【必読】農業の確定申告は不要?家族がいる場合は?4つの申告手順も解説

税理士
監修者
税理士 佐藤 憲亮
最終更新日:2023年05月09日
【必読】農業の確定申告は不要?家族がいる場合は?4つの申告手順も解説
この記事で解決できるお悩み
  • 農家に確定申告はいらない?
  • 確定申告が必要だとしたら具体的にどうすればいい?
  • 農業の確定申告に必要なものは何?

農家であっても例外なく確定申告は必要です。初めての方には、手続きに複雑さを感じてしまい、なかなか思うように進まないこともあります。この記事を読めば、農業における所得から確定申告の方法までわかります。
農業の確定申告に関してマスターしたい方は最後までお読みください。

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農家・兼業農家も所得があれば確定申告は必要!

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農業で総収入から必要経費を差し引いた所得が少しでもあれば、確定申告は必要です。確定申告が不要な場合は、源泉徴収されている会社からのみ給与を受け取る方、課税所得がゼロ以下の方です。

以下で農家の確定申告について詳しく触れていきます。

農業所得の確定申告は青色申告がおすすめ

青色申告では最大65万円の特別控除が得られる・家族の給与を経費にできるなどの優遇措置が得られます。青色申告承認申請書の提出が必要であり、かつ複式簿記での記帳が求められますが申請するメリットは大きいです。

給与所得がある、あるいは他の事業所得のある兼業農家であれば、確定申告することによって農業所得の損失をは損益通算が可能です。専業農家であれば、青色申告することによって赤字を3年間繰り越せます。

自家消費のみの規模であれば確定申告は不要

収穫した農作物を家庭だけで消費する自家消費農家規模であれば、確定申告する必要はありません。そもそも農業所得とは、収穫した農作物の販売などで得られた「利益」のことです。

家族での消費を農業の目的にしているのであれば、農業所得である利益がない=所得税の対象とはならないためです。

確定申告における青色申告とは

青色申告とは、確定申告の種類の1つで個人事業主・法人が使う納税方法のことです。対象者は「事業所得」「不動産所得」「山林所得」を持つ人です。

適用条件によって10万円・55万円・65万円の特別控除があるため、所得が多い人にとっては節税の手段として申請は欠かせません。青色申告をするには事前に申請をしなければならず、新規開業する場合は開業してから2ヶ月以内に行う必要があります。

これまで白色申告をしてきた人が青色申告に切り替える場合は、確定申告を行わなければならない年の3月15日までに申請すれば大丈夫です。

農業所得とは

収入の種類に応じて、所得には区分があります。日本では所得が10種類に区分されており、所得の種類に応じて所得税の計算方法は若干異なります。

正しく確定申告するためには、農業所得がどれに当てはまるのか・農業所得とはそもそも何かをしっかり把握しておきましょう。

農業所得は事業所得のひとつ

「農業所得」の場合は、事業等所得とともに「事業所得」のひとつに区分されています。農業所得の確定申告をする際は、事業所得のルールに従って所得・課税所得・所得税を算出する必要があります。

参照:国税庁「No.1350 事業所得の課税の仕組み(事業所得)」

農業所得は他の所得と損益通算が可能

農業所得は他の所得との損益通算が可能です。損益通算とは、農業所得で生じた損失・赤字を、他の所得の黒字と相殺できる制度のことです。

損益通算ができれば、結果的に課税所得額を抑えられるため、納付すべき所得税を節税できる効果が得られます。他の事業の黒字を農業所得の赤字で相殺する、給与所得の課税所得を農業所得の赤字で減額するなどが可能です。

農業収入には家事消費・事業消費・雑収入が含まれる

農業所得の大前提となる「農業収入」には、収穫した農作物を販売して得られた利益以外に、家事消費・事業消費をした農作物の価額、および雑収入を含める必要があります。

家事消費とは、収穫した農作物を家庭内で消費したものであり、事業消費とは、家畜の飼料など事業用に消費したもののことです。具体的には、家事消費・事業消費で使った分の農作物は、販売時と同じ価格を乗じて金額を算出し、農業収入に含めて総収入としなければなりません

