山林所得に確定申告は必要?山林所得にかかる税金の計算や節税方法を解説!
- 山林所得に確定申告は必須なのか?
- 税金の計算方法はどうすればいいのか?
- 山林所得に使える控除や経費はある?
「山林所得の確定申告は必要?正しい税金の計算方法が分からない…」という方必見!
この記事では山林所得がある方に向けて、確定申告の必要性や税金の計算方法、控除のありなしについて解説。最後まで読めば、山林所得の複雑な税金の計算方法をわかりやすく、かつ正しく確定申告を進めるためのポイントが分かります。
山林所得に使える経費の種類や注意点なども紹介するので、今年確定申告を提出する方はぜひ参考にしてください。
山林所得に確定申告は必要なのか?
保有している山林に利益が出た場合は確定申告をおこなう必要があります。
確定申告が不要なのは、総収入額から必要経費と特別控除額(最高50万円)を引いて利益が出なかった場合です。
ただし山林所得が赤字の場合でも、他の事業所得で利益がある場合は確定申告をすることで損益通算ができます。山林所得は黒字になるまで時間がかかることが多いため、他の所得がある方は確定申告して節税に繋げましょう。
山林所得とは
山林所得とは、個人や法人で山林を所有しており、木を伐採して売却、または伐採せずに山ごと売却して得た収入のことです。ただし山林を立木のまま売却した場合、土地の部分は山林所得ではなく譲渡所得になります。
山林所得は長い期間をかけて木を育てるため、金銭的な負担や管理の手間が大きいです。税負担を軽減させるために、一般的な給与所得や不動産所得などと異なる分離課税が適用されています。
山林所得は保有期間により所得の種類が変わる
山林所得は、保有期間が5年以内か5年を超えるかで所得の種類が変わります。
ここからは、山林から得た利益が山林所得となるのか、または事業所得や雑所得になるのか確認していきましょう。
保有期間が5年以内の場合
山林の保有期間が5年以内で利益がある場合は、事業所得または雑所得に分類されます。
- 事業所得
事業で山林所得を得ている場合
- 雑所得
事業活動でない相続した山林を処分するために売却する際に得た利益
事業所得か雑所得で判断する際は、事業的規模かどうかを基準に決まります。継続的に伐採した木を売却する契約を結んでたり、不動産の建築するために伐採したりするケースは事業的規模と判断されます。
実務上50ヘクタール以上の山林を保有し、社会通念上事業と考えられる程度で事業を行っていれば、事業的規模と判断される可能性が高いです。
保有期間が5年を超えている場合
山林の保有期間が5年を超えている場合は、事業規模か否かに関わらず山林所得に分類されます。山林所得は5年を超える保有期間のみに適用されるのです。
山林所得の計算方法
山林所得は「総収入額ー必要経費ー特別控除額」で算出されます。それぞれの内訳は以下のとおり。
- 総収入額:山林の売却・木の伐採で得た収入すべて
- 必要経費:山林の管理費や伐採費・売買の際の仲介手数料など
- 特別控除額:最高50万円
税金は5分5乗方式で計算する
山林所得にかかる税金の計算方法は、他の所得を区別し計算する分離課税方式が使われます。山林から利益を出すまでは時間と手間がかかるため、税率を緩和する措置がとられています。
山林所得に発生する税金は以下のとおりです。
総収入金額ー経費ー特別控除額=課税山林所得金額
( 課税山林所得金額 ×5分の1× 税率 )× 5=支払う所得税額
5分5乗方式で使う税率と控除額は山林所得の金額で変化するため、以下の表を参考にしてください。
課税山林所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 〜 9,749,000円 | 5% | 0円 |
9,750,000円 〜 16,499,000円 | 10% | 487,500円 |
16,500,000円 〜 34,749,000円 | 20% | 2,137,500円 |
34,750,000円 〜 44,999,000円 | 23% | 3,180,000円 |
45,000,000円 〜 89,999,000円 | 33% | 7,680,000円 |
90,000,000円 〜 199,999,000円 | 40% | 13,980,000円 |
