確定申告を忘れたときはどうする?知っておきたい対処方法・ペナルティを解説!

最終更新日:2023年05月26日
小西裕也税理士事務所
監修者
税理士 小西裕也
確定申告を忘れたときはどうする?知っておきたい対処方法・ペナルティを解説!
この記事で解決できるお悩み
  • 確定申告とは何か知りたい
  • 確定申告を忘れたときはどうしたらよいか知りたい
  • ペナルティーがあるか知りたい

確定申告を忘れたときはどうする?忘れたらどうなる?知りたい方は意外に多いはず。個人事業を営む方、副業収入のある給与所得者の方、パート・アルバイトで働く方にとって、イコール納税というイメージのある確定申告は、できれば後回しにしたいもの。うっかり忘れてしまったということも少なくないからです。あとからペナルティを課されて慌ててしまわないように、確定申告とはなにか?しっかりと理解しておくことが肝心です。そこで本記事では、確定申告を忘れた場合の対処方法、課される可能性のあるペナルティなど、知っておきたい確定申告の基礎知識を徹底解説!最後までご覧いただければ、忘れずに確定申告すべき理由がわかります。

確定申告とは

確定申告とは、1月1日から12月31日までに得られたすべての所得金額を確定させ、足りない分の所得税を納税する、あるいは払い過ぎた分の所得税の還付を受けるための手続きです。

日本では収入の性格に応じて所得を10種類に区分していますが、どのような所得を得ている方であっても、課税所得のある方は原則として確定申告が必要です。

参照元:国税庁「No.1300 所得の区分のあらまし」

ここでいう「課税所得」とは、収入から必要経費を除いた「所得」、さらに所得から各種控除額を差し引いたうえで「残った所得」のことです。

各種控除後に所得が残っていない方であれば確定申告の必要はありませんが、必要経費や控除できる金額は条件によって変動します。収入のあるすべての方は、原則として確定申告が必要だと考えておいた方がいいでしょう。

確定申告が必要な人

ただし、正社員として働く方であれば、確定申告する必要はほとんどありません。会社があらかじめ所得税を源泉徴収しており、「年末調整」という名の確定申告も代行してくれるからです。

では、確定申告が必要なのはどのような人なのか?働き方が多様化する現代では、会社員の方であっても確定申告が必要な場合があります。

確定申告が必要な人 備考
個人事業主・フリーランスの方 課税所得のある方
会社員の方 給与収入が2,000万円を超える方
副収入のある会社員の方 給与所得以外の雑所得・事業所得などの合計が20万円を超える方
2か所以上で働く会社員の方 副業としてパート・アルバイトで働く場合も含む
パート・アルバイトとして働く方 給与収入が103万円以上で源泉徴収されていない場合

参照元:国税庁「確定申告が必要な方」

納税者の扶養控除対象となっている、配偶者控除対象になっているなど、確定申告が必要かどうかは状況によっても変わりますが、一定以上の収入があるのであれば必要だと考えておいた方が無難でしょう。

自身が対象となるのかどうか?わからないようであれば、税理士に相談してみるのもおすすめです。

確定申告の期限

確定申告が必要な方は、1月1日から12月31日までの所得を、原則として翌年2月16日から3月15日までの間に申告しなければなりません。

2020年度の確定申告が、2021年4月15日までに延長されたように、特別措置がとられる場合もありますが、土日祝日が期限に重なる場合を除いて延長されることはないのが基本です。

確定申告を忘れたときはどうする?

それでは、うっかり確定申告を忘れた、確定申告の期限を過ぎてしまった場合はどうすべきでしょうか?考えられるパターンとしては、

  • 確定申告を忘れたことを自分で気が付いた
  • 確定申告していないことを税務署に指摘された

の2つです。どちらのパターンでも速やかに申告手続きを行って、所得税を納付しなければなりませんが、指摘される前に気が付いたのなら、まずは管轄の税務署に相談することが先決です。

「所得税を納税する意思があること」「確定申告を忘れた、遅れてしまった理由」を伝え、「自主的に」確定申告する旨を理解してもらうことが重要です。

できる限り早く期限後申告する

確定申告を忘れたことに気が付いた場合、速やかに確定申告する必要がありますが、期限を過ぎてから確定申告することを「期限後申告」と呼びます。

ただし、期限後申告だからといって特別な追加書類が必要になるわけではありません。個人事業主の方であれば下記の書類を用意すれば問題ありません。

  • 決算書
  • 確定申告書B
  • 添付書類台紙

期限後申告の方法は?