雑収入に該当するのは「共済受取金」「価格差補填金」などの補助金・交付金、田畑の小作料・賃貸料などです。農業収入に含めて総収入とする必要があります。

棚卸・決算が必要

農業所得を確定申告する場合は棚卸・決算が必須です。売掛・買掛の未収入金などがある場合、扱い・処理方法は他の事業と同様です。

一方、農業所得では棚卸に関する経費の算入には注意が必要でしょう。農業では収穫・現金化までの期間が長期化する傾向があるためです。

農業所得で認められる必要経費

所得を算出する際、必要になるのが必要経費の計算です。農業収入から必要経費を適切に差し引き、正確に農業所得を算出する収支計算をしなければならないため、帳簿の記帳が重要になります。

そのためには、日々の必要経費も帳簿に記帳していく必要があります。農業所得で認められる必要経費の主な具体例は以下のとおりです。

必要経費例 概要
種苗費 種子・苗などの購入費用
肥料費・飼料費 肥料や家畜の飼料などの購入費用
農具費 10万円未満、または使用期間が1年未満の農機具購入費用
農薬衛生費 農薬、家畜の薬、防除費などの購入費用
諸材料費 ビニール、縄、針金などの購入費用
動力光熱費 ビニールハウスなどの温度管理に必要な水道光熱費、灯油代など
荷造運賃手数料 農作物出荷時の梱包費用、送料など
作業用衣料費
農作業用の作業着・長靴などの購入費
雇人費
常時または臨時に雇用した人の人件費
減価償却費
資産算入した農機具などの減価償却分
租税公課
農地の固定資産税、トラクター・自動車の税金など

上記以外で注意しておきたいポイントは、自身が消費税の課税対象者であるかです。1年間の課税売上高が1,000万円以上である場合は消費税を別途納める必要があります。

農作物には「軽減税率制度」が適用されるため、該当する場合は区分整理(標準税率と軽減税率を分ける)をしたうえで帳簿記帳が必須です。

農業所得で確定申告をする方法4ステップ

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実際に確定申告をする際、どのように記入すればよいのかは悩みどころです。以下では農業所得で確定申告をするステップを詳しく解説していきます。

  1. 帳簿の記帳
  2. 棚卸
  3. 収支計算
  4. 確定申告書の作成

1. 帳簿の記帳

農業所得の確定申告では「農業収入と経費の収支計算」が重要です。収支計算するための帳簿を作成し、日々記帳していくことが確定申告の大前提です。

青色申告の簡易記帳で必要な帳簿

白色申告とはやや異なり、青色申告の簡易記帳ではさらに必要な帳簿があります。具体的な帳簿は以下のとおりです。

青色申告の簡易記帳で必要な帳簿 概要
現金出納帳 出金・入金など現金の流れを管理・記帳する帳簿
売掛帳・買掛帳 販売による売上、仕入の流れを管理・記帳する帳簿
経費帳 経費に関連するお金の流れを管理・記帳する帳簿
固定資産台帳 農業用車両・建物などの固定資産を管理・記帳する帳簿
農産物受払帳
農作物の収穫・販売・家事消費などの情報を管理・記帳する帳簿

白色申告と異なるのは、作成したすべての帳簿に7年間の保管義務があることです。

現金出納帳をはじめとした各種帳簿は一般的な事業でも使用されますが、農業ならではの「農産物受払帳」が必要となることが特徴です。国税庁のページに農産物受払帳の見本が公開されているため、参考までに紹介しておきます。

参照:国税庁「帳簿の記帳のしかた(農業所得者用)」

青色申告特別控除を得るには複式簿記での記帳が必要

最大65万円の青色申告特別控除を得るためには、それぞれの帳簿を正式な複式簿記の形式で記帳することになります。

複式簿記がわからないという方が多いかもしれませんが、近年では項目・数字を入力するだけで記帳できる優秀な会計ソフトが多数存在します。自力で青色申告したい方は、活用を検討してみることがおすすめです。

2. 棚卸

農業所得の確定申告をするためには「棚卸」が必要です。具体的には、棚卸表を作成したうえで農産物・未収穫農産物・販売用動物・肥料・農薬などの棚卸を実施します。

棚卸は、農業所得の確定申告をするための収支計算、収支内訳書作成のうえで非常に重要な要素です。国税庁では白色申告者向けの手引きを公開していますが、青色申告を考えている方であっても棚卸・決算の方法は同様です。手引きを参考にして慎重に作業を進めていきましょう。

