【まとめ】退職金の相場は?各条件ごとの相場・算出方法・控除について解説

涌井社会保険労務士事務所
監修者
涌井社会保険労務士事務所 社会保険労務士代表 涌井好文
最終更新日:2023年02月28日
【まとめ】退職金の相場は?各条件ごとの相場・算出方法・控除について解説
この記事で解決できるお悩み
  • 退職金の相場はどれくらい?
  • 条件によって退職金の金額は変わる?
  • 退職金の算出方法は?

「退職金の相場がどれくらいなのか知りたい…」という方必見。

こちらの記事では、退職金の相場を知りたい方に向けて、さまざまな条件ごとの退職金の相場や算出方法を解説します。最後まで読めば、退職金についての理解が深まり、自分で退職金の算出ができるようになります。

控除額の算出方法やよくある疑問についても解説するため、退職金について疑問がある方はぜひ参考にしてください。

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退職金とは?

退職金-とは

退職金とは「退職手当」「退職慰労金」とも呼ばれている、従業員が会社を退職する際に雇用主から支払われるお金のことです。

平成30年に厚生労働省が発表した「年就労条件総合調査」では、80.5%の企業で退職金給付制度を設けているとされています。

退職金の算出方法は基本的に、退職金規程にもとづいた算定基礎賃金に対して勤続年数別の支給率がかけられます。

退職金の主な4つの種類

退職金-種類

退職金の主な種類は、以下の4つがあります。

  • 退職一時金
  • 退職金共済
  • 確定拠出年金(DC)
  • 確定給付年金(DB)

退職金の種類に応じて、受け取り方も異なります。退職金の受け取り方は退職一時金タイプ・退職年金タイプ・併用タイプの3つです。

退職一時金タイプは退職時に一括で退職金を受け取り、退職年金タイプは分割して定期的に受け取ります。

退職金の種類を見る際には、受け取り方にも注目しましょう。

1. 退職一時金

退職一時金とは、従業員が退職する際にまとまった額の一時金を支給する退職金です。退職一時金の概要は以下のとおりです。

退職金の受け取り方 退職一時金タイプ
基本的な算出方法 基本給×勤続年数※役職・退職理由によって変動あり
対象 会社の規定内の退職者(3年以上勤務した正社員)

退職一時金は基本的な金額の計算方法がありますが、会社ごとに細かいルールや支払い方法が異なるため、自社の規則を確認しておきましょう。

2. 退職金共済

退職金共済とは、主に中小企業で採用されている、社外で退職金の積み立てをおこない退職時にまとめて受け取る退職金制度のことです。退職金共済の概要は以下のとおりです。

退職金の受け取り方 退職一時金タイプ
基本的な算出方法 掛け金×納付年数+付加退職金・利回り※掛け金は会社側が設定
対象 会社の規定内の退職者(3年以上勤務した正社員)

資金繰りの難しい中小企業が「中小企業退職金共済制度(中退共)」の制度を利用して外部の積立先と契約することで、退職時に中退共から退職金が支払われる仕組みです。

3. 確定拠出年金(DC)

確定拠出年金(DC)とは、社員自身が積み立てた掛け金を運用することで退職金の給付額を決定させる退職金制度のことです。確定拠出年金の概要は以下のとおりです。

退職金の受け取り方 一時金タイプ・年金タイプ・併用タイプのいずれか
基本的な算出方法 掛け金×納付月数+運用結果※掛け金は会社側が設定
対象 会社の規定内の退職者(3年以上勤務した正社員)

確定拠出年金の積み立て先は、保険会社や信託銀行などの会社が契約した金融機関で、退職時の給付額は運用結果によるため事前に確定はしていません。

4. 確定給付年金(DB)

確定給付年金(DB)とは、事前に退職時の給付額が確定した中で、企業が掛け金を運用することで退職金の給付額を決定させる退職金制度のことです。確定給付年金の概要は以下のとおりです。

退職金の受け取り方 一時金タイプ・年金タイプ・併用タイプのいずれか
基本的な算出方法 掛け金×納付月数+利回り※掛け金は会社側が設定
対象 会社の規定内の退職者(3年以上勤務した正社員)

確定給付年金は確定拠出年金とは違い、事前に退職時の給付額が確定しています。もし企業側が運用を失敗し確定した給付額に達していない場合、企業が費用を補填しなければなりません。

