表題登記(表示登記)の費用相場は?自分でできるかや手続きの流れを解説

最終更新日:2023年03月10日
こしだ司法書士事務所
監修者
司法書士 越田一希
表題登記(表示登記)の費用相場は?自分でできるかや手続きの流れを解説
この記事で解決できるお悩み
  • 表題登記(表示登記)の費用はどれくらいかかる?
  • 表題登記(表示登記)は自分でもできる?
  • 表題登記(表示登記)の手続きの流れは?

「表題登記(表示登記)の費用が気になる」不動産の新築や変更などの予定がある個人事業主・中小企業の方は、そのような悩みを抱えていませんか?表題登記(表示登記)とは、土地・建物がどのような状態なのかを登録することです。

この記事では、表題登記(表示登記)にかかる費用や手続きの流れについて解説します。この記事を読み終わった頃には、表題登記(表示登記)の費用相場を理解して手続きをするために行動を起こせるようになっているでしょう。

表題登記(表示登記)とは?

日本のすべての土地・建物は、不動産として特定されたうえで登記され、個別の不動産登記事項証明書に情報がまとめられています。

この不動産登記事項証明書は、土地・建物がどのような状態にあるかという「表題部」、だれが所有しているのかという「権利部」に分かれており、このうちの表題部に登記(登録)することを表題登記(表示登記)といいます。

以前は「表示登記」という名称でしたが、2005年の不動産登記法改正によって「表題登記」という名称に変更されました。つまり、さまざまな種類のある不動産登記のひとつが、表題登記なのだといえるでしょう。表題登記に記載されている内容は以下の通りです。

登記事項証明書の区分 記録内容
表題部(土地) 所在、地番、地目(土地の目的)、地積(面積)、登記日付など
表題部(建物) 所在、家屋番号、種類(建物の目的)、構造、床面積、登記日付など

表題登記(表示登記)= 建物表題登記?

冒頭でも触れたように、表題登記(表示登記)は「建物を新築した際に必要になる手続き」だと認識されている方が多いようですが、厳密には異なります。

新規に不動産登記事項証明書を作成する際に表題登記が必要なのはもちろん、すでに記載されている登記内容を変更・更正(修正)する際にも表題登記は必要なのです。

ただし、国土面積が増えない限り、だれも所有者のいない新たな土地を表題登記する、などとということはできません。一方、頻繁に立て替えの行われる建物に関しては、だれも所有していなかった新たな建物が次々と建設されています。

こうした新たな建物を表題登記する = 建物表題登記が圧倒的に多いため、表題登記 = 建物表題登記だと一般的に認識されているのです。

表題登記(表示登記)と権利登記の違い

上述したように、不動産登記事項証明書は「表題部」「権利部」に分かれていますが、権利部に登記(登録)することを権利登記といいます。

表題登記(表示登記)が「土地・建物を含む不動産がどのような状態か」を特定するのに対し、権利登記は「土地・建物をだれが所有しているのか、共有者はいるのか、その場合の持分は、抵当権はあるのか」を特定します。

もっとも大きな違いは、法律で表題登記が義務化されているのに対し、権利登記には法律による規制がないことです。

建物表題登記の場合、物件が完成または引き渡し後、1ケ月以内に表題登記を申請して新規不動産登記事項証明書を作成する義務があり、違反すると10万円の過料が科せられます。

もちろん、建物新築時に表題登記だけ済ませばいい、というわけではありません。不動産の所有権である権利登記を怠れば、二重譲渡などのトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあるでしょう。

表題登記(表示登記)の種類

一般的には、建物表題登記を表題登記(表示登記)と呼ぶのが一般的ですが、上述したように登記内容を変更・更正する際にも表題登記の手続きが必要です。そのため、表題登記にも実にさまざまな種類が存在します。簡単に表で紹介していきます。

表題登記の種類 内容
建物表題登記 建物を新築した場合に、新たな不動産登記事項証明書の表題部に記載するための登記
建物滅失登記 不動産登記事項証明書の表題部に記載されている建物がなくなったことを記載するための登記。取り壊し後、1ケ月以内の申請が必要
土地地目変更登記 土地表題部に記載されている地目(土地の目的)を変更するための登記
土地合筆登記 隣接する複数の土地をひとつの土地にまとめるための登記。※不動産登記法ではひとつの土地を「一筆」と数える
土地分筆登記 土地合筆登記とは逆に、一筆の土地を複数に分割するための登記
土地地積更正登記 不動産登記事項証明書の表題部に記載されている土地の地積(面積)が、実際と異なっている場合などに更正(修正)するための登記

表題登記(表示登記)が必要なのはどんなとき?

