特定調停の時効は成立する?時効の援用方法やデメリットについて徹底解説!
- 特定調停で払っている借金の返済に時効はあるの?
- 特定調停で時効の援用はできる?
- そもそも時効とはどのような制度か
特定調停の時効は10年です。10年経過したからといって、借金がなくなるわけではありません。
この記事では、特定調停の時効や借金をなくすことができる「時効の援用」について徹底的に解説します。最後まで読めば、特定調停での時効の援用を理解できます。
特定調停で決まった額の返済が難しい場合の対策も紹介するため、特定調停で決まった額を長く支払っていて返済が辛くなっている方は、ぜひご一読ください。
もしも今現在、
- 民事再生・自己破産の手続きに詳しい弁護士に依頼したい
- 借金の状況を適切に評価してくれる弁護士が欲しい
- 手続き費用や弁護士費用の適正価格がわからない
上記のようなお困りがありましたら、比較ビズへお気軽にご相談ください。比較ビズでは、複数の弁護士に一括で見積もりができ、相場感や各弁護士の特色を把握したうえで業者を選定できます。見積もりしたからといって、必ずしも契約する必要はありません。まずはお気軽にご利用ください。
借金の時効には消滅時効と取得時効がある
「時効」と聞くと、刑事事件での犯人逮捕までのタイムリミットを思い浮かべる方も多いでしょう。実際は、刑事事件だけではなく借金にも時効は適用されます。
借金の時効は、取得時効と消滅時効の2種類あります。時効の定義とともに、詳しく解説します。
時効の定義
「時効」とは、本来の権利関係と異なる事実が一定期間続いた場合、事実と異なる権利関係を事実として認める制度です。借金を支払わず督促もない状態が一定期間続いた場合、時効により借金のない状態が事実として認められます。
民法における時効は2種類あります。権利を取得する「取得時効」と権利が消滅する「消滅時効」です。
取得時効
「取得時効」とは、民法162条に規定された、一定期間の経過により権利を取得する制度です。長期間他人の土地を自分の土地として占有していた場合、取得時効により、占有した土地が自分のものになります。
消滅時効
「消滅時効」とは一定期間の経過により権利が消滅する制度です。民法166条に規定されています。納品した商品の代金が支払われず催促がないまま一定期間が経過すると、消滅時効により支払いを請求する権利が失われます。
消滅時効は、借金にも適用します。督促がない状態で一定期間返済をしなければ、消滅時効により時効が成立して、借金を返済する必要がなくなります。
借金の時効成立にかかる期間
借金の時効成立にかかる期間は、いつ借り入れたかにより変わります。2020年4月に民法が改正され、消滅時効の期間が変わりました。
民法改正前後の時効成立までの期間を、それぞれ解説します。
2020年4月以前に借り入れた借金の時効
2020年4月以前に借り入れた債権(借金)の時効は、原則10年です。債権の種類により、時効の期間が1年〜5年となります。
宿泊費 運送費 飲食費 |
商品の代金 弁護士費用 |
医師の診療報酬 工事費 |
会社との借入契約 (商事債権) |
---|---|---|---|
1年 | 2年 | 3年 | 5年 |
会社との借入契約(商事債権)とは、企業からお金を借りる契約です。具体的には、消費者金融や銀行からの借金、クレジットカードのキャッシングやローンを指します。商事債権の時効は5年です。
個人からの借金や、会社ではない信用金庫や協同組合からの借金をした場合、時効は10年となります。
1年〜3年までの時効は、借りた相手の職業により決まるため「職業別短期消滅時効」と呼ばれています。
2020年4月以降に借り入れた借金の時効
2020年4月の民法改正により、職業別短期消滅時効と商事債権の規定は廃止されました。民法改正後に借り入れた場合は、改正後の民法が適用します。以下のいずれか早い方を起算点として、時効が完成します。
