個人事業主が利用できる所得控除をまとめて紹介!節税対策もあわせて解説

竹中啓倫税理士事務所
監修者
竹中啓倫税理士事務所 税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
最終更新日:2023年09月29日
個人事業主が利用できる所得控除をまとめて紹介!節税対策もあわせて解説
この記事で解決できるお悩み
  • 個人事業主にかかる税金とは?
  • 個人事業主が利用できる所得控除とは?
  • 個人事業主におすすめの節税対策とは?

「節税対策をして支出を防ぎたい」という個人事業主の方、必見です。個人事業主が適用できる控除は基礎控除や生命保険料控除をはじめ、医療費控除や寄附金控除などがあります。

この記事では、個人事業主にかかる税金や適用できる所得控除を解説します。青色申告や経費などの節税対策も紹介します。

確定申告の負担増大や節税対策でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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個人事業主にかかる税金は4種類

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一定の所得を得ている個人事業主が支払う税金は、主に以下の4種類です。

  • 所得税+復興特別所得税
  • 住民税
  • 消費税
  • 個人事業税

所得税+復興特別所得税

所得税とは1月1日〜12月31日の間に得た所得に対して発生する税金です。1年間で得た総収入から必要経費と所得控除を差し引いた額が所得となります。

個人事業主は会社員と異なり、所得税の算出と申告をおこなわなければなりません。所得税を算出する際、以下の早見表を活用してください。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円〜1,949,000円 5% 0円
1,950,000円〜3,299,000円 10% 97,500円
3,300,000円〜6,949,000円 20% 42万7,500円
6,950,000円〜8,999,000円 23% 63万6,000円
9,000,000円〜17,999,000円 33% 153万6,000円
18,000,000円〜39,999,000円 40% 279万6,000円
40,000,000円 以上 45% 479万6,000円

参照:国税庁

年収が500万円の個人事業主を例にします。所得税は「500万×0.2−42万7,500円=57万2,500円」となります。

2037年までは、所得税×2.1%の額を復興特別所得税として納めなければなりません。「復興特別所得税は57万2,500円×0.021=12,000円(100円未満切り捨て)」と算出でき、所得税と合わせた58万4,500円を納税するかたちになります。

住民税

住民税は公共施設や福祉、水道など、さまざまな行政サービスの維持管理のため、地域住民が負担する地方税です。個人事業主の住民税は、均等割と構成割の2つで構成されています。

均等割は所得額を問わず、1人ひとりに平等に課せられる税金です。多くの自治体では都道府県民税が1,500円、市区町村税が3,500円、合計5,000円に均等割を設定しています。

構成割は前年の所得額によって算出する税金です。「(前年の所得−所得控除)×10%−税額控除」によって算出します。構成割は確定申告の内容にもとづき、地方自治体が納税額を算出するため、個人事業主が計算をする必要はありません。

消費税

消費税は商品やサービスの売買など、消費活動全般に課せられる間接税です。個人事業主の場合、前前年度または前年上半期の売上が1,000万円を超えた場合、課税事業者とみなされ消費税の納税義務が課せられます。

双方の期間で売上が1,000万円以下の個人事業主、個人事業主に転身して1年目の方は免税事業者と区分され、消費税の支払い義務は課せられません。

課税事業者となった場合「(課税売上高×10%)−(課税仕入高×10%)」で消費税額を算出します。

個人事業税

個人事業主が事業を運営するうえでさまざまな行政サービスを利用することから、経費の一部負担を個人事業主に求める税金です。

物品販売や飲食店経営、理容業など、法律で登録されている70の業種を営んでいる場合、納税義務が課せられます。事業所得が290万円以上の個人事業主に対してのみ、納税義務が生じます。

エンジニアや翻訳家、漫画家など、法律に登録されていない業種を営んでいる場合は、所得額を問わず個人事業税の納税は不要です。

個人事業税は「(所得金額−290万円)×税率」で算出し、税率は業種によって変動します。個人事業税を支払った場合、勘定科目に租税公課を選ぶと経費として計上可能です。

