税理士の仕事内容は?メリットやデメリットと働き方まで解説
- 税理士とはどんな仕事?
- 税理士の給与やキャリアパスには何がある?
- 税理士になるには何が必要?
「税理士という言葉はよく聞くけど、具体的な仕事内容はあまりわからない…」「税理士事務所に勤務しているけど、この先どうなるかわからないし不安」という疑問や悩みを抱えている方に、仕事内容とキャリアパスについて解説。税理士が具体的にどのような仕事をしているのかがわかります。
最後まで読めば、税理士として働くメリットやデメリットのほか、「税理士になるために何が必要か」まで解説しています。
税理士の仕事内容5つ
税理士業務は、税金に関するプロフェッショナルであり独占業務です。以前は、税務申告や節税対策をはじめとする税務相談に応じることが業務内容でした。最近では顧客ニーズにも変化があり、補助金申請業務や経営アドバイスなど税務以外の相談を求められています。
具体的には、次の5つの業務があります。
税務代理 | 納税者の代理として確定申告・青色申告などの申請、税務調査への立ち会い、不服申し立てを遂行 |
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税務書類の作成 | 納税者の代理として税務署に提出する税務書類を作成 |
税務相談 | 税務に関する納税者の悩み・疑問の相談に対応 |
補助金申請 | 資金調達・設備投資のタイミングで自社に合う補助金を紹介 |
経営アドバイス | 現在の状況をはじめ、1年後、3年後、5年後の将来像から現状において必要なことをアドバイス |
1. 税務代理
税務代理は、独占業務のうちの1つで納税者の申告、税務調査の立ち合いを行います。税務調査の結果、納得がいかなければ、納税者に変わり不服審判所に申し立てを行います。
税理士は納税者が訴訟を起こした場合、代理人として出廷する権利があるため、常に知識の習得をし続けなければなりません。
2. 税務書類の作成
税務書類とは、税務署へ提出する納税のための申告書だけではなく、地方自治体への申告書の提出や申請書の提出もあてはまります。納税者に代わり、税務書類の作成を行う業務です。
税理士のみが納税者に代わり税務書類の作成が可能です。税理士が作成した場合は、税務代理権限証書を添付して代理人であることを証明します。
3. 税務相談
税金に対する質問に対して、正しい知識で回答できるのは税理士のみです。節税対策や納税資金が足りないなどの納税者の悩みや疑問に応じます。
税務相談には、納税資金の調達方法も含まれます。高額な納税資金が必要な場合は資産の売却のアドバイスをする必要があり、決算書の中身をより深く理解できることが必要です。
税務相談を気軽に受ける機会として、顧問をしている企業への月次訪問があります。下記の記事でくわしく解説しているため、参考にしてください。
4. 補助金申請
最近の税理士業務のなかで、必要性を求められているのが補助金申請です。申請だけではなく、顧問先に対して補助金情報の提供が必要になっています。
税務に関する知識があるのは当然ですが、補助金に関する正しい知識があるかどうかで税理士の将来性も問われます。
5. 経営アドバイス
黒字や赤字を提示するだけではなく、顧問先の状況にあったアドバイスが必要です。
たとえば、融資の関係で決算書は黒字でなければ困る場合「資産を手放すことで利益を得て黒字化にする」などのアドバイスができます。アドバイスは経験の多さにもよりますが、どれだけ納税者の決算内容を知っているかでもアドバイスの引き出しの量は人によって異なります。
資金調達方法(金融機関・補助金など)、同業他社の成功例、経営改善方法、最新の税制改正に関する情報などが挙げられます。
税理士の平均年収は658万円
職業情報提供サイトの発表では、税理士の平均年収は658.6万円です。職業情報提供サイトの一般的な経理事務の年収が453万円で、資格がある分ほかの業種と比較すると年収は高くなっています。ただし、雇用形態や経験年数によっても異なるため、この限りではありません。
税理士は、社員税理士として勤務するだけではなく独立開業もできます。独立開業した場合、経営次第では、平均年収を上回ることが可能です。
税理士に向いている人の特徴3選
資格取得ができれば、誰でも税理士業に就くことは可能です。しかし税理士を一生の仕事として働き続けるには、顧客からの信頼を得ることが重要です。
顧客から信頼を得られる税理士の特徴として、次の3つが挙げられます。
