映画代やイベントチケット代を経費に計上できる？勘定科目5つと具体例を解説

映画代やイベントのチケット代は経費計上が可能

売上との関連性を合理的に説明できれば、映画やイベントのチケット料金は経費として認められます。たとえば、映画やイベントを取材するための視察として料金が支出された場合です。美術館や博物館、スポーツのチケット料金も同様に処理が可能です。

売上との関わりを明確に示せる支出は、経費の申告に問題ありません。

事業所得、不動産所得および雑所得の金額を計算するうえで、必要経費に算入できる金額は、次の金額です。

（1）総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

（2）その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

引用：国税庁

映画代やイベントのチケット代を経費計上できる4つの条件

映画代やイベントのチケット代を経費計上するには、以下の4つの条件を満たしている必要があります。

1. 事業との関連性がある

映画やイベントの代金を経費計上するためには、事業との関連性が求められます。映画やイベントへ参加することが自社事業に合致しており、合理的な理由を説明できることが必要です。

たとえば、顧客やビジネスパートナーとの交流で、映画の上映イベントや映画鑑賞会を開催する場合、映画のチケット代は経費として計上できます。娯楽目的ではなく事業の参考にする正当な理由がある場合は、経費計上は可能です。

2. 適切な勘定科目に計上する

映画やイベントの代金を経費にする場合、適切な勘定科目へ計上する必要があります。経費計上における代表的な科目は下記のとおりです。

3. 証拠が保持されている

映画やイベントのチケット代を経費として計上する際には、支出を証明する必要があります。事業との関連がある支出でも支払ったことを確認できない場合は、経費として認められません。かかった費用のレシートや半券を保管しておきましょう。

証拠のない経費は「脱税」と見なされる可能性があります。必ず証拠に残せる支出のみ経費として計上しましょう。

4. 適正な金額である

映画やイベントのチケット代を経費として計上するためには、適正な金額であることも重要です。過度な支出は経費として認められない可能性があります。経費の計上に上限はありませんが、白色申告での備品購入は10万円以上の場合、減価償却として扱わなければいけません。

減価償却とは、事業で使用する固定資産を「耐用年数」に応じて「取得価額」を分割して経費計上する会計処理の方法です。

映画やイベントの代金を経費にする際の勘定科目5つ

映画やイベントのチケット代金は特定の勘定科目で経費計上できます。勘定科目とは、取引をわかりやすく分類するための簿記の勘定科目です。お金や取引内容の性質を示す「見出し」の役割を果たします。映画やイベント代金を経費計上できる勘定科目を以下に5つ紹介します。

1. 取材費

取材費は、書籍の購入やインタビューにかかる費用の勘定科目です。具体的には、映画を取材するための映画鑑賞費が代表的です。

映画レビューサイトの運営者が映画を視聴する費用や、コスプレイヤーがイベントに参加するための費用なども取材費として計上されるケースとなります。

2. 交際費・接待費

交際費や接待費は、取引先や事業関係者を食事に招待するためにかかる費用を計上できる勘定科目です。社外での接待を目的とした食事代や場所代、テーブルチャージ料も該当し、取引先との映画鑑賞やイベント参加にも適用されます。

3. 福利厚生費

福利厚生費は、企業や組織が従業員に提供するさまざまな福祉や労働条件の向上を支援するために支出する費用です。福利厚生費は、法定福利費（健康保険料、厚生年金保険料など）と法定外福利費（食事代、旅行費など）にわかれており、映画鑑賞の費用は法定外福利費に該当します。

福利厚生費は、従業員全員が受益する費用であることが必要条件です。たとえば、社員旅行に従業員が全員参加しない場合、旅行費用が福利厚生費とは認められないことがあります。条件を満たせない場合は交際費となり、課税対象になる場合もあります。

4. 教育訓練費

仕事の研修にかかった費用は教育訓練費として経費計上できます。たとえば、映画製作にかかわる人が品質向上のために映画鑑賞した費用を教育訓練費として計上することが可能です。教育訓練費として計上できる費用は以下のとおりです。

仕事関連の教育に限られるため、自己啓発セミナーへの参加費用は認められません。

5. 販売促進費

販売促進費は、商品やサービスの売上向上のための費用を計上できる勘定科目で、関連する商品の売上向上に対して該当します。プロモーションイベントやセールスプロモーションの実施にかかる費用も販売促進費です。販売促進費が該当する内容は下記のとおりです。

