外国人の会社設立、日本人とは違う?設立の流れを徹底解説

ささのは司法書士事務所
監修者
最終更新日:2022年10月31日
外国人の会社設立、日本人とは違う?設立の流れを徹底解説

会社を設立する場合、様々な手続きを踏まなければなりません。もし外国人が設立する場合は更に手続きが増してしまいます。今回は外国人が会社設立したい場合に必要になる手続きや流れなどを分かりやすく解説します。

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外国人の会社設立では在留資格(ビザ)に注意

基本的に外国人でも日本で会社を設立することは可能です。ただし在留資格(ビザ)の関係で、活動に制約が伴うかもしれません。

日本人の配偶者等や定住者、永住者、永住者の配偶者であれば、活動に制約はないです。このため、日本で会社設立も比較的自由にできます。

ただし技術・人文知識・国際業務や技能、家族滞在、留学などの在留資格の場合、日本国内の活動に制約が伴います。まず大事なのは、「経営管理」という在留資格への変更手続きを行う必要があります。

技能から経営管理の在留資格に変えることで、会社の経営者として活動が行えるようになります。在留資格の変更申請は、会社登記の手続き後に初めて可能です。

もし在留資格変更がうまくいかなかった場合、オフィスの賃貸借契約や出資金などの投資が無駄になります。会社設立やビザ手続きに関する専門家に相談しながら、進めていった方がいいでしょう。

外国人の会社設立の場合、提出書類が違う

会社設立にあたって、いろいろと提出書類を準備する必要があります。しかし日本人と外国人とでは、その書類の種類が異なるので注意しなければなりません。

外国人が会社を設立する場合、どこに住んでいるかによって変わります。もし代表取締役含め、全員役員が日本国内に居住している場合、必要な書類は以下の通りです。

  • 印鑑証明書2通
  • 個人の実印
  • 会社の実印

もし役員の中に国外居住の方がいる場合、必要書類の内容が異なってきます。国際郵便で書類を用意しなければなりません。

  • 海外居住の中国人・台湾人・韓国人の場合、それぞれの国の発行する印鑑証明書
  • 上で紹介したほかの国籍で海外居住者の役員のサイン証明書
  • 証明書を翻訳したもの
  • 会社の実印

海外在住の場合、それぞれの発行する証明書とその翻訳文が必要です。時間をかけないためには、早めに当事者に手配をお願いしておきましょう。

日本在住の役員の場合、会社設立までかかる期間は2週間程度です。ただし海外在住の役員がいる場合、国際郵便のやり取りが追加されるため、1か月程度かかる可能性もあります。

印鑑について

多くの国や地域で、印鑑はなじみのないアイテムです。もし印鑑を安く作りたければ、柘やシャム柘などがおすすめです。

サイズについては大きさに規定のある点に注意が必要です。法務局に登録しなければなりません。

印鑑の直径が10〜30mmでなければなりません。一般的には18〜21mmのものが相場といわれているので、参考にしてみるといいでしょう。

会社設立にあたって、印鑑はいくつか用意しておいた方がいいです。自分本人であることを証明する実印と会社で交わす契約書に押印するための代表取締役印は必要です。

このほかには領収書や注文書、稟議書などの社内文書で使われる角印もあったほうがいいでしょう。日常的な業務で、しばしば使用され、社印ともいわれます。

会社経営では銀行との取引は欠かせません。そこで銀行に登録するために銀行印は、リスクマネジメントの観点から代表取締役印とは別に準備しておいた方がいいです。

外国人の株式会社設立の流れ

ここでは株式会社設立の流れについてみていきます。基本的には日本人のそれと一緒です。どのようなステップを踏んでいくのか、以下で詳しく見ていきます。

株式会社の基本事項を決める

会社設立にあたって、いくつか決めるべきことがあります。その内容についてまとめると、以下の通りです。

  • 社名
  • 会社の住所
  • 事業目的
  • 発起人
  • 発起人の出資額
  • 役員構成

この中でも特に最初に決めるべきなのは、会社の住所です。早めに事務所を確保するか、難しければ自宅を所在地に一時的にするのも一考です。

会社名を決めるのもこの段階です。会社名を決めるにあたって、法律上いくつかルールがあるのでそれに基づき検討しましょう。

まず会社名の中には、株式会社を入れます。ちなみにどこに入れるかは、別に決まりはないです。

会社名に使用できる文字にも制約があります。しかしこれは基本的に気にする必要はないでしょう。

漢字やひらがな、カタカナ、ローマ字、数字いずれでも使えます。ただし中国語の中でも簡体字や繁体字、ハングルなどは使えないので注意が必要です。

事業目的はこの後作成する定款の中に盛り込まなければならないので、考えておく必要があります。事業目的は、具体的で明確、法律の範囲内であることなどのルールを意識して作成しましょう。

