確定申告の繰越控除とは?失敗しない書類の書き方も解説!【税額シミュレーション有】

竹中啓倫税理士事務所
監修者
竹中啓倫税理士事務所 税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
最終更新日:2023年10月02日
確定申告の繰越控除とは?失敗しない書類の書き方も解説!【税額シミュレーション有】
この記事で解決できるお悩み
  • 損失の繰越控除とはいったい何?
  • 損失の繰越控除を受けるための書類の書き方とは?
  • 繰越控除を受けられない所得はあるの?

「確定申告の繰越控除とはなんだろう。メリットがあるのだろうか。」
あなたは今、そのようなお悩みを抱えていませんか?

実は、確定申告の繰越控除を行うと、所得の純損失を3年間繰り越すことができるので、大幅な節税につながります。損失額が大きければ大きいほど享受できるメリットが大きいのも事実です。

当記事では、確定申告でが繰越控除について解説します。さらに申告書の書き方や3年間の節税のシュミレーションについても解説するので、今期が赤字決算になった個人事業主はぜひ参考にしてください。

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確定申告の繰越控除とは?

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参照元:繰越控除とは?|わかりやすく宅建・宅地建物取引士の解説

確定申告における繰越控除とは、もしその年の所得が赤字になってしまった場合に、その赤字を最大3年間繰り越せる制度です。

損失の繰越控除を利用すると、大きな損失があった場合でも、その後最大3年間にわたって利益を損失と相殺して所得税額や法人税額を減額できるというメリットがあります。

個人事業主の方で業績が振るわなかった場合や、ビジネスパーソンの方で株式投資やFX投資がうまくいかなかった場合に活用できるでしょう。繰越控除は、青色申告を行っている人にだけ適用される制度で、白色申告では基本的には利用できません。

損失の繰越控除が認められるのは

損失の繰越控除が認められるのは、事業所得・不動産所得・山林所得・譲渡所得から生じる損失のみに限られます。

確定申告で繰越控除を行なった場合の3年間の税額シュミレーション

損失の繰越控除の計算はそれほど難しくないので、確定申告の際には自分が繰越控除の対象になっているかを確認しましょう。

とくに、大きな損失があった翌年、2年目の確定申告では、どの程度控除されるのかをしっかり計算する必要があります。ここでは、繰越控除を行なった場合の3年間の税額シュミレーションで解説を行なっていきます。

1年目

たとえば、A会社では、利益と損失や経費などを損益通算した結果、200万円の赤字だったとします。当然、利益が上がっていないので、その年に所得税は課税されません。

  • (200万円の赤字)-(0円の黒字)=-200万円
  • 所得税は課税されない

2年目

200万円の赤字を計上した後の2年目には業績が回復し、損益通算の結果が100万円の黒字だったとしましょう。通常は利益である100万円が課税対象となるはずですが、前年に200万円の赤字が計上されているので、100万円の利益は相殺されます。

  • (前年200万円の赤字)-(今年の100万円の黒字)=-100万円
  • 所得税は課税されない

3年目

3年目には引き続き業績が上向き、300万円の利益があったとします。まだ相殺できていない100万円分の赤字と300万円の利益を相殺して、200万円が課税対象です。

  • (前年100万円の赤字)-(今年の300万円の黒字)=200万円
  • 300万円全体ではなく、相殺した200万円が課税対象

今までの説明を以下の表に簡単にまとめたのでご覧ください。

  赤字 黒字 課税対象
1年目 200万円 無し
2年目 200万円
(前年の分)
100万円 無し
(前年の赤字ー今年の黒字で相殺)
3年目 100万円
(前年の残りの分)
300万円 200万円
(今年の黒字で相殺)
3年目以降

すでに3年前の大きな損失がすべて利益と相殺されているので、新たな損失がない限りは利益全体に所得税もしくは法人税が課税されることになります。

こうして損失の繰越控除を受けることにより、大きな損失のあった翌年は所得税もしくは法人税がゼロ、2年目も課税対象となる利益が圧縮されて所得税や法人税が減額されました。青色申告する方は、必ず損失の繰越控除が受けられないか確かめる必要があるでしょう。

