電子帳簿保存法の対象企業とは?対象書類と対応すべき4つのポイントを解説

最終更新日:2023年09月11日
電子帳簿保存法の対象企業とは?対象書類と対応すべき4つのポイントを解説
この記事で解決できるお悩み
  • 電子帳簿保存法の対象企業は?
  • 電子帳簿保存法の必要な書類は?
  • 電子帳簿保存法の対象企業はどう対応すればいい?

「電子帳簿保存法について把握したい」とお悩みの方必見。電子帳簿保存法の対象はすべての企業と個人事業主です。2024年1月1日から電子取引に関する電子保存が完全義務化されます。早いうちから情報を得て、適切に対応できるようにしましょう。

この記事では、帳簿や経理書類の作成を行う経営者や企業の経理担当者に向けて、電子帳簿保存法の対応方法をわかりやすく解説します。

記事を読み終わった頃には、自社が電子帳簿保存法の対象企業かが判断でき、電子データによる適切な保存をする準備が整えられるでしょう。

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【すべての企業と個人事業主が対象】電子帳簿保存法とは

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電子帳簿保存法とは、紙で保存する帳簿書類を、電子データで管理する法律です。

電子帳簿保存法は2021年度に改正され、新たなルールで運用されることが決まりました。仕組みを知り、法律を知らないまま経営を続けてしまわないようにしましょう。

以下で電子帳簿保存法の対象者、改正・猶予期間・完全義務化の流れを解説します。

電子帳簿保存法の対象企業

電子帳簿保存法が対象企業となるのは、所得税もしくは法人税の保存義務者が対象です。事業をおこなうすべての企業と個人事業主が該当します。

【2021年度改正】「電子取引をしているすべての企業の対応義務化」を決定

2021年度に行われた改正により、2022年以降はすべての企業と事業主に対して、電子取引データの保存を義務付けられています。改正前は任意でおこなわれるものでしたが、改正後からは義務となります。

これまでは電子で取得した情報を紙に出力するケースが大半でしたが、今後は受け取った電子データをそのまま保存することとなります。メールで領収書が添付されていた場合は、紙で出力するのではなく、電子データのまま保存するというルールです。

【2023年12月31日まで】書面での保存が認められている猶予期間

電子帳簿保存法は、2023年12月31日までの猶予期間が設けられています。猶予期間を活用し対策や準備などをおこないましょう。

完全義務化される前の猶予期間に、適切な運用方法を把握し、対応できるようにしましょう。

【2024年1月1日から】電子取引に関する電子保存が完全義務化

2024年1月1日からは、電子取引に関する電子保存が完全義務化に切り替わります。

完全義務化までに運用方法を見直さず、税務調査で指摘された場合は、ペナルティを受ける場合があります。2024年1月1日までには、必ず改正された法律に従い運用しましょう。

電子帳簿保存法の対象書類

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電子帳簿保存法で対象となるデータは、「国税関係帳簿」と「国税関係書類」です。以下で各書類の保存方法を詳しく解説します。

1. 国税関係帳簿

具体的な国税関係帳簿は以下のとおりです。取り扱う際は、オリジナルの電子データをそのまま管理することと義務付けられています。

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 売上台帳
  • 仕入帳簿
  • 現金出納帳
  • 固定資産台帳
  • 売掛金台帳
  • 買掛金台帳

2. 国税関係書類

下記3つの決算関係書類は、データ保存をする必要があります。

  • 損益計算書
  • 試算表
  • 棚卸表

取引関係書類電子データの形で受け取らない場合は、電子取引に該当しないため、紙の状態で保存、もしくはスキャナ保存をします。

  • 見積書、見積書控え
  • 発注書、発注書控え
  • 請求書、請求書控え

電子帳簿保存法におけるデータの保存要件4つ

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電子帳簿保存法におけるデータの保存要件は、改正前と同様に4項目定められています。電子データを取り扱う際や保存する際に満たすべき条件となるため、おさえましょう。