基本的には起業して何をするかを記載します。ただし今のところはやらないけれども、いずれはやってみたいということを盛り込んでも問題はないです。

これも後で詳しく見ていきますが、業種によっては許認可を受ける必要のあるビジネスも出てきます。もし許認可の必要な事業を行うのなら、事業目的にそのことを盛り込んでおきましょう。

中古車の輸出入する場合、中古自動車の買取、販売及び輸出入はもちろん記載します。そのほかに古物営業法に基づく古物商も記載しておかないと、許可の下りない可能性が出てきます。

先に紹介した項目の中で、発起人というものがあります。発起人とは、株主の代表者で、会社を設立する人のことです。

発起人の担当する役割はいろいろとあります。定款の作成や株主の募集、出資金の払い込みで、会社設立後は必ず株主になる流れです。

発起人をだれにするか、これは起業する外国人がどこに住んでいるかで変わってきます。もし日本在住であれば、当人が発起人となって問題ありません。

一方海外在住の場合には、日本に住んでいる知り合いを探して、その人に発起人になってもらいます。そして会社が設立された後で、その外国人が取締役に就任するパターンが多いです。

発起人の出資額についても考慮する必要があると紹介しましたが、これは発起設立といいます。発起設立とは、発起人全員がお金を出し、会社の株式はすべて発起人が受け取ります。

もう一つの資金調達法として、募集設立というスタイルもあります。これは発起人以外の一般から広く資金を集めるスタイルです。

この場合、株式は発起人だけで独占はできません。出資をしてくれた一般の方にも、株式を引き取ってもらいます。

募集設立をする場合、広く資金調達をする関係もあって、会社設立の手続きが複雑になってしまいます。

「定款」を作成する

定款とは、会社の憲法ともいえるような基本的なルールです。先ほど紹介した基本事項を押さえて作成するのがおすすめです。

業種や規模にもよりますが、大体ワードで4〜5ページくらいが目安です。出来上がったら、公証役場に持っていき認証を受ける必要があります。

公証役場で定款を認証する

定款ができたら、公証役場に持っていきます。そこで公証人の認証を受けなければ、有効なものとは言えません。

紙で作成することももちろん可能です。しかしできれば、PDFファイルにして、電子署名をしたペーパーレスのもので作成するといいでしょう。

紙の定款の場合、印紙税として4万円かかります。これが電子定款にすると、印紙税が無料になりお得です。

会社の資本金を振込する

定款の認証手続きが終わった段階で、発起人の個人口座に所定の資本金を振り込みます。ここで重要なのは、この口座は日本国内の金融機関のものでなければならない点です。

ただし海外の金融機関でも、日本国内の支店の口座であれば問題ありません。海外送金で振り込むのも可能ですが、日付には注意したほうがいいです。

短期滞在のノービザの場合、日本に銀行口座を開設できません。その場合には一時的に日本国内在住の協力者を見つけ、口座を借りなければならないでしょう。

法務局へ法人設立登記をする(会社設立)

今度は会社設立のために必要な、法人設立登記を行います。自分で行うことも可能ですが、専門的な知識が必要なため、司法書士などの専門家に任せるのが一般的です。

司法書士にお願いすると、登記手続きに必要な書類を作成してくれます。自分で行う手間を大幅に省けるわけです。

特に書類に不備が見られない場合、申請してからおよそ1週間で登記事項証明書を取得できます。登記申請するにあたって通常、法務局に15万円、司法書士に代行をお願いするとプラスアルファの報酬が必要です。

税務署へ各種届出をする

今度は税務署に対して、必要な書類を提出しなければなりません。申請が必要なものとして、以下のものが考えられます。

  • 法人設立届
  • 給与支払い事務所等の開設届
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請>