映画代やイベント代を経費化できる6つの事例

映画やイベントのチケット代金を経費にできる事例を以下に6つ紹介します。

1. 映画監督が作品の参考にするための映画鑑賞

映画監督が作品の参考のために映画観賞をしたチケット代は経費と認められます。漫画家・小説家が舞台・漫画・アニメなどを鑑賞した料金も基本的には経費計上が可能です。

2. レビューサイト運営者がサイトの参考にするための映画鑑賞

ブログ運営者が自身のレビューサイトの参考のために映画を鑑賞して記事を執筆した場合、映画の費用を経費として計上できます。たとえば、映画の背景情報や制作に関する資料、DVDの購入、映画関連書籍の購入なども記事の内容を充実させるために必要な場合があります。

資料購入費用もブログ運営者の活動に関連した経費として経費計上が可能です。

3. コスプレイヤーが衣装の参考にするためのイベント参加

コスプレイヤーは映画やコスプレイベントでの参加費を経費にできます。コスプレ対象のキャラクターの理解や衣装作りの参考のために映画を鑑賞することはあるでしょう。ただし、コスプレイヤーの活動による収入がなく、事業に該当しない場合は経費として認められない可能性が高いです。

営利目的ではなくあくまで趣味としてコスプレを楽しんでいる方は注意しましょう。

4. クライアントへのプレゼント用にチケットを購入

クライアントへの映画やイベントチケットの贈呈費用は、接待交際費として経費計上が可能です。経費が認められるためには、事業に関連していることが必須条件です。金額が高すぎたり、業績への直接的な影響が薄い場合は、却下されるリスクも考えられます。

友人へのプレゼントは経費計上は許可されません。

5. クライアントとの付き合いでチケットを購入

クライアントが主催・協賛・出演する映画やイベントのチケットを依頼されて購入した場合は、経費として計上できます。クライアントへの贈り物と同じで接待交際費に該当しますが、売上や事業への影響がわかりにくいため合理的な説明が必要です。

6. 従業員全員への映画鑑賞券プレゼント

映画やイベントのチケットを慰安のために従業員に提供する際の費用は、福利厚生費として経費計上可能です。福利厚生費として認められるためには、全従業員に提供される必要があります。

あくまで従業員のためであり、役員のチケット代は含まれません。福利厚生費のうちの法定外福利費に該当します。

映画の半券やメールの購入履歴を保管する重要性

映画やイベントのチケット代金を経費計上するには、レシートや領収書などが保管されており、購入履歴の証明ができることが重要です。保管の重要性についてを下記の2つの観点から解説します。

経費計上の証拠としての役割

映画のレシートや領収書を保管することは、経費計上の際に証拠としての役割を持つため重要です。証拠の保持は、税務調査時に支出の正当性を示すために必要です。証拠があることで、税務調査時に経費計上の正当性を示せます。

個人の支出も経費にするような過度な節税行為はリスクを増やすことになり、発覚すれば税務調査で企業の信用も失われかねません。信用問題や会社の不利益を避けるため「証拠に残せる」経費のみを計上することが大切です。

節税対策の有効な手段

レシートをきちんと整理・保管して経費処理することは所得税の課税金額を抑えることにつながります。個人事業主の確定申告方法である青色申告では、複式簿記の提出が必要で領収書やレシートの保管が重要です。

レシートや半券の保管は、帳簿の信頼性の向上や追徴課税のリスク低減になります。

まとめ

自営業や個人事業主の場合、事業との関連性がある映画やイベントの費用を経費として計上できます。経費として計上するためには、事業との関連性が必要不可欠です。安易に経費として計上すると、脱税とみなされ追徴課税がなされるリスクがあります。

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監修者のコメント

税理士

佐藤 憲亮

京都市出身。 医療系特化事務所、税理士法人の社員税理士（役員）を経て、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。実務で得た知識や経験を活かし、税務記事や税務論文の執筆、ブログの運営をしている書くことが好きな税理士。大学卒業後、税理士事務所で14年の実務経験を積みながら、大学院で税法を学ぶ。2020年に税理士登録。2023年6月に京都市中京区にて独立。また、顧客企業の利益最大化を実現するため、バックオフィスの効率化や改善に力を入れており、経理代行及びコンサルの事業会社を設立。経理、財務、税務の支援を得意としている。

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映画監督業等を行う事業者が、事業にかかる創作活動の参考等にするために映画鑑賞等をした場合は、取材費や研究費として経費計上することは可能でしょう。ただし、その支出が事業のために行った行為であるということを合理的に説明できるよう、証拠等を準備しておく必要があります。

事業にかかる取材や研究の意味合いがあるのであれば、映画の内容や、アイデアを資料にまとめていたり、レポートにまとめていたりするでしょう。税務調査等のときには、こういった資料が証拠書類として役に立ちますので、事業に関する取材や研究目的で支出したものについては、きちんと資料保存をしておくことが重要です。

なお、福利厚生費や接待交際費として支出したものについては、何人で誰と行ったのか、どういった関係性なのか等を領収書等にメモしておくと、後に説明を求められた時に役立つでしょう。

執筆者

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