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中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金相場|制度構築や原資確保はどうすべき?

最終更新日:2022年10月28日
涌井社会保険労務士事務所
監修者
社会保険労務士代表 涌井好文
中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金相場|制度構築や原資確保はどうすべき?
この記事で解決できるお悩み
  • 中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金はいくらくらいが相場?
  • そもそも退職金を支給する中小企業・小規模企業(零細企業)はどのくらいある?
  • 退職金の原資はどう確保する?退職金制度を構築するには?

「優秀な人材が定着してくれる働きがいのある環境を整えるため、退職金制度を整備したい」そう考えている中小企業・小規模企業(零細企業)の経営者は多いはず。そんなときに気になるのが、他社の状況を含めた退職金の相場でしょう。どのくらいの退職金があれば従業員の満足度を高められるのか?基準となる金額がわからなければ、制度の構築が難しいからです。

そこで本記事では、勤続年数別・業種別の退職金相場を紹介するとともに、中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金事情を徹底解説!退職金の原資をどのように確保するのか?制度構築の注意点は?など、知っておきたい退職金の基本も紹介していきます。

※本記事は退職金制度の導入や見直しを検討されている経営者向けの記事です。会社員として退職金の相場を知りたい方は以下の記事からご確認ください。

中小企業・小規模企業(零細企業)の定義

退職金の相場は、大企業、中小企業などの企業規模によって異なるため、まずはそれぞれの規模感を把握しておくことが重要。一般的に、企業の規模感は「従業員数」「資本金・出資金の額」で決まりますが、大企業に明確な定義がない反面、中小企業に関しては「中小企業政策の範囲を定めた原則」としての定義が存在します。

業種に応じて中小企業の定義は異なりますが、以下の表の「従業員数」「資本金・出資金の額」のうち、どちらかを満たしていれば中小企業だとみなされます。下記に早見表を用意したので、ご覧ください。

業種 常時使用する従業員数 資本金・出資金の額
製造業その他 300名以下 3億円以下
卸売業 100名以下 1億円以下
小売業 50名以下 5,000万円以下
サービス業 100名以下 5,000万円以下

それでは「零細企業」の定義とはなにかというと、こちらはそもそも法律用語として使われていない、いわゆる俗称です。ただし、一般的には中小企業基本法で定められている「小規模企業者」を零細企業と呼ぶ場合が多いようです。小規模企業者の定義は以下の通り。

業種 中小企業基本法による小規模企業(零細企業)の定義
製造業その他 従業員数20名以下
商業・サービス業(小売・卸売含む) 従業員数5名以下

参照元:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」

中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金相場

それでは、中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金相場はどのくらいなのでしょうか。東京都産業労働局が、都内中小企業の退職金を隔年で調査しています。その最新調査である2020年版(令和2年版)によると、定年退職まで務めた従業員の退職金は以下の通り。

  • 高卒:1,0314,000円
  • 大卒:11,189,000円

ただし、この退職金相場は中小企業という枠組みにおける平均値であり、中小企業の定義に含まれる全業種・全企業規模の会社の平均値です。業種・企業規模に応じて退職金相場が異なることはもちろん、個別の企業によっても退職金の額は異なります。

高卒・大卒の勤続年数別退職金相場

もう少し、中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金相場を紹介していきましょう。以下は、従業員数にもとづいた勤続年数別の退職金相場となり、高卒・大卒でどの程度の差があるのかを表にしたものです。

高卒の場合

勤続年数 年齢 100名〜299名(自己都合) 50名〜99名(自己都合) 10名〜49名(自己都合) 100名〜299名(会社都合) 50名〜99名(会社 50名〜99名(会社都合) 10名〜49名(会社都合)
5年 23歳 393,000円 373,000円 308,000円 529,000円 469,000円 417,000円
10年 28歳 1,011,000円 937,000円 845,000円 1,353,000円 1,145,000円 1,092,000円
15年 33歳 1,907,000円 1,795,000円 1,565,000円 2,491,000円 2,104,000円 1,962,000円
20年 38歳 3,186,000円 3,147,000円 2,507,000円 3,946,000円 3,495,000円 3,084,000円
25年 43歳 4,823,000円 4,383,000円 3,701,000円 5,663,000円 4,949,000円 4,336,000円
30年 48歳 6,578,000円 5,773,000円 4,925,000円 7,643,000円 6,534,000円 5,679,000円
35年 53歳 8,630,000円 7,501,000円 6,148,000円 9,790,000円 8.185.000円 6,957,000円
定年 12,609,000円円 10,820,000円 9,379,000円

