確定申告を忘れたときはできるかぎり早く期限後申告する
確定申告を忘れたときはできるかぎり早く期限後申告しなければなりません。期限後の確定申告を「期限後申告」と呼び、本来の税金に追加してペナルティが課せられます。
確定申告をしないまま放置した場合「無申告」として扱われ、悪質な税金逃れと見なされます。延滞税だけではなく無申告加算税が課せられる可能性があるため、期限後であってもできるだけ早く申告しましょう。
申告期限に遅れた場合としなかった場合でペナルティが異なる
確定申告は期限に遅れた場合と、しなかった場合でペナルティが異なります。確定申告は、期限に遅れても自ら申告する「期限後申告」と、期限を過ぎても申告をしなかった「無申告」の2つに分けられます。
「期限後申告」と「無申告」におけるペナルティの違いは次のとおりです。
参照:国税庁
期限後2週間以内に自主的に申告した場合はペナルティの程度が変わります。「無申告」の場合は、税務署から呼び出しを受ける可能性があるでしょう。悪質な税金逃れと判断された場合には、延滞税や無申告加算税が重く課せられます。
「期限後申告」であっても早期に申告が行われ、状況が説明できる場合は、ペナルティが軽減されることがあります。
確定申告を忘れた場合のペナルティ5つ
確定申告を忘れた場合、5つのペナルティが課せられます。
- 延滞税
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
- 青色申告特別控除が10万円になる
1. 延滞税
確定申告の所得税を期限までに支払わなかった場合、延滞税が発生します。延滞税の税率は国税庁のサイトで確認できます。期限の翌日から納付完了日までの日数に応じて延滞税がかかり、最高税率は14.6%です。
たとえば、納税額が100万円で期日から60日後に期限後申告した場合、延滞税の金額は以下のようになります。
延滞税の計算式
100万円×年7.3%×60日÷365日=12,000円
振替納税を選択し、口座の残高不足で振替ができなかった場合も延滞税が発生するため注意が必要です。
参照:国税庁
2. 無申告加算税
期限内に確定申告を行わなかった場合、無申告加算税が課されます。税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分には20%の税率が加算されます。税務調査を受ける前に、自主的に期限後申告した場合の税率は5%です。
参照:国税庁
たとえば、所得税額100万円で確定申告を忘れた場合、無申告加算税の計算方法は以下のとおりです。
期限後申告でも、一定の条件を満たすことで無申告加算税が免除される可能性があります。軽減措置が受けられる条件は次の2つです。
- 確定申告の期限から1カ月以内に期限後申告していること
- 期限内申告する意思があったと認められること
参照:国税庁
3. 過少申告加算税
確定申告期限内に提出した申告書の納税額が本来納めるべき金額より少ない場合、過少申告加算税が課せられます。加算税は、申告が適正に行われなかった場合に課される行政制裁的な税です。所得計算を誤ったり、収入の隠ぺいがあったりする場合に課せられます。
過少申告税の税率は下記のとおりです。
過少申告加算税は、本来納付すべき税金との差額の10%が加算されます。自主的に修正申告を行った場合は、過少申告加算税は発生しません。追加税額の一部は、15%の割合で課税されることがあります。「期限内確定申告額」と50万円とを比較し、多い金額が基準です。
過少申告には延滞税も課せられるため、問題が見つかった場合は素早く修正申告を行いましょう。
参照:国税庁
4. 重加算税
重加算税は、過少申告加算税が課税される際、悪質な行為が見られる場合に適用される附帯税です。二重帳簿の作成や帳簿書類の改ざんがある場合に課税されます。
重加算税の税率は、本来の所得税額に対して35%、確定申告を忘れて無申告加算税の対象になる場合は40%です。不正が発覚した場合はさらに10%が加算されます。
たとえば、所得税額100万円で確定申告を行わなかった場合、加算税額の計算方法は次のとおりです。
期限内に確定申告を怠ったり修正申告があったりすると、附帯税を支払わなければなりません。重加算税は罰則的性格を持ち、損金計上ができないことに注意しましょう。
参照:国税庁
5. 青色申告特別控除が10万円になる
確定申告を怠った場合、青色申告特別控除が10万円に減額されます。期限後に申告した場合、青色申告特別控除は最大の65万円から10万円までとなります。所得税が増加し、還付金も減少するため注意が必要です。
期限内に行われた場合、前年の黒字との相殺による繰り越し還付は受けられますが、期限後は節税メリットが失われます。最大65万円の青色申告特別控除を受けるためには、期限内の確定申告が必要です。