各条件の退職金相場

退職金-相場

退職金はさまざまな要因によって変動します。主な要因の組み合わせは、以下のとおりです。

「勤務年数・学歴別」「退職理由・学歴別」「業種・学歴別」の退職金相場を紹介します。

  • 勤務年数・学歴別
  • 退職理由・学歴別
  • 業種・学歴別

企業ごとに金額は異なりますが、それぞれの要因ごとの退職金相場を知っておくことで、自身の退職金を把握しましょう。

勤務年数・学歴別の退職金相場

勤務年数・学歴別の退職金相場は、以下のとおりです。

  大学卒 高校卒
勤続3年 64万7,000円 43万1,000円
勤続5年 116万9,000円 78万7,000円
勤続10年 288万6,000円 184万1,000円
勤続15年 519万8,000円 347万4,000円
勤続20年 822万3,000円 556万5,000円
勤続25年 1,209万円 838万円
勤続30年 1,649万1,000円 1,162万7,000円
勤続35年 2,085万8,000円 1,707万8,000円

出典:経団連「2021年9月度 退職金・年金に関する実態調査結果」

上記のテーブルのとおり、高校卒より大学卒の方が退職金が高くなる傾向にあります。勤続年数を重ねるにつれ金額差は開いていき、大学卒の場合は特に20年を過ぎたころから大幅に金額増加が見込めます。

退職理由・学歴別の退職金相場

勤続年数20年以上における退職理由・学歴別の退職金相場は、以下のとおりです。

  大学卒 高校卒
定年退職 1,983万円 1,618万円
会社都合退職 2,156万円 1,969万円
自己都合退職 1,519万円 1,079万円
早期優遇退職(希望退職) 2,326万円 2,094万円

出典:厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」

退職理由において退職金の比較をする場合、早期優遇退職・会社都合退職・定年退職・自己都合退職の順に金額が高くなっています。

早期優遇退職とは

早期優遇退職とは定年前に退職する社員に対して、退職金の割り増しや再就職支援などの優遇条件を付与する恒常的なキャリア支援制度のことです。

早期優遇退職の場合、退職金に加えて「付加退職金」が加算されるため、テーブルに記載した金額より高くなる傾向にあります。

業種・学歴別の退職金相場

業種・学歴別の退職金相場は、以下のとおりです。

  大学卒 高校卒
建設業 1,313万 1,177万円
製造業 1,148万 1,080万
情報通信業 1,154万 864万
運輸業・郵便業 893万 821万
卸売業・小売業 1,088万 1,019万
金融業・保険業 1,725万
不動産業 1,353万
学術研究・技術サービス業 1,007万
生活関連サービス業・娯楽業 1,104万 1,129万
教育・学習支援業(学校教育を除く) 656万
サービス業 996万円 1,019万

出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」

業種別に退職金額をみた場合「金融業・保険業」がもっとも高く「教育・学習支援業」がもっとも低いです。

ほとんどの業種では大学卒の方が高校卒より高い退職金額になっていますが、サービス業においては高校卒の方が大学卒より退職金額が高くなっています。

企業規模別の退職金相場(定年退職の場合)

定年退職の場合における企業規模別の退職金相場は、以下のとおりです。

500人〜 2,221万円
100人〜299人 1,342万円
50人〜99人 1,230万円
10人〜49人 979万円

参考1:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」 参考2:政府の統計窓口「令和元年賃金事情等総合調査(表番号13.14)」

企業規模別に退職金をみると、大企業が中小企業に比べて1,000万円ほど高い退職金を給付しています。

退職金制度の導入率に関しても、中小企業に比べて大企業が高い割合を占めているため、ほとんどの場合において退職金は大企業の方が給付されるといえるでしょう。

退職金の種類別算出方法

退職一時金-算出方法

退職金の算出方法は、企業が採用している退職金制度やルールによって異なります。退職金は企業の独自ルールによって給付金額が多少変化しますが、算出方法は基本的に確定されている点が特徴です。

退職金の種類は、以下の4つです。

  • 退職一時金
  • 退職金共済
  • 確定給付年金
  • 確定拠出年金

詳しい算出方法を理解して、自身の大まかな退職金を算出してみましょう。

「退職一時金」の計算方法

退職一時金には「定額型」「基本給連動型」「別テーブル型」「ポイント制」の4つの種類があります。

「定額型」は、勤務年数に応じてあらかじめ企業が決めた金額をそのまま給付する方法です。自社で定額型の退職一時金制度を採用している場合は、就業規則や退職金規定を確認することで自身の退職金を把握できます。

「基本給連動型」「別テーブル型」「ポイント制」の算出方法は、以下のとおりです。

「基本給連動型」の算出方法

「基本給連動型」では「退職時の基本給」と「勤続年数をもとに変換した支給係数」に変換し退職金を算出する方法です。

支給係数は、勤続年数3年で1.0→4年で2.0のように、勤続年数に比例して支給係数が高くなります。勤続年数4年で支給係数2.0の場合における、退職一時金の算出例は、以下のとおりです。

「基本給連動型」勤続年数4年の場合における退職一時金

退職時の基本給25万円×6万円

自身の退職金を算出する際は、自社の基準となるテーブルを就業規則や退職金規定を確認しましょう。

「ポイント制」の算出方法

「ポイント制」では、勤続年数1年あたりのポイントを基本給・人事考課・退職理由などを基準に決定します。累積したポイントを1点あたりの単価を掛けあわせて算出する方法です。

