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役員退職金の相場はどのくらい?役員退職慰労金の計算方法・基礎知識を解説!

公開日:2019年03月20日 最終更新日:2022年01月12日
役員退職金の相場はどのくらい?役員退職慰労金の計算方法・基礎知識を解説!

「役員退職金を算出する一般的な計算方法は?」「税務調査で役員退職金が否認されることがあるのは本当?」「適正な役員退職金を決定する参考になる相場観を知りたい」役員退職慰労金とも呼ばれる役員退職金の相場を調べている、そんな方なら感じている疑問ではないでしょうか?これまでの功労に対する慰労の意味を持つ役員退職慰労金は、支給する法人それぞれの事情が反映されるはず。本来であれば他者に口出しされるいわれはないように思えますが、税務調査で役員退職金が否認されてしまうことも少なくありません。それはなぜなのか?そこで本記事では、適正な役員退職金を算出するための計算方法や、業種・年商別の相場を紹介するとともに、知っておきたい役員退職慰労金の基礎知識を徹底解説!役員退職金をスムーズに支給するためのポイントがわかります。

役員退職金(役員退職慰労金)の計算方法

税法のうえでも、労働法のうえでも、役員退職金を適正に算出するための具体的な計算方法が定められているわけではありません。これは、従業員が退職する際に支給される、一般的な退職金に関しても同様です。

しかし、計算方法が定められていないからといって感覚的な評価で金額を決定していたのでは「これまでの功労を役員退職金として適正に数値化する」ことができません。

そのため、多くの企業で採用されているのが、役員退職金の計算方法として広く一般に知られている「功績倍率法」「1年当たり平均額法」です。

功績倍率法

功績倍率法とは、「月額の報酬」に「役員勤続年数」を乗じ、さらに役員としての功績を数値化した「功績倍率」を乗じた金額を役員退職金とする計算方法であり、役員退職金を算出する際にもっとも採用されることの多い計算方法です。具体的な計算式は以下の通りです。

  • 役員退職金(役員退職慰労金)= 最終月額報酬 × 役員勤続年数 × 功績倍率

計算式の月額報酬が「最終月額報酬」となっているのは、退職時の月額報酬が役員としての功績をもっともよく表しているからです。また、役員勤続年数に関しては「繰り上げ」した整数で計算する場合が一般的。1年6か月であれば「1.5年」ではなく「2年」として計算します。

適正とされる功績倍率・役員退職金

功績倍率法で重要なポイントとなるのが、文字通り「功績倍率」の数値です。功績倍率は、同業種・同規模法人の役員退職金データをもとにした数値とされていますが、こうしたデータを入手することは一般企業には困難。通常は、国が適正と判断した以下の功績倍率を最大値として採用することが多いようです。

役員の役職 適正とされる功績倍率
代表取締役(社長) 3.0
専務取締役 2.4
常務取締役 2.2
取締役 1.8
監査役 1.6

たとえば、最終月額報酬150万円の代表取締役社長が、役員勤続年数20年で退職した場合の役員退職金は、以下のように算出できます。

  • 150万円(最終月額報酬)× 20年(役員勤続年数)× 3.0(功績倍率)= 9,000万円

上述したケースでは、適正な功績倍率を採用した適正な役員退職金の額は9,000万円だということになります。

功労加算金が追加支給されることも

企業によっては、特に高い功労・功績を残した役員に対し、役員退職金に追加して功労加算金を追加支給する場合もあるようです。具体的な計算式は以下の通りです。

  • 功労加算金 = 役員退職金 × 功労に応じたパーセンテージ

功労加算金のパーセンテージに関しても特段の決まりがあるわけではありませんが、30%を上限に数値化していく場合が一般的。上述した代表取締役社長が30%の功労加算金を得たと仮定すれば、役員退職金の総額は以下のようになります。

役員退職金(役員退職慰労金) 150万円 × 20年 × 3.0 = 9,000万円
功労加算金 9,000万円 × 30% = 2,700万円
役員退職金の総額 9,000万円 + 2,700万円 = 1億1,700万円

1年当たり平均額法

1年当たり平均額法とは、同業種・同規模法人の実績をもとに「1年当たり役員退職金の平均値」を算出し、役員勤続年数を乗じて役員退職金の額を求める計算方法のことです。

役員退職金の計算方法としては功績倍率法が主流ではありますが、なんらかの事情で役員の最終月額報酬が低くなってしまった、などのケースで採用される場合があります。計算式は以下の通りです。

