オフィス移転のチェックリスト
一般家庭の引っ越しと比べて、オフィスの移転の際にはやるべきことがたくさんあります。物件探しから内装のレイアウトや各種工事、さらには、移転に関する関係各所への連絡等、とにかくタスクが多く、複雑になりやすいものです。移転後のトラブルを防ぐためにも、オフィスの移転ではまずチェックリストを作り、項目を一つずつ確認しながら着実に作業を進めることが大切です。
移転前の現オフィスに関するチェックリスト
移転先のことを考えるより先に、現オフィスをスムーズに退去するために、契約内容等を再確認しておかなければなりません。
移転前の現オフィスに関するチェックリスト 1.退去の予告
オフィスの場合、退去日の6か月前には貸主に対して解約告知をしなければならない場合が多いです。物件によって違いはありますが、遅くなると余計な費用を支払わなければならなくなることもあるので注意しましょう。
移転前の現オフィスに関するチェックリスト 2.原状回復費用
一般向けの物件と同じく、オフィスも退去に際して原状回復の義務があります。オフィスの場合、経年劣化した部分についても、借主が回復の費用を負担しなければならないことが多いです。原状回復費用はトラブルが起こりやすいポイントですので、事前に契約書を見直し、貸主にも確認しておくようにしましょう。
移転先の新オフィス選定時のチェックリスト
現オフィスの退去について目処が立ったら、新オフィスについて関して具体的にチェックリストを作っていきます。オフィスは企業にとっての顔的な存在ですから、理想の物件を見つけるために妥協しないことが大切です。
移転先の新オフィス選定時のチェックリスト 1.場所の選定
新オフィスの場所をどこにするかの基準は企業によって異なりますが、重要なのがアクセスの良さです。社員の現住所からあまりに遠いと通勤の負担を強いることになりますので、なるべく現オフィスと比べて通勤時間が長くならない場所を選びましょう。
また、取引先等、頻繁に訪問する相手のアクセスの良さも重要です。あまりに通いづらい場所に移転すると、業務に支障を来す恐れもあります。
さらに、銀行など業務上、よく利用する施設との位置関係もチェックしておきましょう。銀行の支店など頻繁に通う施設が近隣にないと、こちらも業務上、大きな不便になってしまいます。
移転先の新オフィス選定時のチェックリスト 2.同じ建物に入居しているテナントを確認
有名企業が入る大規模なオフィスビルなら安心ですが、中小企業や新興企業の場合、雑居ビルなどの小さなところに移転するケースもあるでしょう。その場合、同じ建物にどんなテナントが入っているかを確認しておくことも重要です。
他のテナントのことなど関係ないと思いたいところですが、企業のイメージにも大きな影響を与えます。少なくとも反社会的勢力関連の事務所が入っていないかは入念にチェックしておくべきです。
移転先の新オフィス選定時のチェックリスト 3.家賃
どんなに理想的なオフィスが見つかったところで、自社の経済力を超えるような家賃の高い物件では意味がありません。また、家賃だけでなく、契約時にかかる敷金、礼金、保証金等についてもチェックしておきましょう。
移転先の新オフィス選定時のチェックリスト 4.不動産会社と交渉
希望の物件が見つかったら、不動産会社と交渉して少しでも有利な条件で契約します。たとえば、交渉によって前家賃を割引、もしくはフリーレントにしてくれる可能性もあるので、各費用項目についてとりあえずは交渉してみましょう。
オフィス移転のための社内準備のチェックリスト
移転先のオフィスが決まったら、社内で移転に向けての準備を始めます。
オフィス移転のための社内準備のチェックリスト 1.スケジュールを立てる
移転まで3か月以上あるなら、大まかに移転までのスケジュールを立て、詳細は準備を進めながら詰めていくという方法もあります。ただし、3か月も期間に余裕がない場合は、自社だけで無理をするよりも、スケジュールの組み立てから業者に依頼するのもありです。
オフィス移転のための社内準備のチェックリスト 2.引っ越し業者を決める