個人事業主が利用できる所得控除一覧

所得控除とは、総収入から必要経費を差し引いた所得額から一定の金額を差し引ける対象です。所得控除にはさまざまな種類があります。個人事業主が利用できる所得控除15種類を以下にまとめました。

  • 基礎控除
  • 生命保険料控除
  • 社会保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • ひとり親控除
  • 寡婦控除
  • 勤労学生控除
  • 扶養控除
  • 医療費控除
  • 障害者控除
  • 寄付金控除
  • 雑損控除

各控除の特徴をみていきましょう。

基礎控除

基礎控除とは年間所得2,500万円以下の個人事業主を対象に、適用される所得控除です。他の所得控除と異なり、年間所得が2,500万円を超えていない限り、無条件で一定の金額が控除されます。

基礎控除は所得によって控除額が変動する点が特徴です。所得と控除額の関連性を以下の表にまとめました。

個人事業主の合計所得 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超〜2,450万円以下 32万円
2,450万円超〜2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

参照:国税庁

生命保険料控除

個人事業主が保険会社と契約し一定の生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払っていた場合、合計12万円まで控除されます。保険の種類によって控除の適用条件が異なります。

生命保険料は死亡保険や養老保険や学資保険など、特定の要因に応じて一定の保険料が給付される保険です。保険料の受取人を以下の人物に特定した場合のみ、生命保険料控除が認められます。

  • 契約者本人
  • 契約者の配偶者
  • 6親等以内の血族
  • 3親等以内の姻族

介護医療保険料は医療保険や介護保険、がん保険など通院や入院の際に給付される保険料です。保険料の受取人は一般生命保険料と同一人物に設定しなければなりません。

個人年金保険料は老後に備え、自ら積み立てておく年金です。以下の要件を満たさない限り、所得控除の適用対象からは外れます。

  • 契約者本人または配偶者が年金の受取人
  • 被保険者と年金の受取人が同一人物
  • 保険料の支払期間が10年以上
  • 確定年金や有期年金の場合は年金受給開始時期が60歳以降

社会保険料控除

1月1日〜12月31日に支払った社会保険料の合計額が所得から控除されます。社会保険料控除の主な対象を以下にまとめました。

  • 国民健康保険料
  • 健康保険料
  • 後期高齢者医療保険料
  • 介護保険料
  • 国民年金や厚生年金の保険料
  • 労働保険料
  • 国民年金基金の掛金

個人事業主自身の保険料だけではなく、配偶者や親族の分も支払っていた場合、控除が認められます。

地震保険料控除

個人事業主や配偶者、親族が所有する家や家具に保険をかけていた場合、最大5万円まで控除されます。5万円を超える保険料を支払っていても、控除額の上限は5万円です。

保険料の支払いが5万円以下の場合、支払った合計額が控除されます。地震や火災、津波による損害を補填するための保険金や共済金しか、地震保険料控除は認められません。

事業用に使っているオフィスや店舗に地震保険をかけている場合「損害保険料」として経費計上が可能です。

小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済とは、個人事業主や経営者向けの退職金制度です。廃業した際に生活資金を得られるよう、制度が設立されました。毎月一定の額を積み立てていき、廃業した際や65歳を超えたタイミングで、共済金を受け取れます。

積立額は毎月1,000円〜70,000円まで、任意の額を選択可能です。積立額が多いほど所得税や住民税が安くなり、毎月70,000円を積み立てていた場合は最大84万円が控除されます。小規模企業等掛金控除の対象となる掛金は以下の3つです。

  • 小規模企業共済法に規定する共済契約の掛金
  • iDeCoの掛金
  • 心身障害者扶養共済制度の掛金

配偶者控除

所得額が一定金額以下の配偶者を持つ場合に利用できる所得控除です。配合者控除を受けるには、以下すべての要件を満たさなければなりません。

  • 婚姻届を提出して受理された配偶者
  • 個人事業主と生計を共にしている方
  • 年間の合計所得金額が48万円以下
  • 給与収入のみを得ている場合は103万円以下
  • 青色申告者の事業専従者として働いていない状態
  • 白色申告者の事業専従者として働いていない状態

