特定調停の成功率は?メリット・デメリットや任意整理との違いも解説!
- 特定調停の成功率はどれくらい?
- 特定調停のメリットとデメリットは?
- 特定調停と任意整理はどちらがいいの?
特定調停は専門家に依頼せずにできる債務整理の方法です。費用が安く済む、裁判所が仲介してくれるなどのメリットがありますが、手続きが大変、成立しないケースが多いなどのデメリットもあります。
この記事では、特定調停の成功率、メリット・デメリット、特定調停の成功率がどうして低いのかを解説します。
特定調停と比べられることが多い任意整理との違いも紹介するため、できるだけ安く確実に債務整理をしたい方はぜひ参考にしてください。
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特定調停とは裁判所で債権者と話し合い債務を減らす手続き
「特定調停」とは、借金返済が困難な債務者が裁判所に申立てを行うことで、債権者との和解を図る制度です。裁判所が調停役として選んだ「調停委員」が間に入り、借金の減額や返済計画の話し合いをします。
特定調停では、基本的に債務者と債権者の話し合いにより返済額や期間が決定します。双方が合意しない場合は、裁判所が調停に代わる決定(17条決定)を出し、和解させるケースもあります。
特定調停の詳しい流れは、こちらの記事をご覧ください。
特定調停の成功率は16%
最高裁判所が毎年出している「司法統計年報」によると、令和3年度の特定調停総数は2,406件、成立数は398件でした。同年度の特定調停の成功率は16%です。令和2年度は14%、令和元年度は17%でした。
過去3年分のデータから判断すると、特定調停の成功率は概ね10%台と言えます。
参照:令和元年 78 調停既済事件数 事件の種類及び終局区分別 全簡易裁判所|裁判所
参照:令和2年 78 調停既済事件数 事件の種類及び終局区分別 全簡易裁判所|裁判所
特定調停のメリット4選
特定調停には、次のメリットがあります。
- 専門家に依頼しなくても自分でできる
- 費用が安く済む
- 裁判所が仲介してくれる
- 督促が止まる
1. 専門家に依頼しなくても自分でできる
特定調停の最大のメリットは、専門家に依頼しなくても自分で調停を起こせることです。簡易裁判所への相談から調停の本番まで、すべて自分ひとりで実施できます。
2. 費用が安く済む
特定調停を自分で手続きをした場合にかかる費用は、裁判費用と書類代のみです。弁護士や司法書士に特定調停を依頼すると費用が別途かかるとはいえ、他の制度に比べると安価な点が魅力でしょう。
特定調停の費用は、こちらの記事で詳しく説明しています。
3. 裁判所が仲介してくれる
特定調停では、調停委員と呼ばれる調停担当の職員が債権者と債務者の間に入り、話し合いが進みます。裁判所が間に入るため、直接債権者とやり取りをしなくていいことも特定調停のメリットです。
4. 督促が止まる
特定調停の手続きが始まると、裁判所から債権者に特定調停を実施する旨の通知が送られます。通知が来ると、貸金業法21条1項の規定により、債権者の督促がストップします。特定調停をしている間は督促が止まり借金の支払いをしなくていい点も、特定調停のメリットといえるでしょう。
特定調停のデメリット4選
特定調停の申立件数は、2003年(平成15年)には年間30万件以上ありました。現在の申立件数は2,500件程度です。特定調停の申立件数が減ったのは、メリット以上にデメリットが多いことも一因と言えます。
特定調停のデメリットは、以下の4つです。
- 手続きが大変
- 調停が成立しないケースが多い
- 過払い金の返還請求には使えない
- ブラックリストに掲載される
1. 手続きが大変
特定調停は全部自分でできる反面、自分で書類を用意するのが大変です。財産関係書や関係権利者一覧表など、資料収集に加えて自分で作成する書類もいくつかあります。
加えて、申立手続きを行う場所は、債権者の本社や本支店を管轄する簡易裁判所です。申立する場所が自分の居住地と違う場合は、自分が出向かなければなりません。
手続きに必要な書類の用意や遠方での申立のように手続きが大変なことが、特定調停で筆頭に挙げられるデメリットと言えます。
2. 調停が成立しないケースが多い
特定調停では多くの場合、和解が成立しないこともデメリットです。和解が成立しない点として、次の点が考えられます。
- 基本的には債権者が特定調停に対し非協力的であること
- 特定調停以外の債務整理が妥当と判断されること
- 債務者に専門知識がなく、特定調停で自分に有利な内容を引き出せないこと
和解に達せず調停の成功率が低いことは、特定調停の大きなデメリットといえるでしょう。
3. 過払い金の返還請求には使えない
特定調停では過払い金の返還請求はできないことも、デメリットのひとつです。
特定調停では、債務の有無やある債務に対する支払に関することのみ話し合います。過払い金は、債務以外の部分に関する話です。したがって、本来支払うべき債務を上回る過払い金があっても、返還請求の話は議論されません。
過払い金を受け取るためには、特定調停の他に任意整理で過払い金の返還請求をする必要があります。過払い金を受け取るには債務整理を2回する必要がある点も特定調停の大きなデメリットです。
