認められます。主に該当する費用は、以下のとおりです。
- 交通機関の運賃
- ガソリン代
- 有料道路の料金
- 宿泊費
- 引越しの運送費
- 運送中の損害保険料
壁の塗り替えや畳替えなどは、特定支出控除の対象に含まれないため注意してください。
4. 研修費
特定支出と認められる支出には、研修費が含まれます。職務に必要な技術・知識を習得することを目的とした研修に支払った費用は特定支出です。
研修とは、第三者からの訓練や講習によって技術や知識を習得する受動的な行為のことを指します。資格を取得する目的の訓練・講習は、研修費に含まれません。受講のための交通費は、研修内容や旅行期間などを総合的に考慮して特定支出とするか判断されます。
5. 資格取得費
業務に必要な資格を取得するための費用は、特定支出に該当します。技術や知識を習得する目的の研修費と、資格取得を目的とする資格取得費は、特定支出のカテゴリーが異なるため注意しましょう。
資格取得費を特定支出に含めるためには、資格が業務に必要であると会社から認定してもらう必要があります。税制改正により、改正前には対象外の資格であった医師や弁護士も特定支出の対象になりました。資格取得に失敗しても、支払った費用は特定支出の対象となります。
6. 帰宅旅費
単身赴任の給与所得者が、配偶者や生計をともにする家族と離れて暮らしている場合、帰宅のための旅費が特定支出に含まれます。単身赴任先から自宅に帰るための公共交通機関の運賃や自動車移動にかかる費用が対象です。
帰宅旅費の定義は「当人が勤務する場所」を起点とします。たとえば東京に家族が居住し、当人が福岡で勤務していれば「福岡~東京間の交通費」が帰宅旅費です。
7. 勤務必要経費
図書費・衣服費・交際費など、当人の業務に必要であると会社から証明された費用は特定支出の対象です。最大65万円の範囲内に限り勤務必要経費と認められます。勤務必要経費となる支出の詳しい内容は以下のとおりです。
図書費 | 専門書や特定分野を扱う新聞・雑誌、職務遂行の参考になる図書が対象 |
---|---|
衣服費 | 制服・事務服・作業服など、勤務場所での着用が必要な衣服が対象 |
交際費 | 給与支払者(勤務先)の得意先・仕入先など、職務上関係ある方に対する接待・贈答が対象 |
図書費・衣服費・交際費は勤務必要経費としてまとめて扱われますが、特定支出の証明書は費用ごとに必要です。特定支出の申告を行う際には、購入品ごとに経費を管理しましょう。
特定支出控除額の計算シミュレーション
特定支出控除額の計算は以下の式で行います。
- 特定支出控除額=特定支出の合計金額−給与所得控除額の2分の1
給与所得控除額は該当する方の年収に応じ、以下の表に当てはめて計算します。
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 550,000円 |
1.625,001円から1,800,000円まで | 収入金額×40%−100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6.600.001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円 |
たとえば、収入金額が400万円、特定支出が70万円である場合、給与所得控除は400万円×20%+44万円=124万円です。給与所得控除の2分の1は62万円であるため、特定支出控除は70万円-62万円=8万円となります。
確定申告することで給与所得控除だけではなく、特定支出控除も所得から差し引くことができる点がポイントです。
特定支出控除申請手続きの手順
特定支出控除申請手続きの手順は、以下のとおりです。
- 必要な書類を用意する
- 特定支出に関する証明書を作成・提出する
- 特定支出に関する明細書を作成する
- 確定申告書を作成して申告する
確定申告の前に特定支出に関する証明書や明細書を作成しなければなりません。手間がかかるため、時間に余裕を持って準備を始めましょう。
1. 必要な書類を用意する
特定支出控除申請に必要な書類を用意します。必要書類は以下のとおりです。
- 特定支出に該当する費用を支払った証明となる領収書やレシートなど
- 特定支出に関する証明書
- 特定支出に関する明細書
- 源泉徴収票
- 確定申告書
証拠となる資料が不足していると控除が認められないため、できるだけ早い段階で整理しておきましょう。1,000円未満の公共交通機関の支払いは、レシートや領収書が不要ですが「金額」「利用した日付」「支払先」は記録する必要があります。
2. 特定支出に関する証明書を作成・提出する
必要書類を揃えたあとは、領収書・レシートを参照しながら「特定支出に関する証明書」に必要事項を記入します。
特定支出に関する証明書は、国税庁ホームページ「給与所得者の特定支出に関する証明書」からダウンロード可能です。特定支出の種類によって使用すべき証明書が異なるため注意してください。
作成した証明書は、勤務先の会社に提出します。特定支出控除の適用を受けるためには、条件を満たしていると会社に証明してもらう必要があるためです。確定申告の期間である該当年の翌年2月16日~3月15日に間にあうよう、時間に余裕をもって提出しましょう。