個人事業主には有利

個人事業主の場合は、給料という概念がないので、赤字になってしまうとかなり苦しい経営状況です。特に事業を開始する1年目など、売上が発生しない年には純損失の繰越控除を使うと有利になります。

確定申告時の繰越控除には確定申告書第四表が必要

確定申告で損失の繰越控除を受けるためには、確定申告書第一表、第二表の他に、確定申告書第四表(一)と確定申告書第四表(二)を作成して提出する必要があります。

損失の繰越控除のための第四表(一)(二)は、1年目と2年目とでは記入する場所が異なるので注意が必要です。ここでは、2年目の確定申告書第四表の書き方を見ていきましょう。

第四表(一)の書き方

確定申告で繰越控除を受けるのが2年目の場合、第四表(二)への記載が必要です。損失が発生した年に第四表(一)を作成していないと、確定申告で繰越控除を受けることができません。

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【図1】より、損失が発生した年には、第四表(一)の「1損失額又は所得金額」の部分にある64番の欄に損失額を記載しましょう。赤字だったことを示すために、金額の前に「△」を付けます。例えば100万円の赤字だった場合には「△1,000,000」です。

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損失が発生した年には、【図2】より「2損益の通算」の部分の「A経常所得」にある64番の欄にも、先ほどと同様に損失額を記載します。

通算前、第1次通算後、第2次通算後、第3次通算後、損失額又は所得全額という欄がありますが、すべて同額の損失額を記入しましょう。先ほどの例でいえば、すべて「△1,000,000」となります。

【図3】より最後の部分にある78番の欄「損失額又は所得全額の合計額」も同様の損失額です。

参照元:青色申告者が損失申告で赤字(純損失)を3年間繰越控除するには?

第四表(二)の書き方

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参照元:青色申告者が損失申告で赤字(純損失)を3年間繰越控除するには?

第四表(二)は損失があった年にも作成しており、【図4】より「3 翌年以後に繰り越す損失額」にある「青色申告者の損失の金額」にある79番の欄に損失額として「△1,000,000」を記入して提出しています。

2年目には、この第四表(二)を使って損失の繰越控除を利用しましょう。注目すべきなのは「4 繰越損失を差し引く計算」にあるC欄「純損失」の中の「山林以外の所得の損失」です。ここには以下の3つの数字を記載する必要があります。

  • 【図5】より「A前年分までに引ききれなかった損失額」
  • 【図6】より「B本年分で差し引く損失額」
  • 【図7】より「C翌年分以後に繰り越して差し引かれる損失額」

【図5】より「A前年分までに引ききれなかった損失額」

損失の繰越控除を受ける2年目の場合、「A前年分までに引ききれなかった損失額」は損失全額のことです。前年の第四表(二)の79番の欄に記載されている損失額を記入しましょう。

先ほどの例でいえば「1,000,000」です。ここでは損失額のことであることが分かっているのでマイナスを示す「△」は必要ありません。

【図6】より「B本年分で差し引く損失額」

続いて「B本年分で差し引く損失額」には、2年目に利益と相殺できる損失額を記入します。先ほどの例では2年目の黒字額が800万円だったので、差し引く損失額の欄に「800,000」を記載しましょう。

【図7】より「C翌年分以後に繰り越して差し引かれる損失額」

最後に「C翌年分以後に繰り越して差し引かれる損失額」が必要です。100万円の赤字のうち80万円が相殺されたものの、まだ100万円の損失が残っています。したがって、「C翌年分以後に繰り越して差し引かれる損失額」の欄に「200,000」と記載しましょう。

さらに翌年には、同様の方法で第四表(二)を作成して損失の繰越控除を受けられます。

確定申告で損失申告が利用できない所得の3つの種類

確定申告で損失申告が利用できない所得の3つの種類

確定申告では、損失の繰越控除を受けることで2年目以降も所得税額や法人税額を減らすことができますが、損失や赤字であればどんなものでも損失申告できるわけではありません。