  • 役員退職金(役員退職慰労金)=(同業種・同規模法人の1年当たり役員退職金額の合計額 ÷ 同業種・同規模法人の数)× 役員勤続年数

ただし、功績倍率の数値を求めるのと同様、同業種・同規模法人のデータを入手することは困難です。役員退職金が裁判の争点となる場合を除き、1年当たり平均額法が採用されることはあまりないといえるでしょう。

役員退職金(役員退職慰労金)の相場

役員退職金を適正に算出する計算方法は理解できた。しかし、単純に計算式を当てはめて算出した役員退職金は他と比べて妥当なのか?相場と比較してみたいと考える方は少なくないかもしれません。

そんな方に向け、2014年に日本実業出版社が実施した、中小企業を対象にする役員退職金データを紹介しておきましょう。ある程度の相場観がつかめるはずです。

業種 年商 役職 役員勤続年数 最終月額報酬 役員退職金額
製造業 5〜10億円未満 社長 26年 120万円 4,000万円
5〜10億円未満 常務 11年 70万円 2,232万円
5〜10億円未満 取締役 12年 60万円 1,500万円
5億円未満 社長 51年 80万円 4,000万円
5億円未満 常務 7年 70万円 1,440万円
卸・小売業 5〜10億円未満 取締役 9年 60万円 520万円
5億円未満 専務 25年 20万円 1,000万円
建設業 5〜10億円未満 専務 45年 25万円 2,500万円
5億円未満 取締役 15年 35万円 450万円
サービス業 5〜10億円未満 専務 29年 80万円 4,200万円
5億円未満 社長 16年 52万円 832万円

役員退職金と退職金の違い

役員退職金に限らず、適正な金額の退職金を支給することは受け取る側にとっても重要なことですが、なぜ税務調査で役員退職金が否認されてしまうことがあるのでしょうか?それを理解するためには、役員退職金の基礎知識を把握しておくことが重要でしょう。順を追って解説していきます。

そもそも、役員退職金と一般的な退職金の違いは退職金規程にあります。具体的には、従業員に退職金を支給するには、就業規則に退職金規程を追加するだけで問題ありませんが、役員退職金を支給するには「定款に役員退職慰労金の支給・支払い時期を記載」する必要があります。

役員退職金を支給するには株主総会の決議が必要

ただし、定款に役員退職慰労金に関する項目を記載している法人は多くありません。それでは、役員退職金を支給するにはどうしたらいいのか?株主総会の議題として役員退職金を取り上げ、決議を経てから支給される場合が一般的です。

一方、株主総会では「役員退職金の支給に関する決定を取締役会に一任する」ということのみ決議され、最終決定は取締役会で下されるという企業も多いようです。これは一般株主も参加する株主総会で、個別の役員退職金を決議することがそぐわないからだと思われます。

役員退職金(役員退職慰労金)の節税効果

役員退職金は、退職する役員本人だけではなく、支給する法人側にとっても一定以上の節税効果が期待できます。それぞれに分けて簡単に解説していきましょう。

役員退職金を支給する法人側の節税効果

支給する法人側にとって、役員退職金は法人税・法人住民税などを節税する効果が得られます。法人が納付すべき税金を算出するには、収入から経費である損金を差し引き、残った利益に対して法人税率を乗じますが、役員退職金は全額損金として計上できるため、税金の対象となる課税所得を大幅に減らせる節税効果が期待できるのです。

これは従業員を対象にする一般的な退職金にも当てはまりますが、支給総額が大きくなる傾向にある役員退職金は、より大きな節税効果が期待できます。役員退職金は社会保険の適用外であることもポイントです。

参考:国税庁「No.5208 役員の退職金の損金算入時期」

役員退職金を受け取る役員側の節税効果

役員退職金は退職所得に区分されるため、受け取る側の役員にとっても大きな節税効果が期待できます。一般的な給与所得の場合、年間の給与収入から各種所得控除額を差し引いた「課税所得」に所得税率を乗じますが、退職後の生活保障という意味合いのある退職金は、課税所得をさらに1/2に減額できることが特徴。具体的な計算式は以下の通りです。

役員退職金の課税所得 (役員退職金 - 退職所得控除額)× 1/2
役員退職金の所得税 役員退職金の課税所得 × 所得税率

参照元:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

課税所得を1/2にできるだけでなく、退職所得控除額が設けられているのも退職所得の特徴。役員としての勤続年数に応じて、税金面での大きな優遇措置が得られます。

勤続年数 = A 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A(80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円 + 70万円 ×(A - 20年)

ただし、役員退職金の場合は、役員勤続年数が5年以下の場合、課税所得を1/2に減ずる措置は適用されません。これは短期間のうちに複数法人から退職金を得ることを防ぐためです。