勤続年数1年で10ポイント・係長クラスによる+5ポイント・1ポイントあたりの単価1万円とされている企業の場合の算出例は、以下のとおりです。

勤続年数10年・係長3年目・自己都合退職の場合における退職一時金

(勤続年数10年×10ポイント+係長クラス5ポイント×3年)×ポイント単価1万円×自己都合退職×0.8=92万円

ポイントシステムは企業ごとに異なるため、自社の就業規則や退職金規定から確認しましょう。

「退職金共済」の計算方法

退職金共済の計算方法は、以下のとおりです。

退職金共済の計算方法

(月額掛金×納付期間)−(1カ月あたりの助成金×助成対象月数)=受給額

詳しい受給額を知りたい方は、中共済が提供する「退職金シミュレーション」を活用しましょう。

「確定給付年金」の計算方法

確定給付年金の計算方法は、以下のとおりです。

確定給付年金の計算方法

一時金相当額÷(年利率2.5%の20年確定年金現価率)×(受給開始年齢までの利回り)

確定給付年金の計算方法は、採用している制度によって異なるため自分で細かい計算をおこなうのは難しい傾向があります。詳しい金額を知りたい場合は「確定給付年金の受給シミュレーション」を活用しましょう。

「確定拠出年金」の計算方法

確定拠出年金の計算方法は、以下のとおりです。

確定拠出年金の計算方法

年間の掛け金×年金終価係数(運用期間と運用利回りから算出)=支給資産額

年金終価係数は運用期間と運用利回りが高いほど高くなります。自身での計算が難しい場合は「確定拠出年金の受給シミュレーション」を活用しましょう。

退職一時金にかかる所得控除の算出方法

退職一時金には、退職一時金にかかる税金から一定の金額を差し引ける「退職所得控除制度」が適用されます。退職所得控除額の計算式は、以下のとおりです。

退職所得控除額計算式

勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数 ※80万円未満の場合は80万円

勤続年数21年以上の場合:800万円+70万円×(勤続年数−20年)

退職一時金と退職所得控除額がわかれば、実際に課税される金額を算出できます。課税対象額の計算式は、以下のとおりです。

課税対象額の計算式

課税対象額=(退職一時金の額−退職所得控除額)×1/2

自身が受け取れる退職一時金から控除額・課税額を算出することで、実際に手元に残る金額を把握して運用計画を立てましょう。

退職金に関するよくある質問

退職金に関するよくある質問は、以下の3つです。

  • 退職金をもらえる最低勤務年数は?
  • 退職金はいつ受け取れる?
  • 退職金をどう運用すればいい?

退職金は退職する際にしか受け取るタイミングがないため、事前に退職金の知識を得る機会が少なく疑問が浮かびやすい傾向にあります。よくある疑問を先に把握しておくことで知識を深めましょう。

Q1. 退職金をもらえる最低勤務年数は?

退職金の給付は企業の規定によって異なりますが、一般的に「勤続年数3年以上」からが給付対象になるケースが多くみられます。

ほとんどの企業で1年〜3年未満では、退職金の給付はされていません。自社の就業規則を確認して、退職金の給付対象者を把握しましょう。

Q2. 退職金はいつ受け取れる?

退職金の受け取りは退職直後とは限りません。一般的に退職から1カ月〜3カ月ほどの期間があくことがほとんどです。

企業によって退職金の振り込み時期は異なるため、振り込み時期が気になる場合は自社の就業規則を確認するか、管轄部署に問い合わせましょう。

Q3. 退職金をどう運用すればいい?

退職金の主な運用方法は、以下の6つです。

  • 定期預金
  • 個人向け国債
  • 個人年金保険
  • 投資信託
  • 株式運用
  • ファンドラップ

それぞれの運用方法にメリット・デメリットがあるため、各種運用方法の特徴を把握して自分にあった運用方法を選びましょう。

まとめ

退職金に関して各条件の相場や算出方法、所得控除制度とともに解説してきました。

退職金制度は、多くの大企業では採用されているものの、中小企業では取り入れられていないケースも多くみられます。退職金制度はさまざまな導入方法があるため、まだ導入されていない企業の経営者の方は、退職金制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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監修者のコメント
涌井社会保険労務士事務所
社会保険労務士代表 涌井好文

保有資格:社会保険労務士、行政書士。平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。近時はインターネット上でも活発に活動しており、クラウドソーシングサイトやSNSを通した記事執筆や監修を中心に行っている。

退職金制度を設けることは、企業の義務ではなく、任意的な福利厚生となっています。しかし、退職後の生活に備える退職金制度の有無は、現在勤めている従業員だけでなく、新規採用や中途採用等でこれから入社を考えている求職者にも、大きな関心事となるでしょう。

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比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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