ここでは、損失申告できない3つの所得の種類をご紹介しましょう。

雑所得

雑所得とは、他の分類に該当しない所得のことであり、多種多様な所得が含まれます。近年増加傾向にある仮想通貨による利益や損失も雑所得です。

雑所得は基本的に、他の所得との損益通算が認められていません。雑所得内での損益通算はできるものの、他の損失や利益との相殺ができないのです。

たとえば、仮想通貨で大きな損失を被ったからといって、他の所得の利益を圧縮して節税することはできません。雑所得の種類によっては青色申告のメリットが十分に受けられない恐れがあるのです。

雑所得であるものの損益通算や損失の繰越控除が利用できる場合

FXや株式投資での損失は、損益通算や損失の繰越控除が利用できます。雑所得の中にもさまざまなルールがあるので、損失の繰越控除を受けられるかどうか細かく確認しましょう。

利子所得や配当所得

銀行預金や株式の購入などによって得られる利子所得や配当所得も、損失申告や損益通算が認められません。利子所得や配当所得は、利子や配当は受け取ることはあっても支払うことはないため、マイナスになることがないと考えられるからです。

給与所得や退職所得

利子所得や配当所得と同様に、給与所得や退職所得も損失申告ができません。これらの所得も、プラスになることはあってもマイナスにはならないので、損益通算の対象外となります。

確定申告の繰越控除でよくある質問

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ここから、確定申告の繰越控除でよくある質問3つを紹介します。

  • 確定申告の繰越控除は義務?
  • 白色申告の場合でも繰越控除は可能?
  • 繰越控除を遅れて申請した場合は?

確定申告の繰越控除は義務?

確定申告の繰越控除は義務ではありませんが、繰越控除を行なっていたほうがお得になるケースがあります。損失を計上した年の確定申告で繰越申請をする必要があります。

白色申告の場合でも繰越控除は可能?

白白申告でも、繰越控除をすることは可能ですが、下記の対象のみに限定されています。

変動所得の損失 作家の印税など、年による変動が著しい所得に対応する損失
被害事業用資産の損失 事業用資産につき、災害によって損害を受けた場合の損失

白色申告ではかなり対象が限定されているので、繰越控除は青色申告でするように検討してみましょう。

繰越控除を遅れて申請した場合は?

現在では、期限後に申請しても、純損失の繰越控除が可能になりました。

黒字の場合に純損益の繰越控除を受けるために「それ以前の年度で連続して確定申告を提出している」ことが必要です。

青色申告特別控除の65万円は、期限後に申請しても適用外になってしまうので注意するようにしましょう。

まとめ:確定申告の損失の繰越控除を使って賢く節税しよう

今回は、確定申告の繰越控除について解説しました。

  • 確定申告における繰越控除とは、赤字を最大3年間繰り越せる制度
  • 損失の繰越控除が認められるのは、事業所得・不動産所得・山林所得・譲渡所得から生じる損失のみ
  • 確定申告時の繰越控除には確定申告書第四表(一)(二)が必要
  • 雑所得、利子所得、配当所得、給与所得、退職所得では損失申告が利用できない

確定申告の際には損失の繰越控除を利用することで、翌年からの所得税額や法人税額を減額できる可能性があります。とくに2年目以降は、確定申告の際に第四表(一)(二)を正確に記載する必要があるので、よく準備して間違えないように作成しましょう。

損失と2年目以降の利益を相殺できるので、たとえ赤字であったとしてもきちんと毎年確定申告を行うことが非常に重要なのです。

監修者のコメント
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

確定申告において、損失申告はレアケースなのかもしれませんが、昨今、コロナウィルス感染拡大による影響が大きく出ています。政府からの補助金による補填も十分でないケースも見受けられます。そこで、今年の税金だけでなく翌年以降の減税に役立つ場合もありますので、覚えておいてください。

雑所得は、雑所得以外との損益通算もできず、繰越もできませんが、実務的によく出てくるケースとして、上場株式の売却損失が発生しているケースがあります。特に特定口座を利用している場合、通常確定申告を行う必要はありません。

しかし、損失が発生している場合、翌年以降に繰り越しができ、翌年以降の売却益と相殺することができる場合がありますので、確定申告を忘れないようにしましょう。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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