相続財産管理人の選任に必要な費用とは?報酬相場や費用の軽減方法を解説

最終更新日:2023年03月22日
竹中啓倫税理士事務所
監修者
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
相続財産管理人の選任に必要な費用とは?報酬相場や費用の軽減方法を解説
この記事で解決できるお悩み
  • 相続財産管理人の選任に必要な費用とは?
  • 相続財産管理人の選任が必要なケースとは?
  • 相続財産管理人の費用を軽減する方法とは?

相続が発生した際に相続財産管理人を選任する場合、報酬や予納金などの費用がかかります。

相続財産管理人とは、相続が発生したときに相続人がいない・相続人が相続放棄した場合に選出され、遺産の管理・精算を行う役割を持つ人のことです。

相続財産管理人の選任に必要な費用を把握しておかないと、費用が払えずに選任されない可能性があるので注意が必要です。

本記事では、相続財産管理人の選任に必要な費用や項目を解説します。相続財産管理人の選任に必要な費用にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

相続財産管理人の選任に必要な費用相場:100万円程度

本を開いているビジネスマン

相続財産管理人の選任には、100万円程度の費用が必要となります。具体的な費用項目と、それぞれの金額は以下のとおりです。

  • 専門家報酬:月1万円〜5万円
  • 予納金:20万円〜100万円
  • 必須費用:1万円未満

それぞれ具体的に解説します。

専門家報酬:月1万円〜5万円

相続財産管理人を弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合、専門家報酬が必要です。裁判所に提出する選任申立書の作成代行や業務遂行に応じて報酬を支払います。

金額は財産の規模や手続きの複雑さによって変動しますが、多くの場合月額1万円〜5万円です。月額のため、財産が多かったり相続人を探す作業が複雑だったりすると、調査や手続きが長期間にわたるため費用が加算されていきます。

予納金:20万円〜100万円

予納金とは、相続財産管理人へ支払う報酬や、業務遂行・財産管理に必要な費用をまかなうための費用です。

予納金は、必ずしも支払うべきものではありません。一般的には相続財産から差し引かれる形で報酬や費用を支払いますが、財産だけでは支払いきれない場合は予納金が必要となります。

預貯金が多い場合は、必要な費用が確保されていると考えられ、予納金の金額が減る傾向にあります。預貯金が少ない・現金に換金されていない不動産や株式などの財産が多い場合には、多くの予納金が必要なケースがあるため注意しましょう。

相続財産管理人へ支払う報酬金額

報酬の金額は家庭裁判所によって決定され、場所によってばらつきがあります。
地方裁判所の場合20万円〜60万円、東京家庭裁判所の場合は100万円の支払いが必要な場合があります。

必須費用:1万円未満

報酬や予納金とは別に、相続財産管理人の選任に必要な費用は以下の4つです。

収入印紙代 800円
郵便切手代 800円〜1,000円
戸籍謄本の取得費用 戸籍謄本:450円
除籍謄本・改製原戸籍謄本:各750円
官報広告料 3,775円

収入印紙代は、裁判所に選任申立書を提出する際に必要です。申立書に800円分の収入印紙を貼り付けて提出します。郵便切手代は、裁判所が書類を送付する際の切手代が必要なため、裁判所によって扱いや金額が異なります。

官報広告料は、家庭裁判所が相続財産管理人を選任した際、官報に掲載して公告するために必要な金額です。相続財産管理人を選任した際、家庭裁判所は遅滞なく公告しなければならないことが民法952条で定められています。

相続財産管理人の費用は誰が支払うのか

相続財産管理人の報酬をはじめとした費用は、原則として亡くなった方(被相続人)の相続財産から支払われます。もし相続財産だけで報酬を支払いきれない場合は、家庭裁判所が申立人に対して予納金の納付を求める形です。

予納金は、申立人が納めます。相続人が申立人の場合は相続人が、配偶者・血族ではない特別縁故者が申立人の場合は特別縁故者が納めることになります。

相続財産管理人の選任申立てが必要なケース

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相続財産管理人の選任申立てが必要なケースは、主に以下の4つが考えられます。

  1. 相続人がいない場合
  2. 相続人が相続放棄をした場合
  3. 財産に債務が残っている場合
  4. 特殊な相続人に相続する場合

それぞれの事例を具体的に解説します。

相続人がいない場合

相続財産を遺して亡くなった方が独り身で、法定相続人が存在しない場合、選任申立てが必要です。

法定相続人がおらず遺言書も残されていない場合、財産の行き場がありません。この場合に相続財産管理人が選任され、相続人の捜査・亡くなった方と特別な縁故がある方への財産分与が行われます。

誰にも財産分与がされなかった場合、国庫に帰属され国の財産となるケースも存在します。

相続人が相続放棄をした場合

法定相続人が存在するものの、相続人全員が相続放棄をした場合も、選任が必要です。

相続人全員が相続放棄をすると、相続財産を管理する人が不在となります。財産を放置すると、財産によって起きた被害により第三者から損害賠償請求される可能性があるため、管理責任を誰かに引き継ぐ必要があります。