各種書類を提出すると控えを渡されますが、これはなくさずに保管しましょう。ビザ申請の時に添付する必要があるからです。

許認可を取得する

これはすべての会社設立を目指す外国人が必要な手続きではないです。ただし業種によっては必要になるので、この段階で手配を進めておきましょう。

  • 不動産業
  • 建設業
  • 人材紹介業
  • 旅行業
  • 免税店
  • 古物商許可

以上の業態を検討している場合には、許認可を取得しなければ営業を始められません。これらの手続きは、経営管理ビザの申請前までに済ませておく必要があります。

経営管理ビザの申請

入国管理局にて、経営管理ビザの申請を行います。もしこのビザ申請の許可が下りなければ、会社設立は失敗ということです。

経営管理ビザが許可されるかどうか、基準は2つあります。この両方を満たしていると判断されないと、経営管理ビザへの資格変更は不可能です。

  • 事務所が確保されているかどうか
  • 事業規模が一定水準に達しているかどうか

事務所が確保されているかどうかは、住居とは別のスペースで、継続的に事業を行えるスペースという意味です。例えばマンスリーマンションの場合、継続的というところが引っかかってしまいます。

インキュベーションオフィスを事務所に使おうと考えている人もいるでしょう。この場合は、ケースバイケースです。

例えばそのオフィスが起業支援を目的にしているか、事業用オフィスとしてレンタルしていれば、認められる可能性が高いです。ただし条件がいろいろとついてきます。

作業スペースの仕切りがあるか、固定席を確保できているかなども判断基準として考慮されます。心配であれば、契約前に施設を実際にその目で見ておいた方がいいでしょう。

事業規模もビザの認可の基準になります。2人以上の常勤職員を雇用できる規模が一つのラインと考えましょう。

すでに常勤職員を2人採用していれば、認められる可能性は高いです。そのほかにも資本金を含めた初期投資額が500万円以上であれば、この事業規模の項目はクリアできていると判断されるでしょう。

年金事務所・ハローワーク・労働基準監督署へ各種届出

年金事務所やハローワーク、労働基準監督署に各種届出を行うのが、外国人の会社設立における最後のステップです。ただしこれは、経営管理ビザの場合義務ではなく、任意と考えてください。

ちなみに年金事務所に提出する書類は以下のようなものです。

  • 新規適用届
  • 新規適用事業所現況届
  • 被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届

労働基準監督署に提出する書類についても見ていきます。

  • 保険関係設立届
  • 添付書類
  • 会社謄本
  • 従業員名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿

ハローワークにも、いくつか書類を届け出る必要があります。

  • 適用事業所設置届
  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 保険関係成立届
  • 添付書類
  • 被保険者証(雇用保険従業員が前に雇用保険の被保険者だった場合)
  • 会社の登記簿謄本
  • 従業員名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 労働基準監督署の受付印のある労働保険関係成立届の控え

まとめ

外国人が会社設立するにあたって、経理管理ビザがもらえるかどうかが重要なポイントです。しかもあらかた会社設立のステップがすべて完了したところで、申請を行います。

もしビザが下りなければ、事務所を借りたり、定款を作ったりのすべての工程が無駄になります。より確実にビザ申請が認められるためには、専門家に相談したほうがいいでしょう。

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監修者のコメント
ささのは司法書士事務所
佐々野 将太

兵庫県出身。大阪大学法学部卒業後、社会人として勤務しながら司法書士試験に合格。司法書士登録後は埼玉県の司法書士事務所で幅広い業務経験を積む。なかでも相続・遺言については年間100件近くの案件に携わっており、司法書士としての強みとなっている。2022年に大阪府池田市にてささのは司法書士事務所を設立。「わかりやすく、親しみやすい」をモットーに、市民から一番近い司法書士事務所を目指している。

本記事で述べた通り、会社を設立するためには様々な書類作成や手続きを行う必要があります。設立者が外国人の方であれば尚更煩雑な作業になるでしょう。勿論一つ一つ調べていけば自分での会社設立も不可能とは言いません。ただし、膨大な時間と労力がかかることは覚悟したほうが良いと思います。

時間に余裕がない方は専門家に相談することをお勧めします。会社設立に関係する専門家としては行政書士、司法書士、税理士があります。外国人の方であれば在留資格の関係で懇意にしている行政書士の先生がいると思いますので、その方に相談してみてください。必要に応じて司法書士や税理士を紹介してもらえると思います。勿論、知り合いに司法書士や税理士がいればそちらからでもいいでしょう。

ただ、設立はあくまで会社としてのスタート地点です。設立後には税務・法務・労務の観点で様々な問題が発生することが考えられます。その時には、設立でお世話になった専門家に再度依頼することが多いです。だからこそ、専門家に設立手続きを依頼する際は今後も会社を任せていける専門家かという観点で選ぶのもありだと思います。
比較ビズ編集部
執筆者

比較ビズ編集部では、BtoB向けに様々な業種の発注に役立つ情報を発信。「発注先の選び方を知りたい」「外注する際の費用相場を知りたい」といった疑問を編集部のメンバーが分かりやすく解説しています。

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