引っ越し業者を選ぶ際に気になるのは、やはり料金ではないでしょうか。ただ、料金を気にして安さ重視で選ぶより前に、どこまでが業者のサービス範囲なのかをチェックしましょう。
単に荷物を運んでくれるだけでなく、インターネット環境の整備までやってくれる方が、いくつもの業者に依頼する手間が省けてお得になることが多いです。オフィス移転に対して、オールインワンで対応する業者を探してみましょう。
オフィス移転のための社内準備のチェックリスト 3.内装のレイアウトと工事業者を決める
実際に移転作業が始まるより前に、新オフィスの内装についてどのようなレイアウトにするか決めておきましょう。当日になってデスクや家具の配置を考えていては、のちのち不便を感じることは確実です。事前に社員の動線を考えつつ、オフィス空間の割り振りを決めておきましょう。
レイアウトが決まり工事が必要なところがあれば、内装工事の業者を決めます。予算とデザイン、それにスケジュールを考慮して、最適な業者を相見積もりで選ぶとよいでしょう。
オフィス移転のための社内準備のチェックリスト 4.OA機器や各種サービスの利用先を決める
現オフィスでOA機器をリース契約している場合、新オフィスではどうするかを決めます。特に不都合がないのなら継続すればよいですし、これを機に別の業者と契約するのでもよいです。
また、社内にウォータークーラーや自動販売機などの設備を設置する場合は、それらを提供する業者をどこにするか決めましょう。こちらも現オフィスで契約しているところがあり、移転先でも可能なら継続すればよいですが、サービスエリア外になる場合は別の業者を探す必要があります。また、物件の管理会社に清掃サービスがない場合、清掃業者の選定も必要です。
オフィス移転のための連絡事項チェックリスト
取引先や銀行などとのやり取りに支障が出ないように、オフィスの移転よりなるべく早めの連絡が必要です。連絡先ごとにやるべきことをチェックリストにまとめておきましょう。
オフィス移転のための取引先等への連絡チェックリスト 1.取引先への連絡
取引先への連絡は、オフィス移転の2〜3週間前までには完了しておきましょう。メールではなく案内状を郵送する場合は、もう少し早めに見ておいた方がよいです。前住所宛ての郵送物に対して、確実に受け取るために郵便局にも移転前に転送依頼をしておきます。
オフィス移転のための取引先等への連絡チェックリスト 2.銀行などの金融機関への連絡
金融機関には早めの連絡が必要です。なるべく移転の3か月前には連絡を完了させておきましょう。
オフィス移転のための取引先等への連絡チェックリスト 3.定期配送サービスへの住所変更の連絡
新聞や雑誌を購読している場合は、配送先の変更を連絡する必要があります。なるべくオフィス移転の翌日から新住所宛てに配送してもらえるよう、タイミングを調整しておくことが大切です。ほかにも定期配送物がある場合は、契約先に早めに連絡しておきましょう。
オフィス移転のための取引先等への連絡チェックリスト 4.NTT
電話回線の開通には時間がかかります。通常の電話回線が2週間程度、インターネット回線が3週間以上かかることもありますので、オフィス移転の日取りが決まったらなるべく早めにNTTに連絡してください。建物によっては光回線を開設するのに工事の必要があるため、その期間を見越して移転の1か月以上前には連絡しておいた方がよいです。
オフィス移転のための取引先等への連絡チェックリスト 4.それ以外への連絡
企業によっては業界団体等に所属していることもあるでしょう。その場合はもちろん加入先の団体に住所変更届を提出する必要があります。また、ネットワークの保守管理会社や警備会社などと契約している場合も、連絡を忘れないように注意です。
オフィス移転に関する提出書類チェックリスト
企業が住所を移転する場合、関係省庁を始め、移転の届け出を提出する必要があります。こちらもチェックリストを作り、漏れのないように注意してください。
オフィス移転に関する提出書類チェックリスト 1.法務局
