合同会社の資本金はいくら?増資の準備についても解説

小林伸也税理士事務所
監修者
小林伸也税理士事務所 代表 小林 伸也
最終更新日:2022年12月28日
合同会社の資本金はいくら?増資の準備についても解説
この記事で解決できるお悩み
  • 合同会社に必要な資本金はどれくらい?
  • 合同会社の資本金にはどんなルールがある?
  • 開業後に増資はできる?

合同会社設立を考えている方で「資本金はいくら必要なの?」とお悩みの方も多いでしょう。

合同会社の資本金は株式会社の資本金とは異なります。資本金は「出資金」といわれ、出資金を出した人が社員です。

この記事では、合同会社に必要な資本金の額から設立に必要な費用、事業開始後の増資について解説します。資本金の額の目安についても紹介していますので、金額で悩んでいる方も参考にしてください。

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合同会社設立の資本金にはルールがある

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合同会社の資本金は、株式会社と同様に1円からでも問題ありません。しかし、株式会社のように出資した人が経営権を持つのではなく「社員」という扱いになるところがポイントです。

社員になった人が分配金を受け取る権利がありますが、株式のように出資額で配当金額が決まるわけではありません。また、出資者が出資した金額の範囲内で責任を負います。

出資した資本金の額によって配当が決まるわけではない

株式会社の場合は、出資している株数により配当金が支払われます。

合同会社の場合は異なり、剰余金の配当という考え方はありません。利益剰余金の額まで配当できますが株式会社のように資本剰余金を配当原資にはできません。配当金は「分配金」として利益を出した出資者である社員に対して配賦します。

そのほか定款で分配割合を定めていれば、規定に従って出資している社員に分配します。

出資金を出した人が「社員」となる

合同会社の社員になるためには出資しなければなりません。呼び方は株式会社と同じ「社員」でも株式会社とは大きく異なります。

合同会社の社員は、株式会社で例えると「役員」という位置づけになります。

出資した人は全員「社員」であり「役員」です。そのため、法人の登記簿謄本には出資者である社員の方全員が記載されます。

資本金と同様に出資金は1円からでOK

会社法の規定により、資本金は1円でも合同会社が設立できるようになりました。多くの場合は、100万円から300万円で資本金を設定しています。

合同会社も、法人税と消費税の対象になるため、資本金を1,000万円にすると1年目から消費税の課税事業者として取り扱われます。

2022年12月現在、資本金1,000万円を超えない事業者は設立から最大2年間は消費税の免税事業者です。免税事業者という特典を利用するために、900万円の資本金にする会社もあります。

合同会社は資本金1円でも設立できる!しかし設立後に影響が出る場合も

資本金1円で合同会社を設立した場合、1期目から債務超過になる可能性のほか、法人口座が開設でいない恐れがあります。

合同会社も株式会社と同様に1円で設立できますが、本当に1円で設立することは現実的ではありません。「とにかく設立したい」という場合は、のちに増資という手段もあります。

設立時にたまたま資本金が集まらなかっただけで、事業開始後すぐに資本金が集まる場合は増資をすれば問題ありません。しかし出資金が集まらなければ増資という選択肢はなくなってしまいます。

資本金を別名「見せ金」といいますが、なぜそこまで資本金の額が重要なのか設立後の流れから解説しましょう。

合同会社を1円で設立することは現実的ではない理由

副業の節税対策で資本金1円でとにかく法人を設立するという人は増えています。これは事業を運営していく中で非現実的なことです。

実際に資本金1円で設立した場合、1期目で利益が出なければ債務超過になります。多くの合同会社が1期目に創立費を計上するため、赤字スタートになることも多く、それ自体に問題はありません。

資本金は、利益が赤字になっても会社の体力があることを示します。1円で会社を設立すれば、1円の体力しかありません。仮に赤字額が100円だったとしても、1年目からいきなり債務超過になるのです。

資本金とは?

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資本金は、開業後の資金源です。設立した合同会社にどれくらいの財務的余裕があるかという指標になります。開業後すぐに預金口座を開設する場合、金融機関は決算書がないため継続的に事業ができるのかという判断を資本金で行います。

資本金とは開業後の運転資金

資本金は開業後の運転資金として活用します。収入が安定するまでは資本金で支払いをしなければなりません。最低でも6か月分の経費の支払いができるくらいの金額は必要です。

例えば、1か月の経費が自分の給与も含め20万円必要な場合、20万円/月×6カ月分=120万円となり最低でも120万円は必要といえます。事業が軌道に乗るまで3年かかるという場合は、720万円の資本金が目安です。

収入が安定するまでの資金源

資本金は開業後の運転資金と同様に、収入が安定するまでは貴重な資金源です。売上原価(仕入)が発生しない事業も多くありますが、ものを販売するような場合は物を仕入なければ販売ができず売上が上がりません。

仕入をしない訳にはいかないため、そのための資金が必要です。資金は売上が上がるまで資本金でまかなう、もしくは社員からの借り入れで賄うしかありません。

社員からの借り入れも実務上はよくあるケースです。合同会社のひとり社員であっても借りたものは返さなければないため、得策とは言えません。

資本金が少ないと銀行口座の開設ができないことも

資本金は会社の体力ですから、少額すぎると法人として事業を継続する体力がないと判断され、口座開設を断られる場合があります。事業の内容に見合った金額が必要です。

特にひとり社員の合同会社の場合は、個人のお金と会社のお金を分けるために法人口座を持っておくのが理想です。税務上やそのほかの法律上の観点から、必要というわけではありません。

