法人登記の申請方法・必要書類・費用は?知っておきたい会社設立の基本を解説!
- 会社設立に必要な法人登記とはなに?商業登記となにが違う?
- 法人登記で揃えるべき必要書類は?登記費用はいくら?
- 法人登記・会社登記の申請方法は?申請できるのはだれ?
法人登記とは、医療法人・学校法人など「法律上の人格」を持つ組織を設立する際に、申請・手続きが義務付けられている登記のこと。もちろん、法人格を持つ会社を設立する際も法人登記が必須であり、会社設立時の登記を特に「会社登記」と呼ぶ場合があります。
しかし、設立する会社形態によって必要書類が異なるなど、初めて会社を設立する方にとって法人登記は簡単なものではありません。
そこで本記事では、株式会社を設立する場合の法人登記の申請方法・必要書類・費用を中心に、起業する方なら知っておきたい会社設立の流れ・基本を徹底解説!登記事項に変更があった場合の対応も紹介していきます。
会社設立に欠かせない法人登記
そもそも登記とは、個人・法人の重要な権利や義務を社会に向けて公示することによって、権利・義務を保護するとともに円滑な取引を実現させるために設けられた制度のこと。例えば、その中でもよく使う2つの登記について、以下のようにまとめました。
- 「商業登記」
会社の商号・取締役名・所在地・資本金・会社の目的などを商業登記簿に記載し、一般に公示することによって商取引の信頼性を担保する制度
- 「法人登記・会社登記」
商業登記簿に会社情報を登記する申請手続き
重要な権利・義務を保護して円滑な取引を実現することを目的とする商業登記では、すべての法人が登記されていることが前提条件であり、例外は許されません。つまり、法人としての会社を設立するためには、例外なく法人登記・会社登記が必要です。
株式会社設立の流れ・手順・費用
会社を設立して商業登記簿に登録するためには、法人登記・会社登記の必要書類を揃えて法務局に提出・申請する必要があります。つまり、会社設立の流れ・手順は、法人登記・会社登記の準備とほぼイコール。法人登記・会社登記の方法を知るためには、会社設立の流れ・手順・費用を理解しておくことが重要です。
<日本における会社形態には、株式会社のほか、合同会社、合資会社、合名会社の4種類があり、b>約9割を占めているのが株式会社です。本記事でも、株式会社の法人登記・会社登記の申請方法、および会社設立の流れを中心に解説していきます。以下のように5つの工程があります。それぞれ見ていきましょう。
- 会社概要・基本事項の決定
- 定款の作成
- 公証役場で定款の認証
- 資本金の払い込み
- 法人登記・会社登記の準備
1. 会社概要・基本事項の決定
株式会社設立に向けた最初のステップは、会社概要・基本事項を決めることです。決めること、やるべきことはおおまかに以下の通り。
- 事業目的・事業内容を含む会社概要
- 会社の商号・本店所在地の確定
- 法人印鑑の作成
- 取締役会・監査役の有無
- 役員報酬額
- 資本金の額
- 事業年度など
注意点としては、商号の決定・法人印鑑の作成にあたって「不正競争防止法」に抵触しないよう類似商号をチェックすること、取締役全員分の印鑑証明書を取得することが挙げられます。また、本店所在地によって管轄の法務局が変わるため、番地を含めて本店所在地を明確にしておくことも重要です。
参照元:法務局「管轄のご案内」
2. 定款の作成
次に、決定した会社概要・基本事項をもとに、会社の基本原則となる「定款」を作成します。定款には必ず記載しなければならない記載事項が決められており、抜け・モレがあると定款自体が無効になってしまいます。必要な記載事項は以下の通り。
- 事業目的
- 商号
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額
- 発起人の氏名・名称・住所
- 発行可能株式数など
3. 公証役場で定款の認証
株式会社の場合は、作成した定款が正しいものであるかどうかを、第三者である公証役場の公証人に認証してもらう必要があります。公証役場に定款を提出して認証してもらう方法、電子定款で認証してもらう方法の2つがあり、電子定款の場合は収入印紙代40,000円を節約可能です。下記に早見表を用意したので、ご覧ください。
内訳 | 電子定款の認証費用 | 文書定款の認証費用 |
---|---|---|
定款認証手数料 | 50,000円 | 50,000円 |
定款印紙代 | 必要なし | 40,000円 |
定款謄本代 | 2,000円程度 | 2,000円程度 |
合計 | 52,000円程度 | 92,000円程度 |
電子定款での認証は印紙代を節約できますが、電子署名をはじめとした環境構築が必要。司法書士に会社設立を依頼する場合は、電子定款が基本となるため、報酬額から印紙代を差し引けるメリットが得られます。法人登記・会社登記の必要書類のひとつである、定款謄本の取得を忘れないようにしましょう。
