消費税が還付されるための条件とは?消費税還付を受けるための手順も解説
- 消費税還付を受けるための条件とは?
- 消費税還付を受ける際の手続き方法とは?
- 還付後の仕訳はどうしたらいいのか?
「支払った消費税額が受け取った消費税よりも額が大きかった、どうすればいいのか分からない…」という事業者の方必見!
この記事では全ての事業者の方に向けて、消費税還付を受けるための手順ついて解説。最後まで読めば、消費税還付をおこなう際に押さえておきたい課税対象の種類や還付額の計算方法、還付されるケースが分かります。
特に多額の経費や設備購入をした場合は、還付金も大きくなる可能性が高いため、消費税還付の申請をを検討している方はぜひ参考にしてください。
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原則課税と簡易課税の違い
消費税の還付を受けるためには納税額の計算をする必要があり、以下の2つの方法があります。
- 原則課税
- 簡易課税
原則課税
原則課税は、預かった消費税から支払った消費税を引いて計算する方法です。消費税の還付を受ける条件として、課税事業者は原則課税である必要があります。
簡易課税
簡易課税は、売上にかかった消費税額にみなし仕入れ率をかけて仕入控除税額を計算する方法です。この場合は支払った消費税を正確に集計しないため、消費税の還付を受けることができません。
消費税の還付例
支払った消費税が受け取った消費税よりも多い場合は、払いすぎているため申請をすれば還付を受けられます。消費税は飲食料品に適用される軽減税率(8%)があるので、分けて計算する必要があります。
売上と仕入れの消費税の差額が、還付される消費税となります。ここからは例として、実際の計算方法を解説します。
- 売上の消費税を計算する
- 仕入れの消費税を計算する
- 売上と仕入の消費税の差額を計算する
1. 売上の消費税を計算する
ある年の消費税率10%の売上が3,000万円、消費税率8%の売上が800万円だったとします。預かった消費税の合計は364万円です。
(3,000万円×10%=300万円)+(800万円×8%)=364万円
2. 仕入れの消費税を計算する
同時に消費税率10%の仕入れが2,000万円、消費税率8%の仕入れが500万円だったとします。仕入れと設備投資の消費税は合計540万円です。
(2,000万円×10%=200万円)+(500万円×8%)=540万円
3. 売上と仕入の消費税の差額を計算する
この場合は、仕入れにかかった消費税の方が預かった消費税よりも多いため、差額の176万円が申告により還付されます。
540万円ー364万円=176万円
消費税が還付される3つのケース
消費税の還付を受けるためには、消費者から預かった消費税よりも支払った消費税の方が多いという条件を満たす必要があります。この条件を満たす主なケースを3つ紹介します。
- 赤字の場合に経費が多くかかったケース
- 多額の設備投資や不動産購入を購入したケース
- 輸出業で売上のほとんどが免税取引のケース
赤字の場合に経費が多くかかったケース
収益が赤字の場合、収入よりも支払った経費が多い可能性が高いです。経費として支払った消費税の方が多くなるため、消費税の還付が可能です。
ただし給与や租税公課、社会保険料などの経費は消費税がかかっておらず、還付の対象とならない場合があります。あくまで預かった消費税、支払った消費税の金額を比較するようにしましょう。
多額の設備投資や不動産購入を購入したケース
設備投資や不動産を購入すると、多額の支払いが発生するため支払った消費税額が大きくなります。
ただし土地を購入する場合と不動産賃貸業のみを営んでいる場合は、消費税還付の例外です。家賃収入は非課税であるため、不動産賃貸業のみを営んでいる場合は消費税の還付を受けられません。
輸出業で売上のほとんどが免税取引のケース
輸出業を営んでおり、その売り上げのほとんどが免税取引の場合は、消費税が還付される可能性が高くなります。日本の消費税は、日本国内で消費される製品やサービスにしか課税されません。海外で消費される取引は消費税が免税される免税取引と見なされます。
国内で仕入れをおこなう場合も消費税を支払うこととなるため、その後ほとんどは還付されます。
納税が免除される特殊なケース
基本的に事業を営んでいる個人や法人は消費税を納付すべき課税事業者ですが、納税が免除される特殊なケースがあります。以下の条件に該当する場合には消費税の納税が免除される可能性があります。
- 基準期間における課税売上高が1,000万円以下で、課税売上高が1,000万円未満の場合
- 設立1期目および2期目の新たに設立された法人の場合
- 新設法人の資本金が1,000万円未満の場合
基準期間とは、納税義務の判定の基準となる期間のことで、法人であれば前々事業年度、個人事業者であれば前々年を指します。
設立されて間もない法人の場合は、基準となる期間がないため免税事業者と判断されることが多いです。
消費税還付を受けるための手続き方法
消費税の還付を受けるためには、一定の手続きが必要です。個人事業主や法人経営者の方は、この機会に消費税の還付手続きについて知っておきましょう。
消費税還付を受けるための手続きは数ステップで完了します。ここからは流れに沿って解説します。
- 必要書類を揃える
- 必要書類を提出する
- 還付金を受け取る
1. 必要書類を揃える
消費税の還付を受けるためには、まず必要書類を揃えましょう。必要書類は以下の3つです。
- 消費税・地方消費税の確定申告書
- 付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
- 消費税の還付申告に関する明細書
消費税・地方消費税の確定申告書
確定申告書には、事業者の屋号や所在地といった基本情報に加え、預かった消費税額と支払った消費税額が記載されています。輸出業者の場合には、輸出事業で受ける還付金と国内向け事業の納付税額についても申告しなければなりません。
参照元:国税庁「消費税及び地方消費税の確定申告の手引き・様式等」
