役員変更登記の費用はいくら?自分でもできる?手続きの方法・必要書類を解説!
- 役員変更登記の費用はいくらくらいかかる?
- そもそも役員変更登記は自分でできる?手続き方法や必要書類は?
- 役員変更登記を専門家に依頼するメリットや自分で登記するメリットは?
取締役を含む株式会社の役員は、会社法や定款によって任期が定められています。任期満了を迎えて役員を退任する、あるいは任期満了以降も引き続き役員に再任(重任)する、どちらにしても役員構成が変更になるため、登記内容の変更も必要。これが「役員変更登記」です。
会社設立後、初めて役員変更を迎える経営者の方であれば、役員変更登記にかかる費用はいくらなのか?そもそも登記の手続きをどう進めればいいのか?わからないという方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、役員変更登記に必要な費用、必要書類、手続きの方法を含めた役員変更登記の基礎知識を徹底解説!自分で登記手続きするメリット、専門家に依頼するメリットも紹介していきます。
役員変更登記の費用:必須の費用
法人登記のひとつである役員変更登記は、専門家に依頼するという会社も多いでしょう。しかし、役員変更登記に限らず、法人登記・不動産登記の手続きをするために特別な資格は必要とされていません。つまり、役員変更登記は当事者である会社の代表者が自ら手続きすることも可能です。
しかし、役員変更登記には、誰が手続きしても必ずかかる「必須の費用」があり、専門家に代行を依頼する場合は追加で「専門家の報酬」がかかります。まずは、役員変更登記に必須の費用について以下の3つのポイントから解説していきます。
- 資本金に応じた登録免許税
- 役員変更が複数ある場合はまとめて登記
- 書類取得費用などの実費
資本金に応じた登録免許税
役員変更登記で必須となる費用は「登録免許税」です。会社設立時や、不動産取得時の登記でも登録免許税を納税する必要があるため、ご存知の方も多いかもしれません。
役員変更登記費用としての登録免許税は原則として1万円ですが、資本金の額が1億円を超える会社の場合は3万円となります。登録免許税は収入印紙で納付することが原則であり、役員変更登記1件に対し、1万円もしくは3万円の費用(収入印紙)が必要です。
役員変更が複数ある場合はまとめて登記
役員変更登記は、数ある法人登記関連のなかでも、もっとも登記の機会が頻繁な手続きだといえます。上述したように、役員変更登記するたびに登録免許税が必要となるため、役員変更があるごとに1件ずつ登記していたら、当然、費用もかさんでしまうでしょう。
できる限り登録免許税を抑えるためには、複数の役員変更をまとめて役員変更登記することがおすすめ。退任・重任の時期がずれてしまっている場合は仕方ありませんが、複数の役員変更が同時期なら、役員変更登記申請書にすべての変更内容をまとめて記載可能です。これによって登録免許税にかかる費用を1件分に節約できます。
書類取得費用などの実費
役員変更登記は、申請書のほかに変更内容に応じた書類を添付しなければなりません。場合によっては住民票や印鑑証明書が必要なこともあるため、役員変更登記に必須の費用としては、これらの書類を取得する費用、法務局に出向く交通費や郵送費などの実費も含まれます。
ここまでで解説した登録免許税 + 実費が「役員変更登記に必須の費用」となり、だれが手続きをしても登記に必要な費用です。つまり、代表者自ら役員変更登記する場合の費用は「役員変更登記に必須の費用」のみということになります。下記の早見表に整理したのでご覧ください。
資本金1億円以内の会社 | 資本金1億円超の会社 | |
---|---|---|
登録免許税 | 10,000円 | 30,000円 |
書類取得費用・実費 | 印鑑証明書、交通費など(必要に応じて) | 印鑑証明書、交通費など(必要に応じて) |
役員変更登記の費用合計 | 10,000円〜 | 30,000円〜 |
役員変更登記の費用:司法書士の報酬
役員変更登記するために必要とされる資格というものはありませんが、代表者以外が登記を代行する場合には有資格者に依頼しなければなりません。具体的には、役員変更登記を代行できる資格を有する専門家は「司法書士」「弁護士」のみです。
当然、役員変更登記代行を依頼したい場合は、必須の費用にプラスして専門家の報酬を追加する必要があります。本記事では、司法書士に依頼することを前提に、以下の4つのポイントから解説していきます。
