青色申告を税理士に依頼する費用相場は?顧問契約を検討するタイミングも紹介!
- 青色申告は税理士に依頼すべき?自分でやるべき?
- 青色申告を税理士に依頼すると費用はいくらくらいかかる?
- 青色申告を税理士に依頼するメリットは?デメリットはある?
個人事業主の方であれば年中行事ともいえる確定申告。しかし、メリットの大きさに惹かれ「青色申告」の承認申請はしたものの、仕訳・記帳を怠りがちで毎年慌てている、はじめての青色申告で不安、といった個人事業主は少なくないはずです。そんなときに思い浮かぶのは、税金・税務のスペシャリスト「税理士」に青色申告を依頼したい!ではないでしょうか?
とはいえ、税理士報酬の費用相場やメリットがわからなければ、依頼するのを躊躇してしまいがちなのも事実。そこで本記事では、青色申告を税理士に依頼した場合の費用相場やメリットを解説!顧問契約締結がおすすめなのは、どのような個人事業主なのか?契約を検討すべきタイミングも含めて紹介していきます。
青色申告のメリットをおさらい
青色申告とは、納税地を所轄する税務署長の承認を受けた不動産所得者、山林所得者、または事業所得者が確定申告する際の申告制度のこと。会社が確定申告を代行してくれる会社員には無縁の制度にも思えますが、年収2,000万円を超える方、一定以上の副業収入のあった方、複数の企業から収入を得ている方は、会社員であっても確定申告の対象になります。
確定申告には承認申請の必要ない白色申告もありますが、多くの個人事業主が青色申告承認申請する理由は、下記の4つのような青色申告ならではのメリットがあるからです。
- 最大65万円の青色申告特別控除
- 赤字を最大3年間繰り越せる
- 青色事業専従者給与が認められる
- 貸倒引当金を一括して損金計上できる
確定申告についての基礎をもっと詳しく知りたい方は、下記リンクをご覧ください。
65万円特別控除には「複式簿記」「e-Tax」が必要
メリットを享受するため「手続・申告がやや煩雑」になるのも青色申告の特徴。特に、青色申告最大のメリットである、65万円特別控除を得るためには「複式簿記での帳簿作成」と「e-Taxによる電子申告」または「電子帳簿保存」という条件を満たさなければなりません。
なかでも、多くの個人事業主が負担に感じるのは、複式簿記での帳簿作成でしょう。青色申告書には貸借対照表、損益計算書も添付する必要があり、関連する帳簿類は最低7年間の保存義務もあります。
会計ソフトを活用する個人事業主なら青色申告は簡単
ただし、近年は優秀な会計ソフトが多数存在しており、気軽に利用できるクラウドサービスも登場しています。これらを利用して仕訳・記帳をキチンと習慣づけておけば、青色申告書の作成までほぼ自動化してくれるでしょう。
難しく感じる「e-Tax」も実は意外に簡単。2022年現在では、従来必要だったICカードリーダーも不要になり、マイナンバーカードのない方でもe-Taxへの申し込みが可能です。「確定申告書等作成コーナー」を利用した確定申告書の作成から税金納付までをオンラインで完結でき、還付もスピーディーに実行されます。
税理士に青色申告だけ依頼できる?
