自営業者・個人事業主はどこまで経費にできる?判断基準の10項目を解説

税理士
監修者
税理士 佐藤 憲亮
最終更新日:2023年09月21日
自営業者・個人事業主はどこまで経費にできる?判断基準の10項目を解説
この記事で解決できるお悩み
  • 自営業者・個人事業主が経費にできるものは?
  • 自営業者・個人事業主で受けられる所得控除とは?
  • 青色申告特別控除の節税効果とは?

自営業者・個人事業主にとって適切な経費計上は、健全な経営と節税対策に不可欠です。経費として計上できるものやできないものの線引きについて理解しておくことが重要です。

この記事では、自営業者や個人事業主・フリーランサー、起業を考える方々へ向けて、経費計上に関する基本的な知識を紹介します。記事を読み終わった頃には、節税のためのポイントや青色申告特別控除の制度を理解し、税金申告に自信を持てるようになるでしょう。

「自営業者が経費に計上できる項目は?」「青色申告特別控除とは何?」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

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自営業者・個人事業主の経費とは事業で発生した支払いのこと

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経費とは業務に関連する支出を指します。経費には商品の原価も含まれるため、自営業者は売れた商品の仕入れや製造にかかった費用を経費計上できます。外部への支払いや報酬も外注費として計上可能です。

家庭と事業の一部が同じスペースで使用される場合、家事按分と呼ばれる方法を使用して経費を計上できます。たとえば、自宅のインターネットを事業で使用する場合、事業利用の割合に応じてその一部を経費として計上します。

自営業者・個人事業主の運営においては以下の2つを意識しましょう。

  • 事業運営において経費計上は重要
  • 経費を計上する際に必要な証明書類

事業運営において経費計上は重要

事業運営においては経費計上は節税につながるため重要です。経費は事業の費用を差し引いて利益を減らし、税金を節税する手段です。所得税は収益に応じて課税対象にされるため、経費計上で納税額が軽減されます。

そのため経費を多く計上することで所得が減り、減税につながります。

経費を計上する際に必要な証明書類

経費計上には必要経費を裏付ける領収書や同等の書類が必要です。経費について不審な計上があった場合、税務調査が入る可能性があるでしょう。そのため領収書の整理・保管が重要で、必要に応じて提出できる状態が求められます。

経費計上が認められる対象は事業主によって異なります。すべての領収書が必要経費として認められるとは限りません。税務署からの要求に備えて目的や日付も記録しておきましょう。

自営業者・個人事業主の経費にできるもの10項目

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自営業者や個人事業主は、事業に関わる支出を経費に計上できます。経費にできる代表的な支出を以下の10項目で解説するため、参考にしてください。

  1. 仕入れ
  2. 消耗品費
  3. 広告宣伝費
  4. 旅費交通費
  5. 水道光熱費
  6. 通信費
  7. 飲食代
  8. 慶弔金
  9. 事業に関連する団体の年会費
  10. 出張時の朝食代(宿泊代に含まれる場合のみ)

1. 仕入れ

商品の仕入れ代金は一部経費として計上できます。支出全額がすべて経費になるわけではありません。売上に応じた売上原価として、商品が販売されたときにその原価を経費として申告できます。支払い時ではなく、販売時に初めて経費計上がおこなわれるため注意が必要です。

2. 消耗品費

消耗品とは消耗性の資産で、パソコン関連機器やオフィス備品などが該当します。税込み10万円未満か使用可能期間が1年未満であれば消耗品費として計上が可能です。

消耗品費の内訳 具体例
事務用消耗品 ペン、ノート、ファイルなど
作業用消耗品 手袋、ペンチ、ドライバーなど
車両関連消耗品 オイル、フィルター、ガソリン代など
包装材料 包装用紙、リボン、レジ袋など
広告宣伝用印刷物 チラシ、うちわ、カレンダーなど
見本品その他これらに準ずる棚卸資産 展示用のフィギュア、ストロー、プラスチックのスプーンなど

条件を満たしていない場合は購入時に減価償却費として分割計上され、当該資産を購入した年度に購入代金のすべてを費用とすることはできません。

減価償却とは、固定資産を耐用年数に応じて費用計上していく会計処理を指します。たとえば高額な自動車やパソコン機器などを購入した場合、購入した年に1回で経費計上せずに、購入代金を分割して計上します。