- 司法書士の報酬相場は3万円前後
- 登記事項証明書の取得手数料
- 役員変更登記の費用総額
- 登記事項証明書の取得手数料
司法書士の報酬相場は3万円前後
司法書士に役員変更登記を依頼した場合の報酬は、おおよそ3万円前後が費用相場です。現在では、司法書士をはじめとする士業の報酬が自由化されているため、地域や依頼先によって報酬額は変動しますが、日本司法書士会連合会の調査によれば、役員変更登記の報酬平均が約3万円であることがわかります。下記の早見表をご覧ください。
低額者10%の平均 | 全体の平均 | 高額者10%の平均 | |
---|---|---|---|
北海道地区 | 18,378円 | 27,029円 | 40,735円 |
東北地区 | 17,308円 | 27,921円 | 47,775円 |
関東地区 | 14,216円 | 28,851円 | 47,506円 |
中部地区 | 18,800円 | 30,109円 | 58,185円 |
近畿地区 | 17,329円 | 30,343円 | 50,997円 |
中国地区 | 18,262円 | 30,978円 | 54,524円 |
四国地区 | 18,571円 | 31,335円 | 51,856円 |
九州地区 | 17,577円 | 28,303円 | 45,952円 |
参照元:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2018年1月実施)」
登記事項証明書の取得手数料
必須ではありませんが、役員変更登記の内容がキチンと登記簿に反映されているかを確認するため、控えとして登記事項証明書を取得したい場合があります。
代表者が手続きする場合、発行手数料は450円〜600円程度の実費ですが、司法書士に依頼すると別途2,000円程度の手数料が追加でかかることもあります。登記事項証明書の取得が報酬に含まれている場合もあるため、司法書士に登記代行を依頼する場合は確認しておくことがおすすめです。
役員変更登記の費用総額
ここまでの解説でもお分かりのように、役員変更登記を司法書士に依頼する場合の費用は「役員変更登記に必須の費用」+「司法書士の報酬」です。下記の早見表で整理しておきましょう。
資本金1億円以内の会社 | 資本金1億円超の会社 | |
---|---|---|
登録免許税 | 10,000円 | 30,000円 |
書類取得費用・実費 | 印鑑証明書、交通費など(必要に応じて) | 印鑑証明書、交通費など(必要に応じて) |
司法書士の報酬 | 30,000円前後 | 30,000円前後 |
司法書士に依頼した場合の役員変更登記費用の合計 | 40,000円〜 | 60,000円〜 |
役員変更登記の基礎知識をおさらい
役員変更登記は、役員に変更事項があれば都度手続きが必要になるため、専門家の力を借りずに自分たちで手続きして費用を節約したい、しかし手続きの方法はよくわからないという会社経営者の方も多いはずです。
そんな方に向け、役員・取締役自ら役員変更登記するために、知っておきたい基礎知識を以下の3つから解説していきましょう。
- 株式の非公開会社は任期を10年まで延長可能
- 役員変更登記が必要になるパターン
- 役員変更登記の期限
株式の非公開会社は任期を10年まで延長可能
そもそも株式会社の役員・取締役は、会社法もしくは定款で任期が定められており、創業者である代表取締役であっても、任期満了にあたって退任するか、重任するかを株主総会で決議しなければなりません。会社法で定められた役員・取締役の任期は以下の通り。
- 取締役:2年
- 会計参与:2年
- 監査役:4年
- 会計監査人:1年
ただし、株式を公開していない「非公開会社」であれば、定款で定めることによって取締役・会計参与・監査役の任期を最大10年まで延長可能です。
役員変更登記が必要になるパターン
役員変更登記は、役員に変更事項が生じた際に必要になる登記手続きです。そのため、役員・取締役が任期を迎えるタイミング以外にも、役員変更登記が必要になる以下のパターンが考えられます。早見表を用意したので、ご覧ください。
代表取締役の住所変更時 | 登記事項のうち、代表取締役の住所が変更になるため |
---|---|
代表取締役・役員の交代時 | 任期満了時以外でも必要 |
役員の増員時 | 任期満了時以外でも必要 |
役員の辞任・解任時 | 任期満了時以外でも必要 |