財産が建物や不動産の場合、倒壊や劣化によって近隣の方に損害を与える可能性が高いです。相続人全員が相続放棄した際は、必ず相続財産管理人を選任しましょう。

財産に債務が残っている場合

財産に債務が残っており、亡くなった方の債権者から返済を求められた場合、相続財産管理人の選任が必要です。

相続人がいない・相続人全員が相続放棄した場合でも、債務がなくなることはありません。その場合は債権者が相続財産管理人を申し立てて、弁済を受けられます。

特殊な相続人に相続する場合

亡くなった方の配偶者・血族以外に、被相続人(財産を遺して亡くなった方)と特別な縁故がある人へ相続する場合も、選任が必要です。具体的には、以下の人が特殊な相続人になる場合があります。

  • 被相続人の内縁の夫や妻
  • 被相続人と生計を同じくしていた人
  • 相続人に該当しない親戚
  • 被相続人の看護・介護につとめた人
  • その他 特別親しい関係や縁があった人

特別縁故者が財産分与の請求をしたい場合は、申し立てをすることで相続財産管理人を立てられます。

相続財産管理人の費用が払えない場合

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予納金の金額が高額になってしまい、相続財産管理人を選任するための費用が払えない場合は、相続財産管理人が選任されません。相続財産は管理されない状態で保留されます。

選任せず放置すると、相続放棄しても財産の管理義務が残ってしまう・特別縁故者とトラブルになってしまうなどの可能性があります。相続の発生直後での支払いが難しい場合でも、なるべく早めに費用を支払って財産を整理する形が理想です。

費用の支払いが困難な際は、日本司法支援センター(法テラス)が提供する費用立替え制度が利用できる場合があります。事前にチェックしておくといいでしょう。

相続財産管理人の費用を軽減する方法

相続財産管理人の選任に必要な費用を軽減する2つの方法は以下のとおりです。

  • 相続財産管理人の選任申立てを自分で行う
  • 相続財産管理人を親族にする

必須費用や官報広告料は軽減できませんが、一部の費用において軽減できるものがあります。それぞれ具体的な方法を解説します。

相続財産管理人の選任申立てを自分で行う

相続財産管理人の選任申立ては、弁護士や司法書士に代行を依頼するケースが多いですが、自分で申し立てを行えば代行費用を削減できます。

選任申立ては、資格保有者でないと行えないものではありません。資格がなくても自分で書類を作成して、裁判所へ申し立てができます。収入印紙代や官報広告料は別途必要になります。

相続財産管理人を親族にする

相続財産管理人を弁護士や司法書士ではなく親族に依頼できれば、専門家報酬(月額1万円〜5万円)を支払う義務がなくなります。相続財産管理人の受任においても資格は不要のため、同意さえ得られれば親族による受任が可能です。

ですが、相続財産管理人の選任は家庭裁判所によって行われます。家庭裁判所は、被相続人との関係・利害関係などの観点から、相続財産の管理に適任と認められる人を選任します。

相続財産管理人を親族にするよう申し立てても、必ずしも親族が選任されるわけではないため注意しましょう。

まとめ

相続財産管理人の選任には、予納金が必要な場合、100万円ほどかかります。相続が発生する可能性がある場合や、相続財産管理人の選任を申し立てる予定がある場合は、早めに費用を想定しておくといいでしょう。

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相続財産管理人の申立・選任は専門家への相談がおすすめ!

遺言・遺言執行者の指定などは、弁護士・司法書士をはじめとした専門家へ相談するのがベスト。万が一、相続財産管理人を選任しなければならない事態になった場合も同様です。

候補者として推薦しても相続財産管理人として選任されるわけではありませんが、複雑になりがちな相続財産の処分にあたって、適切なアドバイスが得られるでしょう。特に債権者・受遺者・特別縁故者などの利害関係人には有益です。

しかし、法律関連に馴染みのない方が、適切な専門家を選定するのは簡単ではありません。候補となる依頼先を絞り込むことさえ難しいと感じる場合もあるでしょう。「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、優良な専門家をスピーディーに探せます。法律の専門家の選定に迷うようなことがあれば、是非利用してみてください。

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監修者の一言

あまりなじみがないかもしれませんが、相続財産管理人とは、相続人の財産・管理・清算を目的として、家庭裁判所により選任されるものです。主に、相続財産を管理するのに最も適任をされる人が選ばれますが、弁護士や司法書士のような専門職が選ばれることもあります。

近年、少子化が進み、場合によっては相続人がいないケースや相続人全員が相続を方式してしまった場合、相続手続きが止まってします。ただし、あなたが、特定受贈者や特別縁故者のような財産を受け取る権利がある場合は、相続財産管理人は選任される財産を受け取れる場合があります。

特定受贈者とは、特定財産の遺贈を受けた人のことを指し、特別縁故者とは、法定相続人がいない場合、被相続人と特別親しい関係にあったもので、両方とも財産分与を認められます。

竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
監修者

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。