3. 広告宣伝費

広告宣伝費とは、製品やサービスを宣伝するときにかかる費用を指します。知名度向上のための広告をおこなっている場合も、広告宣伝費として経費に計上が可能です。広告宣伝費の代表的な項目は下記のとおりです。

  • チラシ
  • 新聞広告
  • 求人募集
  • 名刺
  • パンフレット

支払日ではなく掲載日での計上となるため、広告掲載までに長期的な媒体には注意しましょう。

4. 旅費交通費

旅費交通費は移動や出張にかかった費用を指します。移動先の交通費やバス、電車、自家用車のガソリン代、駐車場料金も経費に計上可能です。旅費交通費に該当する項目は下記のとおりです。

  • 移動先の交通費
  • バス料金
  • 電車料金
  • 自家用車のガソリン代
  • 駐車場料金

費用として計上できるのは業務上必要な部分のみで、海外渡航時に同伴する親族の渡航費をはじめとする私的な要素を含む分は、旅費交通費ではなく給与に該当します。転勤者に支給される支度金も、業務上の必要性がある場合は旅費交通費に含められます。

5. 水道光熱費

水道光熱費は水道代やガス代、電気代などのエネルギーに要する費用を指します。水道光熱費も経費であるため削減することで利益向上が期待できます。自宅を事業のオフィスとして使用している場合は、仕事で使っているスペースに応じて経費の計上が可能です。

6. 通信費

通信費とは業務で使用する通信手段にかかる費用を指します。電話だけではなく郵便代や宅配便、インターネット代など該当する費用は多岐にわたります。通信費は仕事で使う分を水道光熱費と同様に按分して計上が可能です。

7. 飲食代

飲食代を経費として計上する際は状況により勘定科目が異なります。金額上限があるため会計の勘定科目にも留意が必要です。飲食代は以下の勘定科目に分類されます。

  • 交際費
  • 会議費
  • 福利厚生費
  • 雑費
  • 旅客交通費

飲食代は事業関連であることが説明できれば経費にできます。たとえば、取引先とのアポ待ちのためにカフェで仕事をした場合やランチミーティングなどです。友人や家族との外食は私的支出となり経費として計上できません。

8. 慶弔金

慶弔金は、慶事・弔事に際して支給されるお祝い金や香典などを指します。結婚式や出産などのお祝い金、お葬式の香典などが含まれます。慶弔金が高額な場合は課税の可能性があるため注意が必要です。

事業に関連しない私的な支出は慶弔費として経費計上ができません。領収書がもらえないため金額や相手先の記録は出金伝票で残し、招待状も保存しておきましょう。

9. 事業に関連する団体の年会費

同業組合や商工会議所など、事業に関わる団体への支払いは経費になります。年会費とは国民健康保険組合への加入や、業界情報収集のための各業界団体へ支払う年会費です。支払った年会費はすべて経費計上が可能です。

交際費、寄附金、租税公課などと混同しやすいため注意しましょう。

10. 出張時の朝食代(宿泊代に含まれる場合のみ)

宿泊施設の朝食代は宿泊代に含まれている場合のみ経費計上が可能です。出張に関する費用は交通費や宿泊費として経費に計上できます。出張に関する食事代は「事業を営んでいなくても発生する費用」と見なされて経費には計上できません。

経費計上で節税効果を得るための3つのポイント

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自営業者や個人事業主ができる節税対策は限られていますが、個人でも必要な経費を計上することで節税が可能です。節税効果を得るための3つのポイントを以下で解説します。

  1. 青色申告をおこなう
  2. 必要経費を多く計上する
  3. 減価償却の特例を利用する

1. 青色申告をおこなう

確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。自営業者や個人事業主の確定申告では「青色申告」を選択することで節税のメリットを得られます。

「青色申告」においては最大で65万円の特別控除と減価償却特例を受けることが可能です。

メリット・特長 青色申告(65万円控除) 青色申告(10万円控除) 白色申告
青色申告特別控除 65万円 10万円 申告手続きが簡単
青色申告特別控除を受けるための要件 あり なし
青色事業専従者給与 あり あり
赤字3年間繰越 あり あり
減価償却資産(30万円未満) 一括経費 一括経費
申告手続きの簡単さ 簡単 簡単

