香典は経費計上できる!4つのポイントや勘定科目を解説
- 香典を経費として計上する場合の勘定科目は?
- 香典を経費にする際のポイントは何か?
- 社葬に関する費用は経費として計上できるのか?
個人事業主や事業者が香典やお花などを送る場合、その費用は原則経費として計上できます。
香典は通常の物品購入や接待費などを経費として計上する場合とは経理処理の方法が異なる点があるため、注意が必要です。
本記事では、香典を経費として計上する際の勘定科目やポイント、社葬費用での注意点について解説します。
香典を経費にする場合の勘定科目と相場
香典をお渡しする相手がビジネス上で関係性がある場合、経費として計上が可能です。香典を送るパターンとしては大きく上記の2つに分けられます。
亡くなった方と直接の面識がなくても、香典を渡す相手がクライアントや取引先の担当者であれば問題ありません。
しかし、経費として計上できるのはビジネスに関係した場合に限られます。自分の親族やビジネスに関係のない人への香典は、経費として計上できないので注意しましょう。
クライアントの親族や関係者が亡くなった場合:接待交際費
業務上の取引があるクライアント・取引先の関係者が亡くなり、香典を送る場合は、「接待交際費」として全額を経費として計上することが可能です。
社会通念上、10万円が上限とされています。取引先の担当者やその家族が亡くなった場合は、3万円程度が相場です。
香典の金額が大きすぎる場合、税務調査が入った際に否認されてしまう可能性があります。取引先へ香典を送る場合には、適切な金額を包むようにしましょう。
従業員の家族や親族が亡くなった場合:福利厚生費
雇用している従業員や、従業員の家族・親族が亡くなった際に香典を送る場合も、全額を経費として計上することが可能です。
経理処理では「福利厚生費」として処理する形となり、3万円程度が相場とされています。この場合も、金額が大きすぎると経費として計上できない可能性があります。
特に10万円を超えると「給与支払い」処理とするよう指導される可能性が高くなるので注意しましょう。
香典を経費にする際の4つのポイント
香典を経費にする際は、上記4つのポイントが存在します。
1. 領収書の代わりに記録を残しておく
香典を経費として計上する際、領収書は必要ありません。その代わりに、以下の記録を残しておきましょう。
- お渡しした相手(会社名)
- お相手との関係性
- 日時や場所
- 金額
支出したものを経費として計上する場合、基本的には領収書をもらう必要があります。しかし、香典を渡す際に領収書発行を依頼するのはマナー違反です。税務署も領収書の有無を咎めることはなく、確定申告の際に提示を求められることも基本的にありません。
上記の記録とあわせて、葬儀の案内状や会葬礼状を保管しておくと、税務調査が入った際の証明として有効です。香典袋のコピーや写真を保存しておくのもよいでしょう。
2. 香典に消費税はかからない
国税庁のHPによると、消費税は「国内において事業者が事業として対価を得て行う取引」が課税対象になると記載されています。香典は対価を得て行う取引ではなく、事業に関連もしていないため、非課税となるのです。
確定申告を行う際は、消費税なしで申告するようにしましょう。
3. 供物や供花は消費税がかかる
香典には消費税がかからない一方で、供物や供花をお渡しした場合は、消費税がかかります。
消費税は通常10%ですが、供物が果物や飲食物の場合は軽減税率の対象となり、8%が適用されます。
送るものによって、消費税の税率が異なる点に注意しましょう。
4. 香典の金額は常識の範囲内に収める
冠婚葬祭費を経費として計上する際は「社会通年上一般的な金額」の範囲内とする必要があります。あまりに高額だと、税務調査が入った際に説明を求められる場合があるためです。
さらに、高額な香典をお渡しした場合、相手に所得税や贈与税が課税されてしまうケースも考えられます。
社葬の費用も一部経費にできる
従業員が亡くなり、会社主催で葬儀を執り行う「社葬」を行う場合においても、関連する支払いの一部を経費として計上できます。経理書類において計上する項目は「福利厚生費」となります。
葬儀の規模に関して基準や決まりはないので、一般葬と同程度か小規模であっても問題ありません。
社葬に関する費用は、経費にできるものとできないものが存在するので、それぞれ紹介します。
社葬の費用で経費にできるもの
社葬の費用で経費として計上できるものは、主に以下の8項目があげられます。
- 葬儀場の使用料
- 読経料(お布施)
- 案内状・会葬礼状の費用
- 献花や供物の費用
- 遺族の送迎費用
- 遺族・参列者の飲食費用
- 会葬御礼
- スタッフに対する心づけ
僧侶へ渡す読経料(お布施)の金額は地域によって異なるものの、20〜50万円が相場となっています。お布施やスタッフへの心づけなどは基本的に領収書がないので、正確に記録を取っておくことが大切です。そのほかの出費に関しては、領収書と合わせて記録を保管しておきましょう。
社葬では事業主が施主として様々な手続きを行います。ですが、葬儀の際に弔問客から受け取る香典は、基本的にすべて遺族へ渡すのがマナーであるという点を忘れないようにしましょう。
遺族が香典を受け取らない場合は「雑収入」という経理処理になります。
社葬の費用で経費にできないもの
社葬の費用で経費として計上できないものは、主に以下の7項目があげられます。
- 戒名料
- 納骨料
- 火葬料
- 死亡診断書作成代金
- 墓地・墓石購入費用
- 初七日・四十九日法要に関わる費用
- 香典返しに関わる費用
葬式や葬儀に関連した費用であっても、社会通念上遺族が負担すべきものと判断される支払いに関しては、事業者が経費として計上することができません。
これらの費用を事業主が支払うことは可能ですが、基本的には個人的な支出とみなされるので注意しましょう。
まとめ
取引先の関係者や従業員の家族が亡くなったときに用意する香典は、すべて経費として計上することが認められています。
ただし、社会通念上の金額を意識すること、領収書の代わりに記録を残す必要があるなど、通常の経費計上と異なる点にも注意が必要です。
葬儀では何の費用を経費として申請すればよいか悩んでしまう個人事業主は少なくありません。
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岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

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取引先の関係者や従業員の家族についての冠婚葬祭には、その経費性について問題になることは比較的少ないと思います。問題になるケースとしては、個人分なのか事業経費なのかの分類については、本文にも記載されていますように、細かく決められておりますので、それに従って処理されれば問題はありません。
それ以外には、支出金額が世間相場より著しく高額の場合ですと、目的以外の支出、例えば給与の一部であったり、交際費の一部なのでないか、というように痛くもない腹を探られる可能性がありますので、相場観を十分ご確認いただいて、そこから外れる部分についても合理的理由を準備いただき、税務調査が行われた際にはすぐに対応し、疑念を抱かれないようにすることををおすすめいたします。