確定申告で交通費は経費に計上できる?会社員と個人事業主の処理方法の違いを解説!

竹中啓倫税理士事務所
監修者
竹中啓倫税理士事務所 税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫
最終更新日:2023年12月07日
確定申告で交通費は経費に計上できる?会社員と個人事業主の処理方法の違いを解説!
この記事で解決できるお悩み
  • 確定申告で交通費は経費にできる?
  • 会社員や個人事業主が交通費を経費にする方法は?
  • 確定申告で交通費を経費にする際の注意点は?

会社員や個人事業主であれば「確定申告で交通費は経費にできるの?」「領収書が出なかった交通費はどうすればいい?」などの疑問を持つことがあるでしょう。従業員の出張費用や通勤費用が高額になる場合、経費に計上して節税したいと考えるのは自然なことです。

この記事では確定申告で交通費を経費に計上する方法や注意点について、個人事業主、会社員それぞれの立場でまとめました。交通費の取り扱いについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

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個人事業主は確定申告で交通費を経費計上できる

個人事業主_パソコン

個人事業主は、確定申告において使用した交通費を経費に計上できます。所得は収入から経費を差し引いたものであるため、交通費を漏れなく計上することで、所得や所得税を減らすことが可能です。

確定申告で経費にできる交通費とそうでないものがあるため、個人事業主は申告時に注意しなければなりません。

確定申告で経費にできる交通費の具体例

確定申告で経費にできる交通費は、主に以下の8つです。

  • 電車代
  • バス代
  • 新幹線代
  • 特急料金
  • 航空券代
  • 高速道路や有料道路の利用料金
  • 燃料代
  • 駐車料金

重要な点は、事業に関係した交通費である点です。取引先への訪問、営業活動した際のガソリン代、出張の際の電車代などが該当します。確定申告では、これらの交通費を「旅費交通費」の勘定科目で計上するのが一般的です。

確定申告で経費にできない交通費の具体例

一見すると事業に関係しているものの、経費にできない交通費も存在します。たとえば以下の費用は、旅費交通費として経費計上できません。

  • 5泊以上の社員旅行の交通費
  • 個人事業主の出張手当

社員旅行の費用は福利厚生費として認められる可能性がありますが、旅行期間が5泊以上の場合には経費になりません。個人事業主の出張では、交通費の実費のみ経費計上できます。出張手当に食事や宿泊の費用が含まれている場合、経費として認められないでしょう。

パートやアルバイトも交通費を確定申告できる

ウーバー 自転車

個人事業主は確定申告で交通費を経費にできますが、パートやアルバイトであっても同様です。ただし、雇用形態によって交通費の取り扱いが変わる点に注意しましょう。

出来高制の場合

パートやアルバイトが請負契約を結んでおり、出来高制で働いている場合、交通費を経費として計上できます。たとえば、フリーランスのウェブライターやデザイナーが取引先と打ち合わせするために使った交通費が該当するでしょう。

出来高制のパートやアルバイトでは、報酬が成果物に対するものであり固定給ではないため、給与所得控除を受けられません。確定申告において交通費を経費として申告できるものの、駐車料金の領収書や電車の利用区間を証明する書類をそろえておくことが重要です。

時給制の場合

パートやアルバイトが時給制で働いている場合、基本的に交通費を経費として計上できません。雇用契約を結んでいる会社側が交通費を支払うため、給与所得控除の対象になります。

会社から交通費が支給されていないケースでは、実費を請求できる可能性があります。2021年4月に中小企業に対しても適用された「パートタイム・有期雇用労働法」では、同一労働同一賃金の原則により通勤手当や出張旅費が支給されると定められているためです。

会社員が確定申告で交通費を経費にする条件

ビジネス_就活生

サラリーマンの場合、交通費は会社によって支給されるため、個人による確定申告の必要はありません。支給される交通費は所得とは見なされず、所得税の課税対象外となります。

ただし、会社で精算されていない交通費の負担がある場合、所得からの控除が受けられる可能性があります。この制度は「特定支出控除」と呼ばれ、会社員の方でも所得税の節税ができる可能性がある手法です。

特定支出控除の条件

特定支出控除の条件は以下の2つです。

  1. 特定支出として認められる経費の合計が給与所得控除の2分の1を超える
  2. 会社が発行する給与所得者の特定支出の証明書を提出する

国税庁のホームページによると、給与所得控除は下の表で定められています。

収入金額 給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から 1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から 3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

たとえば、収入が500万円の場合の給与所得控除は、500万円×20%+440,000円=1,440,000円です。交通費を含む特定支出1,440,000円÷2=720,000円を超える場合、特定支出控除が適用されます。

特定支出控除として認められる交通費の具体例

特定支出控除として認められる交通費の一部は以下のとおりです。

  • 電車代
  • バス代
  • 航空券代
  • ガソリン代
  • コインパーキング代
  • 高速道路の料金

長期の出張や遠方への営業で宿泊した場合には、宿泊費も経費にできる可能性が高いです。勘定科目の旅費交通費には旅費も含まれています。ただし、宿泊費に含まれない食費や観光の費用は経費にできない点に注意しましょう。