適応条件には必要書類の提出や、年に1度の期限もあります。新規開業の場合は、開業届と同時に青色申告の申請をおこないましょう。

2. 必要経費を多く計上する

所得を抑えて税金を減らすためには多くの事業関連経費を計上する必要があります。たとえば、事業用の車両やオフィススペースの家賃、必要な機器やツールの購入費用などが該当します。

実際の業務に関連しない経費は計上できません。過度な計上は脱税を疑われるおそれがあるため、領収書の保管や正確な記帳を心がけましょう。節税のためには適切なバランスが必要です。

3. 減価償却の特例を利用する

自営業者や個人事業主は、特定条件を満たし青色申告決算書に必要事項を記入することで「少額減価償却資産の特例」を活用できます。10万円以上30万円未満の減価償却資産を取得した際に一括で経費として計上できるため、節税につながります。

特例を受けるためには以下3つに該当していることが条件です。

  • 青色申告をしていること
  • 資産の購入価格が30万円未満
  • 資産の年度内の合計額が300万円未満

自営業者・個人事業主の経費にできない6つの支出

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自営業者や個人事業主の経費計上には制約があります。法人では認められる費用であっても、自営業者や個人事業主には適用されない場合があるため注意が必要です。以下の5つの支出は経費には該当しません。

  1. 私的な飲食費や交際費
  2. 事業主自身の給料や保険料
  3. 自営業者・個人事業主と生計をともにする家族や親族への支払い
  4. 自営業者・個人事業主の資産として見なされるもの
  5. 家事按分したプライベートの分

1. 私的な飲食費や交際費

私的な飲食費や交際費は自営業者・個人事業主の経費として計上できません。事業と無関係の自営業者・個人事業主の支出は経費として認められないためです。

たとえば私用で購入したCDや書籍、飲食費などが該当します。事業との関連性が説明可能であれば、すべてを経費に計上することが可能です。用途が不明瞭な場合には、税務トラブルの原因となる可能性があるため経費計上には注意しましょう。

2. 事業主自身の給料や保険料

自営業者や個人事業主自身の給与や保険料を経費として計上できません。国民年金や国民健康保険の保険料、生命保険料、損害保険料も該当しません。

従業員への給与や外注スタッフの報酬は経費に該当するため適切な経費計上を心がけましょう。

3. 自営業者・個人事業主の税金

自営業者・個人事業主の税金は経費として認められません。所得税や住民税は、個人の所得に対する課税であり事業の運営に直接関連しないため経費として計上することができません。

事業に直接関連する支出については、印紙税や個人事業税などを経費として計上可能です。事業とは無関係な支出は経費として認められないため、適切に区別する必要があります。

4. 自営業者・個人事業主と生計をともにする家族や親族への支払い

自営業者・個人事業主が家族や親族に支払う給料を経費として計上するためには、青色事業専従者給与の届出条件を満たす必要があります。青色事業専従者給与とは、自営業者や個人事業主が家族や親族などに支給する給料や賞与の支払いのことです。

届出の条件として「青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること」とされています。「生計を一にする」とは家計の収入源が同じであることを指し、基本的に支払いは経費にはなりません。

特例として家族が事業の半分以上を手伝っている場合は、事業専従者控除を受けることが可能です。白色申告の場合は利用できません。

5. 自営業者・個人事業主の資産として見なされるもの

1点10万円を超えるものは「固定資産」として計上され、法定耐用年数に応じて「減価償却費」として経費になります。

固定資産の具体例は下記が代表的です。

  • 建物
  • 車両
  • 機械

事務所として借りているマンションやアパートの家賃は「地代家賃」として経費計上できますが、入居時の敷金は退去時に「返ってくる」前提のため資産と見なされます。礼金は20万円未満の場合「地代家賃」として経費計上できます。