それほど難しくなくても、習慣づけるのが簡単ではないのも「仕訳・記帳」の特徴。事業規模が大きくなくても、ビジネスモデルによっては時間を取られてしまいますし、正しく仕訳されているのかと不安を感じる方もいるでしょう。特に、ビジネスが順調な成長軌道に乗っている方であれば、時間を削減するためにも税理士に申告代行を依頼したいですよね。
税理士とは「スポット契約」「顧問契約」できる
もちろん、税金・税務のスペシャリストである税理士には、さまざまな形での申告・手続代行を依頼可能。青色申告関連の代行業務を「スポット契約」で依頼するのも、継続的な関係性を築ける「顧問契約」を依頼するのも可能です。まだまだ事業規模がそれほど大きくない個人事業主の場合、青色申告だけをスポットで依頼するケースがほとんどです。
確定申告書の作成だけは請け負わない税理士も
ただし、近年の傾向として「確定申告書の作成だけ」という依頼は請け負わない税理士が増えているのも事実。税理士への「青色申告スポット契約」は、仕訳・記帳も含めた青色申告書の作成・申告が基本だと考えておくべきでしょう。
青色申告は事業主自身でもできる
これは、青色申告書を作成するには「出来上がった帳簿の精査が必要」という考えを持つ税理士が大多数だからです。実際、会計ソフトなどを利用して仕訳・記帳できているのであれば、青色申告書の作成は難しくありません。わざわざ税理士報酬を支払ってまで、青色申告書のみの作成を依頼する必要はないのです。
青色申告を税理士に依頼した場合の費用相場
それでは、仕訳・記帳も含めて税理士に依頼した場合、費用相場はどのくらいでしょうか。税理士報酬が自由化された現在では、それぞれの報酬の考え方も費用相場もさまざまです。ただし、撤廃された税理士報酬規程を踏襲する形で費用が定められるケースも少なくありません。以下からは、一般的だと思われる費用相場を紹介していきましょう。
仕訳込みの青色申告代行は10万円程度から
税理士報酬は、年間売上に応じて定められているのが一般的ですが、仕訳込みの青色申告代行の場合でもその法則が当てはまります。
これは、年商に応じて仕訳数が増える傾向にあること、記帳が複雑になりがちな傾向にあることが要因。500万円未満の個人事業主であれば、税理士に依頼した場合の費用相場は約10万円程度から、と考えておけば間違いありません。下記に早見表を用意したので、ご覧ください。
年間売上 | 税理士報酬の費用相場目安 |
---|---|
500万円未満 | 10万円程度 |
500万円〜1,000万円未満 | 15万円程度 |
1,000万円〜3,000万円未満 | 20万円程度 |
また、少数派ではありますが、一部、青色申告書のみの作成を請け負ってくれる税理士もいます。この場合の費用相場は約3〜5万円程度ですが、すでに帳簿の作成が済んでいる方であれば、青色申告書の作成は自身で行うのがおすすめです。
仕訳数によっても費用は変動する
もちろん、年間売上が500万円未満であっても、仕訳数があまりにも多ければ追加料金が発生するケースも。参考までに、仕訳・記帳代行を税理士に依頼した場合の費用相場も下記の早見表より紹介しておきます。
仕訳数 | 税理士報酬の費用相場目安 |
---|---|
〜200枚 | 15,000円〜 |
201〜300枚 | 20,000円〜 |
301〜400枚 | 25,000円〜 |
401〜500枚 | 30,000円〜 |
501枚〜 | 35,000円〜 |
青色申告を税理士に依頼するメリット
青色申告書のみの依頼がおすすめできないのは、税理士に依頼することで得られるメリットが少ないから。一方、仕訳を含む青色申告代行であれば、税理士ならではの数々のメリットが得られます。ここでは、下記の通りメリットをそれぞれを簡単に解説していきましょう。
- 記帳・青色申告書作成を任せられる
- 正確な仕訳・経費計上
- 効果的な節税対策
- 税理士報酬を経費計上できる
記帳・青色申告書作成を任せられる
税理士に青色申告代行を依頼することで、仕訳・記帳はもちろん、青色申告書の作成までをすべて任せられます。貴重な業務時間を青色申告に取られる必要もなく、プライベートの時間を仕訳・記帳に費やす必要もなくなります。特に、簿記や会計に疎い個人事業主の方であれば、その効果は絶大だといえるかもしれません。忙しさのあまり、申告期限を過ぎてしまった、といった失敗もなくなります。
正確な仕訳・経費計上
会計ソフトが進化したとはいえ、個人事業主の多くが頭を悩ますのが仕訳です。仕訳が間違っているなどで、必要経費として認められない場合は修正が必要になったり、追加の税金や延滞税などを支払うことになりかねません。
税理士に青色申告代行を依頼すれば、頭を悩ませがちな仕訳・経費計上を正確に行ってくれます。間違いなく正確に青色申告できるのはもちろん、税務調査が入った場合の相談にも乗ってくれるでしょう。別料金になりますが、税務調査時の立会も税理士に依頼できます。
効果的な節税対策
個人事業主であれ法人であれ、支払う税金はなるべく節約したいのが本音。しかし、どのような節税方法があるのか?詳細まで把握している方はそれほど多くありません。税金・税制のスペシャリストである税理士なら、仕訳を精査することによって効果的な節税対策を行ってくれます。
税理士報酬を経費計上できる
青色申告代行を税理士に依頼する唯一のデメリットは、税理士報酬という費用・コストが必要なこと。ただし、税理士報酬は経費として計上できるため、翌年の青色申告時に税金控除として使えます。なによりも、ビジネスを展開するうえでもっとも重要な「時間」を節約できるのは、税理士を活用する最大のメリットだといえるでしょう。
税理士と顧問契約すべきタイミングは?