  • システム概要に関する書類の備え付け
  • 見読可能装置の備え付け
  • 検索機能の確保
  • 真実性の担保

1. システム概要に関する書類の備え付け

システム概要に関する書類の備え付けは、自社が開発したプログラムに対しておこないます。他社が提供しているプログラムを利用する場合は、意識する必要はありません。

備え付ける書類は、システムの概要やシステム仕様書、操作説明書や事務処理マニュアルなどが挙げられます。システムが変わった場合は、変更履歴書も備え付けましょう。

2. 見読可能装置の備え付け

見読可能装置は、普段から使用しているパソコンのディスプレイをはじめとする機器のことです。

電子データを取り扱ううえで、税務調査で情報を提示する際に、電子データの状態でチェックを受けます。いつでも電子データを確認できる環境を整えておくことが重要です。

3. 検索機能の確保

管理体制を整え、必要なデータをいつでも検索できるようにしましょう。電子帳簿保存法に従ううちに、電子データが膨大になるため、管理が難しくなる可能性があります。

簡単に検索をおこない、必要な情報をピックアップできるように、以下の3点を記録しましょう。

  • 取引年月日
  • 金額
  • 取引をした相手

情報を整理しながら残しておけばいざというときに、すばやくデータを確認できます。税務調査も迅速に対応できるようになるため、時間短縮になるでしょう。

4. 真実性の担保

データが改ざんされていないことを証明するためにも、真実性の担保が必要です。データである以上記録や情報を変更したり、削除したりできるため、真実性がある証拠を残さなくてはなりません。

真実性の確保要件は、以下の4点のいずれかを満たす必要があります。

  • データを受領してから2カ月以内に認定タイムスタンプを付与
  • 改ざん防止用に事務処理規定を実施
  • データを改ざん防止するためのシステムを使用
  • 書類を発行する相手が認定タイムスタンプを付与

【区分】電子帳簿保存法で認められる3つの保存区分

電子帳簿保存法では、3つの保存区分が認められています。

  • 電子帳簿等保存
  • スキャナ保存
  • 電子取引

1. 電子帳簿等保存

電子帳簿等保存は、電子データの状態で保管することです。印刷せずに、データをそのままの状態で管理するイメージです。

下記の書類は電子帳簿に該当するため、印刷せずそのままの形で保存しましょう。専用ソフトでこれらの書類を作成・管理します。

  • 仕訳帳
  • 総勘定元帳
  • 補助簿
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 契約書、見積書、請求書などの控え

2. スキャナ保存

電子取引をしていない書類は、スキャナ保存ができます。元々電子データで取り扱われていない情報は、スキャナ保存が可能です。

  • 誓約書
  • 見積書
  • 請求書
  • 領収書

スキャナ保存をする場合は、情報を正しく閲覧できる状態にする必要があるため、解像度は200dpi以上を保ちましょう。200dpi以下だとデータが読み取れず、データを正しい方法で保存できていないとみなされます。

3. 電子取引

ネットを介する電子取引で得たデータは、取引データ保存の対象です。電子データのまま保存しましょう。

  • メール取引
  • WEB取引

以下の記事では、中小企業、個人事業主ごとの電子帳簿保存方法の対応方法を解説しています。また、保存期間や処分方法についても解説しているため、ぜひ参考にしてください。

電子帳簿保存の導入ステップ

電子帳簿保存の導入ステップは、以下のとおりです。

  1. 目的に応じて電子化する書類を洗い出す
  2. 書類の電子化に伴って業務フローの設計を見直す
  3. 自社に合った電子帳簿保存に対応したシステムを選定・導入する
  4. 電子化に伴う業務フローの変更を従業員に通知する

1. 目的に応じて電子化する書類を洗い出す

電子化する目的を定めて、電子化したい書類を洗い出しましょう。自社に合ったシステムを導入するために、必要な作業です。

たとえば決算関係の書類をメインに電子保存したい場合は、機密情報が多いため、セキュリティが強固なシステムが必要になるでしょう。

どの書類を電子化する必要があるか優先順位を決めると、導入すべきシステムがおのずとピックアップできます。

2. 書類の電子化に伴って業務フローの設計を見直す

書類の電子化に伴って、電子化に対応した業務を新たに考える必要があります。システムを導入後に、社内で混乱が起きないように業務フローの設計を見直しましょう。

電子化による社内ルールの変更や社員がシステムの操作方法を学ぶことも考慮して、業務フローの設計を修正するといいでしょう。

3. 自社に合った電子帳簿保存に対応したシステムを選定・導入する

自社に合った電子帳簿保存に対応した、システムを選定し導入しましょう。システムを選定・導入する際に注意するポイントは、下記のとおりです。

  • 電子帳簿保存法に対応しているか
  • 初期費用や使用人数に問題がないか
  • セキュリティ機能に問題がないか

注意点をおさえて、自社に合った製品を見つけましょう。

4. 電子化に伴う業務フローの変更を従業員に通知する

システムを導入したら、電子化業務フローの変更を従業員に通知しましょう。

従業員がいち早くシステムの操作に慣れるために、サポートする人員を確保し、万全な体制を整えておくといいでしょう。

電子帳簿保存法の要件を満たすシステムを導入しない場合の罰則

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猶予期間が切れる2024年1月1日までに、電子帳簿保存法の要件を満たすシステムを導入せず何も対応しなかった場合、罰則が生じます。