大卒の場合

勤続年数 年齢 100名〜299名(自己都合) 50名〜99名(自己都合) 10名〜49名(自己都合) 100名〜299名(会社都合) 50名〜99名(会社都合) 10名〜49名(会社都合)
5年 27歳 489,000円 482,000円 371,000円 737,000円 678,000円 516,000円
10年 32歳 1,242,000円 1,284,000円 1,028,000円 1,698,000円 1,659,000円 1,327,000円
15年 37歳 2,409,000円 2,441,000円 1,921,000円 3,104,000円 2,992,000円 2,378,000円
20年 42歳 4,087,000円 4,032,000円 3,110,000円 5,012,000円 4,623,000円 3,816,000円
25年 47歳 6,212,000円 5,940,000円 4,557,000円 7,200,000円 6,650,000円 5,217,000円
30年 52歳 8,745,000円 7,938,000円 6,057,000円 9,844,000円 8,611,000円 6,807,000円
35年 55歳 10,436,000円 9,280,000円 7,177,000円 11,574,000円 9,911,000円 7,917,000円
定年 13,428,000円円 12,309,000円 9,792,000円

同じ中小企業という枠組みでも、企業規模によって退職金相場が異なることがわかります。定年まで勤務したとしても、10〜49名規模の会社の退職金相場は、100〜299名規模の会社に対して高卒で約74%、大卒で約73%程度の水準にとどまっており、会社規模が大きければ退職金相場も高くなる傾向があるといえそうです。

参照元:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)第8表 モデル退職金」

中小企業・小規模企業(零細企業)の業種別退職金相場

もちろん、中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金相場は、業種によっても大きく異なります。以下は、高卒・大卒で定年まで勤務した場合の、業種別の退職金相場を表にしたものです。

業種 高卒 大卒
建設業 11,770,000円 13,138,000円
製造業 10,804,000円 11,487,000円
情報通信業 8,649,000円 11,545,000円
運輸業・郵便業 8,219,000円 8,932,000円
卸売業・小売業 10,194,000円 10,884,000円
金融業・保険業 - 17,255,000円
不動産業・物品賃貸業 - 13,537,000円
教育・学習支援(学校教育以外) - 6,569,000円

参照元:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)第8表 モデル退職金」

小規模企業(零細企業)の退職金相場は?

ここまでで中小企業を中心とした退職金相場を紹介してきましたが、10〜49名規模の調査結果が参考にはなるものの、従業員数5名以下の、いわゆる零細企業と呼ばれる小規模企業に特化した調査結果はありません。

10〜49名規模の退職金相場が、100〜299名規模の約70%程度であることから、小規模企業(零細企業)の退職金相場はそれ以下の水準、50%程度にの600〜700万円程度だと推察されますが、そもそも退職金制度のない小規模企業(零細企業)も少なくないでしょう。

中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金事情

これから退職金制度を整備しようと考えている中小企業・小規模企業(零細企業)の方であれば、どのくらいの企業が退職金を支給しているのか?どのように退職金の原資を確保しているのか?退職金に関する他社の事情も把握しておきたいはず。そんな方の参考になるよう、東京都産業労働局の調査結果を紹介していきます。

退職金制度のある企業は65.9%

2020年の調査では、退職金制度のある企業が全体の65.9%、退職金制度のない企業が20.9%、無回答の企業が13.2%という結果でした。退職金制度があると回答した企業は、71.3%だった2018年の調査から5.4ポイント減少しており、全体的な傾向として退職金制度を見直す企業が増加しているといえるでしょう。

また、退職金制度があると回答した企業が、どのような方法で退職金を支給しているかは、以下のような結果となっています。

退職金の支給方法 全体の割合
退職一時金のみ 75.9%
退職一時金と退職年金の併用 20.6%
退職年金のみ 3.4%

参照元:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)第7表 退職金制度」

企業年金制度とは

75.9%と、多くの企業で採用されている「退職一時金」とは、退職金の原資を積み立て、従業員の退職時に一括して支給する退職金の支払方法です。一方の退職年金とは、従業員の退職後に年金のような形で支給される、退職金の支払方法のこと。

