相続を税理士に依頼した際の費用相場を徹底解説【税理士監修】

いざ不動産などを相続したとき、かかってくるのが「相続税」。一生に何度もあることではないので、税理士を選ぶのにも戸惑ってしまいますよね。プロの税理士に依頼するときの相場や選び方のポイント、依頼するメリットなどを徹底解説いたします。
相続時、避けては通れない「相続税」
不動産などの資産を相続によって受けた場合、「相続税」問題を避けて通ることはできません。「相続税はとても高くて、相続する資産のかなりの分を取られてしまう」…なんてイメージをおもちの方が多いのではないでしょうか。
いざ自分が相続人になっても、誰に相談したらいいか困ってしまいそうです。
もし、ある程度大きな額の相続があるのであれば、プロである税理士に相談するのがベストです。こうしたいろいろな不安を払拭するのに役立ちますし、相続税を安くするアドバイスをもらえます。
税理士業界内の競争もあり、相続についての相談なら、一般の方でも依頼できる費用感で見つけることができます。
相続についての税理士報酬はいくらくらい?
遺産総額に応じて変わる費用相場
相続についての相談や申告代行の業務は、税理士の一般的な業務です。中には、相続に関する業務をメインとしている税理士もいます。
こうした税理士は、顧客の安心感を得て仕事を受注しやすくするため、報酬をかなり分かりやすい料金体系にしています。
もちろん税理士によって料金は変わってきますが、ある程度相場が形成されており、それほど極端な金額にはならないでしょう。
具体的には、相続する資産の評価額によって料金が決められていきます。相場は下記のとおりです。
相続金額 | 相場 |
---|---|
5000万円以下 | 20万円から50万円程度 |
1億円以下 | 25万円から100万円程度 |
5億円以下 | 60万円から200万円程度 |
10億円以下 | 150万から300万円程度 |
このように、全体としては額が多くなるほど報酬の割合が低くなることが分かります。1億円以下の相続額であれば、評価額の1パーセント以下、それより大きな相続額であれば0.4パーセント以下が相場と見て良いでしょう。
これを目安にして、それぞれの税理士事務所が明示している報酬を比較・検討してみてくださいね。
ケース別で加算される費用もある
ケース別で加算される費用を加算報酬と呼んでいます。これは、相続人の数、相続財産の内容、サービス内容によって加算される報酬です。
それぞれについて、以下でご説明します。
相続人が複数の場合
相続人が複数存在する場合、基本報酬を一人当たり10%から15%加算する税理士事務所が多いようです。具体的には以下の表を参照してください。
基本報酬 | 100万円 |
---|---|
一人あたりの加算報酬 | 10% |
相続人の数 | 3人 |
加算報酬 | 20万円 |
相続財産に特殊な土地が含まれている場合
相続する土地が複雑な形状をしている場合、不動産鑑定士による評価が必要になることがあります。その場合は、当然鑑定料がかかります。
相続財産に非上場株式が含まれている場合
非上場株式が相続財産に含まれている場合、個人が同族株主であったか、会社規模がどうであったかによって評価方法が異なります。
さらに、会社が所有している不動産等の財産を評価する必要があります。非上場株式の評価は複雑となるので、その点においては別途費用がかかります。
評価にかかる費用は、会社規模や会社が所有する財産によって異なるので、見積もり依頼をする必要があります。
税理士法第33条の2の書面添付
相続税の計算は、どのような根拠資料に基づいておこなったのかをきちんと明記する必要があります。そのため、相続税申告書に添付するを規定を相続税申告の書面添付制度と呼んでいます。
この書面添付制度は、税理士法第33条の2に規定されているので、「税理士法第33条の2の書面添付」単に「書面添付」と呼ぶ場合もあります。
書面添付のメリットとして、税務調査に選ばれる確率があげられています。相続税の税務調査は申告件数全体の20%から25%程度とされていますが、税理士が書面添付をした場合、税務調査の入る確率が6%程度になります。