確定申告で不正をした場合のペナルティ
確定申告で不正をした場合にはペナルティが課せられます。不正な行為は「ほ脱」と呼ばれ、厳罰なペナルティが課せられます。「ほ脱」とは、納税義務者が虚偽申告や不正な行為によって税金の支払いを免れる犯罪行為です。
ほ脱行為には無申告加算税と延滞税に加え、重加算税が課せられます。支払いが難しい場合は資産差し押さえが行われる可能性があります。所得を隠蔽した場合は、刑事罰も対象となり、最高刑は懲役10年以上または1,000万円以下の罰金です。
期限延長申請が可能なケース
確定申告の期限延長申請が可能なケースがあります。やむを得ない理由で確定申告書の提出が難しい場合「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出することで、期日を最大2カ月まで延長できます。
やむを得ない理由とは、災害や新型コロナウイルス感染症の影響などです。2022年までの提出においては、簡易的な方法での延長申請が可能でした。
基本的には期限内に申告を行うよう心がけ、やむを得ない理由が発生した場合には、迅速に期限延長の手続きを検討しましょう。
確定申告と還付申告の違い
還付申告とは、予定納税や源泉徴収で納めた所得税が、本来納めるべき金額より多かった場合に、確定申告をすることで還付を受けられる制度です。確定申告と還付申告の違いには下記の2つがあります。
- 還付申告は5年間さかのぼれる
- 還付申告は住民税に影響する場合がある
1. 還付申告は5年間さかのぼれる
確定申告の申告期間は翌年2月16日〜3月15日までになります。還付申告は所得の対象年(1月1日〜12月31日まで)の翌年1月1日から、5年間にわたって提出可能です。
参照:国税庁
たとえば、収入に変動があり住宅ローンや医療費控除がある場合、5年間を活用して払い過ぎた税金を還付してもらえます。
2. 還付申告は住民税に影響する場合がある
還付申告がある場合、課税所得が変化し、住民税や国民健康保険料に影響する場合があります。所得税の還付申告を行った場合、翌年度分の住民税の額が減少されます。翌年度分の住民税の納付がすべて終わっていない場合、住民税の「減額」で反映されるでしょう。
納付がすべて終わっている場合は、住民税の「還付」で反映されます。課税所得が変わることで税金も変動するため、還付申告は注意が必要です。
2024年提出の確定申告アップデート情報
2024年提出(令和5年分)の確定申告では、下記の変更点があります。
- 申告書が送られてこない
- 納税地の異動や変更の届け出が不要になる
- 扶養控除の対象となる国外居住親族の要件が厳しくなる
- 上場株式等の配当の申告方法の統一化される
- 収支内訳書にインボイス登録番号が記入できる
- 特定非常災害にかかる損失の繰越期間は5年間となる
- 財産債務調書の提出期限が6月30日に延長される
確定申告に関する情報は、税法や規制が変更されることがあるため、最新の公式情報や税務署の発表を確認しましょう。
まとめ
確定申告は原則として毎年2月16日〜3月15日までが期限です。一定の収入のある方はすべて確定申告の対象になります。確定申告を忘れた場合は無申告の状態となり、さまざまなペナルティを課せられます。
無申告で、悪質な税金逃れと判断された場合には、延滞税や無申告加算税が重く課せられる可能性があるため注意が必要です。適切な確定申告や申告漏れを防ぐために、経費の計上に関しては専門家である税理士に相談することがおすすめです。
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よくある質問とその回答
税理士 小西裕也
監修者
1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。
確定申告すべき人がしなかった(忘れていた)場合だけでなく、確定申告で申告した税額が本来納めるべき税額より少なかった場合には「延滞税」「過少申告加算税」などのペナルティがあります。
確定申告を行うことを忘れていた、もしくはすでに提出した確定申告書の内容に誤りがあると気づいた際は、なるべく早く税務署に相談に行き、正しい申告を行うことをおすすめします。
国税庁の確定申告書等作成コーナーや一般の作成ソフトを使えば、初めてでも簡単に確定申告書を作ることができます。 確定申告が必要かどうかを調べておき、必要な場合は自分に合った方法で手続きを行いましょう。
確定申告書の作成方法など、わからないことがあれば、お近くの税務署の窓口に早めに問い合わせてみて、なるべく早く申告を完了するようにしましょう。