一般的には、従業員への支給金額を決めたうえで、企業が主体となって管理・運用する「確定給付企業年金(DB)」、掛け金のみ従業員に確約し、運用主体を従業員に任せる「企業型確定拠出年金(DC)」の2つを企業年金制度と呼んでいます。

確定給付企業年金は、規約型と基金型の2つがあり、制度内容を定めた年金規約に基づき、掛金を外部に拠出することにより、その年金資産を管理・運用し、年金給付を行うものが「規約型」、別法人として設立された企業年金基金が、制度内容を定めた年金規約に基づき、年金資産を管理運用するものが「基金型」となります。(両型とも事業主が従業員の同意を得たうえです。)

中小企業・小規模企業(零細企業)の退職一時金原資

それでは、中小企業・小規模企業(零細企業)の多くが採用する退職一時金の原資は、どのような形で積み立てられているのでしょうか?下記に早見表を用意したので、ご覧ください。

退職一時金の原資積立方法 全体の割合
社内準備 60.3%
中小企業退職金共済制度 46.6%
特定退職金共済制度 6.7%
退職金保険 10%
その他の社外準備 7.1%

複数回答可の設問となっていることもありますが、リスク分散も含め、複数の手段で退職金の原資確保に努めている企業が多いとみられます。また、2018年の調査にくらべ、社内準備の割合が64.4%から4.1ポイント減少しており、共済制度へシフトする企業が増加しているとも考えられます。

参照元:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)第7表 退職金制度」

退職一時金の算出方法

中小企業・小規模企業(零細企業)では、どのように退職一時金を算出しているのか?その基準も紹介しておきましょう。下記に早見表を用意したので、ご覧ください。

退職一時金の算出方法 全体の割合
退職金算定基礎額 × 支給率 44%
退職金算定基礎額 × 支給率 + 一定額 3.8%
勤務年数に応じた一定額 21.5%
ポイント制(退職金ポイント × ポイント単価) 15.8%
その他 15.8%

多くの企業が退職一時金を算出するために、基準となる退職金算定基礎額を用いていますが、退職時の基本給をベースにしている場合がほとんど。退職時の基本給に一定率を乗じる、退職時の基本給に手当をプラスしたものを退職金算定基礎額とするパターンもあります。

参照元:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)第7表 退職金制度」

退職金支給の最低勤続年数

退職金を支給する条件としての最低勤続年数も気になるところですが、自己都合・会社都合双方とも、3年という中小企業・小規模企業(零細企業)が多いようです。わずかながら勤続年数1年未満でも退職金を支給する会社もあります。下記に早見表を用意したので、ご覧ください。

退職金支給の最低勤続年数 自己都合退職の割合 会社都合退職の割合
1年未満 0.7% 2.9%
1年 17.3% 24.7%
2年 11.9% 7.9%
3年 48.8% 29.5%
4年 3.8% 2.3%
5年以上 9.7% 7.0%

参照元:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)第7表 退職金制度」

中小企業・小規模企業(零細企業)が退職金を積み立てるには

ここまでで、中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金相場、退職金に関する他社の事情などを解説してきましたが、経営者の方であればなによりも退職金の原資をどのように積み立てていくべきなのか?頭を悩ませているかもしれません。なぜなら、多くの企業が一時金として退職金を一括で支給しているからです。

特に、資金繰りに余裕の持ちにくい小規模企業(零細企業)では、原資の社内準備が難しいということも珍しくありません。そんなときに利用を検討したいのが以下の2つのです。それぞれを簡単に紹介しておきましょう。

  • 近年加入する企業が増加している「中小企業退職金共済」
  • 各保険会社が提供する「養老保険福利厚生プラン」

中小企業退職金共済

参照元:中小企業退職金共済事業本部

中小企業退職金共済とは、中小企業退職金共済法にもとづき、中小企業の相互共済と国の援助で退職金制度を確立することを目的とした、社外積立型の退職金制度です。本記事でも紹介した中小企業の定義を満たす企業はもちろん、個人事業主や小規模企業(零細企業)も加入できます。仕組みとしては以下の通り。