電子帳簿保存法は、故意でなくても違反すると大きなペナルティを受け、企業の信頼を損なうでしょう。万が一罰則が発生する場合は、下記のような罰則が発生するおそれがあります。

  • 青色申告の承認取り消し
  • 会社法による過料徴収
  • 追徴課税や推計課税

1. 青色申告の承認取り消し

ペナルティの1つめは、青色申告の承認取り消しです。承認が取り消された場合は、特別控除最大65万円を受けることができなくなります。欠損金を繰越すこともできず、リスクが大きいでしょう。

2021年に国税庁から発表された資料によると、万が一違反が発覚したとしても、すぐに承認取り消しになる訳ではないと書かれています。税務調査の結果によっては、承認取り消しにならないケースもあります。

参照:法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)|国税庁

2. 会社法による過料徴収

ペナルティの2つめは、会社法による過料徴収です。違反した場合は100万円以下の過料が発生するケースもあります。

過料が発生してしまうケースの一例として、帳簿や書類などが電子帳簿保存法に基づいて保存されていない場合が挙げられます。会社法の第976条にも記載されている内容であるため、法令に関する知識も最低限身に付けましょう。

3. 追徴課税や推計課税

ペナルティの3つめは、追徴課税や推計課税です。追徴課税は、本来納めるべき納税額の差額を支払うということを意味します。

推計課税は、税務調査に対して協力的ではない納税者に課されるものです。金額は税務調査の結果から推定されるため、企業の状況により異なります。

まとめ

電子帳簿保存法は、2024年1月1日から義務化がスタートします。対象書類やデータの保存要件を正しく理解し、対応できるようにしましょう。

義務化になるまでの猶予期間で、フローの最適化やシステム導入の検討など、自社の状況に合わせて対策を徹底しましょう。システム導入を支援するシステム開発会社の選定で、お困りの場合は『比較ビズ』に相談してみてはいかがでしょうか?

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電子帳簿保存法の対象企業に関してよくある質問

  • 電子帳簿保存法の対象外となる書類は?

    手書きで作成された請求書や仕訳帳などは、電子帳簿保存法の対象外として扱われます。すべての書類が対象となるイメージが強いですが、元々手書きで作成された主要簿や補助簿は対象になりません。

    スキャナ保存をおこなっても問題ない書類として該当しますが、原本を必ず保管しておくことを徹底しましょう。紛失すると、書類の真実性が失われます。

  • 手書きで作成した書類をスキャナ保存したら電子帳簿保存法の対象になる?

    手書きで作成した書類をスキャナ保存した場合は、電子帳簿保存法の対象にはなりません。すべての書類が対象になるわけではない点に注意しましょう。

    スキャナ保存は、紙でやり取りしている帳簿や、企業に提出する書類の写しなどが対象です。解像度は200dpi以上であることが条件であるため、情報が鮮明に読み取れる状態を保ちましょう。解像度が200dpi以下だと、正しい方法で保存していないとみなされます。

  • 電子帳簿保存法の改正によるその他の変更点は?

    改正により電子帳簿等保存・スキャナ保存を、税務署長から事前承認を得る必要が無くなりました。スキャナ保存をする際に使用するタイムスタンプも、付与期間は最長2カ月になり、要件が緩和されました。

    改正により各種情報の検索要件も緩和され、必要な情報をピックアップしやすくなります。改正前よりも、電子帳簿保存を導入しやすくなりました。

  • 帳簿を電子データで保存していない場合は?

    法に従い電子データを保存できていない場合は、書類保存要件を満たしていないとみなされます。申告内容は、税務調査で詳しく確認されますが、場合によっては青色申告の承認取消をはじめとするペナルティが発生します。

    電子データで保存ができていなかったとしても、紙で正しい内容が確認できる場合は、ペナルティが発生しない可能性もあります。すぐに青色申告が取り消されることはないため、焦らずに対処しましょう。

比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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