表題登記(表示登記)が必要なのは、新規に不動産登記事項証明書を作成して表題部を登録するとき、登記事項証明書の表題部を変更・更正する時です。もっとも多いのは、建物を新築した時の建物表題登記ですが、これには増築・改築、および離れに建物を新築した場合も含まれます。

そのほかには、冒頭でも触れた「事務所・店舗を建設するために農地を宅地に変更する」土地地目変更登記など、土地に関連する表題部の変更・更正が多いといえるでしょう。具体例を紹介しておきます。

  • 建物の新築・増築・改築
  • 敷地内に建物を新築・増築・改築
  • 建物を壊して更地へ
  • 農地に住宅・店舗などを建設したいとき(地目の変更、建物に対する表題登記が必要)
  • 財産分与などで土地を統合・分割したいとき
  • 売買にともなって計測した土地の面積が登記内容と異なる

中古住宅を購入してそのまま住み続ける、といったケースを除き、不動産を取得する、所有する不動産でなんらかのアクションを起こすなど、多くのケースで表題登記の手続きが必要になることがおわかりでしょう。

表題登記(表示登記)にかかる費用は?

それでは、表題登記(表示登記)の手続きには、どのような費用がかかるのでしょうか?実は、表題登記の手続き自体にかかる費用は、一部の例外を除いて「各種書類の取得、手続きにかかる手数料」だけです。

役所で揃える住民票などのほか、不動産の所在地を管轄する法務局の手数料を含めても5,000〜10,000円程度、土地合筆登記・分筆登記には登録免許税という税金がかかりますが、それも数千円程度です。

これが権利登記になると、基本的に登録免許税の支払いが必要になるため、取得した不動産の評価額に応じて数十万円以上の税金を支払う必要があります。

手続き面で両者が大きく異なるのは、権利登記が不動産の所有権・権利を明らかにすることを目的とする一方、表題登記が不動産の状況を国が把握することを目的とするからです。

土地家屋調査士への手続き代行依頼が一般的

表題登記(表示登記)の手続き費用が諸費用だけで済むなら、自分で手続きしてしまえばいいのではないか?そう考える方も少なくないでしょう。もちろん、表題登記の手続きを行うのに特別な資格は必要ないため、土地・建物の所有者が自ら手続きすることも可能です。

ただし、知識のない方が自ら表題登記手続きするのは非常に困難です。収集すべき各種書類の中には、不動産登記事項証明書、建物設計図、公図などが含まれるほか、それをもとに計画図を作成し、必要であれば現地調査、写真撮影もしたうえで申請書を作成・提出しなければなりません。

場合によっては、土地の測量が必要になります。表題登記の手続代行は、その道のプロフェッショナルである「土地家屋調査士」に依頼するのが一般的であり、おすすめの方法です。

表題登記(表示登記)に必要な書類・手続きの流れ

難しくても時間がかかっても自分自身で表題登記(表示登記)してみたい!そう考える方に向け、表題登記に必要な書類・手続きの流れを簡単に紹介しておきましょう。

表題登記(表示登記)に必要な書類 概要
検査済証(確認済証) 施工会社・設計会社から受け取る書類一式の一部(建物を建築したケース)
建築確認通知書 施工会社・設計会社から受け取る書類一式の一部(建物を建築したケース)
工事完了引渡証明書 施工会社に交付してもらう書類(引渡証明書・登記事項証明書・施工会社の印鑑証明書)
住民票 申請者の住民票
登記申請書 法務局のWebサイトで入手可能
建物図面・各階の平面図 細かなルールがあるため注意
案内地図 住宅地図、Googleマップを活用することも可能