- 権利を行使できることを知った時(主観的起算点)から5年
- 実際に権利を行使できる時(客観的起算点)から10年
特定調停の消滅時効は10年
特定調停の消滅時効は10年です。民法改正前に借り入れていた時効5年の商事債権でも、特定調停を行った時点で新たに10年の時効が設定されます。
特定調停を行うと、民法147条の規定によりそれまでの時効がリセットします。調停終了後に、新しい時効が起算されます。時効がリセットされることを「時効の中断」と呼ばれています。
特定調停により時効が設定されるのは、減額前の借金です。特定調停により減額された借金は、減額が確定した時点から消滅時効が計算される点に注意しましょう。
特定調停における時効の起算日
特定調停の時効は、調停で決まった額の返済が滞り、期限の利益を喪失したときから起算して10年となります。
「期限の利益」とは、一定の期日までの間は債務の履行が猶予されることです。分割払いの場合、毎月分割で支払う代わりに、全額支払いを猶予されています。分割払いにより全額返済が免除されることが、期限の利益です。
特定調停をすると、調停で決まった金額を支払うことになります。支払いが不能になると、債権者が残りの債務を一括払いで請求する場合があります。一括払いでの請求は、全額返済が免除される「期限の利益」の喪失です。特定調停における時効の起算日となります。
2020年4月の民法改正で、今までわかりづらかった「時効の停止」の考え方が見直されました。考え方が見直されたと同時に文言も改正され「時効の中断」が「時効の更新」となりました。
時効の援用とは「時効が成立した」ことを相手に主張する手段
特定調停後、返済を行わずに時効期間を過ぎたとしても、勝手に債権が消滅することはありません。債務者が債権者に対し時効成立を主張することで、初めて時効が成立します。
時効が成立し借金の支払い義務がないことを証明するには、時効の援用手続きが必要です。時効の援用手続きをすることで、正式に時効が完成し債務が消滅します。
時効の援用を主張すると、時効の進行が一時的に止まります。時効の進行が止まることを「時効の完成猶予」と呼ばれています。「時効の完成猶予」は、2022年4月の民法改正で見直された用語です。民法改正前は「時効の停止」と呼ばれていました。
時効の援用を主張する方法
時効の援用は、債務者が「時効が完成することにより利益を得る」内容の文書を債権者に対して送付することで主張できます。援用を主張する方法として使われるのは、内容証明郵便です。送り主・宛先・日時・送った内容などの証拠を残すことができます。
内容証明郵便で送付する文書には、次の2点を忘れず記載しましょう。
- この文書により時効の援用を行うこと
- どの債務がいつ時効で消滅したか
時効の援用をする2つのデメリット
時効の援用が成功すると、借金はなくなります。借金がなくなるメリットの一方、デメリットも存在します。時効の援用をするデメリットは、次の2点です。
- 時効の援用を失敗する可能性がある
- 過払い金請求ができなくなる
1. 時効の援用を失敗する可能性がある
時効が発生する起点には権利を行使できることを知った「主観的起算点」と実際に権利を行使できる「客観的起算点」の2種類があります。
時効の起算点を正確に把握するのは、とても難しいです。起算点が違うまま援用手続きをすると、債務を承認したとされ、時効が更新(中断)される可能性があります。起算点を間違え時効の援用を失敗すると、時効が延びる可能性があるため最大の注意が必要です。
2. 過払い金請求ができなくなる
過払い金の請求期限は、完済後10年です。時効の援用により債務が消滅した場合は、過払い金があったとしても、完済していないため返還請求ができません。
時効の援用と過払い金請求は、どちらか片方しか手続きができません。過払い金請求をすると借金を承認したとみなされ、時効が更新されてしまいます。
時効の援用をするとブラックリストはどうなる?