法務局には、会社本店の移転であれ、支店の移転であれ、移転登記の申請書を提出しなければなりません。会社本店の場合、移転日から2週間以内、支店の場合、移転から3週間以内が提出期限です。
オフィス移転に関する提出書類チェックリスト 2.税務署
法人税の関係上、税務署にもオフィスの移転があった時には、速やかにそのことを届けなければなりません。しかも、移転先の管轄税務署だけでなく、移転前の管轄税務署にも異動届出書を提出する必要があるので、忘れないように注意してください。
なお、税務署に提出する異動届出書は、オフィスが移転した時だけでなく、代表者の変更や社名の変更があった時にも必要です。
オフィス移転に関する提出書類チェックリスト 3.警察署
社用車がある場合は、管轄の警察署に「自動車保管場所証明申請書」を提出する必要があります。提出期限はありませんが、この証明がないと車を保有することはできませんのでなるべく早く提出してください。
なお、オフィス移転に伴って車のナンバープレートが変更になる場合、管轄の警察署に「安全運転管理者変更届」を提出する必要があります。
オフィス移転に関する提出書類チェックリスト 4.年金事務所
社員の年金や健康保険の関係上、年金事務所にもオフィス移転のことを知らせなければなりません。「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を提出してください。なお、移転先の住所によって提出先が違います。事前にどこに提出するべきか確認しておきましょう。
オフィス移転に関する提出書類チェックリスト 5.公共職業安定所(ハローワーク)
公共職業安定所(ハローワーク)には、雇用保険の関係上、「雇用保険事業主事業所各種変更届」を提出しなければなりません。移転から10日以内が提出期限ですので注意しましょう。
また、ハローワークには「労働保険所在地等変更届」という書類も提出する必要があります。こちらの書類は労働基準監督署にも提出しなければならないので、忘れないようにチェックしておきましょう。
オフィス移転に関する提出書類チェックリスト 6.郵便局
移転先に郵便物を届けてもらうために、郵便局には転居届を提出しなければなりません。転居届の提出期限はありませんが、郵便の転送は転居届を受理して数日後からになるため、オフィスを移転したら直ちに提出しておくことをおすすめします。
オフィス移転に関する提出書類チェックリスト 7.消防署
オフィス移転の7日前までに、管轄の消防署に「防火対象物使用開始届出書」を提出しなければなりません。また、内装工事を行う場合は、工事の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」を提出しなければならないことになっています。後者は通常、工事業者が手配してくれますが、頼り切りにせず、自社でも確認しておきましょう。
また、社員が50人以上在籍するオフィスの場合、防火管理者を置く必要があるため、移転前に「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を移転先住所を管轄する消防署に提出してください。防火管理者資格のある人がいない場合、新オフィスの誰かが防火管理講習を受けて新たに資格を取得しなければなりません。
オフィス移転案内のためのチェックリスト
オフィス移転に伴い、関係各所に移転案内を送付する必要があります。その案内状の作成のためにチェックしておくべきことを押さえておきましょう。
オフィス移転案内のためのチェックリスト 1.送付先のリスト化
顧客管理がふだんからしっかりできておりデータベースがあるのなら、それを利用すれば移転案内の送付先リストも簡単に作成できます。そうでない場合、全社を挙げてリスト化のために早めに準備を進めましょう。
オフィス移転案内のためのチェックリスト 2.案内状の作成
案内状の文面、印刷、宛名書き等の作業だけでも意外と時間を取られます。そのうえ、作業中に社内での確認に時間がかかることも考えられますので、こちらもなるべく早く、できれば移転の3か月前ぐらいには準備を開始した方がよいでしょう。
オフィス移転案内のためのチェックリスト 3.発送時期を決める