- コツコツと地道な作業が得意な人
- アンテナを張って学び続けられる人
- 倫理観や正義感が強い人
コツコツと地道な作業が得意な人
事務作業が多く、反復作業を苦痛に感じない精神力が必要です。税理士は、常に最新の税法を知っておかなければなりません。税務署へ提出する申告書は、慣れていれば誰でも作成できますが、品質が高いものとなると日々の積み重ねが必要です。
アンテナを張って学び続けられる人
税理士試験に合格するための知識のみでは、知識不足になる場合があります。税法は毎年改正が入るためです。試験勉強は大切ですが、最新の税法や情報を収集することも必要です。
倫理観や正義感が強い人
税法を解釈するうえで「社会通念上」という言葉が出てきます。「社会通念上=一般的にどうなのか」という常識的な感覚が必要です。顧問先には「高い納税意識」を持ってもらうことを考慮すると、倫理観や正義感は必要です。
税理士の働き方
「税理士資格を取得する=独立」と考えがちですが、最近は勤務税理士も増加しています。税理士資格を取得した場合、次の4つの働き方が挙げられます。
- 税理士法人(税理士事務所)
- 会計事務所
- 一般企業・金融機関(企業内税理士)
- 独立
税理士法人(勤務税理士)
個人の税理士事務所や、税理士法人など勤務税理士として働く場合です。税理士資格を取得しても2年の実務経験がなければ税理士会に登録できないため、実務経験を積むために勤務税理士を選ぶ人もいます。
しかし2年間の実務経験では相続の知識をはじめとして実戦的な経験が少ないため、そのまま継続的に勤務する方もいるため、一概に「2年まで」とはいえません。
会計事務所(勤務税理士)
税理士法人に勤務する場合と同じように、会計事務所や監査法人で勤務税理士として働く場合があります。とくに、会計事務所には公認会計士資格を取得している人がおり「監査=公認会計士」「税務=税理士」と役割を明確に分けています。
会計士は会計監査をし、税理士が税務監査をすることで大規模な企業の顧問を1カ所の事務所で対応が可能です。
一般企業・金融機関(企業内税理士)
税理士として、一般企業の経理部門や金融機関に就職し自社の申告を行う場合があります。とくに中堅大企業といわれる、中小企業のなかでも大企業に近い規模の法人や上場企業には、企業内税理士がいることで申告業務が円滑に進みます。
税務に関する知識も経理担当者より豊富に持っているため、将来的な税に関する動向をみながら対応できるでしょう。
独立
資格が取得できれば独立することも可能です。ただし、はじめから独立して税理士をするより、新規顧客獲得のノウハウや経験を積むためにも勤務税理士を選択することが多いです。
税理士事務所で勤務経験を積んでから独立するのが一般的です。将来的な収入を考えれば、経験を積んだ後に独立開業する人が多いです。
税理士になるメリット4つ
税理士資格は、難関国家資格のうちの1つです。勉強に時間がかかるため簡単には合格できませんが、税理士になればメリットも多くあります。
税理士になるメリットは以下の4つです。
- 国家資格のため信用度が高い
- 就職に有利
- 誰でも高収入が得られる
- 定年がない
メリット1. 国家資格のため信用度が高い
国家資格が周囲に与える影響は大きいです。税理士事務所に勤務しても、勉強中の職員と税理士では顧問先の印象が変わります。
税理士以外の名刺には、肩書きが書かれていないことも一般的に多いため、責任はありますが信用度も高いといえます。
メリット2. 就職に有利
税理士事務所に入所してから資格を取得するよりも、資格を取得しておいて2年の実務経験を積む方が就職に有利です。
近年、税理士事務所は「スペシャリスト集団」を目指している傾向があります。入所前に税理士試験に合格していることは、採用側にとっても好印象です。
メリット3. 誰でも高収入が得られる
経験による差はありますが、税理士資格で高収入が得られます。資格がものをいう業種のため、男女の差や年齢差は関係ありません。
メリット4. 定年がない
自ら返納をしたり剥奪されたりしない限り、税理士資格は一生所持できます。会社員のように定年はありません。もちろん、勤務税理士の場合は就業規則により規定がありますが、独立することで定年は関係ありません。
最近では、一般職員と資格ホルダーに分けて就業規則を作成している事務所もあります。
税理士になるデメリット2つ
税理士業はメリットだけではなくデメリットもあります。主なものは次の2つです。