役員の任期満了時 | そのまま退任する、重任する、どちらの場合も必要 |
役員の氏名変更時 | 婚姻などで氏名に変更があった場合も必要 |
役員の死亡時 | 役員がなくなった場合も速やかな役員変更登記が必要 |
役員変更登記の期限
会社法では、役員に変更事項が生じたときから2週間以内に、本店所在地を管轄法務局に役員変更登記を申請しなければならないと定められています。代表取締役の住所が変更になった場合を含め、任期満了時以外であれば期限は明確ですが、任期満了時の退任・重任の場合は「株主総会の決議」が、役員変更登記の期限が決まるタイミングです。
たとえば、2022年6月10日の株主総会で役員の重任が決議されたならば、2週間後の6月24日までが役員変更登記の期限となります。会社役員の任期は「満期になる事業年度末日の翌日から3か月以内に株主総会を招集して決議する」と定められているため、任期が2年であってもキッチリ2年間にならない場合があることに注意が必要です。
役員変更登記の必要書類・手続きの方法
役員変更登記が必要になった場合、まずやるべきことは自社本店を管轄している法務局がどこなのかを調べること、そして役員変更登記に必要な書類を収集して申請書を作成することです。
提出するべき書類は役員の変更事項に応じて異なるため、変更事項のパターンに応じてどのような書類が必要なのか、理解しておくことが重要です。以下の4つのポイントから解説していきましょう。
- 役員変更登記申請書
- 役員変更登記の必要書類は変更内容で異なる
- 収入印紙を用意・納付(貼付)
- 必要書類を管轄する法務局に提出
役員変更登記申請書
どのようなパターンであっても、役員変更登記するために必須となる書類が「役員変更登記申請書」です。住所変更・重任・取締役就任・監査役就任など、目的に応じた申請書様式が「一太郎」「Word」「PDF」形式で法務局のホームページからダウンロードできるほか、記載例のPDFも公開されています。
下図は、役員が重任する際に提出する役員変更登記申請書の例です。役員変更登記を司法書士に依頼する場合は「委任状」も必要になります。
役員変更登記の必要書類は変更内容で異なる
役員変更登記申請書以外にも添付書類が必要ですが、変更事項のパターンに応じて必要な書類は異なります。以下から、役員変更登記の代表的なパターンに絞り、添付すべき必要書類を簡単に紹介しておきましょう。
変更事項のパターン | 役員変更登記申請書 | 株主総会議事録 | 株主リスト | 定款 | 本人に関する書類 | 印鑑証明書 |
---|---|---|---|---|---|---|
新役員就任 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 就任承諾書、住民票・運転免許証・、マイナンバーカードなど | ◯ |
任期満了による退任、中途での解任 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | × |
任期満了後の重任 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | × |
任期満了後の重任 | ◯ | × | × | ◯ | 辞任届 | × |
役員が死亡した場合 | ◯ | × | × | ◯ | 死亡届 | × |
収入印紙を用意・納付(貼付)
役員変更登記申請書の作成が完了したら、登録免許税を納付するための収入印紙を用意し、台紙に貼り付けます。収入印紙は郵便局やコンビニなどで入手可能。収入印紙貼付台紙を含む役員変更登記申請書が2枚以上にわたる場合、各ページのつづりめに契印する必要があります。
必要書類を管轄する法務局に提出
役員変更登記に必要な書類がすべて揃ったら、期限となる2週間以内に自社本店を管轄する法務局に提出します。選べる提出方法は以下の3つ。
- 法務局の窓口に申請書・書類を持参・提出
- 法務局に申請書・書類を郵送
- オンライン申請(登記・供託オンライン申請システム)
また、会社法によって定められた役員変更登記は、法人登記する企業の義務です。役員の変更事項があったにもかかわらず申請を怠っていると、最大100万円の過料が科されてしまう可能性もあります。期限の2週間を過ぎたからといって、直ちに罰則が適用されるわけではありませんが、役員変更登記は速やかに手続きを済ませなければなりません。
役員変更を自分で登記するメリット