時効の援用をしただけでは、個人信用情報機関の事故情報(ブラックリスト)は消えません。債権者により時効の援用情報が個人情報信用機関に提供された時点で、事故情報は上書きされる、もしくは削除されます。
上書きか削除かは、個人信用情報機関により違います。CICは上書きされ、JICCは削除される傾向にあります。事故情報が上書きされた場合は、元々の掲載期限である5年間は、特定調停により債務整理した情報が残ります。
特定調停で時効を成立させる方法
特定調停の時効が成立するためには、時効の期日まで次の条件が成立し続けている必要があります。
- 一切催告を受けないこと
- 「時効の更新」や「時効の完成猶予」にあたる行為をしないこと
各条件について、詳しく説明します。
1. 一切催告を受けないこと
特定調停の時効が成立する最初の条件は、最終取引日以降、債権者から一切催告を受けないことです。借金での催告とは、返済の督促を指します。
特定調停の時効は10年です。10年間、債権者が一切返済の督促をしないことは考えられないため、特定調停で時効を成立させることは難しいといえるでしょう。
2. 「時効の更新」や「時効の完成猶予」にあたる行為をしないこと
特定調停において事項を成立させるには、時効の更新や完成猶予にあたる行為をしないことが重要です。借金の請求や裁判提起により、時効の起算日となる最終取引日が更新します。最終取引日が更新されると、時効の起算日が変わり、時効も延長されます。
特定調停では、期日に支払いをしない場合強制執行が可能です。強制執行ができるのに債権者が10年間借金を請求しないのは、現実的ではありません。したがって「時効の更新」や「時効の完成猶予」にあたる行為をしないことでの時効の成立も厳しいといえます。
夜逃げをしても時効は成立しない
「夜逃げ」とは、誰にもいわず今の住まいを離れ、新たな住所を隠して逃げ続けることを指します。夜逃げを10年間続けていても、時効は成立しません。
債権者は、債務者の住まいがわからなくても督促は続けています。住まいがわからない場合は、弁護士を使って探り当てようとするでしょう。
債権者が借金の督促に関わる作業をすることで、時効は更新します。自分が夜逃げして借金を支払わなくても、債権者が取る行動により時効は更新され続けます。
まとめ
特定調停で返済に行き詰まった場合、特定調停以外の債務整理を考える必要があります。個人再生や任意整理、自己破産と、債務整理の方法は複数あります。どの方法がいいか、一度弁護士や司法書士への相談をおすすめします。
弊社運営「比較ビズ」では、2分ほどの情報入力で複数の弁護士や司法書士に一括相談が可能です。見積もりも請求できるため、費用と対応内容を比較しながら、最適な専門家へ依頼できます。借金の返済が難しい場合は「比較ビズ」を利用をぜひご検討ください。
1984年京都市生まれ。不動産・相続・会社の「登記」に必要な手続きを代理する専門家であり、若手ならではのフットワークの軽さと様々な職業経験で培った対応力を持つ法務大臣認定司法書士。自身が法律知識ゼロで資格学習を開始した経験から法律の適用や用語の難しさを理解しており、平易でわかりやすい説明を心がけており評価を得ている。
「時効の中断・時効の停止」という言葉が「時効の更新・時効の完成猶予」といった語句に変更されたといった些細なことから、そもそもの時効が成立するまでの期間に変更がある等多岐にわたっています。
さらに、改正前に成立している債権債務関係に関しては「経過措置」として従前の民法が適用されるといった実務上の運用がされています。それにより改正前の法律が適用されるのか改正後の法律が適用されるのかといった判断が必要になってくるのですが、各種債権の起算点など考慮しなければいけない問題が多数存在することになります。
どういった適用がされるかによってそもそもの話が大きく変わってくることも考えられますので、まずは専門家へ相談されることをお勧めします。
比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。
もしも今現在、
- 民事再生・自己破産の手続きに詳しい弁護士に依頼したい
- 借金の状況を適切に評価してくれる弁護士が欲しい
- 手続き費用や弁護士費用の適正価格がわからない
上記のようなお困りがありましたら、比較ビズへお気軽にご相談ください。比較ビズでは、複数の弁護士に一括で見積もりができ、相場感や各弁護士の特色を把握したうえで業者を選定できます。見積もりしたからといって、必ずしも契約する必要はありません。まずはお気軽にご利用ください。
民事再生・自己破産に関連する記事
-
2024年04月22日民事再生・自己破産任意整理の費用相場を解説!費用が払えないときの対策や安くする方法も紹介
-
2023年09月19日民事再生・自己破産任意整理の返済中に借入はできる?審査落ちの理由やお金が足りないときの対策を …
-
2023年08月08日民事再生・自己破産任意整理後に払えない場合はどうなる?3つの対処法と最適な相談先を紹介
-
2023年07月25日民事再生・自己破産任意整理とは?メリットやデメリット・手続きの流れを詳しく解説
-
2023年07月21日民事再生・自己破産任意整理ができないケースとは?基本知識と対処法をわかりやすく解説
-
2023年05月01日民事再生・自己破産任意整理のブラックリストとは?掲載期間やデメリットを徹底解説