特定支出控除を受けるための必要書類

特定支出控除を受けるための必要書類は以下の4つです。

  • 確定申告書
  • 特定支出に関する明細書
  • 領収書
  • 給与所得者の特定支出に関する証明書

特定支出に関する明細書には、通勤経路や支出の内容、支払先、支出のあった年月日、金額などを記入しなければなりません。会社が発行する給与所得者の特定支出に関する証明書も制度の利用に必須です。証明書がないと、確定申告をしても交通費を経費にできないため注意しましょう。

特定支出に関する明細書の書き方

特定支出控除を利用する際「特定支出に関する明細書」の記入が必要です。特定支出に関する明細書を使って、控除額が算出できます。

特定支出に関する明細書では、主に一面と三面への記入が重要です。三面では保管しておいた領収書を参考に「特定支出の区分や支払先、内容、支払った年月日など」を記入しましょう。特定支出の区分には番号を書く必要があり、一面に記載があります。

一面では、経費ごとの特定支出をまとめて記載します。交通費を含めた特定支出の合計と、源泉徴収票の支払い金額から給与所得控除や特定支出控除の金額です。

特定支出控除の条件や必要書類をくわしく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

確定申告で交通費を経費にする際の注意点

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確定申告で交通費を経費にする際、以下の4つの点に注意しましょう。

  1. 領収書が出ない場合の処理方法を覚えておく
  2. ICカードへのチャージだけでは経費として認められない
  3. 経費にできる交通費に上限はない
  4. 日雇いも確定申告で交通費を経費にできる

確定申告で経費を漏れなく計上し、無用なトラブルを避けるための知識を身に着けておくことが重要です。

1. 領収書が出ない場合の処理方法を覚えておく

公共交通機関を利用した場合、領収書が発行されないこともあるため、経費の処理方法を覚えておくことは重要です。確定申告に領収書の添付は求められていないものの、税務調査で尋ねられることがあります。

領収書が発行されないケースでは、出金伝票を使用しましょう。出金伝票を使う場合、以下の情報の記載が必要です。

  • 日付
  • 支払先情報
  • 勘定科目
  • 摘要
  • 金額
  • 起票者

とくに摘要はできるだけ細かく記載し、いつ、誰が、何のために、どの区間で交通費を使ったのか記載しておくべきです。

2. ICカードへのチャージだけでは経費として認められない

公共交通機関の利用でICカードを利用する場合、チャージだけでは経費として認められません。経費として認められるのは、ICカードを使って交通費を支払ったときです。

ICカードにチャージしたとき、利用したときは次のように仕訳しましょう。

借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
預け金10,000円現金10,000円ICカードチャージ料
借方勘定科目借方金額貸方勘定科目貸方金額摘要
旅費交通費1,000円預け金1,000円電車代(○○駅〜××駅)

3. 経費にできる交通費に上限はない

経費にできる交通費に上限額はありません。事業で必要な経費であると証明できれば、すべて経費に計上できます。

ただし、あまりに多額の交通費を経費にすることは避けるのが賢明です。税務署は売上金額や交通費を細かくチェックしています。たとえば売上が1,000万円の企業が、交通費を200万円計上している場合には、水増し請求しているのではないかと疑われるおそれがあるでしょう。

4. 日雇いも確定申告で交通費を経費にできる

通勤手当を含んで時給や日給が支払われる日雇いの場合であっても「通勤交通費証明書」を準備することで確定申告で交通費を経費計上できます。交通費証明書がない場合、交通費が給与に含まれて支給されるため、所得税の課税対象になるでしょう。

交通費に所得税が課税されることを避けるため、会社に「通勤交通費証明書」の発行を依頼し、自分で確定申告を行うことが重要です。確定申告で交通費を経費計上することで、通勤交通費に対する所得税の還付を受けられます。

まとめ

確定申告では、事業に関連する交通費は経費に計上できます。個人事業主はもちろん、パートやアルバイト、ケースによっては会社員も交通費を経費にでき、所得税の節税が可能です。多額の交通費を支払っている方は、確定申告で経費に含めることで、効果的に節税しましょう。

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監修者のコメント
竹中啓倫税理士事務所
税理士・米国税理士・認定心理士 竹中啓倫

岐阜県出身。上場会社の経理に勤務する傍ら、竹中啓倫税理士事務所の代表を務める。M&Aなどの事業再編を得意とし、セミナーや研修会講師にも数多くあたるほか、医療分野にも造詣が深く、自ら心理カウンセラーとして、心の悩みにも答えている。税理士会の会務では、名古屋税理士協同組合理事を務める。

今回の記事で最も注目して欲しい点は、「特定支出控除」になります。業務にかかる支払いが多い場合に控除できる制度で、特に平成24年度、平成28年度の二回の改正を経て、利用しやすい制度になっておりますので、ご存じの方も多いかもしれません。

特に、職務の遂行に直接必要な旅費等で通常必要と認められるもの(帰宅旅費等)がメリットが大きいといえますので。通勤費に自己負担があるケースでは、この制度を使って税金を減らす可能性があります。「給与所得控除額の2分の1を超える部分」に限られますので、人によって控除額は変動があります。

これ以外にも、勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)などが、「特定支出控除」と認められますので、ご検討ください。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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