案内状ができたら、いつ発送するかを決めます。早く届く分には移転日の1か月前ぐらいでもかまいませんので、やはりこちらも早めに準備してください。
オフィス移転案内のためのチェックリスト 4.ウェブサイトの住所変更等
自社サイトに記載の住所を変更するとともに、フェイスブックの企業ページやGoogleマップの住所も変更します。なお、Googleマップは、Googleマイビジネスの住所を変更すれば自動的にその内容が反映される仕組みです。
オフィス移転日前後のチェックリスト
オフィス移転前の手続きや手配が完了したら、いよいよ移転日に向けての調整です。トラブルや変更等にも対応できるよう、あまりタイトではなく余裕のあるスケジュールを立てましょう。
オフィス移転日前後のチェックリスト 1.廃棄する物品のリスト化
事前に新オフィスに持っていくものと、この機に廃棄してしまうものを仕分けし、リスト化します。直前にはそのリストを確認しながら、当日になって混同しないように目印を付けておくとよいでしょう。
オフィス移転日前後のチェックリスト 2.移転日のスケジュール等を社内に説明
オフィス移転に関して確定したスケジュールは、早めに社内で共有しておいた方がよいでしょう。特に、業務に影響の大きいネット環境のスケジュールは周知を徹底しておく必要があります。
また、引っ越し業者に依頼するとしても、移転日当日は社員も搬出入を手伝ったり、家具等の配置を指示したりする必要があります。その際に混乱しないように、作業の割当を事前に決めておきましょう。当日になって何をしてよいかわからない人が出ないように、きっちり役割分担を決めておくことが大切です。
まとめ
オフィスの移転では、多方面にわたってやらなければならないことが細々とあります。スムーズな移転が果たせるよう各所への連絡や手配等、余裕を持って早めに準備を進めつつ、チェックリストを作って社内でも情報を共有し、それぞれの役割を明確にしておきましょう。
1996年生 福島県いわき出身 インテリアデザイン専門学校卒業。デザイン事務所、不動産会社のリノベ事業部で経験を積み、2021年に独立。デザインを通して、オフィステナントの入居率UPや空室対策を提案。顧客の要望に合わせたオフィスレイアウト、リノベーション工事を請け負う。
オフィス移転・引越しの費用・相場に関連する記事
オフィス移転・引越しに関連する記事
店舗デザイン・オフィス内装会社に関連する記事
-
2023年03月24日原状回復・現状復帰原状復帰と原状回復の違いとは?原状回復義務・原状復帰工事のポイントを解説!
-
2023年03月09日店舗内装・設計店舗改装に補助金や助成金は使える!失敗しない申請時の注意・計画時のポイント …
-
2023年01月31日オフィス移転・引越しオフィス移転の物件探しで意識すべきポイントは10個!トラブル対処法も解説
-
2023年01月31日オフィス移転・引越しオフィス移転のチェックリスト
-
2022年12月27日オフィス内装・設計【入門】OAフロアとは?種類やメリット・デメリット、条件などを徹底解説
-
2020年08月06日店舗内装・設計テナントのリフォームで聞くc工事ってなに?その特徴と注意点をチェック!
記事の内容の通り、オフィス移転では様々な準備が必要になります。
準備不足の為、手配が遅れ工事も引越しも終わっているのに、電話回線・インターネット回線が繋がらず営業を開始できないケースや、ビルの管理規約で工事制限が多く工期が大幅に遅れてしまい契約開始から、中々入居できないケースも多く見られます。
折角、格好良く仕上げた内装が電話回線・インターネット回線が後になってしまったために露出した線が不格好に出てきてしまった、なんてこともございますので内装工事・配線工事・引越しなどをトータルでお任せできる業者を選定することをおすすめします。
オフィス移転は、オフィス家具や書類を整理するチャンスです。働きやすい環境を求めて素敵なオフィスが出来上がれば社員のやる気や業績UPにつながりますので、ただの引越しにならないよう社内で検討して早めに準備を進めましょう。