- 資格取得に時間がかかる
- 独立した場合は収入面が不安定になる可能性がある
デメリット1. 資格取得に時間がかかる
税理士試験に合格するために、10年かかって取得する人も珍しくありません。税理士事務所に勤務しながら資格取得の勉強をする人も多く、専念できないだけに非常に時間がかかります。
デメリット2. 独立した場合は収入面が不安定になる可能性がある
勤務税理士は月給制で安定した収入が得られます。独立開業すると、事業が軌道に乗るまでは収入が安定しません。顧問先が廃業すると、収入減少に直結することも珍しくありません。
税理士の仕事はなくなる?今後の将来性
最近「将来税理士はなくなってしまう職種」いわれています。経理業務のDX化が進み、AIが発達してきている背景があるためです。
これからの税理士は、AIとDX化をうまく活用できる人が生き残れる業界になります。
AIに取って代わられることはない
経理業務はDX化が進むことで、業務効率化が可能です。業務効率化に向けたシステムのアドバイスができる税理士が求められています。
AIは反復作業が向いているため「経営者の相談にのる」「何かの検討する」など判断を伴うことは、税理士が必要です。そのため、税理士の職が無くなるとは考えにくいでしょう。
ウィズコロナを意識した経営助言が求められる
コロナの影響により、税理士に求められる業務が税務申告から経営アドバイスに大きく変化しました。補助金に関する情報提供ができるか否かによって、新規顧客獲得に影響が出ています。
税理士業務のなかで顧客が資金調達方法のアドバイスを求めた際はそれに応じることもあり、返済の必要がない補助金情報を求める経営者は増加しています。
税理士の仕事内容でよくある質問
税理士でよく聞かれる「やりがい」と「どうすることでなれるのか」の2点を解説します。
Q1. 税理士の仕事のやりがいは?
税理士は、税務面では「税務署」と「顧問先」の間に立つ、中立な立場で判断します。どちらかに肩入れすることはありませんが、顧問先は税務の素人のため、税務調査で不利にならないようにする使命があります。
経営アドバイスの面では、補助金に関する知識やノウハウを多く持っている人が有利なため、顧客の幅広いニーズにこたえるためにも、やりがいがあります。
Q2. 税理士になるにはどうすればいい?
税理士試験に合格すること(官報合格)、もしくは大学院で必要科目を履修することで税理士試験に合格できます。
科目合格だけでは税理士とはいえず、実務経験を2年積み、税理士会に登録することで正式に税理士として活動可能です。税務署での勤務経験があれば、登録だけで税理士になれる制度もあります。
まとめ
税理士資格を取得することで、勤務税理士や独立開業など幅広い働き方ができます。資格取得の試験勉強は時間がかかり、税理士会に登録するには2年の実務経験も必要です。時間がかかる資格ですが、税金のプロとしてやりがいもあります。
勉強も、資格取得後の働き方にも地道な努力が必要ですが、年齢や性別に関係なく誰でも高収入が得られる職業です。
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マイクロクラウド会計事務所代表 鈴木康寛(税理士・公認会計士)横浜市出身。BIG4監査法人在籍中に上場準備企業に出向して上場準備業務に従事、上場に成功。その後上場企業の財務経理部門を経て独立開業する。自らもマイクロ法人を設立した経験を活かし『全ての人にマイクロ法人を』をスローガンにマイクロ法人の素晴らしさを啓蒙中。著書に「収益認識 (共著)(清文社)」「マイクロ法人節税に騙されるな(Amazon KDP)」。

近年のコンピューターの発達により、税理士の仕事はAIによって取って代わられるのではないかと言われています。確かに申告書の作成や記帳代行などはコンピューターが得意とする分野でもありますのでAIによって取って代わられる可能性が高い分野ではあります。
しかし、顧問先の状況や特徴を理解した上でのアドバイスは、AIが苦手とする分野です。このような状況を踏まえますと、顧問先との相談に重点を置いた税理士こそ、現在のコンピューター社会において、付加価値の高い税理士と言えるでしょう。
そういった意味ではコミュニケーションの回数や手段に制限がある格安税理士を味方に付けることは、税理士の価値の内、安い部分を安く買っているということになりますので、注意した方が良いでしょう。