200,000,000円超 | 45% | 23,980,000円 |
5分5乗方式を使うことで、通常の累進課税式と比較して納税金額は半分程度下がるようになっています。5分5乗方式は、収入を得るための労力を考慮されている計算式であり、納税者の負担を軽減させてくれるのです。
山林所得で使える税金控除とは
山林所得に適用される税金控除は、概算経費控除と森林計画特別控除が用意されています。山林所得を減らし、所得税額の負担を軽減させるために有効です。
- 概算経費控除
- 森林計画特別控除
概算経費控除
概算経費控除とは、山林の所有期間が15年を超えている場合(15年前の12月31日以前から)にのみ適用される控除です。山林事業で得た金額から譲渡費用を差し引いた金額の50%に加え、かつ譲渡費用を経費にできる仕組みです。
例として、山林事業で得た金額が1,000万円、必要経費が600万円の場合の概算経費控除と最終的な山林所得は以下のように算出されます。
- 概算経費控除:(1,000万円ー600万円)×50%=200万円
- 山林所得:1,000万円ー600万円ー200万円(概算経費控除額)=200万円
山林事業で得た金額は1,000万円でしたが、概算経費控除が適用されると山林所得は200万円まで圧縮され所得税の負担が小さくなります。
2008年12月1日〜2023年1月31日まで保有していた場合、実際の保有期間は14年1カ月です。ただし15年前(2008年)の12月31日以前であるため、控除は適用されます。
森林計画特別控除
森林計画特別控除とは、森林の保護や効率化の一環として山林の一部を売却するケースに適用される控除です。森林計画とは、森林の所有者や経営の委託を受けた者が森林施業と保護について作成する計画のことで、5年1期の間隔で立てられます。
原則として総収入額から必要経費を引いた山林所得の20%が控除されます。収入額が2,000万円を超えている場合は、超えている部分の10%も加えた控除が適用されます。
総収入額3,500万円の場合、2,000万円の20%(400万円)と1,500万円の10%(150万円)を足した550万円が控除に使えます。
山林所得の確定申告で認められる経費
山林所得の確定申告は、経費を計上することで節税対策ができます。必要経費を正しく計上することで、山林所得の金額を圧縮できるため納税負担を軽減させることが可能です。
ここからは山林所得の確定申告で認められる4つの経費を紹介します。
- 山林維持費
- 木材伐採費・搬出費
- 仲介手数料
- 機械の減価償却費
1. 山林維持費
山林を維持するための支出は山林維持費として計上しましょう。
木を育てるための造林や育林の費用、山林を管理する際はチェーンソーなどの道具の購入費(10万円未満)が含まれます。またこれらを山林の所在地を管理している森林組合に施業費用を支払って依頼することも含みます。
木を伐採した後に行う植林にかかる費用も山林維持費、または植林費で計上可能です。
2. 木材伐採費・搬出費
木材伐採費は、木を伐採する際の支出や伐採した木の処理にかかる支出を含みます。木材伐採費は1本あたり8,000円からが相場で、伐採する本数により金額が変動し大きな金額になる可能性が高いです。
また伐採した木を別施設に搬出した際の搬出費も経費に計上可能です。そのままの長い木材を搬出する際は高額な費用が発生するため、必ず経費として計上しましょう。
3. 仲介手数料
山林を売買した際に支払った仲介手数料も経費に計上可能です。一般的に山林は不動産会社や仲介業者を介して売買契約を結びます。
山林の売買は宅地建物取引業法の規制がなく仲介手数料の上限はありません。1つの基準として宅地建物取引業法に見合った扱いをするため、仲介手数料は以下の相場を参考にしましょう。
売買金額 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 5% |
200万円超400万円以下 | 4%+2万円 |
400万円超 | 3%+6万円 |
4. 機械の減価償却費
耐用年数が1年以上、かつ取得価額が10万円以上の機械の購入費用は、減価償却費として毎年決められた金額を経費に計上可能です。