参照:国税庁「白色申告者の決算の手引き(農業所得者用)」

3. 収支計算

農業所得の確定申告をするためには、棚卸の結果と帳簿を照らし合わせながら農業所得を算出する「収支計算」が必要です。収支計算とは、棚卸表をもとに「前年の12月31日時点での在庫」を収入金額からマイナスしたうえで「当年の12月31日時点での在庫」を収入金額にプラスすることです。

その後、帳簿の記載内容に誤りがないか、納品書・請求書・領収書などの証憑と照らし合わせ、誤りがあれば訂正します。固定資産として算入した資産の減価償却費の計算、事業用固定資産の損失額も計算し、すべての材料をもとに収支計算していきます。

農業所得用青色申告決算書

青色申告の場合は、棚卸・収支計算の結果を「青色申告決算書(農業所得用)」に書き写し、確定申告書とともに提出することになります。

それぞれ経費項目が農業所得用に特化された内容となっているため、帳簿を記帳さえしていれば、収支計算はそれほど難しくないことがわかります。

4. 確定申告書の作成

農業所得の確定申告をするために必要なことの最後は、収支内訳書・青色申告決算書をもとに確定申告書を作成し、税務署に提出・所得税を納税することです。必要事項とともに、収支計算の結果である農業所得・経費を書き写すと考えれば間違いありません。

忘れてはならないのは、基礎控除・医療費などの各種所得控除・専従者控除・青色事業専従者給与などを記載することです。農業所得では「確定申告書B」を使用します。

参照:国税庁「確定申告書B」

青色申告特別控除を得るために必要な書類

農業所得を青色申告したい場合、確定申告書・青色申告決算書のほかに損益計算書の添付が必要です。また、最大65万円の特別控除を得たい場合は、さらに賃借対照表の添付もしなければなりません。確定申告の種類に応じ、提出すべき書類が変わるため注意が必要です。

確定申告書等作成コーナー・e-Taxを活用する

最近ではオンラインで確定申告できる環境が整っています。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を活用すれば、農業所得の収支内訳書も必要事項を入力するだけで自動計算してくれるため非常に便利です。

参照:国税庁「確定申告書等作成コーナー」

e-Taxを活用すれば、申告をオンラインのみで完結できるのはもちろん、所得税もオンラインで納税できます。ICカードリーダーがなくてもe-Taxが利用できるようになったため、積極的なオンラインサービスの利用をおすすめします。

農業所得の確定申告をしなかったら?

必要であるにもかかわらず確定申告を怠ると、本来納税すべき所得税に加え、ペナルティとして追徴課税を課せられることがあります。確定申告しなかったことが所得隠しだと判断されてしまうと、本来の所得税額の最大40%にあたる重加算税が課される場合があります。

農業所得の確定申告をラクにするおすすめの会計ソフト3選

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一度経験してしまえばある程度慣れるとはいえ、日々の業務で忙しく、農業所得の確定申告について勉強する時間を取れない方も多いでしょう。

そんな時におすすめしたいのは会計ソフトの活用です。農業所得の申告に特化したおすすめのソフトを紹介します。

農業簿記11

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農業簿記11農家の方が使う会計ソフトとして信頼と実績のある商品です。Web明細から仕訳を自動でおこなうため、操作は簡単です。

農業経営基盤特化方や軽減税率など最新の税務情報にも対応しています。

らくらく青色申告農業版

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らくらく青色申告農業版会計の知識がなくても利用できる、農家の確定申告に特化したソフトです。随時無料でオンラインセミナーを開催しているため、気になる方は参加してみるといいでしょう。

ユーザー満足度は97%を記録しており、顧客満足度が高い商品です。

かんたん農業簿記<複式>

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かんたん農業簿記はパソコンにあまり触れたことがない人も直感的に操作ができる商品です。日々の売上と収入さえ記録しておけば、自動で損益計算書や貸借対照表を記録してくれます。

パソコンに触るのが苦手・難しい会計用語はよく分からないという方におすすめです。

まとめ

農業所得の特徴や必要な帳簿・収支計算の方法、確定申告の基本・手順を解説しました。事業所得の特徴、青色申告のメリットを最大限活かすことが基本です。

一般的な事業よりも帳簿の記帳、収支計算が複雑になりがちな農業所得は「収入・経費をどう判断すればいいのか?」と迷ってしまいがちであることも事実です。不明点があれば、税制のスペシャリストである税理士に相談することがおすすめです。

「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で確定申告に強い税理士をスピーディーに探せます。どの専門家に相談すべきなのか?と迷うようなことがあれば、ぜひ利用してみてください。

比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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