4. ブラックリストに掲載される
特定調停をすると、いわゆる「ブラックリスト」に掲載されます。「ブラックリストに掲載」とは、個人信用情報機関に「特定調停をした」旨の情報が掲載されることです。ブラックリストに事故情報が掲載されている5年間は、新規のクレジットカードやローン契約ができません。
ブラックリストは、こちらの記事で詳しく解説しています。
特定調停と任意整理の違い
特定調停と似た債務整理の方法として、任意整理があります。両者の違いは、次のとおりです。
調停の進み方 | 手続き | 成功率 | 過払い金請求 | |
---|---|---|---|---|
特定調停 | 裁判所が間に入る | 自分でできる | 低い | できない |
任意整理 | 債権者と直接やり取りする | 専門家に依頼する | 高い | できる |
特定調停と任意整理の最大の違いは、成功率にあります。特定調停は、本人が交渉を行うことから成功率が低めです。任意整理は専門家に交渉を依頼できるため、成功率が高めの傾向があります。
上記の特徴から、特定調停ではなく任意整理を選択するケースが増えていると考えられます。
任意整理の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
特定調停より任意整理を選ぶべき3つのケース
債務整理を検討する際は、特定調停と任意整理それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った調停方法を選ぶことが大切です。特定調停よりも任意整理を選ぶべきケースがあります。具体的には、次の3例です。
- 仕事が忙しい
- 過払い金が戻ってくる可能性がある
- 専門家の支援が欲しい
1. 仕事が忙しい
特定調停は基本、債務者自身が調停に出向く必要があります。調停は、裁判所から指定された平日に実施します。資料の収集も、役所が空いている平日にすることが多いです。仕事が忙しく平日には休みがとれない方にとって、特定調停はかなり大変といえるでしょう。
任意整理では弁護士や司法書士に手続きなどの代行を依頼できます。ほとんど自分で手続きをする特定調停と比べると、任意整理の方が仕事しながらでも手続きしやすい面があるのは確かです。
2. 過払い金が戻ってくる可能性がある
過払い金が発生している可能性が高い場合、任意整理の方がメリットが大きいです。任意整理では、借金の減額と並行して、過払い金請求の交渉や手続きを進行できます。
特定調停では、過払い金の請求ができません。過払い金が戻ってくる可能性がある方は、最初から任意整理を選んだ方がいいでしょう。
3. 専門家の支援が欲しい
特定調停の調停委員は、あくまでも中立的な立場で交渉を進めます。申立人が不利になるように進めない代わりに、有利にも進みません。任意整理では、弁護士や司法書士が依頼人(債務者)の利益になるよう交渉を進めます。
任意整理の場合、債務整理に関する経験が豊富な専門家による交渉で、依頼人に有利な条件を引き出してくれます。返済計画に関しても適切なアドバイスを受けられるため、専門家の支援を受けたい方には任意整理の方がおすすめです。
まとめ
特定調停は自分で申立てを行うため費用を安く抑えられる反面、成功率が低い現状です。特定調停か任意整理による債務整理を考えている方は、どちらが自分にとってメリットがあるのか、十分に比較検討した上で決定しましょう。
特定調停と任意整理を検討する際、どちらがいいか決められない場合は、専門家への相談もおすすめです。
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1984年京都市生まれ。不動産・相続・会社の「登記」に必要な手続きを代理する専門家であり、若手ならではのフットワークの軽さと様々な職業経験で培った対応力を持つ法務大臣認定司法書士。自身が法律知識ゼロで資格学習を開始した経験から法律の適用や用語の難しさを理解しており、平易でわかりやすい説明を心がけており評価を得ている。
特定調停の特徴としては以下のようになります。
・裁判所での手続きが必要だが調停委員が債権者との話し合いをサポートしてくれる
・債権者からの直接取立て行為の停止までに時間がかかる(止まらないこともある)
・将来利息のカットが見込める
・差押えなどの強制執行を止めることができる
・住宅ローンや自動車ローンを特定調停の対象外にすれば家や車を手元に残すことができる
・保証人がついている債務を特定調停の対象外にすれば保証人への影響はない
・自身で手続きすることが可能で、専門家への費用をかけずに行うことができるが裁判所出廷など手続きに手間がかかる
・信用情報機関での事故情報記載がされる(クレジットやローンが使用不可になる、賃貸住宅の入居審査に影響がでる、スマホ等の分割払いができなくなるetc)
・成立確率が低く不成立になる可能性が高い
現在のご自身の状況と、任意整理・個人再生・自己破産といった他の債務整理の内容を理解したうえで、「特定調停」がご自身にとって最もメリットのある手続きなのかどうかを考えられる際の参考にして見てください。
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