税務調査自体が、相続に対してわずらわしい事務手続きになることを考えると、書面添付のメリットはおおいにあると考えていいでしょう。
この書面添付の費用ですが、基本報酬の20%ほどの料金で対応している税理士事務所が多いです。
農地等の納税猶予の特例の適用
農地については、相続税や贈与税の納税が猶予される特例があります。ただし、これには条件があります。
相続者(後継者)が農業を続けること、あるいは農業を行う人に農地を貸し出すことです。一般的に、この特例に対する税理士報酬は基本報酬の20%程度が相場です。
税理士によってはこの適用を扱っていないところもあるようなので、事前の確認が必要です。
相続税の申告期限まで3ヵ月未満の場合
相続税にも申告期限があります。それは相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内とされています。相続税の申告にはある程度の期間が必要になります。
申告期限まで3ヵ月を切ってから税理士に依頼する場合は、税理士も急いで対応しなければなりません。短い期間で様々な業務を行うことになるため、基本報酬にさらに20%から50%を乗せた加算報酬が別途かかります。
適正な報酬で対応してくれる税理士を探す
できるだけ安い料金で業務を請け負ってくれる税理士の方が当然ありがたいですが、あくまでも適正価格でしてくれるところを選びましょう。
相続の税務申告というのは、複雑な計算と処理が必要になることがあり、ちょっとしたミスで税額に大きな違いが出てしまうことがあります。そうなると、「安ければいい」という考えはやめたほうが無難ですよね。
税理士によっては、税制についての理解と、相続税処理についてのノウハウが深く、上手に処理をして節税してくれるケースもあります。ちょっと高い報酬を支払ってでも、税金を減らせれば、結果的に得することになります。
安さだけを見るのではなく、この分野における経験が豊富か、機械的に申告をするのではなく、親身になって相談を受け考えてくれるかどうかも見ておきましょう。
また、最初から1人の税理士に決めてしまうのではなく、複数の事務所と比較して報酬や対応の様子を確認することが大切です。
どの税理士事務所でも、ある程度の相続の内容を伝えれば報酬の見積もりを出してくれますので、その見積もりを突き合わせて比較できます。
また、多くの事務所では初回相談を無料としていて、とりあえずのお試し相談でも良しとしているところがあります。そのようなサービスを上手に利用して、対応の雰囲気や、節税について積極的に動いてくれそうかをチェックしましょう。
「税理士選びは、値段以上に重要」と考えておいてくださいね。
相続に関する処理を税理士に依頼した方がいい理由
ある程度のお金を払ってでも、信頼できる税理士に依頼すると大きなメリットがあります。
その1:税務調査の回避
相続だけに限りませんが、正しく税金の申告をしないと税務署からの税務調査が入ってしまうおそれがあるからです。
税金を浮かそうとして、資産の評価をあえて低くしているのではないか、相続資産のリストに上がっていないものがあるのではないかと疑われて、職員が直接税務調査をすることがあります。
税務調査では書類の内容や実際の資産の内容などを細かく聞かれて、精神的にかなり負担となります。ストレスを避けるためにも、正確な申告ができる税理士の助けを得るのは賢明です。
その2:書面添付で信頼度アップ
税理士は相続税の申告をする際に、「書面添付」と呼ばれるアクションを起こすことがあります。相続税の申告書類に加えて、資産の評価額などについての計算事項などを記入した、いわば詳細書の添付です。
これによって、税理士が深くかかわっていて、細かくすべての資産をきちんと評価して計算していますということを保証することができます。
書面添付があると、税務署でもより信頼してくれるようになりますので、税務調査を回避できる可能性が高くなります。
その3:節税効果
税理士に処理を依頼することによって、税金を安くできる可能性があるのは大きなメリットでしょう。
実際に相続が発生してからだと、その手段も限られてしまいますが、事前に相談しておけば生前贈与や法人化など、さまざまな節税方法を駆使してくれます。