まだまだ事業規模の大きくない個人事業主の方であれば、税理士へ依頼するケースのほとんどが、「スポット契約」であることは紹介しました。一方、あるタイミングをキッカケに、税理士と顧問契約を締結する個人事業主の方も少なくありません。下記の通り主に2つのタイミングがあります。それぞれ解説しましょう。
- ビジネスが成長している個人事業主
- 法人化を検討している個人事業主
ビジネスが成長している個人事業主
もっとも多いパターンは、ビジネスが順調に成長して継続的に事業展開できる状況になり、経理・会計・税務関連をアウトソーシングしたいと考えたタイミング。事業規模が大きくなれば仕訳数も多くなり、記帳にかける時間も増えてしまいます。ビジネスに集中するためにも、そのような業務をアウトソーシングするのは自然な流れでしょう。
具体的なタイミングとしては、年商1,000万円を超えた時点が多いようです。なぜなら、年商1,000万円を超えた事業者には「消費税の確定申告」が必要になるからです。消費税の確定申告は、所得税と異なる消費税法の知識が必要。必然的に、税理士と顧問契約を結ぶ方が多くなるのです。
法人化を検討している個人事業主
法人化を検討している個人事業主の方も、税理士と顧問契約を結ぶ傾向にあります。個人事業主が支払う税金の対象は「事業所得」ではありますが、税制的には一般的な所得税とそれほど変わりません。事業所得が一定の年商を超えると、法人化した方が税率面で有利になります。
ただし、法人税の申告は、青色申告に比べても複雑なのが現実。当然、税理士と顧問契約する方が増えるのです。タイミングとしては、やはり年商1,000万円を超えた時点。顧問契約の締結を前提に、法人化の手続を安価に引き受けてくれる税理士事務所・税理士法人も多数存在します。
顧問契約した税理士はなにをしてくれる?
それでは、顧問契約を締結した税理士は、普段どのようなことをしてくれるのでしょうか?一般的には、顧問契約を結んでいても、確定申告・決算の費用は別料金である場合がほとんど。具体的なメリットがわからないという方が多いかもしれません。まずは、顧問契約とはなにか?費用面とともに解説していきましょう。
一般的な顧問契約のサービス
顧問契約とは、税理士との定期的な面談機会を設け、税金・税務に関連する業務を委託する、相談できる契約のこと。一般的には、以下のような4つのサービスが含まれる場合が多いようです。
- 記帳代行・記帳チェック
- 税務相談(面談・メール・オンラインなど)
- 経営アドバイス
- 節税に関するアドバイス
税務調査などの相談ができるほか、立会を別料金で依頼するのも可能。従業員を雇用する個人事業主、法人であれば、給与計算も依頼できます。
税理士と顧問契約した場合の費用相場
顧問契約といえば、月に1回、税理士と面談する、といったイメージを持つ方が多いかもしれませんが、現在ではメール・オンラインを活用することで訪問を減らし、月額料金を抑える契約が用意されている場合も。以下は、訪問を年1回に絞った個人事業主向けの、平均的な顧問契約費用相場です。
年間売上 | 顧問費用相場(月額) | 記帳代行(月額) | 青色申告代行(年1回) |
---|---|---|---|
〜1,000万円 | 13,000円〜 | 6,000円〜 | 76,000円〜 |
1,000万円〜3,000万円 | 17,000円〜 | 7,000円〜 | 96,000円〜 |
3,000万円〜5,000万円 | 21,000円〜 | 10,000円〜 | 116,000円〜 |
5,000万円〜1億円 | 28,000円〜 | 13,000円〜 | 145,000円〜 |
会計ソフトが進化した近年では、仕訳・記帳を自社が担当し、税理士がチェックするという流れが主流。これによって、顧問費用の総額を抑えるという個人事業主も少なくありません。
税理士と顧問契約するメリット
それでは、税理士と顧問契約する具体的なメリットとはなんでしょうか?青色申告代行で得られるメリットに加え、以下のような3つのメリットがあると考えられます。それぞれ解説していきましょう。
- 会計面から見た事業のアドバイスが得られる
- 年間を通した節税対策・資金調達支援
- 本業に集中できる
会計面から見た事業のアドバイスが得られる
税理士と顧問契約を結ぶということは、事業所・会社の資金・お金の流れを税理士に把握してもらうことになります。経営状態を左右する資金・お金の流れを税理士に把握してもらうことで、会計面から見た事業展開への有益なアドバイスが得られるでしょう。多くの方は意外に感じるかもしれませんが、税理士は事業承継に関連する相談にも乗ってくれます。
年間を通した節税対策・資金調達支援
スポット契約で青色申告代行を依頼する場合、時間的な制限で充分な節税対策ができない可能性もありますが、顧問契約であればタイムリーな節税対策を実行可能。資金の流れを見ながら、設備投資するタイミング、支出を抑えるタイミングなどもアドバイスしてくれます。
税理士本来の業務とはいえませんが、補助金の申請をはじめとした資金調達支援を相談できる場合も。他の士業と連携する税理士事務所・法人であれば、手続代行を積極的に引き受けてくれる場合もあります。
本業に集中できる
税理士と顧問契約を結んでいれば、税金・税制面だけでなく、経営面でもタイムリーなアドバイスを得られます。税理士が必要なときに必要なアドバイスをしてくれれば、余計なことに気を取られることなく、ビジネスの成長という本業に集中できる環境が得られます。経理・会計担当の従業員を雇用するよりも、税理士との顧問契約の方がリーズナブルなのも意外な事実です。
失敗しない税理士選びのポイント
とはいえ、事業所・会社の会計・税務を任せる税理士選びは慎重に行いたいもの。近年ではホームページなどで問い合わせるのが一般的です。複数の事務所・法人に相談しながら、ひとつに絞り込んでいくのが肝心です。では税理士選びのヒントとなるポイントを下記の3つから簡単に紹介しておきましょう。
- わかりやすく丁寧に説明してくれるか?