付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表
課税売上高や免税売上額などに基づいて、課税売上割合などが記載された表です。
参照元:国税庁「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」
消費税の還付申告に関する明細書
消費税の還付を申告した理由、仕入れの明細などが記載された書類です。
参照元:国税庁「『消費税の還付申告に関する明細書(法人用)』の記載要領」
国税庁のホームページには、これらの書類のテンプレートが用意されているためダウンロードして使用することが可能です。書き方の例も掲載されているため、それに沿って記入しましょう。
2. 必要書類を提出する
必要書類が揃ったら、書類を税務署に提出します。e-Taxによる電子申告も可能です。
提出期限
法人の場合、提出期限は事業年度終了の翌日から2ヶ月以内です。個人事業主の場合、提出期限が対象となる年の翌年3月31日までと異なるため注意が必要です。
消費税の還付は、申告せずに期限を過ぎると税務署から確認されたり、税務調査の対象になる可能性があります。申告期限内に書類を提出することを忘れないようにしましょう。
3. 還付金を受け取る
消費税還付の申告をした場合、書類の提出からおよそ1〜2カ月後に還付金を受け取ることができます。e-Taxで電子申告をした場合は、3週間程度で還付金が支払われることもあります。
還付金は銀行口座振込か、郵便局に行って受け取る方法から選べるため、ご自身の都合がよい方を選びましょう。
消費税の還付を受ける際の精算仕訳方法
事業主は消費税の還付金を受け取った際、帳簿に記録しておく必要があります。ここからは消費税の還付を受ける際の仕訳方法について以下の2つから解説します。
- 税抜経理方式
- 税込経理方式
税抜経理方式
税抜経理方式は、消費税を費用や収益として計上しない仕訳の方法です。課税売上・仕入れに対する消費税を、それぞれ仮受消費税・仮払消費税で仕訳します。
決算時の仕訳
例として、還付税額(未収消費税等)が7万円、仮受消費税等は9万円、仮払消費税額は15万円、消費税精算差額として雑収入100円を計上した。この場合、決算時の仕訳方法は以下のとおりです。
借方 | 仮受消費税等:90,000 | 未収消費税等:70,000 |
---|---|---|
貸方 | 仮払消費税額:15,000 | 雑収入:100 |
還付金を受け取り後の仕訳
消費税の還付金を受け取った後は、借方に普通預金として還付金額を、貸方には未収消費税として同額を記載します。
借方 | 普通預金:70,000 |
---|---|
貸方 | 未収消費税等:70,000 |
税込経理方式
税抜経理方式に対し、消費税を収益や費用として考える税込経理方式では、仮受消費税や仮払消費税などの項目がありません。そのため比較的簡単に仕訳処理をおこなうことが可能です。
決算時の仕訳
上記の例と同様の金額の場合、税込経理方式では仮受消費税や仮払消費税を省いて仕訳します。
借方 | 未収消費税等:70,000 |
---|---|
貸方 | 雑収入:70,000 |
還付金を受け取り後の仕訳
還付金を受け取った後の仕訳処理は、借方に普通預金と金額、貸方に未収消費税と金額を記載するのみで完了します。
借方 | 普通預金:70,000 |
---|---|
貸方 | 未収消費税等:70,000 |
消費税の還付に含まない支出
消費税の還付金の申告では、還付に含まない支出があることに注意しましょう。業績が赤字の場合は消費税の還付が受けられる可能性が高いですが、非課税もしくは不課税の支出を含めないようにしましょう。
経費の中で、消費税の還付に含まない支出例は以下のとおりです。
- 従業員への給料
- 事業税、固定資産税、不動産取得税などの租税公課
- 国民年金、国民健康保険料などの社会保険料
- 国外取引のための経費
- 損害保険料や生命保険料などの保険料
これらを消費税還付で申告してしまうと、税務署からのチェックで指摘されてしまいます。書類を提出する前は、きちんと適切な支出であるか確認するようにしましょう。
まとめ
業績が悪化したり、多額の設備投資をした場合は、消費税の還付が受けられる可能性があります。消費税の還付を受ければ、さらに多くの利益を手元に残すことができます。
ただし消費税還付を受けるためには、課税事業者であり、かつ原則課税を選択しておく必要があります。もし免税事業者である場合は、この機会に課税事業者へ変更するということも賢い選択です。
税理士などの助けも借りつつ、消費税の還付が受けられるかどうかチェックし、還付金がある場合には必ず申告をおこなうようにしましょう。
なお、令和5年10月からインボイス制度が開始することにより、免税事業者から課税事業者になろうとする場合は、経過措置の適用を受け、令和5年3月31日までに「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出することにより、「課税事業者選択届出書」を提出しなくても、令和5年10月1日から課税事業者になることが可能となっています。
また、簡易課税の適用を受けようとする場合については「簡易課税選択届出書」の提出が必要となり、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日(事業年度の最終日)までに提出しなければなりません。
ただし、インボイス制度の経過措置の適用を受ける事業者が、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に「簡易課税制度選択届出書」を提出したものとみなされます。
消費税については、届出書を提出期限までに提出しないと、納税額や還付額が大きく変わってしまいます。そのため、届出書等の提出期限を過ぎてしまわないよう気をつけましょう。
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