税額がかなり抑えられる可能性があり、報酬として税理士に支払う何倍ものメリットを得られることもあります。
この目的のために税理士を頼るのであれば、できるだけ早い段階で相談するのがベストです。というのも、相続者が亡くなったあとでは、劇的な効果を生む節税方法は取れないからです。
上手に節税して得するためにも、前もって対策を講じておきたいですね。
どちらにしても、相続が発生した段階で慌てて税理士に頼ろうとすると、自分に合った税理士を見つけるのが大変だったり、書類を作成するための余裕と時間が足りなかったりして、かなり大変です。
ある程度の相続資産があるということが分かっているのであれば、十分長い期間をもって、計画的に相続対策を行っていくことが大切です。
信頼できる税理士をパートナーとし、効果的に相続準備を進めていけるようにしましょう。
その4:手間と時間がかからない
もう1つのメリットは、税に関するさまざまな面倒な手続きにかかる手間と時間を省けることです。
税の申告というのはかなり複雑で時間も相当かかります。
実際に故人が亡くなってしまったときは、その他の対応で忙しい日々が続きます。相続のためだけに時間と体力をかけるのは、実際問題かなり難しいでしょう。
心身の負担を減らすという目的においても、税理士を頼るのは賢い方法です。税理士に任せれば、一切の手続きを代行してくれますので、安心して他の対応に集中できます。
相続税に強い税理士を見つけるコツ
費用・報酬の仕組みが明瞭
とかく税理士報酬はわかりにくいとされています。そのような中において、報酬の仕組みが明瞭になっていると依頼する側にとっても安心です。
税理士報酬が細部にわたって明瞭になっているということは、相続税の申告経験が豊富でどれにどのくらいの費用がわかっているからです。
仮に税理士報酬が高くなっても、それに見合う節税効果が期待できれば、トータルで安くなる場合もあります。
書面添付制度がある
書面添付制度を利用している税理士が行う相続税の申告は、税務調査が入る確率を下げてくれます。それだけ、税理士には高い信用があるということです。
税務調査に入る前に税理士が意見を述べる機会も与えられます。それによって、税務調査を回避できることもあります。
書面添付は伝家の宝刀のような効果が期待できますが、税理士なら誰もが行っているわけではありません。逆に言うと、書面添付を行う税理士は信頼性が高いということです。
税務調査に立ち会う
相続税の申告について税務調査が入った場合、税理士が立ち会ってくれると安心です。そういった点についても依頼時にしっかりと確認するようにしましょう。
そのために、セカンドオピニオン制度があり、これは他の税理士にも相続税額を聞くことができる制度です。税理士によってはこのセカンドオピニオン制度を嫌がるケースもあります。
この点についても、事前にしっかりと確認するようにしましょう。
様々な事情に応じた節税策を提案を行える
相続する金額が多ければ相続する金額も多くなってしまいます。その中にあって、適切な節税策を提案・実行してくれる税理士は心強い存在です。
相続する人が一人であれば、揉めることはありませんが、複数人いる場合は揉める場合も少なくありません。そういった事情があっても粛々と説得力のある納税業務を行ってくれる税理士は信頼できるといっていいでしょう。
相続案件によっては、大幅に節税できるケースもあり、そういったノウハウをしっかりと持っている税理士に依頼するようにしたいものです。
相続税申告の実績がある
結果的に相続に強い税理士というのは、これまでにどれだけの案件をこなしてきたかによります。どの税理士が良いか見た目で判断できない場合は、こなしてきた案件数で比較すると良いでしょう。
具体例では、年間50件以上の相続税の申告実績のある税理士であれば、実績経験が豊富であるといえます。
相続税に強い税理士を探す方法
相続税に精通した税理士を探すとなると、どのように探したらいいか迷うこともあります。そういったときはこちらを参考にしてください。
ポータルサイトで探す
特定のジャンルのお店などを紹介しているサイトが「ポータルサイト」です。税理士のポータルサイトなどもインターネット上に開設されているので、税理士探しのツールとして役立ちます。