耐用年数が4年のチェーンソーを12万円で購入した場合、4年にわたって毎年3万円ずつ経費を計上できます。
山林所得の確定申告手順
山林所得は、ほとんどの場合で確定申告が必要です。山林所得の確定申告は、通常の手順と異なる点があるためスムーズに進められるよう早めに準備を始めていきましょう。
- 必要書類を準備する
- 必要書類に記入する
- 確定申告書を提出する
1. 必要書類を準備する
山林所得の確定申告では全ての所得に対応している確定申告書Bを使います。さらに、山林所得の所得税は5分5乗課税方式で計算するため、分離課税用の申告書第三表や山林所得収支内訳書も準備しましょう。
2. 必要書類に記入する
必要書類を準備したあとは、それらに記入していきます。記入する項目が多いですが、山林所得の申告の仕方は国税庁HPで確認できるため参考にしてください。
3. 確定申告書を提出する
確定申告は毎年2月16日〜3月15日の間におこなう必要があります。提出期限を過ぎての申告は、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されるため注意しましょう。
提出方法は主に、税務署に直接提出する方法や郵送、電子申告e-Taxの3種類があります。ご自身のやりやすい方法で、日時に余裕をもって提出を心がけましょう。
山林所得の確定申告で節税に繋がるポイント
ここからは、山林所得の確定申告で利用できる節税方法を3つ紹介します。
- 控除を活用する
- 損益通算で利益を圧縮する
- 経費を可能な限り計上する
控除を活用する
山林所得は、概算経費控除や森林計画特別控除を活用して納税額を小さくすることが可能です。これらの控除適用の条件に満たない場合は、青色申告を提出し最大65万円の青色申告特別控除を受けることで節税へ繋がります。
損益通算で利益を圧縮する
山林所得の他にも収入源がある場合、お互いの黒字と他の所得の赤字を相殺して、全体としての所得額を減らせます。
山林所得を損益通算できる所得の種類は、以下の4つに限られているため注意しましょう。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 退職所得
経費を可能な限り計上する
全ての必要経費を正しく計上することで、所得額が小さくなり所得税額の負担が軽減します。事業に関した支出であると証明するため、何に使った支出かを領収書やレシートにメモ書きしておくと後から見返したときに一目でわかります。
山林所得を確定申告する際の注意点
山林所得は一般的な確定申告の手順と比べて複雑な点が多いです。特に初めての山林所得の確定申告は混乱することも多いでしょう。安心して確定申告を完結できるように、以下2つの注意点を解説します。
- 山林所得にも消費税がかかる
- 税理士への依頼料が高額になる
山林所得にも消費税がかかる
山林所得は、保有している山林が事業用資産か生活用資産かで消費税が発生します。継続した製品の販売やサービスの提供料金を得ている場合、事業用資産とされ課税対象となります。
個人用のキャンプ場所やサバイバルゲーム場所として所有している際は、生活資産に該当するため消費税の支払い対象になりません。また個人事業で課税対象の収入が1,000万円以下の場合も消費税の申告は必要ありません。
税理士への依頼料が高額になる
山林所得は通常の確定申告と異なる部分が多いため、業務を代行できる税理士が少なく代行料金が高い傾向があります。税理士事務所によりますが、山林所得の確定申告の依頼料が15万円以上になる場合もあります。
確定申告の作業負担を省けるのは大きなメリットですが、依頼料とのバランスを見ながら判断しましょう。
まとめ
山林所得の確定申告が不要なパターンは、総収入額から必要経費と特別控除額を引いて利益が出ていない場合です。山林所得を少しでも得ている方は、確定申告が必要です。
山林所得は利益を得るまでの時間や手間がかかるため、税金の負担を軽減させてくれる5分5乗方式という特殊な計算方法で税金額を算出します。
税金の計算方法や控除の種類など、他の所得と比べて複雑な点が多いため、正確性を求めるなら税理士に確定申告を依頼することを検討しましょう。
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