期限後申告の方法・手順は、通常の確定申告と変わりありません。

  • 税務署に書類を提出する
  • 書類を郵送する
  • e-Taxで手続き・納税する

が一般的ですが、もっとも早く期限後申告できる方法を選ぶことがおすすめでしょう。忘れてはいけないのは「書類の提出日が所得税の納期限」となることです。期限後申告したからと安心していてはいけません。

もちろん、期限後申告がすべて確定申告と同じというわけではありません。もしそうなのであれば、期限を守って確定申告している方に対して不公平です。つまり、期限後申告となった場合は、状況に応じて多かれ少なかれペナルティが課されます。以下から具体的に解説していきましょう。

確定申告を忘れた場合のペナルティ:無申告加算税

確定申告を忘れた、イコール確定申告が無かったという意味で課される可能性のあるペナルティが「無申告加算税」です。

無申告加算税とは、本来支払うべき所得税額に加算される税金であり、納税額50万円までに対して15%、50万円を超えた金額に対して20%の税率を乗じた加算税を支払う必要があります。

たとえば、所得税額100万円の方が確定申告を忘れた場合、無申告加算税の金額は以下のように計算できます。

  計算式 加算税額
50万円まで 50万円 × 15% 75,000円
50万円を超えた部分 (100万円 - 50万円)× 20% 100,000円
無申告加算税の税額   175,000円

納税額が多ければ多いほど、無申告加算税によるペナルティが重くのしかかってくることがおわかりでしょう。

一定の条件を満たせば軽減・免除される場合も

ただし、確定申告を忘れたからといって無条件に無申告加算税が課されるわけではありません。一定の条件を満たすことによって無申告加算税のペナルティが軽減されることがあり、場合によっては免除される可能性もあります。

たとえば、税務署の調査を受ける前に確定申告を忘れたことに気付き「自主的に期限後申告」した方であれば、無申告加算税の税率が5%に軽減される場合があります。この軽減措置を上述の例に当てはめると、無申告加算税は以下の金額になります。

  計算式 無申告加算税額
軽減措置が適用された場合 100万円 × 5% 50,000円

また、以下の要件すべてを満たした方であれば、期限後申告であっても無申告加算税が免除される場合があります。

  • 確定申告の期限から1か月以内に期限後申告していること
  • 期限内申告する意思があったと認められること

参照元:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

確定申告を忘れた場合のペナルティ:延滞税

無申告加算税が免除されたとしても、ペナルティが一切なくなるわけではありません。無申告加算税が課される、課されないに関わらず、申告期限の翌日から所得税を納付するまでの日数に応じて「延滞税」というペナルティが課されます。

延滞税の税率は、期限を過ぎてから2か月までは「本来の納税額に年7.3%」、2か月を過ぎた分に「年14.6%」です。

たとえば、納税額100万円の方が期日から60日後に期限後申告し、無申告加算税と延滞税を課された場合、加算税の合計は以下のようになります。

  計算式 加算税額
無申告加算税 (50万円 × 15%)+(50万円 × 20%) 175,000円
延滞税 100万円 × 7.3% × 60 / 365 12,000円
加算税合計   187,000円

同じように、納税額100万円の方が期日から60日後に期限後申告したものの、無申告加算税が5%に軽減されると、加算税の合計は以下のようになります。

  計算式 加算税額
無申告加算税 50万円 × 5% 50,000円
延滞税 100万円 × 7.3% × 60 / 365 12,000円
加算税合計   62,000円

一方、納税額100万円の方が期日から20日後に期限申告し、無申告加算税が免除された場合、ペナルティは延滞税(100万円 × 7.3% × 20 / 365 = 4,000円)のみに抑えられます。確定申告を忘れたことに気付いたら、一刻も早く期限後申告すべき理由でもあります。

参照元:国税庁「延滞税の計算方法」

確定申告を忘れた場合のペナルティ:青色申告特別控除が得られない

確定申告を忘れた、期限を過ぎてしまった場合、「青色申告特別控除が得られなくなる」ペナルティが課されることも覚えておきたいポイントです。

青色申告事業者の方であれば、複式簿記での記帳をもとにした「賃借対照表」「損益計算書」を添付することで55万円、e-Taxを利用することで最大65万円の青色申告特別控除が得られますが、これは期日内に確定申告することが大前提です。

期限後申告でも10万円の所得控除は得られますが、特別控除が得られないのでは青色申告している意味が損なわれてしまうでしょう。

青色申告の資格が剥奪されることも

青色申告事業者であるにも関わらず、確定申告を忘れた、期限後申告が続くといったケースであれば、青色申告の資格が取り消されてしまうこともあります。

1回限りのことであればそれほど神経質になる必要はありませんが、2年連続、あるいは断続的に期限を守れないといった事業者であれば、資格剥奪の可能性が高まってしまいます。