もっと詳しく知りたい方は、下記リンクをご覧ください。
4. 資本金の払い込み
定款作成・認証と同時に進めておきたいのが、資本金の払い込みです。「資本金は振込が必要」であるため、自分名義の口座に自分名義で振込まなければなりません。単純に自分名義の口座に入金すればいい、というものではないことに注意が必要です。
法人登記・会社登記するためには、資本金の払い込みを完了していることを証明する必要があるため、通帳の表紙・裏表紙、入金が記帳されているページをコピーし、法人実印を押印した「払込証明書」を作成します。
5. 法人登記・会社登記の準備
法人登記・会社登記の必要書類を揃え、法務局に申請する準備を整えます。法人登記・会社登記の申請は、原則として代表取締役の役割ですが、申請手続きを専門家に依頼することも可能。必要書類の準備だけでなく、法人登記・会社登記の前提となる定款の作成・認証、法人印鑑の作成などもサポートしてもらえます。
法人登記・会社登記の必要書類・費用
代表取締役が自ら法人登記・会社登記する場合は、以下の必要書類を揃える必要があります。
- 株式会社設立登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款
- 登記すべき事項を記載した書面・CD-R
- 取締役の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 資本金の払込証明書
- 法人印鑑届出書
また、場合によって提出が求められる必要書類には以下のものがあります。
- 発起人の決定書
- 監査役の就任承諾書
法人登記・会社登記の必要書類は、それぞれA4サイズの用紙で揃えることが基本。以下から、必要書類それぞれをもう少し詳しく解説するとともに、法人登記・会社登記にかかる費用も紹介していきます。
1 .株式会社設立登記申請書
株式会社設立登記申請書とは、株式会社を設立して法人登記・会社登記を申請する際の必要書類です。取締役会設置会社の「発起設立」「募集設立」、取締役会を設置しない会社の「発起設立」「募集設立」の4つの申請書様式が用意されており、法務局のホームページからダウンロード可能。以下は「取締役会を設置しない会社の発起設立」の記載例です。
2. 登録免許税納付用台紙
登録免許税納付用台紙とは、法人登記・会社登記に必要な登録免許税額の収入印紙を貼り付ける台紙のこと。株式会社設立登記申請書とともに提出する必要があり、登録免許税納付用台紙を含め、複数ページに渡る場合はそれぞれのページに「契印」しなければなりません。以下は、「取締役会を設置しない会社の発起設立」の登録免許税納付用台紙例です。
登録免許税の金額は、資本金額の0.7%と定められていますが、計算式の結果が15万円に満たない場合は、15万円が登録免許税額となります。たとえば、資本金1,000万円の株式会社であれば、計算式の結果が7万円となるため、登録免許税は15万円になります。
3. 定款
公証人の認証を受けた定款謄本も、法人登記・会社登記で添付すべき必要書類です。電子定款で認証を受けた場合は、CD-Rなどに内容が保存されているため、申請書などの必要書類とともにCD-Rを添付することになります。
4. 登記すべき事項を記載した書面・CD-R
法人登記・会社登記の必要書類としては「登記すべき事項」を記載した書面も挙げられます。従来は法務局で配布していたOCR用申請用紙に記載し、添付することが可能でしたが、現在ではOCR用申請用紙の配布は終了しています。
登記すべき事項を書面で添付する場合は、株式会社設立登記申請書に直接記載する、もしくはA4の別用紙に記載して登記申請書と契印したうえで提出する必要があります。
また、書面での記載・添付に変えて、登記すべき事項をCD-Rなどに記録・保存したうえで添付することも可能。具体的な記載例は以下の通りですが、CD-Rの規格・記載方法が細かく定められているため注意が必要です。
参照元:法務省「商業・法人登記における登記すべき事項を記録した電磁的記録媒体の提出について」
5. 取締役の就任承諾書
取締役の就任承諾書とは、役職名を記載したうえで、取締役としての就任を承諾した旨を証明する書類のこと。日付・住所・氏名・会社名・実印・就任を承諾する旨が、記載すべき必須事項です。
取締役が1名で、代表取締役を兼務している場合は「取締役の就任承諾書」のみで問題ありませんが、代表取締役以外にも取締役がいる場合、全員分の「取締役の就任承諾書」および、「代表取締役の就任承諾書」が必要となります。
6. 取締役の印鑑証明書