表題登記の手続代行を土地家屋調査士に依頼する場合は、上記書類のほかに「委任状」が必要。手続きの流れに関しても簡単に紹介しておきましょう。

表題登記(表示登記)の手続き手順 概要
建物完成 各種必要書類の準備・入手
該当する建物の調査 法務局・市役所で資料を調査
現地調査 現地建物を測量して建築確認書との整合性を確認
表題登記(表示登記)申請に向けた書類作成 申請書類の作成のほか、建物の図面も作成が必要
表題登記(表示登記)申請 建物完成後、1か月以内に管轄法務局へ申請が必要
権利登記申請 表題登記とは別に申請が必要。代行して欲しい場合は司法書士へ依頼する
抵当権設定登記申請 住宅ローンなどの融資を受けている場合に必要。代行して欲しい場合は司法書士へ依頼する

表題登記(表示登記)の費用相場

ここまでの解説でおわかりのように、表題登記(表示登記)の手続きにかかる費用は、土地家屋調査士の報酬とほぼイコールです。つまり、土地家屋調査士に依頼した際の費用相場が、表題登記の費用相場だといってしまってもいいでしょう。

土地家屋調査士の報酬はさまざまな要因で変動しますが、参考までに、日本土地家屋調査士会連合会が公表する表題登記の報酬相場を紹介しておきます。

表題登記の種類 最低 全国平均費用相場 最高
建物表題登記 40,000円 83,659円 145,000円
建物滅失登記 18,000円 47,022円 90,000円
土地地目変更登記 15,040円 45,364円 88,050円
土地合筆登記 4,000円 49,481円 120,000円
土地分筆登記 12,000円 430,850円 1,200,000円

公表されている費用相場のうち、建物表題登記が40,000〜145,000円とされていますが、これはおそらく「一戸建て」を対象にした調査だと思われます。実際には、一戸建てとマンションで土地家屋調査士の報酬が同じ、ということはありません。

ニーズの高いと思われる、建物表題登記の費用相場をもう少し詳しく紹介しておきましょう。

建物の種類 費用相場
一戸建て(3階まで) 80,000〜100,000円
一戸建て(4階以上) 100,000〜140,000円
小規模マンション・ビル 160,000〜250,000円
マンション・工場など 250,000〜500,000円

土地家屋調査士の報酬に含まれるものは?

それでは、上述した土地家屋調査士の報酬には手続きに関連するどのような作業が含まれているのでしょうか?まずは、クライアントである

  • 施主が用意する以外の書類・図面の収集
  • すべての書類が揃った段階での資料調査・事前調査
  • 申請書などの書類作成及び登記申請

です。土地の合筆・分筆・地積更正などを依頼する場合は「土地の測量」「境界線の立会」なども追加され、最終的に手続き時に立て替えた諸経費とともに請求される、と考えれば間違いありません。

つまり、表題登記の手続代行を土地家屋調査士に依頼すれば、報酬額にわずかな諸経費をプラスした費用で、すべての手続きを代行してくれるのです。

さまざまな手間と専門的な知識を必要とする表題登記は、専門家である土地家屋調査士に任せるべきだということがおわかりいただけるのではないでしょうか?

表題登記(表示登記)費用が変動する要因

一方、80,000〜100,000円程度である建物表題登記を含め、表題登記(表示登記) = 土地家屋調査士の費用相場に幅があるのも事実です。

これは、土地家屋調査士の報酬が自由化されていることが大きな要因だともいえますが、実はそれ以外にも費用相場が変動するさまざまな要因があるのです。簡単に解説していきましょう。

建物の規模・構造

不動産登記事項証明書の土地表題部には、種類(建物の目的)、床面積、構造などが記載されます。当然、床面積の大きい建物、構造が複雑な建物になれば、調査・書類作成の手間が増えることはおわかりでしょう。

3階建てよりも4階建て、一戸建てよりもマンションの方が費用相場が高くなるのは当たり前なのです。また、新築と同時に敷地内に離れを建てる、ガレージを建てるなどの場合も、床面積が増える・構造が複雑になることから費用が高くなる要因です。

どのような建造物を「建物」と定義するかは意見のわかれるところですが、登記法では「周囲を壁で囲われて屋根がある建造物」は建物になります。簡単な納屋であっても表題登記(表示登記)が必要なことは覚えておいた方がいいでしょう。

新築マンション購入時は?