参照:国税庁

控除される金額は配偶者を養う個人事業主の所得金額によって変動し、所得金額が900万円以下の場合は最大38万円まで控除されます。所得が1,000万円を超える場合は、控除されません。

12月31日時点で配偶者の年齢が70歳以上の場合、老人控除対象配偶者として最大48万円が控除されます。配偶者が障害者の場合は障害者控除の併用も可能です。

  一般の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超〜950万円以下 26万円 32万円
950万円超〜1,000万円以下 13万円 16万円

参照:国税庁

配偶者特別控除

配偶者特別控除とは、配偶者の所得が48万円を超え133万円以下の場合に利用でき、配偶者控除は配偶者の所得が48万円以下の場合に適用されます。配偶者特別控除は配偶者控除と同様、個人事業主の所得が1,000万円以下の場合のみ適用可能です。

所得額と控除額の関連性を以下の表にまとめました。

配偶者の所得金額/個人事業主の所得金額 900万円以下 900万円超〜950万円以下 950万円超〜1,000万円以下
48万円超〜95万円以下 38万円 26万円 13万円
95万円超〜100万円以下 36万円 24万円 12万円
100万円超〜105万円以下 31万円 21万円 11万円
105万円超〜110万円以下 26万円 18万円 9万円
110万円超〜115万円以下 21万円 14万円 7万円
115万円超〜120万円以下 16万円 11万円 6万円
120万円超〜125万円以下 11万円 8万円 4万円
125万円超〜130万円以下 6万円 4万円 2万円
130万円超〜133万円以下 3万円 2万円 1万円

参照:国税庁

配偶者特別控除における配偶者の要件は所得以外、配偶者控除のときと同じです。

障害者控除

個人事業主自身や同一生計配偶者、扶養親族が障害者の場合に利用できる所得控除です。重度の身体障害や精神障害、知的障害を持つ方は特別障害に該当し、通常の障害者区分より控除額が大きくなります。障害者の区分と控除額を以下の表にまとめました。

  控除額
障害者 27万円
特別障碍者 40万円
同居特別障害者 75万円

参照:国税庁

同一生計配偶者が障害者の場合、配偶者の合計所得は48万円以下でなければなりません。扶養親族の場合は特に年齢制限が設けられていないため、16歳未満であっても控除の対象となります。

ひとり親控除

事業所得や不動産所得が500万円以下の場合、婚姻歴や性別を問わず利用できる所得控除です。12月31日時点で未婚のまま生計をともにする子どもを育てており、子どもの所得金額が48万円以下の場合、35万円が控除されます。控除額は子どもの人数を問わず35万円です。

ひとり親控除は、シングルファザーとシングルマザーの双方が利用できます。事実婚と同等の相手がいる場合は、ひとり親控除を利用できません。

寡婦控除

夫と離婚または死別した後、12月31日時点で再婚せずにいる独身女性を対象にした所得控除です。以下2つの要件のどちらかに該当すると、寡婦控除の適用が認められます。

  • 夫と離婚後に婚姻しておらず、合計所得金額500万円以下で扶養親族がいる人
  • 夫が死亡または夫が生死不明の状態で、合計所得金額が500万円以下の人

ひとり親控除と異なる点は、過去に婚姻歴がある女性に適用対象が限定される点です。上記いずれかの要件に該当すると、最大27万円の所得控除が認められます。

夫と離婚した場合は扶養親族の要件も加えられるため、注意が必要です。要件を以下にまとめました。

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)
  • 納税者と生計を共にしている存在
  • 年間の合計所得金額が48万円以下
  • 給与収入のみの場合は収入が103万円以下
  • 青色申告事業専従者および給与支払いの対象外
  • 白色申告事業専従者の対象外