- 依頼したい分野に精通しているか?
- 相性のよさを感じられるか?
わかりやすく丁寧に説明してくれるか?
税金や税制は一般にはわかりにくいうえ、頻繁に改正されるのも特徴。わかりやすく丁寧に説明してくれる税理士なのか、人柄も含めた対応を見ることが重要です。
近年では少なくなりましたが、税理士が「先生」と呼ばれるような時代もあったため、サービス業だという認識に欠けた、横柄な態度を取る税理士も一部には残っているようです。こうした態度を取るような税理士では、良好な関係性を築くのは困難です。
依頼したい分野に精通しているか?
税理士にはさまざまな依頼・相談ができるのは事実ですが、すべての税理士があらゆる分野に精通しているわけではありません。税金・税制には詳しくても、経営面は苦手、という税理士がいないとも限らないのです。税理士になにを期待するのかを明確にしたうえで、その分野を得意とする税理士に依頼するのが得策です。
相性のよさを感じられるか?
意外に重要なのが「税理士との相性のよさを感じられるか?」です。実は税理士の平均年齢は60歳を超えるともいわれており、若くして独立する事業主・経営者と年代が大きく異なることもあります。もちろん、年齢だけで判断するのは危険ですが、相談するのに遠慮してしまうような関係性は良くありません。
まとめ
青色申告を税理士に代行して欲しい方に向けた「スポット契約」の費用相場目安、来るべきタイミングで検討すべき「顧問契約」の費用目安を中心に、税理士を活用するメリット、失敗しない税理士の選び方などを網羅的に解説してきました。
どのように依頼するかに関わらず、なによりも重要なのは、親身になってくれる優良な税理士をパートナーに選ぶこと。そのためには、複数の税理士に相談しながら、人柄や相性のよさを見極めていくことがポイントです。
しかし、数多くの税理士事務所・法人が存在するなか、候補先を選ぶことすら迷ってしまうこともあるでしょう。「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、優良な税理士をスピーディーに探せます。複数の事務所・法人に無料で相談できるのもポイント。税理士の選定に迷うようなことがあれば、是非利用してみてください。
1990年生 大阪府出身 大阪大学経済学部卒業。個人事務所、200人規模の税理士法人で実務経験を積み、2021年に独立。「お客様との対話を大事にする」をモットーに、クラウド会計を活用し、顧客に合わせた節税策や資金繰り対策を積極的に提案。ZOOMを使ったオンライン顧問サービスを行い、クライアントは全国に。

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相続などが突然起こったり、事業が上手くいき税金について考える必要がでてきたときに、専門家に相談をすることは非常に重要です。
基本的な税金の仕組みについては、インターネットや書籍で学べることもできますが、税について定めている法律は毎年改正が行われていますので、自分の場合はどうなるのかについては専門家でないとすぐに判断できないことが多いです。
質問しに行く相手を、税務署にするのか税理士にするのかについてですが、いちばん重要なのは、すべて自分で解決しないことです。自分で解決しようとすると、自分にとって都合のいい情報を収集したり、解釈を行ってしまいます。
まずは無料の税務署に相談し、不明点を解決できなければ税理士に相談するなどでも構わないです。専門家を上手に活用し、問題を解決していきましょう。