一戸建てよりもマンションの方が表題登記(表示登記)の費用が高いことは上述したとおりですが、集合住宅であるマンションの表題登記は、だれが行うべきなのでしょう?

各部屋を一般に分譲するマンションであっても、ひとつの建物であることに違いありません。新築マンションの場合は施主である販売会社・オーナーが建物表題登記の手続きを行います。

ただし、表題登記の費用を販売会社・オーナーが全額負担することはあまりありません。各部屋を購入した住人が分割して負担するのが一般的。マンションによっても異なりますが、40,000〜60,000円程度の負担を考えておいた方がいいかもしれません。

土地家屋調査士の作業量・難易度

どのような種類の表題登記(表示登記)の手続き代行を依頼するか?土地・建物の状況・申請の難易度によっても土地家屋調査士の費用相場は変動します。

たとえば、土地の合筆・分筆など「複数の相続人が関係する」案件、隣接する土地の境界線を明確にするため「調査・立会が必要」な案件、資料がまったく揃えられない「難易度の高い」案件などです。

手続代行はどこに依頼すべき?

土地・建物の状態を明確にする表題登記(表示登記)の手続きは、専門家である土地家屋調査士へ依頼するのが一般的です。通常であれば、土地家屋調査士事務所へ相談・依頼するのがベストだと考えられるでしょう。

ただし、不動産の売買・贈与・相続に関連する不動産登記は表題登記のみではないのも事実です。特に建物を新築する際は「権利登記」が必要であり、司法書士の協力が欠かせないケースがほとんどです。

つまり、司法書士と連携している土地家屋調査士事務所、もしくは、土地家屋調査士と連携する司法書士事務所を対象に、依頼したい登記を得意とする優良な士業事務所を選定するのが重要です。

まとめ

非常にわかりにくい表題登記(表示登記)の概要、費用相場や内訳などが多少なりとも理解できたのではないでしょうか?表題登記は、施主・所有者本人が自ら手続きできるのも事実ですが、登記が法律で定められた義務でもあるため、非常に専門的かつ手間がかかります。土地家屋調査士によって費用が変動するとはいっても、作業項目に応じた適切な費用でサービスを提供している事務所がほとんどです。複数の事務所から見積もりを取って、比較検討するといいでしょう。

しかし、普段馴染みのない土地家屋調査士の選定は、候補先を絞り込むことさえ難しいと感じる場合があるかもしれません。「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、優良な事務所をスピーディーに探せます。事務所の選定に迷うようなことがあれば、是非利用してみてください。

監修者の一言

表題登記は法律で義務化されており、放置しておくと10万円の過料が科せられる可能性があるのに対し、いわゆる権利の登記は法律上強制されていません。

権利の登記というものは私人が自身の権利を保全する為に行っておく必要があるものであり、登記しないことによる不利益に対しては自己責任となります。

しかし、表題登記は国が国土等を管理する上で不動産の現況を把握する必要があるから絶対やりなさいというイメージです。(不動産登記実務上、表題登記の申請を放置したといって、実際に過料が課せられたという話を私は聞いたことがありませんが・・・)

表題登記は、
・土地の「地目変更」「分筆」「合筆」
・建物の「新築表題登記」「滅失」「増改築」
などを行う時に必要となってくるのですが、基本的に殆ど専門家以外の手には追えないものばかりです。表題登記が必要になった時には「土地家屋調査士」へ依頼するのが無難でしょう。

土地建物の表題登記は「義務」であり、依頼するのは「土地家屋調査士」とだけ覚えておいていただければと思います。

こしだ司法書士事務所
司法書士 越田一希
監修者

1984年京都市生まれ。不動産・相続・会社の「登記」に必要な手続きを代理する専門家であり、若手ならではのフットワークの軽さと様々な職業経験で培った対応力を持つ法務大臣認定司法書士。自身が法律知識ゼロで資格学習を開始した経験から法律の適用や用語の難しさを理解しており、平易でわかりやすい説明を心がけており評価を得ている。