相続税の二重課税問題とは?所得税や贈与税との二重課税について解説

最終更新日:2024年01月09日
青木征爾税理士事務所
監修者
税理士 青木征爾
相続税の二重課税問題とは?所得税や贈与税との二重課税について解説
この記事で解決できるお悩み
  • 相続税の二重課税問題とは?
  • 相続税と所得税の二重課税問題とは?
  • 相続税と贈与税の二重課税を防ぐ方法は?

身近な人が亡くなった際に相続が発生すると、遺産の総額に応じて相続税がかかる可能性があります。特に注意が必要なのは、相続税が「所得税」や「贈与税」と重複して課税される「二重課税」の問題です。

この記事では、二重課税問題や二重課税の防ぎ方を解説します。二重課税は保険金の受け取り方や、贈与税額控除の適用によって防ぐことが可能です。

最後まで読むと二重課税問題について知り、対策をとることができるでしょう。二重課税問題がどのようなものか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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相続税の二重課税問題とは

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相続税は多額の財産が相続される場合に、富の再分配を目的として課せられます。財産に相続税とは別の税金も課税されていた場合、税金を二重に支払うことになるでしょう。税金を二重に支払うことの問題は「二重課税問題」と呼ばれ、問題視されています。

相続税と所得税の二重課税問題

所得税とは、個人が収入によって得た所得に対して課せられる税金です。財産に相続税とは別に所得税も課せられる場合、二重課税となります。

【具体例】生命保険を分割で受け取るときに課せられる

保険金を相続する場合、受け取り方には「保険金を一括で受け取る方法」と「保険金を年金形式で分割して受け取る方法」の2種類があります。

保険金を一括で受け取る場合、保険金と他の相続財産と合算した額に相続税が課せられますが、課税は相続税の1度きりです。

年金形式で分割して保険金を受け取る場合も、年金を受け取る受給権が相続税の課税対象になります。しかし、分割で受け取る年金が収入として計算されることから、所得税の課税対象にもなるため注意が必要です。

相続税を支払っている年金に対して、受け取るたびに所得税が発生し、二重課税になります。

訴訟され判決もでている

分割して保険金を受け取ることで生じる二重課税問題は、訴訟が行われています。上告審判決として最高裁が2010年(平成22年)7月6日に、二重課税であると認定しました。

「違法な二重課税であり、所得税の課税は認められない」として、国に所得税の返還を命じる判決を出しています。

【具体例】亡くなった方が財産を得たときに課せられている

相続される財産は、亡くなった方が生前に所得税を支払った所得が原資です。所得税を支払って得た財産に対して相続税が発生するのは、二重課税に該当するのではないか、と問題提起されています。

相続税は、相続する財産を受け取る相続人本人に対して課税されるものです。所得税は亡くなった方の所得に対して課税されています。つまり、相続される財産が形成される過程に生じた課税と、相続されることに対して発生する課税は、関係性がないため二重課税には当たりません。

相続税と贈与税の二重課税

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贈与税とは、個人から年間110万を超える財産をもらった場合に課せられる税金です。相続税は、相続開始時から3年前までに贈与された財産も課税対象になるため、二重課税になる可能性があります。

贈与税額控除

贈与税額控除とは、相続税の申告時に相続税と贈与税の二重課税を防ぐための制度です。一定の条件を満たしている場合、相続税から贈与税の課税金額を控除できます。

贈与税額控除の適用条件

贈与税額控除は、以下3つの条件をすべて満たしている場合に適用できます。

  • 亡くなった方から財産を相続している
  • 亡くなった方から相続開始3年以内に贈与を受けている
  • 贈与税の申告・納税をしている

1. 亡くなった方から財産を相続している

相続税が課せられるのは、亡くなった方から財産を相続した場合のみです。相続放棄した場合は、相続税が課せられないため、贈与税額控除を適用できません。

2. 亡くなった方から相続開始3年以内に贈与を受けている

相続税の対象となるのは、相続開始3年前までに亡くなった方から贈与された財産のみです。3年前に贈与された場合は、相続税の対象にならないため、贈与税額控除を適用できません。

3. 贈与税の申告・納税をしている

亡くなった方から相続開始3年以内に贈与された財産のうち、贈与税の申告・納税をしているものが贈与税額控除の対象になります。申告や納税をしていない場合は、二重課税にならないため、贈与税額控除の対象にはなりません。

贈与税の申告や納税が必要なのに手続きをしていない場合、延滞税や加算税を追加で支払う必要があります。贈与税の未納に気づいたらすぐに手続きをしましょう。

まとめ

所得税の二重課税問題は1960年代から起きており、同様の訴訟事案は数百万件に上ります。相続する財産の受け取り方で税金が変わることは、税制の公正性に欠けるため大きな問題です。公正性と公平性のある税制にするために、迅速な改正が求められています。

所得税も贈与税も二重課税にならない方法を知っていれば、対処できる可能性もありますが、専門家でなければ難しい場合も多いです。税制に関する問題は、専門家に相談するのも1つの方法でしょう。

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監修者の一言

年金受給権について相続税も課したうえで所得税も課されている件については裁判所や研究者の間で意見が分かれています。裁判を行った場合であっても、地裁、高裁、最高裁で異なる見解を示すということもあります。

なぜ二重課税が発生してしまうかというと日本の税制が包括的所得概念というものを前提としているからです。

包括的所得概念とは譲渡益や相続などを含めた一時的・偶発的・恩恵的利得も課税対象として包括的に定義されるべきという考え方です。一時的・偶発的・恩恵的利得が課税対象としてふさわしくないという考え方は制限的所得概念といいます。

外国では制限的所得概念の考え方をする国もあり、譲渡益や相続税などについて課税がされない、または課税が少ない国もあります。

相続税の課税根拠はいくつかあります。

相続税は包括的所得概念においては所得であるため相続税は所得税の補完をしているという考え方や、富の再分配のために課税を行うためという考え方があります。

また、被相続人の蓄財の中には税制上の優遇により十分に課税されていなかった部分があり被相続人の生前所得についての精算という考え方、被相続人の蓄財は社会保障を受けたことによるため資産の引継ぎの社会化など複数の考え方があります。

専門家の間でも課税根拠の適正性について議論になるところではあります。

青木征爾税理士事務所
税理士 青木征爾
監修者

札幌市を中心に活動する税理士。アパレル業界から未経験で税理士業界に飛び込む。その後、個人事務所、資産税系コンサルティングファームで経験を積み独立。税理士の仕事で重要なことはお客様とのコミュニケーションであるという考えから対話を重視している。中小企業の経営支援、スタートアップ支援、相続業務を得意としている。

比較ビズ編集部
執筆者
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