ここまでの解説で、費用・必要書類・手続きの流れを含め、役員変更登記のおおまかな概要がつかめた方であれば、役員変更を代表者自ら登記する最大のメリットが「費用の節約」であることがご理解いただけるでしょう。
登録免許税以外に実費が必要とはいえ、それぞれの実費は数百円程度。代表者自ら手続きすることで、実質、登録免許税のみの費用で役員変更登記が可能です。なによりも費用を抑えたいと考える経営者の方であれば、自ら手続きすることにチャレンジしてみてもいいかもしれません。
書類作成・登記申請に手間がかかるのはデメリット
ただし、司法書士・弁護士以外で役員変更登記の手続きができるのは、会社の代表者のみです。手続き自体はそれほど難しくはないものの、申請書の作成や必要書類の収集に時間も手間もかかるのはデメリットです。
たとえ専門家に支払う報酬が節約できたとしても、もっともコストの高い代表者の時間を登記手続きに費やしてしまうのは、本末転倒の結果になりかねません。
役員変更登記を専門家に依頼するメリット
代表者自らが手続きする場合とは逆に、司法書士・弁護士などの専門家に役員変更登記を任せるメリットは「時間と手間の節約」です。もちろん、株主総会議事録や株主リスト、定款など、自社で準備すべき書類などはありますが、それは代表者が自ら動く必要のない仕事です。
専門家に役員変更登記を依頼することで、代表者の貴重な時間を事務的な仕事に費やすことなく、より生産的な業務に時間を割り当てることが可能となります。
専門家の報酬が必要なのはデメリット
当然のことですが、役員変更登記を専門家に依頼する最大のデメリットは「費用」です。しかし、企業法務の専門家に報酬を支払う分だけ、確実かつ素早く登記手続きをしてくれることを忘れてはいけません。
たとえば、苦労して役員変更登記を手続きしたとしても、申請書や書類に不備があれば、法務局まで出向いて訂正する必要があるなど、余分な手間がかかってしまうことも考えられます。専門家に依頼することによって、こうした不安要素もなくせます。
まとめ
役員変更登記にかかる費用はいくらなのか?そもそも登記の手続きをどう進めればいいのか?わからないという方に向け、本記事では役員変更登記に必要な費用、必要書類、手続きの方法を含めた役員変更登記の基礎知識を解説するとともに、代表者自ら登記手続きするメリット、専門家に依頼するメリットも紹介してきました。
法人登記のひとつである役員変更登記は、専門家に依頼する以外にも代表者自ら手続きすることも可能です。しかし、慣れない手続きで時間も手間も費やすなら、意外と報酬の高くない司法書士に依頼してしまうのも一つの方法。どうすべきなのか?悩んでしまうようであれば、専門家に相談してみることがおすすめです。
そんなとき「比較ビズ」なら、必要事項を入力する2分程度の手間で、法人登記に強い司法書士をスピーディーに探せます。どの専門家に相談すべきなのか?迷うようなことがあれば、是非利用してみてください。
1984年京都市生まれ。不動産・相続・会社の「登記」に必要な手続きを代理する専門家であり、若手ならではのフットワークの軽さと様々な職業経験で培った対応力を持つ法務大臣認定司法書士。自身が法律知識ゼロで資格学習を開始した経験から法律の適用や用語の難しさを理解しており、平易でわかりやすい説明を心がけており評価を得ている。
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現在は役員の任期が定款上10年となっている中小企業をよくお見かけします。 中小企業は一人法人であったり、ご家族や親族で経営されているような会社が多いですので実際に私が設立手続きを依頼いただいた場合も10年でお勧めすることも多いです。
ただし、任期が2年であろうと10年であろうと再任のタイミングでは重任の登記を行う必要があります。一人法人で役員に変更が全くないといった場合でも登記申請が必要であり、登記を行わない場合は過料の対象になります。
役員の任期満了に伴う重任(再任)登記自体はご自身で行ないそれで万事OKといった事でも良いとは思います。しかし実際に10年の期間が過ぎる迄には株主総会等によって定款内容を変更していたり、当初より役員が増加・変更している、事業目的に変更があるなどといった手続きを行なっておられる事が多いです。
役員変更が必要となる節目のタイミングで、そういった変更内容を定款に落とし込み「現行定款」を作成するといった作業や、現在の会社の状態に即した変更の提案を受けるなどの機会だと考え、御社の「定期健康診断」のつもりで司法書士に依頼をしてみるのも良いでしょう。