参照:国税庁

都道府県知事から養育を委託された児童や、市町村長から養護を委託された老人がいる場合も、配偶者以外の親族として認められます。

勤労学生控除

勤労学生控除とは個人事業主として働きながら、学校に通う方を対象とした所得控除です。一定の要件を満たすと、27万円が控除されます。以下に要件をまとめました。

  • 事業所得や給与所得などがある状態
  • 勤労によって得た所得の合計金額が75万円以下
  • 勤労以外の所得が10万円以下
  • 特定の学校の生徒または先生

参照:国税庁

給与所得も認められているため、個人事業主だけではなく、アルバイトやパートとして働く方も対象となります。特定の学校とは中学や高校、大学が主な対象です。専門学校や職業訓練法人に通っている場合、一定の要件を満たさなければ控除対象とは認められません。

扶養控除

扶養控除は自ら生計を立てられない子どもや親族がいる場合、利用できる所得控除です。以下の要件をすべて満たさなければなりません。

  • 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)
  • 個人事業主と生計を共にしている
  • 年間の合計所得金額が48万円以下
  • 12月31日時点で16歳以上
  • 青色申告者の事業専従者として働いていない状態
  • 白色申告者の事業専従者として働いていない状態

参照:国税庁

控除額は同居している対象者によって変動します。12月31日時点で19歳以上23歳未満の子どもと同居していた場合、子どもは「特定扶養親族」に該当し、63万円が控除されます。

70歳以上の親族がいる場合は「老人扶養親族」が該当し、同居の場合は58万円、別居している場合は48万円の控除が適用可能です。親族が老人ホームに入居している場合、控除は認められません。

上記のどちらにも該当しない場合は、一般の控除対象扶養親族となります。

  控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族(別居中の親族) 48万円
老人扶養親族(同居中の親族) 58万円

参照:国税庁

医療費控除

個人事業主が自身のためだけではなく、配偶者や親族の医療費を支払った場合、利用できる所得控除です。控除金額は「実際に支払った額−保険金−10万円(所得合計金額が200万以下の方は所得合計の0.5%)」で算出します。

保険金とは入院費給付金や出産育児一時金、家族療養費など、経済的負担を軽減するために支給されるお金のことです。

年間の所得金額が200万円を超える場合は、最大10万円が控除されます。年間所得が200万円未満の場合、所得額の5%が医療費控除として認められますが、先に所得金額を確定しておかなければなりません。

所得額がわからないと控除額を算出できないため、注意しましょう。

寄附金控除

寄附金控除とは地方自治体や公益財団法人、NPO法人などに寄付をした際、利用できる所得控除です。年間の寄付総額または総所得金額×40%のいずれか低い方から、2,000円を引いた額が控除されます。

寄附金控除を活用する場合、寄付をした組織や団体から寄付金が記載された書類を送付してもらいましょう。確定申告の際、寄付の金額を証明するために必要となります。

雑損控除

地震や火事、盗難など自然災害や第三者からの行為によって被害を受けた場合、利用できる所得控除です。控除額は以下の計算式で算出したうち、費用が多い方を選択します。

  • (損害金額+災害関連支出金額−保険金)−(総所得金額)×10%
  • (災害関連支出金額-保険金等)−5万円

参照:国税庁

控除対象は自宅や家具、家電など日常生活で必要となる資産です。貴金属や絵画などが破損したとしても、生活に必要な資産とは認められません。

雑損控除は個人事業主が保有する資産だけではなく、生計を共にする配偶者や親族が保有する資産にも適用されます。配偶者や親族の場合は年間所得が48万円以下でないと、雑損控除が適用されません。

個人事業主が活用できる節税対策8選

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所得税や住民税の支払いを減らすには、節税対策を把握しておくことも重要です。個人事業主が活用できる節税対策を以下にまとめました。

  • 青色申告を選択する
  • 青色申告特別控除の要件を満たす
  • 事業で発生した経費を漏れなく計上する
  • 経費として計上可能な税金を把握する
  • 経営セーフティ共済への加入を検討する
  • iDecoへ加入して年金を積み立てる
  • 法人化を検討する
  • 税理士に相談する