3. 特定支出に関する明細書を作成する
特定支出ごとに内容をまとめた「特定支出に関する明細書」を作成します。支出の項目ごとに、金額・支出先・支払い日などを正確に記載します。特定支出に関する証明書と同様に国税庁のホームページから様式のダウンロードが可能です。
4. 確定申告書を作成して申告する
特定支出に関する証明書・申請書、源泉徴収票を参照しながら「確定申告書」を作成します。確定申告を作成後、必要書類とともに税務署に提出しましょう。
特定支出控除が認められると「所得金額」が変更になるため注意してください。確定申告書の「所得金額等」にある「給与」が変わるため、所得税・復興特別所得税の再計算をしなければなりません。
納付済みの源泉徴収税との差額が発生する場合には「還付される税金」に金額を記入します。
特定支出控除の注意点3つ
特定支出控除の注意点は、以下の3つです。
- 必要書類がすべて揃わなければ適用されない
- 電子書籍の閲覧用端末の購入費用は対象外
- 交通料金が15,000円以上の場合は証明書の取得が必要
1. 必要書類がすべて揃わなければ適用されない
特定支出控除を受けるためには、支出内容を証明するための書類をすべて正しく揃える必要があります。領収書・勤務先からの証明書・支出明細書など、1つでも不足していると控除が認められない可能性があるため注意してください。
提出前には、必要書類が漏れなく揃っているか、念入りに確認しましょう。
2. 電子書籍の閲覧用端末の購入費用は対象外
業務に関係する書籍代は特定支出として認められる場合がありますが、電子書籍を読むための端末を購入する費用は控除対象になりません。業務に必要な備品であっても、私的利用が可能なものは対象外とされる点に注意が必要です。
3. 交通料金が15,000円以上の場合は証明書の取得が必要
1つの交通機関で利用する運賃・料金が15,000円以上になる場合は、毎回「搭乗・乗車・乗船に関する証明の依頼書」を取得する必要があります。
「搭乗・乗車・乗船に関する証明の依頼書」の作成は、船舶のチケットカウンターや電車の降車駅などにある精算所で行いましょう。搭乗券とともに証明書を提示して記載してもらう必要があるため、移動時は事前に証明書を用意しておく必要があります。
特定支出控除が使えないと言われる理由3つ
特定支出控除が使えないと言われる理由は、以下の3つです。
- 経費が自己負担となるケースが少ない
- 自己負担の経費を会社に照明してもらわなければならない
- 適用を受ける経費の金額が高い
1. 経費が自己負担となるケースが少ない
一般的な企業では、通勤費・出張旅費・研修費などの必要経費は会社が負担してくれるケースが多く、個人が自己負担する機会はそれほど多くありません。
自己負担している支出が少ない場合、特定支出控除を利用する前提条件が満たされないため、使う機会が限られるでしょう。
2. 自己負担の経費を会社に証明してもらわなければならない
特定支出控除が適用されるためには、自己負担の経費を会社に証明してもらわなければなりません。通勤費は最も合理的で経済的であること、勤務必要経費は職務の遂行に直接必要であることが条件です。
会社側も経費を認める以上、適切な支出か、適正な金額かを厳しくチェックするため、時間や労力がかかります。会社が経費と認めるかどうか微妙な支出も多く、特定支出の申告をしない給与所得者も少なくありません。
3. 適用を受ける経費の金額が高い
特定支出控除は、自己負担した経費の合計が「給与所得控除額の2分の1」を超えなければ適用されません。たとえば給与所得控除が100万円であれば、50万円以上の支出が必要です。「給与所得控除額の2分の1」を自己負担で超えるケースは少なく、結果的に制度を使える人も限られます。
まとめ
特定支出控除は、給与所得者の支払った経費が多い場合に、特定所得を所得から差し引ける制度です。適用される条件や支出は厳しく定められているため、申告の際は慎重に手続きを進めてください。
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1つ目は手間がかかるという点です。業務のために使用したということをひとつひとつ証明しなければなりません。特に旅費や勤務必要経費については個人使用のものと明確に区別する必要があります。
2つ目は適用を受けるための金額要件が厳しいという点です。特定支出額が給与所得控除額の2分の1を超えなければ適用を受けることができません。給与収入が400万円の方であれば62万円、年収500万円の方であれば72万円と高額な特定支出が必要になります。
特定支出控除の適用を受けることができる方というのは限定されているかもしれません。適用を検討される方は特定支出に係る領収書や証明書の保存をもれなく行い、時間が経過してからでも業務のために使用したことがわかるように記録をしっかり残しましょう。

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