多くの税理士事務所の中から選ぶことになるので、時間がかかることがデメリットになるかもしれません。
インターネット検索で探す
相続税の申告業務に強い税理士を探すのであれば、インターネット検索が心強い味方となってくれることでしょう。
自分の住んでいる地域の税理士事務所を探しながら、徐々に絞り込み検索をかけていくのが基本的な検索方法となります。
ポータルサイトと同様で、多くの税理士事務所の中から一つに絞るのは時間がかかるでしょう。
知人からの紹介で探す
過去に、相続税の申告を行ったことのある知人に税理士を紹介してもらう方法です。事前に税理士の評価を聞くことができるので、生の声はとても参考になるでしょう。
知人の紹介であれば安心できる反面、断りにくいといったことがデメリットとしてあげられます。
税理士選びでは複数の事務所で比較することが大切
知人の紹介はピンポイントとなるので選択の余地がなくなるのですが、ポータルサイトやインターネット検索では、数ある税理士事務所から選んでいかなければいけません。
その際ですが、検索結果で一番上に表示された1社だけに相談や依頼するといったことは間違っても行わないようにしてください。
同じ依頼内容でも、事務所によって費用が変わってしまうためです。1社だけに依頼してしまうと相場より高い費用を払うリスクがあります。
前述したような「税務調査に立ち会ってくれる」「セカンドオピニオンを歓迎している」「実績が豊富にある」といった部分も1社だけでは見極めことができません。
自分に合った税理士を探すためには複数の事務所で比較して、それぞれの観点で見極めるようにしてください。
加えて、遺産相続というセンシティブな問題に向き合うため、税理士との相性も大切です。相性が合わない場合、コミュニケーションが上手くできず、依頼主と税理士の双方にストレスが溜まってしまいます。
複数の事務所と比較することで、相性の良い税理士を見極めるようにしましょう。
まとめ
相続についての相談や税務申告代行を税理士に依頼することは、より正確に申告をして、手続きにかかる時間や心身の負担を軽減するのにとても役立ちます。
税のプロに依頼することで、節税ができるほか、税理士に支払う報酬以上のメリットを受けられる場合もあり、相談・依頼する価値は十分にあるでしょう。
以上、相続を税理士に依頼した場合の費用の相場について解説しましたが、費用は税理士事務所により開きがあるのも事実です、また、安い高いはどのように税理士事務所をサービスを提供しているか、過去の実績はどうか、一番は担当税理士の経験と相性、対応の仕方だと考えます。
費用も大切ですが、人生に何度もあることではない相続の依頼は上記の観点も十分に踏まえて検討が必要かと思います。
相続税に強い税理士事務所の選択に困ったら、比較ビズはどうでしょうか。複数の税理士事務所の中から、最適な税理士をマッチングしてくれます。
ネット上で、複数の税理士事務所に一括で問い合わせができるのも大きなメリットですよ。

川崎・横浜起業、確定申告支援センター 税理士大原政人。1975年茨城県土浦市出身。趣味はサッカー。法政大学経営学部経営学科卒業。都内税務会計コンサルティング会社勤務の後、税理士として独立。川崎市(駅徒歩5分)で中小企業・個人事業主を支援して今年で17年目。法人税務申告約1,500件、個人確定申告約1,200件、相続税申告約200件、セミナー、研修会講師年間平均30回
相続・事業承継対策の費用・相場に関連する記事
-
2022年07月01日相続・事業承継対策相続で行政書士が出来ることとは?【費用も解説】
-
2022年04月26日相続・事業承継対策相続・事業承継対策の料金相場と、税理士・公認会計士の選び方のポイント
-
2021年06月03日相続・事業承継対策遺産相続に関することを弁護士に依頼した時の弁護士費用
-
2021年03月04日相続・事業承継対策相続財産管理人とは?役割・費用・選任が必要なケース・選任後の流れを解説!
-
2020年04月03日相続・事業承継対策相続を税理士に依頼した際の費用相場を徹底解説【税理士監修】
-
2019年09月07日相続・事業承継対策相続放棄の手続きにはいくらかかる?費用を徹底解説!