複数の方法を組み合わせると、所得税や住民税の納税額を減らせる確率が高まります。

青色申告を選択する

個人事業主になっ方は、青色申告への移行を検討しましょう。青色申告を選択した方が多くのメリットを得られます。以下に主なメリットをまとめました。

  1. 最大65万円の特別控除を受けられる
  2. 家事関連費を経費として計上できる
  3. 30万円の少額減価償却資産を経費としてまとめて計上できる
  4. 家族へ支払う給与を経費として扱える
  5. 貸倒引当金を経費として扱える
  6. 赤字を繰り越せる

白色申告との違いは経費の対象範囲が広い点です。自宅をオフィスと兼用している場合は電気代や通信費など、家事関連費を経費として計上できます。取得金額が30万円未満の固定資産を取得した場合、取得した年に最大300万円まで一括で経費計上が可能です。

固定資産は通常減価償却のルールに従い、取得金額を何年かに分けて計上しなければなりません。家族で店舗経営をしている場合は、家族へ支払う給料を経費として扱えます。

減価償却とは

時間の経過と共に資産価値が減っていく考えです。取得金額が10万円以上、耐用年数が1年以上の固定資産を購入した場合、減価償却が適用されます。取得金額を耐用年数に応じて分割した費用を計上するのが、減価償却のルールです。

青色申告特別控除の要件を満たす

一定の要件を満たすと青色申告特別控除が適用され、所得額から最大65万円が控除されます。以下に青色申告特別控除の要件をまとめました。

  1. 期限内に申告を済ませる
  2. 開業届と色申告承認申請書を提出しておく
  3. 複式簿記で記帳する
  4. 申告の際に貸借対照表と損益計算書を提出する
  5. e-Taxによる申告または優良な電子帳簿保存に対応する
  6. 事前に開業届と青色申告承認申請書を提出しておく

確定申告の期限は例年2月16日〜3月15日に定められています。3月16日以降に申告をした場合、青色申告特別控除の要件を満たしていても、最大10万円しか控除されません。

無申告加算税や延滞税の支払い義務も発生し、必要以上に税金を支払うことになるため、注意しましょう。

無申告加算税と延滞税とは

無申告加算税は、期限内に確定申告をしなかったことに対する追徴課税です。支払い義務が生じると、納税額の15〜20%を加算しての納税が求められます。

延滞税は、期限までに所得税を支払わなかったことに対する追徴課税です。期限後から2カ月までは納税額の7.3%、2カ月を過ぎると14.6%に該当する額が加算されます。

事業で発生した経費を漏れなく計上する

所得税の納税額を減らすためには、必要経費を計上することが重要です。以下に経費として計上可能な主な費用をまとめました。

  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 旅費交通費
  • 消耗品費
  • 広告宣伝費
  • 接待交際費

自宅をオフィスと兼用している場合、電気代や通信費などの家事関連費は、事業用とプライベート用で費用を割り振っておきます。プライベート関連の費用は計上できないため、帳簿には事業に関連する費用を明確に記載しておかなければなりません。

クラウド型の会計ソフトを導入すると、普段の帳簿付けが楽になります。複式簿記での帳簿に必要な作業は日付と金額、勘定科目を選択するだけです。インターネットバンキングやクレジットカードとも連携しており、取引内容を自動で取り込めます。

経費として計上可能な税金を把握する

税金の種類によっては経費計上が認められているものもあり、把握しておくと節税対策につながります。経費計上可能な税金を以下にまとめました。

  • 消費税
  • 個人事業税
  • 固定資産税
  • 自動車税
  • 登録免許税
  • 印紙税

上記に該当する税金を帳簿で経費として計上する場合、勘定科目は「租税公課」を選択します。

経営セーフティ共済への加入を検討する

経営セーフティ共済とは取引先の経営悪化や倒産など、不測の事態が発生した際に運転資金を借りられる共済制度です。共済制度加入から6カ月後に取引先から売掛金や手形を回収できなかった場合、未回収金および積立額×10倍のいずれか少ない方を借りられます。