  • 契約締結後、事業主は毎月の掛金を金融機関に納付
  • 従業員の退職時には、中小企業退職金共済から従業員に直接退職金を支払い

加入時に掛金の一部を国が補助してくれる、パートタイマー・アルバイトなどの短時間労働者も加入できる、ホテル・レジャー施設の割引など福利厚生にも役立つなどのメリットがありますが、なんといっても掛金全額を損金・経費にできることが中小企業退職金共済の魅力です。

養老保険福利厚生プラン

メリットの大きい中小企業退職金共済ですが、契約中に従業員がなくなった場合に支払われるのは、その時点までに積み立てた金額が上限です。こうした、万一の場合に備えられる保険商品が「養老保険福利厚生プラン」であり、中小企業の退職金制度として利用されています。

従業員全員が被保険者となることが基本であるため、従業員の入れ替わりが激しい会社の場合は損をしてしまう可能性があるものの、別名「ハーフタックスプラン」といわれているように、掛金の1/2を損金・経費として計上できることがポイント。満期・解約保険金を退職金に充てることで、支払時の赤字を抑える効果が得られます。

退職金制度を構築するには

退職金制度のある中小企業・小規模企業(零細企業)が65.9%にとどまることからもわかるように、退職金の支給は企業の義務ではありません。逆にいえば、退職金制度を構築するのであれば、就業規則とは別に「退職金規程」を整備する必要があります。

法で定められた義務ではない退職金の場合、規程をどのように作成しても自由ではありますが、トラブルを招かないように要点を押さえておくことが重要。一般的には、以下の4つのような内容を退職金規程に盛り込むことが多いようです。

  • 退職金を支給する対象者・条件(正社員、3年以上の勤務など)
  • 退職金の算出方法
  • 退職金の割増・増額がある場合の条件(役職など)
  • 自己都合退職の場合の条件(規程の2/3など)

さまざまなケースも想定して、後々のトラブルにつながらない内容で退職金規程を作成することがポイント。難しいようであれば、専門家へ相談・依頼することがおすすめです。

まとめ

退職金制度を整備したいと考える中小企業・小規模企業(零細企業)経営者の方に向け、本記事では、勤続年数別・業種別の退職金相場を紹介するとともに、中小企業・小規模企業(零細企業)の退職金事情や、退職金の原資をどのように確保するのか?制度構築の注意点は?など、知っておきたい退職金の基本も解説してきました。

退職金制度を廃止する企業が年々増えていますが、だからこそ、退職金制度はアドバンテージになり得ます。しかし、退職金の原資をどの方法で確保していくのか?それを踏まえたうえで退職金規程をどう整備していくのか?舵取りは簡単ではありません。そんな時は人事・労務のスペシャリストである社労士へ相談するのもひとつの方法です。

そんなとき「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、退職金制度に強い優良な社労士をスピーディーに探せます。どの専門家に相談すべきなのか?迷うようなことがあれば、是非利用してみてください。

監修者の一言

退職金制度を設けることは、企業の義務ではなく、任意的な福利厚生となっています。しかし、退職後の生活に備える退職金制度の有無は、現在勤めている従業員だけでなく、新規採用や中途採用等でこれから入社を考えている求職者にも、大きな関心事となるでしょう。

退職金制度を設けている企業の方が、従業員や求職者にとって魅力的に映ることは間違いありません。しかし資金に余裕のない中小企業においては、退職金の原資を用意することは難しく、退職金規定の創設や運用にもコストが掛かってしまいます。

では中小企業は、退職金制度を設けられないのかといえば、そのようなことはなく、中小企業に向けた中小企業退職金共済のような制度も存在しており、自社にあった制度を選択すれば、十分に退職金制度を設けることは可能です。

退職金制度の見直しをする企業が増えている中で、退職金制度を設けることは他社に比べ、大きなアドバンテージとなり、優秀な人材を集めることにも繋がるため、是非自社にあった制度の導入を検討してください。

涌井社会保険労務士事務所
社会保険労務士代表 涌井好文
監修者

保有資格:社会保険労務士、行政書士。平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。

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