取締役の印鑑証明書も、法人登記・会社登記の必要書類。発起人が取締役に就任する場合は、定款の認証を受けたものと同じ印鑑証明書が必要です。また、複数人の取締役がいる場合は全員分の印鑑証明書が必要ですが、取締役会を設置する会社の場合は代表取締役の印鑑証明書のみでかまいません。
7. 資本金の払込証明書
会社設立の流れの工程「せ駛楸發諒Гすみ」で解説した、資本金の払込証明書も法人登記・会社登記の必要書類です。通帳の表紙・裏表紙、入金が記帳されているページをコピーし、法人実印を押印した「払込証明書」を表紙にした冊子を作成します。払込証明書の記載例は以下の通り。
8. 法人印鑑届出書
法人印鑑届出書とは、法人登記・会社登記時に、法人実印を届け出るための必要書類です。法人実印の印鑑証明書を取得するための重要な書類となるため、記載例を参考に正確に作成する必要があります。
9. 発起人の決定書
発起人の決定書とは、発起人全員の合意のもとに、商号・目的・本店所在地などを決定したことを証明する書面のこと。定款に本店所在地の番地まで記載されていない場合に必要になる書面であり、取締役が1名のみ、定款に本社所在地が番地まで記載されている場合は、発起人の決定書を添付する必要はありません。
ただし、定款に詳細な本店所在地が記載されていても、設立時代表取締役が記載されていない場合は、発起人の決定書を作成して添付しなければなりません。
10. 監査役の就任承諾書
設立する株式会社の体制によって、法人登記・会社登記時に必要となる書類が、監査役の就任承諾書です。就任承諾書としての様式は、取締役の就任承諾書に準じますが、取締役会を設置しない会社、もしくは取締役会を設置していても監査役を置かない場合、監査役の就任承諾書は必要ありません。
法人登記・会社登記の申請方法
法人登記・会社登記の必要書類が揃ったところで、法務局への申請手続きに移ります。法人登記・会社登記の申請方法を以下の3つからそれぞれ解説していきます。
- 法務局に必要書類を提出
- 必要書類を法務局に郵送
- 「登記ねっと 供託ねっと」でオンライン申請
法務局に必要書類を提出
法人登記・会社登記の必要書類・CD-Rなどのデータ一式を、管轄の法務局窓口に直接提出する方法です。法務局で申請を受け付けた日が設立日となり、書類に不備がなければ1週間〜10日程度で登記が完了しますが、登記が完了した旨の連絡は特にありません。
書類に不備があった場合は法務局から連絡があるため、指定された期限内に速やかに訂正を済ませなければなりません。
必要書類を法務局に郵送
法人登記・会社登記の必要書類・CD-Rなどのデータ一式を、管轄の法務局へ郵送する方法です。郵送の場合は、書類が法務局に届いた日(受理された日)が設立日となるため、特に希望する設立日があるようなら、配達日指定の宅配便などを利用するといいでしょう。
登記完了までの期間、書類に不備があった場合の連絡などは、法務局窓口に提出する場合と同じ。訂正した書類を郵送することも、法務局窓口に提出することも可能です。
「登記ねっと 供託ねっと」でオンライン申請
登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」を利用してオンライン申請する方法です。利用時間に制限がある、申請用総合ソフト(Windowsのみ)をダウンロード・インストールする必要があるものの、法務局に出向く必要もなく手軽に法人登記・会社登記が可能です。
従来は電子証明書を取得しておく必要がありましたが、現在では「PDF署名プラグイン」を利用した電子署名が可能になったこともポイント。自分自身で法人登記・会社登記したい方であればおすすめです。
参照元:登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと 供託ねっと」
登記事項証明書・印鑑証明書の取得
法人登記・会社登記が完了しても、法人口座の開設や関係機関への届け出など、やるべきことはまだまだあります。法務局の窓口、もしくはオンラインで登記事項証明書・法人の印鑑証明書を取得しておきましょう。法人口座の開設以外に必要な各関係機関への主な届け出は以下の通りです。
届け出が必要な機関 | 概要 |
---|---|
税務署 | 法人設立届出書・青色申告の承認申請書などの法人税関係 |
都道府県事務所・市町村役場 | 法人設立届出書などの法人住民税関係 | 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届などの社会保険手続き関係 |
ハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届などの雇用保険手続き関係 |
労働基準監督署 | 労働保険関係成立届・就業規則届などの労働法手続き関係 |
登記事項に変更があった場合は?