確定申告を忘れた場合のペナルティ:悪質なケースの重加算税

ここまでは、単純に確定申告を忘れた、期限を過ぎてしまったという方に課される可能性のあるペナルティを紹介してきました。しかし、なかには所得税を支払いたくないがため、意図的に確定申告をしないという方もいます。

こうした「所得隠し」などに該当する悪質なケースでは、上述したペナルティに加えて「重加算税」が課されることもあります。

重加算税の税率は、本来の所得税額に対して35%、確定申告を忘れて無申告加算税の対象になった方は40%と、文字通り重い加算税であることが特徴です。電子帳簿の偽造などが発覚した場合はさらに10%が加算されてしまいます。

  計算式 加算税額
無申告加算税 (50万円 × 15%)+(50万円 × 20%) 175,000円
延滞税 100万円 × 7.3% × 60 / 365 12,000円
重加算税 100万円 × 40% 400,000円
加算税合計   587,000円

また、重加算税が課されるということは、不正行為をした納税者だと税務署から認定されるのと同じ。税務調査の対象として重点的にマークされることになりかねません。

確定申告と還付申告の違い

確定申告を忘れると無申告加算税・延滞税などのさまざまなペナルティが課されること、ペナルティをできる限り軽減するため期限後申告は迅速に行うべきことを解説してきましたが、これはあくまでも「納付すべき所得税を収めていない」場合です。

業務委託で働く方のように、すべての収入から源泉徴収されている場合は「必要経費」も「所得控除」も所得から差し引かれていないため、確定申告によって払い過ぎた税金が還付される可能性があります。この手続きが「還付申告」です。

ただし、還付申告といっても特別なことではありません。確定申告書の「還付される税金」欄に1円以上の金額が入っていれば自動的に還付申告となり、手続き自体は確定申告と同様。期限が決められているわけでもなく、ペナルティが課されることもありません。

還付申告は5年間さかのぼれる

国税庁によると、還付申告は所得の対象年(1月1日から12月31日まで)の翌年1月1日から、5年間にわたって提出できるとされています。つまり、所得税の払い過ぎに気が付いた場合、5年間さかのぼって還付請求できることになります。

還付申告の対象となる所得が給与所得、雑所得、一時所得であれば、国税庁のホームページから「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、簡単に手続きを済ませることも可能です。

参照元:国税庁「No.2030 還付申告」

参照元:国税庁「確定申告書等作成コーナー」

また、申告内容に間違いを見つけてしまった場合は修正申告をおこなうことができます。くわしくは下記の記事を参考にしてください。

還付申告は住民税に影響する場合も

還付申告に期限が設けられていないと聞くと、手続きを後回しにしてしまう方もいるかもしれませんが、所得税の還付があるということは、イコール「課税所得が変化する」ことを意味します。

課税所得が変化すれば、住民税や国民健康保険料にも影響が及ぶことも。還付申告を含めた確定申告が、収入のあるすべての方にとって必須である理由でもあります。

まとめ:忘れずに確定申告するには

本記事では、確定申告を忘れた場合の対処方法、課される可能性のあるペナルティなど、知っておきたい確定申告の基礎知識をできる限りわかりやすく解説してきました。うっかりしていた、ビジネスで忙しくて手が回らない、そもそも自身が対象なのかもわからないなど、確定申告を忘れてしまうのにはさまざまな理由がありますが、その代償は思った以上に大きいことが理解できたはずです。

特に青色申告事業者である個人事業主の方であれば、ムダな税金を支払うことにならないためにも、確定申告を忘れたといった事態は避けるべきでしょう。個人事業主の方の多くは「確定申告は自分でするもの」と思っているかもしれませんが、状況によっては税理士に相談することもおすすめ。これは副業を持つ会社員のかたであってもいえることです。

そんなとき「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、確定申告に強い税理士をスピーディーに探せます。どの専門家に相談すべきなのか?迷うようなことがあれば、是非利用してみてください。

監修者の一言

確定申告すべき人がしなかった(忘れていた)場合だけでなく、確定申告で申告した税額が本来納めるべき税額より少なかった場合には「延滞税」「過少申告加算税」などのペナルティがあります。

確定申告を行うことを忘れていた、もしくはすでに提出した確定申告書の内容に誤りがあると気づいた際は、なるべく早く税務署に相談に行き、正しい申告を行うことをおすすめします。

国税庁の確定申告書等作成コーナーや一般の作成ソフトを使えば、初めてでも簡単に確定申告書を作ることができます。 確定申告が必要かどうかを調べておき、必要な場合は自分に合った方法で手続きを行いましょう。

確定申告書の作成方法など、わからないことがあれば、お近くの税務署の窓口に早めに問い合わせてみて、なるべく早く申告を完了するようにしましょう。

小西裕也税理士事務所
税理士 小西裕也
監修者

1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

比較ビズ編集部
執筆者
比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。