銀行口座開設の時、金融機関は資本金を確認します。口座を開設したもののすぐに廃業されては、事務的な処理の手間が増えるだけだからです。

資本金の適正額の目安

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資本金の適正額は、事業内容により異なります。仕入が発生せず経費だけという会社であれば、経費だけを予測その金額を資本金とすればよいでしょう。

一概に〇〇円という規定がないため、初めて合同会社を設立する方には予測がつきません。そこで参考になる資本金の額の考え方についてご紹介します。

運転資金や予測できる経費の額から計算する方法

必要なのは売上を確保するための資金です。仕入れにかかるお金、どうしても発生する経費、仕入は物だけではなく外注費も含まれます。

事業が軌道に乗り、売上が確保できるようになるまでにどれだけかかるのか、確保できている契約はどれだけあるのか、などを参考に予測するのがいいでしょう。

税金面から検討!「法人税・消費税」から検討する方法

税金面から検討する方法があります。合同会社に課税される税金は法人税と消費税です。どちらも資本金1,000万円未満には優遇措置があります。

法人税での優遇

法人税で優遇される代表的なものに、少額減価償却資産の全額損金算入と交際費等の損金算入、欠損金の繰戻し還付(青色申告の場合)があります。

法人税率の計算も、資本金が1億円超の会社と比べると低くなっています。合同会社の設立時から1億円超の資本金があるというのは考えにくいです。

資本金が1,000万円以上と1,000万円未満でも法人住民税の均等割の額が変わるので、少しでも税金を低く抑えたいのであれば、1,000万円未満で資本金を設定するのがいいでしょう。

消費税での優遇

インボイス制度はありますが、現在の消費税法では設立2年まで資本金1,000万円未満であれば免税事業者が認められています。(一部例外を除く)

設立時のキャッシュフローが気になるのであれば、消費税の免税期間も貴重です。

設立時に手元資金が少ないなら「増資」を検討

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設立時に手元資金不足から資本金が出せない場合は設立後の「増資」を検討しましょう。

増資は事業開始後、いつでも資本金が増やせます。設立後、数年経過後に債務超過を改善するための方法として実施する場合があります。

特に資本金の額により、許認可の申請ができるような事業をするのであれば、設立時に申請を出すことは控え増資により十分な資本金を確保してから行動するのがよいでしょう。

注意すべきは、設立当初の定款に記載している資本金とは異なるということです。社員が全員増資に賛成し、定款変更する必要があります。

増資方法も合同会社の場合は「社員の増加」なのか既存の社員による「増資」なのか明確にしておきましょう。

増資とは?現物出資と異なる方法

現物出資は「現物」という名の通り、ものを資本金の一部とする方法です。例えばパソコン(20万円)を現物出資すれば、会社に資本としてあるものはパソコンですが、資本金として20万円プラスできます。

ただし、パソコンをはじめとする「現物」で出資した場合は、必ず現物出資したものと金額が分かるようにしておきましょう。廃業時の精算や、のちの予期せぬトラブル防止に役立ちます。

将来の増資のために必要な準備

株式会社の場合は将来の増資のために発行可能株式数をあらかじめ増やしておいて定款を作成します。

合同会社の場合、定款を作成する際に社員が増えた場合にどうするか、すでに社員となっている人が増資することはできるのかどうか、という基準を設けることが重要です。

定款は会社のルールを記載したものなので、予測できることからルールを先に作成しておくと実際にその時が来ても慌てる必要がありません。

多くの場合、将来的に起こるかもしれないことで、今作成しておいても特に問題がない内容については、先にルール作りをしておくことをすすめます。

まとめ

合同会社の資本金は、出資することで社員となり、株式会社でいう経営権を持つことになります。

配当金も利益の分配であり、株式のように出資した金額に左右されることはありません。資本金をいくらにするかは、売上が安定するまでの期間を予測し、必要経費を算出しながら検討するのが良いでしょう。また、税金面から検討する方法もあります。

どちらを参考にするかは、自分がしたい合同会社の形に合わせるのがベストです。

監修者のコメント
小林伸也税理士事務所
代表 小林 伸也

埼玉県出身 早稲田大学理工学部卒業。現三菱UFJ銀行入行後、(株)KPMG FAS、現ペンデル税理士法人を経て、平成18年 小林伸也税理士事務所開業。平成19年 東京税理士会 四谷支部役員(研修委員)就任、平成28年 経営革新支援機関認定、令和元年 東京税理士会 新宿支部地区委員就任。新宿で中小企業・個人事業主中心に資金調達・経営相談・税務相談をメインに支援し創業17年目。

資本金の最も重要な役割は、事業開始するための大切な原資であるということです。事業を開始するには、本文に記載されている通り、事務所関係・備品投資その他運転資金等多くの資金を支出し、事業活動され、売上を上げ、利益を出せてこそ、事業を継続でき、会社が長く存続していけるのです。

まずはご自身が設立される合同会社でどんな事業をされ、その事業活動するにはいくらかかり、いくら利益が出るのか簡単にわかる範囲で結構ですので、事業計画を策定されることをお勧めいたします。簡単にでも事業計画を策定されると、

・事務所関係及び備品購入等初期投資にいくら必要か
・事業活動するのに月いくら必要か
かが大枠わかるはずです。一般的には

「事務所関係及び備品購入等初期投資に必要な金額」+「事業活動するのに必要な経費月額」×3〜6ヶ月分の金額

を資本金として準備された方が安全と言われています。理由はシンプルで、事業開始して直ぐは集客に苦労し収益があげられない可能性が高いからです。もしも準備できる資金が不足する場合、創業間もない法人でも借入可能な創業融資等を検討されることお勧めいたします。正確かつ詳細な事業計画策定は難易度が高いため、簡単に作成後、会社設立・事業計画策定の得意な専門家へご相談されてはいかがでしょうか。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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