法人登記・会社登記によって商業登記簿に記載された登記事項に変更があった場合は、登記事項を変更するための手続きをしなければなりません。たとえば、役員に変更が生じた場合などが当てはまりますが、これを商業登記、もしくは変更登記と呼びます。
変更登記の内容によって、必要となる書類は異なりますが、申請方法は法人登記・会社登記と同様「法務局の窓口に必要書類を提出」「必要書類を法務局に郵送」「オンライン申請」の3つが選べます。
もっと詳しく知りたい方は、下記リンクをご覧ください。
法人登記・変更登記を依頼できる専門家は?
法人登記・変更登記は、会社の代表者自らが申請・手続きすることも可能ですが、必要書類の作成・収集には手間も時間もかかります。書類の不備による訂正・再提出などを避けるためにも、申請・手続き代行を専門家に依頼することがおすすめです。
建設業・飲食業など、許認可が必要な会社設立には行政書士の力が必要ですが、定款の作成から登記までをトータルサポートできる専門家は「司法書士」です。法人登記・会社登記は、行政書士と連携できる司法書士事務所、もしくは司法書士と連携できる行政書士事務所に依頼するといいでしょう。
まとめ
会社設立にあたって、法人登記・会社登記の申請方法や必要書類を知りたいという方に向け、本記事では、株式会社を設立する場合の法人登記の申請方法・必要書類・費用を中心に、起業する方なら知っておきたい会社設立の流れ・基本を解説してきました。
オンライン申請が簡素化されている現在では、法人登記・変更登記は決して難しいものではありません。しかし、会社設立という重要な時期を手続き関連で忙殺されるのは、あまり得策とはいえないでしょう。少しでも早くビジネスを軌道に乗せるためにも、手続き関連は専門家に任せることがおすすめです。
そんなとき「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、法人登記・会社登記に強い専門家をスピーディーに探せます。どの専門家に相談すべきなのか?迷うようなことがあれば、是非利用してみてください。
1984年京都市生まれ。不動産・相続・会社の「登記」に必要な手続きを代理する専門家であり、若手ならではのフットワークの軽さと様々な職業経験で培った対応力を持つ法務大臣認定司法書士。自身が法律知識ゼロで資格学習を開始した経験から法律の適用や用語の難しさを理解しており、平易でわかりやすい説明を心がけており評価を得ている。
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登記申請を法務局に対して行う場合、通常「書面申請」と「オンライン申請」のどちらかを選択することとなります。
書面申請は読んで字の通り、登記申請用紙に必要な添付書類と収入印紙をつけて法務局に直接提出する方法です。
オンライン申請は、法務局が提供している「申請用総合ソフト」を使用してインターネット上から登記内容を申請する方法です。(添付書類等は別途法務局に提出する「半ライン」と呼ばれる方法が現在の主流です。)
業務として登記を行っている司法書士のような専門家以外の方が、ご自身で登記を行う場合は書面による申請をお勧めします。ソフトの使用方法を理解するのにも手間がかかりますし、書面で用意しておいたほうが法務局での相談も行いやすいでしょう。
予約制で1回30分程度にはなりますが、法務局では登記申請前に事前相談を受け付けてくれます。ご自身で登記申請をお考えの場合は書類の記載内容や添付書類の確認などについて利用してみてはいかがでしょうか。