6. 家事按分したプライベートの分

家事按分におけるプライベートの部分は経費として認められません。家事按分とは事業とプライベートを兼ねた支出に対し、事業の比率分を経費として計上することです。

たとえば、事業とプライベートの両方で使用しているスマートフォンの月額料金が5,000円の場合は、家事按分により2,500円を経費として認められます。

対象は事業用にも利用する光熱費や家賃にも適応され、家賃の場合、面積や光熱費などを基準に個人事業主が比率を定めます。配偶者名義でも事業利用の場合は経費計上が可能です。

まとめ

自営業者や個人事業主の場合、経費計上には制約があります。法人では認められる費用であっても自営業者や個人事業主には適用されないケースも見受けられます。正確に確定申告するためには税理士に依頼することも視野に入れておきましょう。

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よくある質問とその回答

  • 青色申告特別控除とは?

    青色申告特別控除とは、青色申告での確定申告時に受けられる控除です。条件を満たすと最大で65万円の控除が受けられます。

    自営業者や個人事業主は売上から必要経費を差し引いた所得金額に税金が課されます。

    青色申告特別控除が適用された場合は、所得金額からさらに最大65万円を差し引いた金額に税金が課せられるため節税効果が得られるでしょう。

    特別控除を受けるためには、原則として確定申告をおこなう年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。青色申告特別控除は、税金負担を軽減するための有益な制度といえるでしょう。

  • 経費計上に必要な領収書のまとめ方と保管方法は?

    経費計上の際に必要な領収書やレシートは、税務調査に備えて整理・保管しておくことが大切です。個人事業の支出は必要経費として記録され、税法上は7年間の保存が必要です。確定申告後、税務調査が行われる際には領収書の提示が求められることがあります。

    乱雑にまとめて保管するのは避けましょう。

  • プライベートと経費を分ける「家事按分」とは?

    家事按分は事業とプライベートを兼ねた支出に対し、事業の比率分を経費として計上することです。税務署に説明が求められた場合、根拠を説明できることが重要です。家賃の場合、住居と事務所の面積割合から経費を計算します。計算式は下記のとおりです。

    経費=家賃×(住居の総面積 ÷ 事務所の面積)

     家賃8万円で居住スペースが60屐∋業で使用しているスペースが11屐別6畳分)の場合は下記の計算式で算出してください。

    14,640円=80,000円×(11 ÷ 60屐

    家事按分で計上できる経費は、14,640円と算出できます。水道光熱費における費用は利用時間や日数を基準に按分します。

監修者のコメント
税理士
佐藤 憲亮

京都市出身。 医療系特化事務所、税理士法人の社員税理士(役員)を経て、気軽に相談できる専門家として税務顧問業務をメインに活動。実務で得た知識や経験を活かし、税務記事や税務論文の執筆、ブログの運営をしている書くことが好きな税理士。大学卒業後、税理士事務所で14年の実務経験を積みながら、大学院で税法を学ぶ。2020年に税理士登録。2023年6月に京都市中京区にて独立。また、顧客企業の利益最大化を実現するため、バックオフィスの効率化や改善に力を入れており、経理代行及びコンサルの事業会社を設立。経理、財務、税務の支援を得意としている。

外部の人に業務を委託した場合、その支出が給与にあたるのか、外注費にあたるのかの判断をしなければなりません。しかし、その判断は簡単にできるものではなく、下記要件に当てはまるかどうかにより総合的に判断することになります。
(当てはまる数が多いほど、給与である可能性が高くなります)

・他人が代替して業務を遂行することができない。
・作業時間の指定、報酬が時間単位で計算されるなど、時間的な拘束を受ける。
・指揮監督を受ける。
・まだ引き渡しをしていない完成品が、不可抗力により滅失した場合等であっても、権利として報酬の請求をすることができる。
・材料や用具等の供与を受ける。

なお、給与となるか外注費となるかで税務上の取扱いは大きく変わり、どちらかと言えば、外注費のほうが事業者にとって有利となることが多いと言えます。(今後インボイス制度が開始することにより、一概に外注費が有利になるとは言い難いですが)

そのため、実質的には給与であるにも関わらず外注費として処理し、課税当局と意見が食い違い、裁判等で争われたという事例も多数ありますので、どちらか迷うようなときは、情報を整理して総合的に判断するようにしましょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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