運転資金を借りる際、担保や保証人を用意する必要はありません。毎月のかけ金は5,000円〜20万円から自由に選択し、途中で増額や減額も可能です。積立金は必要経費として計上できます。

経営セーフティ共済の対象は、1年以上事業を継続している個人事業主または中小企業です。業種に応じて異なる要件が設定されているため、詳細は中小機構のHPからご確認ください。

iDecoへ加入して年金を積み立てる

iDeco(個人型確定拠出年金)とは、老後の資金確保のために設立された私的年金制度です。個人事業主の場合は最高で月に68,000円、年間で81万6,000円を積み立てられます。積立額は全額控除されるため、所得税や住民税の納税額を大幅に削減可能です。

60歳以降に積立金を受け取る際に全額の場合は退職所得控除、分割の場合は公的年金等控除が適用されるため、いずれも所得税を減額できます。

定期預金の利息や投資信託を運用して利益を得られた場合は非課税扱いとなるため、確定申告をする必要はありません。65歳以下で国民年金保険を支払っている場合、個人事業主だけではなく会社員も加入できます。

法人化を検討する

所得が800万円、売上が1,000万円を超えた個人事業主は、法人化を検討するのも1つの手段です。所得税を算出する際、所得が800万円の個人事業主にかかる税率は23%ですが、法人化すると15%まで下がります。

売上が1,000万円を超えた時点で法人化し「簡易課税制度」を利用すると、最大2年間消費税を納める必要がありません。他にも自身への給与や退職金が経費として認められるなど、さまざま節税対策が見込めます。

法人化には認証手数料や収入印紙代、登録免許税の支払いなど、数十万円規模の費用が必要です。事業が赤字でも法人住民税を納めなければならず、慎重な判断が求められます。

税理士に相談する

節税対策に悩んでいる場合、税理士に相談するのも1つの方法です。帳簿付けの徹底やiDecoへ加入、法人化など自身に合った節税対策を提案してもらえます。

記帳代行や確定申告書の作成代行も依頼できるため、青色申告特別控除を受けられる可能性が高まる点も魅力です。近年は記帳代行や書類作成代行をスポットで対応する税理士事務所も多く、必ずしも顧問契約を締結する必要はありません。

資金繰りに悩んでいる場合は補助金の活用や融資対策など、資金調達の方法に関する提案も得られます。税理士によって得意分野は異なるため、どのような業務を依頼したいかを事前に整理しましょう。

まとめ

今回の記事では個人事業主にかかる税金、個人事業主が適用できる所得控除などを解説しました。生命保険料控除や社会保険料控除、配偶者特別控除など、所得控除を活用すると、所得税の納税額を減らせます。青色申告特別控除が適用されると最大65万円が控除されますが、複数の要件を満たさなければなりません。

確定申告の負担増大や節税対策に悩んでいる場合は、税理士に相談するのがおすすめです。弊社が運営する「比較ビズ」を利用すると、必要事項を入力する2分程度で条件に合った税理士事務所を探し出せます。資料請求や見積取得を無料でおこなえる点も魅力です。税理士事務所を探している方はぜひご利用ください。

監修者のコメント
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

個人事業主はサラリーマンと異なり、確定申告により税額を申告し、納税する必要があります。確定申告により、所得税が計算され、申告された方は自主的に納税する必要があります。確定申告の結果をもって、自動的に賦課される税金があります。

一つ目は住民税です。これは皆様が自身で計算する必要はありませんが、確定申告の内容から、都道府県と市区町村が計算して、税額のお知らせと、納税するように納税方法の指示があります。これはサラリーマンも同様ですが、サラリーマンの場合、会社が計算した所得税の結果をもとに、都道府県と市区町村が計算してくることになります。

もう一つは、個人事業税になります。これは、個人事業主に対して課税されるもので、サラリーマンは課税されません。これも、確定申告の内容を基に、都道府県が課税してきます。

納税は納期限を徒過すると延滞金等が課税される場合がありますので、ご注意ください。また、個人事業主の場合、消費税の申告および納税が必要な場合がありますので、専門家にご相談ください。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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