参照元:国税庁「No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(特定役員退職手当等)」

また、分離課税となる退職所得は、ほかの所得と合算する必要がないため、所得税率を抑えられる効果も。「退職所得の受給に関する申告書」を提出しておけば確定申告する必要もありませんが、提出していない場合は源泉徴収額との調整をするため、自ら確定申告する必要があります。

損金対象の役員退職金は否認されることがある

ここまでで、役員退職金の基礎知識を、税金面での効果を含めて解説してきました。支給総額が大きなる傾向にある役員退職金は、全額損金として計上できるため、法人にとって大きな節税効果が得られますが、税金を徴収する税務署にとっては税収の減少を意味します。

税法で「過大な役員退職金は税金計算上の費用にすることはできない」と規定されているのはこのためであり、役員退職金が税務調査で否認されることが少なくない要因だともいえるのです。

役員退職金が不相当に高額と認定されたら?

税務調査で役員退職金が不相当に高額であると認定されてしまった場合、適正な支給額を超えた部分に関して「損金として認めることを否認」されます。結果的に、法人税の対象となる課税所得が増え、追加の税金納付が必要になるだけでなく、延滞税・加算税などが課される場合もあります。

法人であれば、税務署に給与・退職手当の支払調書提出が義務付けられているため、過大な役員退職金が支給されていれば、遅かれ早かれ税務調査の対象になります。適正額を巡って裁判を起こすことも可能ではありますが、税務署から適正だと認定される金額設定を心がける方が安全です。

役員退職金が否認されるパターン

ただし「過大な役員退職金は税金計算上の費用にすることはできない」と規定されているにもかかわらず、税法では「過大とする判断基準」や「金額を算出する具体的な基準」は明確にされていません。

役員退職金を巡った争いが少なくない理由でもありますが、その分、過去の裁判の判例から、適正な役員退職金とみなされるための「いくつかのポイント」が見えてきます。それぞれを簡単に解説していきましょう。

最終報酬月額・功績倍率

過去の裁判例で、役員退職金の計算式である「功績倍率法」自体が問題になったことはありませんが、争点の中心となるのは「最終報酬月額」および「功績倍率」です。

役員勤続年数に関しては、退職所得の計算でも「端数切り上げ」が認められていますが、退職金総額に大きく影響する「最終報酬月額」「功績倍率」は見逃せないというわけです。

具体的には、退職金総額を押し上げるため退職前に月額報酬を高くする、役員退職金ならではの功績倍率を不自然に高く設定するなどが見られた場合、不相当に高額であると認定される場合が多いようです。

実際、本記事で紹介した功績倍率は、昭和55年の裁判で争われた結果、国が妥当であると認定した数値です。多少の誤差は認められるかもしれませんが、合理的な説明ができない限りは、功績倍率の上限を超えないようにするべきでしょう。

功労加算金

法人によっては、特に功績の高い役員に功労加算金を追加支給する場合があることを紹介しましたが、税務調査で役員退職金が否認される要因のひとつとなるのも功労加算金です。これを不服として裁判に持ち込まれた例も少なくありませんが、結果的に、ほとんどの場合で功労加算金が認められることはありませんでした。

役員退職慰労金を廃止する企業も

こうした役員退職金に関する争いが少なくないなか、法人、特に中小企業を中心に、一時退職金にあたる一般的な退職金制度を廃止し、企業年金を企業型iDeCoへ移行する動きが活発化しています。こうした動きは近年の経済状況、働き方への意識変革や成果主義への移行などが主な要因だと思われます。

これに連動する形で、役員退職金(役員退職慰労金)を廃止する動きも広まりつつあります。勤続年数に連動する役員退職金が、従業員に対する成果主義とはそぐわないものになりつつあるためであり、今後も役員退職金を廃止する企業は増えてくることが予測されます。

まとめ:役員退職金を適切に設定するには

否認されないための適正な役員退職金の相場を知りたい、そんな悩みを持つ方に向け、本記事では適正な役員退職金を算出するための計算方法や、業種・年商別の相場を紹介するとともに、知っておきたい役員退職慰労金の基礎知識を解説してきました。

退職後の生活保障という点では共通するものの、役員退職金と一般的な退職金では、法人にとっての意味合いが異なることが理解できたのではないでしょうか?全額損金計上できる役員退職金は、税務署からのチェックも厳しくなりがち。税金にも配慮した適正な支給金額を算出するためにも、ときには専門家のアドバイスを仰ぐのもおすすめです。

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